第17回能楽座自主公演

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職場がとっても夏枯れなので、昼休みに昨日を思い出しブログなんぞを書いています。良いんだ、(なんちゃって)管理職だもん。

第17回能楽座自主公演
2011年8月14日 2時から @宝生能楽堂
自由席 6000円

能 景清
シテ 片山幽雪、ツレ 味方玄、トモ 文林道治、ワキ 福王茂十郎
笛 松田弘之、小鼓 曽和博朗、大鼓 安福建雄
後見 観世敦夫、片山九郎右衛門

狂言 悪坊
シテ 茂山千五郎、アド 茂山あきら アド 茂山千三郎

一調 胡蝶 
観世銕之丞、太鼓 観世元伯

一調 善知鳥
大槻文蔵 小鼓 大倉源次郎

小舞 祐善
野村万作
地謡 中村修一、深田博治、野村萬斎、高野和憲

仕舞 経政 クセ
近藤乾之助
地謡 金井雄資、亀井保雄、大友順

独吟 名取川
野村萬 助吟 野村扇丞

能 羅生門
シテ 梅若玄祥、ワキ 宝生閑
ワキツレ 宝生欣哉、工藤和哉、則久英志、大日方寛、殿田謙吉、森常好
アイ 野村萬斎、高野和憲
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世豊純、大鼓 山本孝、太鼓 三島元太郎
後見 山崎正道 大槻文蔵

中正面シテ柱の真ん前の席に座ってみました。パンフレットをじーっと眺めたら、第17回とあります。メンバーをチェックすると、第一回の時は脂の乗り切った人たちばかりだったのでしょうが、今では一寸枯れた味を出す人の集まり、という感じ。


景清。晩年粟谷菊生が得意としたとされていますが、本人は「動かなくて済むからみんな気を使って景清ばかり依頼する」と言っていたそう(http://awaya-noh.com/modules/pico2/content0111.html)。確かにほとんど動かないし、そもそも目の見えない年寄りの乞食の役だから、よろよろしていてもOK.
先月だったかこの片山幽雪の夕顔を見た時にはいかに何でもこの人に装束を着けさせて人前で演じさせるのはまずいのではないか、と思ったのですが、今回はすごく良かった。年をとったら演ずるものは選ばないといけませんね。

しかも、この人の良さは謡にあるのではないでしょうか。藁家から歌いだすところなんぞ、とても素敵です。

そして味方玄、大人気だというのが理解できます。謡は艶があるし、所作はとてもきれい。じっと立っているときトモがぐらぐらするだけに、この人の立ち姿も際立ちます。次回東京に来たら、絶対見よう。

景清自体も筋を読んだら退屈するかと思ったのですが、とても良い曲でした。

ところで、脇正面の席って地謡がとても気になりますね。前列の人でものすごく視線があちこちする人がいて気になりました。その方、この秋にシテをなさるらしいのですが、ちょっと切符を買おうかという気持ちが萎えちゃいました。


狂言悪坊。有名な酒乱に遭遇した坊さん、無理やり一緒の宿に泊まらされ、腰までもまされ。その悪坊が酔って寝ているすきに小袖や長刀と自分の番傘と交換し、逃げ出します。目覚めた悪坊は驚きますが、これをきっかけに仏道修行に出ます。
「ああいうたちの悪い酒乱って昔駅によくいたわいな。」と思わせる上手さ。茂山千五郎さんって、ご自分は飲むのでしょうかね。

残念だったのは、一番最後のせりふと手つきの意味(影絵の狐に良く似た形)が私にはよくわからなかったこと。教養が無いって辛いなー。


羅生門。しょっぱなから驚かされたのは小鼓。観世流宗家だそうですが、お舞台に立たれるのはおやめになったほうが…。いわゆる老人性の震戦では無くて、企図震戦か??「見所に神経内科の先生はいらっしゃいませんか?」と呼びかけたい感じ。あれだけ手が震えると、大きな音は大丈夫ですが、小さな音はやはり無理ですね。きっと日常生活には不自由無く、呆けているわけでもないので舞台に出てしまうのでしょうが。

