国立能楽堂狂言の会 舟渡聟 清水 禰宜山伏

d0226702_15200321.jpeg国立能楽堂 狂言の会 家・世代を越えて
2018年5月25日(金)18時30分より

舟渡聟 和泉流
シテ(船頭)野村万作、アド(聟)高澤祐介、小アド(船頭の妻)野村又三郎

清水 和泉流
シテ(太郎冠者)野村萬、 アド(主)野村右矩

素囃 鞨鼓
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎

禰宜山伏 大蔵流
シテ(山伏)山本東次郎、 アド(禰宜)茂山千五郎、(茶屋)松本薫、(大黒天)山本則重
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎


同じ流派だけれど、でも違うお家同士の競演(共演?)。この中では大蔵流の山本家と茂山家が一番肌合いが違うような。
最初は万作の胸を又三郎家が借ります舟渡聟
客待ちをしている船頭のところに高澤祐介の婿が酒樽と鯛を持ってやってきます。今回の鯛はとっても薄い。
無理やり酒をねだる船頭と飲まれてしまう聟。隣のお二人は狂言が初めてらしく「これ、面白いな」と。大ウケでした。

さて、やってきた聟が酒をせびった客だと気づき、髭を落として変装したつもりになって対面する万作。髭を落としたのだから、口元を隠さない方が変装になると思うのですがね。
最後は酒宴になって小舞。「まりは枝にとまった」という小歌、何なのでしょうか。
記憶では面目ない、と舅が恥じ入って幕に入るものもあったかと思うのですが、謡でとめていました。
万作が素晴らしいのはいつもの事ですが、聟にしては見かけがちょっと老けている高澤が上手かった。


清水は萬の方が万作より元気そうだなー、と思いつつ爆睡。失礼いたしました。他の方のブログを拝見すると大変面白かったらしい。残念。
そして休憩の後は素囃から禰宜山伏へ。


禰宜で山伏なのでは無く、性格の悪い山伏と気弱な禰宜の話しの禰宜山伏。東次郎の「山伏です」のせりふを聞いて、ああそうそう、山本家は「です」って言うのよね、と。
そしてふと気づいた。茂山家のせりふって京都なまりでしょうか、アクセントが明らかに違います。
有難い大黒様を拝んでどちらに分があるか決着をつけるのですが、もちろん性格の悪くてがさつな山伏が負けます。
体力があって若い千五郎が山伏をやるのでなく、逆の配役になっているのが面白く、そして両者の上手さを際立たせていました。


満足した一日でした。


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# by soymedica | 2018-06-03 10:52 | 能楽 | Comments(0)

第三十六回テアトル・ノウ東京公演 屋島

d0226702_14335325.jpg第三十六回テアトル・ノウ 屋島
2018年5月12日(土)14時より@宝生能楽堂

仕舞
花月 味方団
籠太鼓 観世喜正
野守 観世淳夫

舞囃子 
天鼓 片山九郎右衛門

屋島 弓流 素働しらはたらき 那須与市語
シテ 味方玄、ツレ 武田祥照、 ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 野口能弘、御厨誠吾 アイ 野村萬斎
笛 杉信太朗、小鼓 成田達志、大鼓 亀井広忠
地謡 片山九郎右衛門ほか
後見 味方團、清水寛二


楽しみいしていたテアトル・ノウ。今年は屋島。何回か観ているのですが、見どころが色々あって振り返ると印象が散漫になる曲。
今回は萬斎の那須与一語もつくとあって満席の満席。
囃子方は長裃。地謡も裃姿です。
ふっと気づくと前の席のおばさまはヒョウ柄ブラウス。関西からの味方家の追っかけか?!

夕方の屋島に僧の一行がやってきます。宝生欣哉、一時やけに肩に力の入った感じだったのが最近それが無い。瀬戸内の夕方が見えるようです。
囃子も絶好調。
僧の一行は塩屋の翁と漁師に一夜の宿を借ります。僧たちが都から来たと聞くとなぜか涙する二人。
ここでアイの萬斎が登場して橋掛かりにひっそりと座るのですが、やはりこの人目立ちますね。目立つことをしているわけではないんですけれど、周りのお客さんが皆そっちに一瞬視線を向けるのがわかる。自分の演技に自信の無いシテ方はこの人呼ばない方が良いんじゃないか。(味方玄は大丈夫。)

翁が屋島の合戦のありさまを眼に見えるように語ります。前半のヤマですね。シテとツレの語りのつなぎ方が見事。錣引きの話、佐藤継信の最後、囃子方も力いっぱいです。
ここで水衣の型をおろした翁、何事かを予感させるようなことを言って去って行きます。

ここで後見座に裕基くんが。お父さんの那須与一語の後見というよりはお勉強でしょうか。いつ披きかなぁ。
萬斎の那須与一。何回か観た万作のとはかなり質が違う。人の演じ分けは万作よりはっきりしている。そして前回観た時(能のアイではなくてこれだけ独立した公演だった)より所作が自然で上手い。

さて、この間小鼓は床几を蔓桶に変えるのがお約束。
語り終わった本当の塩屋の主は橋掛かりから退場。
ついに義経の霊が出てくる。

一応、義経は床几にかけますが、すぐに立って弓流しへ。落とした弓を一の松から見るところが見せ場できれい。
横歩きするのは、馬が流される様子を模写しているのだそうです。
この合戦のありさまをもっと見ていたいな、と思っているうちに。終板へ。

この「今日の修羅の敵は誰そ、なに能登の守教経とや」との詞章がとても好きなのですが、味方玄、ここも素敵。
義経はそのまま幕に走り入ります。
常座でこちらを向いて留める欣哉が良かった。

面は前シテが三光尉(作者不詳、味方家所蔵)、のちシテが三日月(出目胴白作、味方家所蔵)。


来年は7月13日(土)宝生欣哉のワキで定家だそうです。


附)那須与一語は「これは讃岐檀ノ浦に住まいする」と始まりますが、讃岐の檀ノ浦と関門海峡の壇ノ浦は木偏と土偏で違うのだそうで、間違っているわけではないそうです。


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# by soymedica | 2018-05-28 21:31 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演五月 咲嘩 朝長

d0226702_15265039.jpeg銕仙会定期公演五月 
2018年5月11日(金)18時より@宝生能楽堂

咲嘩
シテ 野村萬、 アド(主)野村万之丞、 小アド(咲嘩)野村万蔵

朝長
シテ 浅見真州、 ツレ(侍女)浅見慈一、トモ(従者)長山桂三、 ワキ 宝生欣哉、 ワキツレ 大日方寛、御厨誠吾、 アイ 能村晶人
笛 竹市学、 小鼓 幸清次郎、 大鼓 國川純、 太鼓 三島元太郎
後見 浅井文義、谷本健吾
地謡 観世銕之丞ほか


浅見真州の朝長だというのに、空席の目立つ見所。しかもお客さんに若い人が少ない…。
咲嘩、どんな曲だろうと思っていたら、これは何回か観たことあるぞ。題名と内容と結びついていなかった。
野村萬、この年でまた一つ突き抜けて可笑しみが増しました。何だか見ているだけで楽しい。しかし、万之丞君のせりふが聞きにくいのは直してあげた方が良いと思います。


朝長。囃子方が入ってくると、小鼓の幸清次郎、年取ったなあと思う。そして今回大鼓の音が小さいような気がするのは気のせいでしょうか。
曲の内容を示すように、僧の一行はしみじみした謡。青墓へとやっとたどり着きます。

そこに侍女と従者を従えた何となく金持ちそうな女が。手には榊。長者の装束は渋い金地に草花が描かれているようで、豪華でかつ落ち着いている。何となくこの三人の声のハーモニーがお化けでも出て来そうな感じに聞こえる。そして地どりも小さな声で暗い…。

墓の前の僧を見つけた長者。僧はやっぱり「某」って名乗るんですよね。しかも詮索が厳しい時節柄、墓参りには朝長の死後10年たってやっと来られたと打ち明けます。
それを聞いた長者が朝長の最後を語ります。ここのところはさすが浅見真州、しみじみと上手ですが、地謡も負けず劣らず情感たっぷり。にしめます。

長者が中入りした後の能村のアイ語り、この人こんなに語れる人だったのか。

そして後シテ登場。出た瞬間思ったのは「これは若武者だ」という事。前シテの女性から見事に雰囲気を変えるのはさすが。ちょっとするとその神通力が消えて何となく年取った感じになってしまったのはお疲れなのでしょうか。

幼い頼朝は捕えられてどうなってしまうかわからない、父も兄も亡くなってしまい、弔ってくれる青墓の長者に感謝する朝長。
最後のクライマックス、馬に乗ったまま膝を矢で射貫かれる型のところまで、いつもちょっと長いと感じるのですが、そこをだれずに持っていくのはさすがのベテラン。でも最後の射られる型のところはもっと若々しくやってほしかったかな。

もっと何回も見て知りたい曲です。

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# by soymedica | 2018-05-20 13:38 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂企画公演 花折 江口

d0226702_14570892.jpg国立能楽堂企画公演 西行生誕900年記念
2018年4月29日(日)13時より

解説 平田英夫

舞囃子 松山天狗 三段之楽 金剛流
シテ 金剛龍謹
笛 一噌隆之、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井広忠、太鼓 林雄一郎
地謡 宇高通成ほか

花折 和泉流
シテ(新発意)小笠原匡、アド(住持)野村萬
立衆 野村万禄、能村晶人、野村万之丞、河野佑紀、上杉啓太

江口 金剛流
シテ 金剛永謹、 ツレ 豊嶋晃嗣、宇高徳成、 ワキ 福王茂十郎、 ワキツレ 福王知登、矢野昌平、 アイ 野村万蔵
笛 一噌隆之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠
後見 宇高通成、廣田幸稔、工藤寛
地謡 豊嶋三千春ほか


まず、解説から。能楽堂での解説ということで、ちょっと戸惑っているように見えた平田先生ですが、すぐに流れるようなお話に。
能の中に出てくる西行と遊女の問答歌には二通りの解釈があると言う話で、一つは能の解釈と同様、宿を断った遊女(妙 たえ、として伝えられる)を西行が咎めると、遊女が返歌でやりこめたのだ、というもの。もう一つは遊女と西行は旧知であって、単なる挨拶の歌のやり取りであり、結局泊めた、という解釈。こちらは後世の「西行は立派な人だ」という見方に影響されているかも。
などなどのお話があって、
西行は自ら道化となることによって、聖と遊女の関係に新たな道を開いたのではないか、という示唆で終わりました。
うーん、20分で説明するには内容が膨大ですね。

平田先生は西行学会の前代表ということですが、「西行学会」という学会があるのですね。ホームページによると2009年創立というまだ若い学会です。


さて、その後、舞囃子の松山天狗。金剛龍謹って西洋人のようなハンサムだなー、と思いつつ寝てしまった。後で解説を読んだら珍しい曲らしいので、残念。


そして花折。西行桜のパロディーということで、「花見客が煩いから断れ」と言って出かけた住持。でも、お留守番の新発意は結局客に負けて入れてしまう上に、大宴会。ここの宴会芸が見どころ。昔の人は風流でしたね。今の人がカラオケボックスで練習するのと同様、宴会に備えてお家で練習したのでしょうね。
ところで「花折」なんだか最近親しい名前だな、と思ったら、最近良く買う鯖寿司屋さんの名前でした。


いよいよ江口。重い曲だからか、地謡前列もとってもベテラン。諸国一見の僧も何だか重々しい方です。福王パパ、好きなんですよね。
天王寺に行く途中、江口の里に着いた一行は江口の長の旧跡をみようと地元の人に聞いてみます。
地元の人の教えるのはちょっと高くなったところにある場所でしょうか。

僧が西行の「世の中を、厭うまでこそかたからめ、仮の宿りを惜しむ君かな」とふと言ってしまうと、どこからか女が一人。
永謹、大きい人だからか、面を掛けると小顔の美人に見えます。
前回も感じたのですが、コトバの間の取り方が観世流とちょっと違うのか、「絶句??」と思うくらい長い間があります。だれか付けたら!?と思うと何事も無かったように次が続くのがちょっと面白い。

歌をめぐる僧と女のやり取り、字にすると難しいのですが、舞台で聞くと何となくわかったような気になるから不思議。

女は、私は江口の君の幽霊よ、と言って消えて行きます。

万蔵が、「さっきの僧たちはまだいるかしらん」と立ってみると、まだ一行がそこにいるのに物凄く驚く。そんなに驚かなくても…。
どうもこの人観ていると、「太一郎追い出した人」というイメージがわいてきて(実際はどんないきさつかは知らない)、当分の間悪役イメージがかぶりそう。
アイ語りはさすが上手。

どうやら性空上人という有難い御坊様の夢のお告げで江口の長=普賢菩薩ということになったらしい。(実際はもっと複雑です、ハイ)。

僧の一行がもっと有難いお姿をみたいものだ、と待っていると、後見が一の松のところに屋形船をだします。
ツレ、江口の君、そして脱ぎ下げのツレがやってくる。最初のツレがとっても可愛い。(この順番でやってくるときには誰が「お幕」って言うんでしょうね。)

そして「この舟は江口の君の川遊びの舟よ」などと
ワキと問答して、舞台へ。
すぐに船の作り物片付けてしまうのが残念。三人乗ってこちらを向いている姿がとても素敵なのに。

シテは正中で床几にかけます。やっぱり長ともなると偉いんですね。
クリのところ、何だか詞章がとっても難しいんですが、地謡がとても綺麗。

そして序之舞へ。永謹、手そのものの形も仕草もとても綺麗。
笛がちょっと...。大した破たんはありませんでしたが。

そして遊女は菩薩となって空に帰って行くのでした。
あんなにきれいな女の人のなかに、叔父さんの金剛永謹が入っているなんて信じられないなー。
素晴らしい舞台でした。


面は
前シテが是閑の増、後シテが増阿弥の増、ツレが満照の万媚、満永の小面

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# by soymedica | 2018-05-07 17:18 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演四月 武悪 籠太鼓

d0226702_17561160.jpg国立能楽堂四月定例公演
2018年4月20日(金)18時30分より

武悪 和泉流
シテ(武悪)石田幸雄、 アド(主)野村萬斎、小アド(太郎冠者)深田博治

籠太鼓 舞入 宝生流
シテ 田崎隆三、 ワキ 殿田謙吉、 アイ 高野和憲
笛 一噌幸弘、 小鼓 古賀裕己、 大鼓 大倉慶之助
後見 宝生和英、水上優、金森良充
地謡 小倉敏克


石田と深田の武悪、とっても期待して出かけたのに、途中から眠くなってしまった。たぶん舞台のせいでは無くて私の体調のせいだと思う。ごめんなさいね。でも、太郎冠者が小アドとは気づかなかった。太郎冠者が武悪を打つか打たないかの駆け引きのところが見せ場だと思うのだけれど。


籠太鼓は見るのは二度目ではなかったか。前回石田幸雄のアイがとても印象に残っている。今回の高野も良かった。
まず、大小前に大きな籠が出されてこれが牢屋。
松浦某と従者登場。自ら某と名乗るって変な気がする。松浦の謙吉、とか言えばいいのに。
ま、それはともかく松浦の何某は喧嘩っ早くて相手を殺してしまった関の清次という男を牢に入れている。名前からしてチンピラっぽいのだけれど、ちゃんと奥さんがいるらしい(そういうのに限って妻は美人と言うのは昔から)。

従者の高野は牢屋の番をまかされている。ちょっとへつらう感じで清次に話しかけている(実際は牢はもぬけの殻)のが面白い。牢屋がもぬけの殻なのに高野びっくり。
とりあえず行方を知っていそうな妻を呼び出す。

説明が難しいのだけれど、妻の着ている装束が素晴らしい。地味な色合いだが豪華。しかし、シテは御年なのか、ハコビがちょっと心もとないのと、立ったり座ったりいかにもつらそうなのが気になります。
妻は夫の代わりに牢屋に入れられてしまいます。
松浦の某はちゃんと高野が牢屋に定期的に行って番をするように、牢屋に太鼓をかけて時刻ごとに打つようにいいますが、高野はついつい打ち過ぎて「これは明日の分」なんて言ってごまかす。

最初牢屋の中での妻の謡がぶちぶち切れる感じなので気になりますが、だんだんエンジンがかかってくるとやっぱりそこはベテラン、上手です。
でもこの人、何か肺でも悪いんではないだろうか、喫煙者かな、と思わせる感じ。

某は妻と一対一で話し合い、妻の夫を思う心に打たれて手づから戸を開いて出してやります。昔から美人はトクですね。
ところが、妻は「この牢こそ夫の形見」と言い張って、牢屋から出てこない。
今の設備の整った刑務所と違ってじめじめして狭いところだろうに…。

面白かったアイは退場してしまいます。

ともあれ牢の中でごそごそ肩脱ぎした妻は、牢から出て来ます。すかさず着衣を直す後見。
そしてここでちょっと舞を。これが小書きの舞入りらしい。
そして太鼓を見つけます。

妻は心を慰めようと太鼓をうち始めます。ここ、謡がはっきり聞こえなくて残念。
さらに狂乱した妻は牢に入って自ら戸を閉めて座り込み。
松浦某もこれにはびっくりしたのかあきれたのか(ここがよくわからない)、「夫婦ともにゆるしてやるから」と。
まあ、許してやるにも言い訳が必要で、某の親の供養の年(十三回忌?だったか)なんだそうな。

やっと牢から出る妻。立つのが凄く辛そう。関節に油をさしてあげたい。
出てきて某に手を合わせ感謝します。
地謡は弾むような喜び、と言うのではなく、とても静かに終えたのでした。

面は曲見。

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# by soymedica | 2018-05-02 09:59 | 能楽 | Comments(0)