さてこの曲はワキがシテのように大活躍する上に、たくさん出てくる曲。シテは後半鬼の役で出てくるだけ。冒頭ワキ方が7人も出てきて華やか。全員が謡うので、あれ、地謡いないのだったっけ?と一瞬思っちゃった。迫力はありますが、皆さん一回リハーサルできちんと揃えられたほうが宜しいのでは。

今も昔も春雨の降る中、男どもが集まってやることは、女の品定め、酒盛り、喧嘩、博打…。今回は酒盛りの上でのちょっとした口論の結果、宝生閑扮する渡辺の綱が、鬼の出るという羅生門に肝試しに。
渡辺の下人の野村萬斎、高野和憲は鬼の出る羅生門にご主人さまが行くと聞いて、急にお腹が痛くなっちゃったり、「ついて来ないで良い」といわれて心にもなく残念がったり…。

中入り後、一畳台が出され、さらにその上に家(羅生門)が載せられます。

馬に乗って夜中の羅生門へと急ぐ綱登場。これが上手。鞭一本でちゃーんと馬に乗っているように見えるし、馬から降りるとそれらしく見える。
しかし、宝生閑はあんまり強そうには見えないですな。船弁慶のときには強そうに見えたのだけれど、今回は「おー、おー、小柄なのに頑張っちゃって。」という感じ。鍬形がとても小さいので、小さな猫のお耳のように見えるし。そして鬼が梅若玄祥ですから、なおさら鬼のほうに分がある。

子供の肝試しと同じで、頼光に渡された札をやってきた証拠に羅生門の壇上に置くと、ぬーっと恐ろしい手が出て…。謡では兜を取られるのですが、見た感じでは髪を引き抜かれる。髪をつかまれる、という伝説もあるそうですが、「あ、禿になっちゃう」と言う感じ。下にちゃんと鉢巻をしているのが面白い。

見事鬼退治をして、宝生閑、違った渡辺の綱は引き上げて行くのでした。

「幻視の座」を読んでからすっかり宝生閑ファンになっている私ですが、やっぱりワキらしいワキをやっているときのほうが存在感あります。「こんなにお話の中心になって照れちゃうな」と思っているのではないでしょうか。
でも、私は満足しました。


最後に。通は中正面に座るそうですが、私はやっぱり正面が好き。
(写真は宝生能楽堂の横にあるお稲荷さんです。)
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# by soymedica | 2011-08-15 12:56 | 能楽 | Comments(0)

幻視の座

昨日は9月の国立能楽堂チケット販売開始日であったのを(あぜくら会員のみ)すっかり忘れていて、好みの席がゲットできず、ざんねん。

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幻視の座 能楽師・宝生閑 聞き書き 土屋恵一郎 岩波書店

岩波は能の本をたくさん出していることに気付いたけれど、すぐに絶版になってしまうのにも気がつきました。あまり考えずに、見た時に買っておかないと、と手に取ったこれ。
面白かったです。

宝生閑は宝生新という不良だった名ワキのおじいさんに育てられたそうです。松山藩の出身だった関係で夏目漱石にも教えたおじいさんだったと。(しょっちゅう出げいこをさぼったと、夏目漱石の日記にかいてあるらしい。)
閑本人は小遣い稼ぎのために、終戦後はジャズバンドの手伝いなんかをこっそりやっていたそうです。

ひょうひょうとした語り口で、能楽師の心得、興業のこと、謡のこと、シテのことを語っています。能を全く見ない人でも読んだら面白いのでは。でも、芸術というものはパトロンがいないとつらいのだということが良くわかります。閑の時代までは経文のこととか、古典を勉強するとかが比較的ゆったりとできたようですが、今は生活のために公演数が多くなって、なかなか大変なようです。

ワキという職業がらからも、もともとの性格からも、自分からあまり発信する人ではないようですし、あまり若い人にがみがみ言う人でもないようです。そこから上手く話をひきだして、面白く書かれています。
若いころの写真を見てもそんなにハンサムでは無いのに、凄く女性にもてる人らしいのですが、何となくこれを読むと納得できます。

これから能を見る人にも、すごーくたくさん見ている人にもお勧めです。
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# by soymedica | 2011-08-09 08:16 | 本・CD・その他 | Comments(2)

能と近代文学

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別荘にこもってやることの定番といえば読書。

能と近代文学 増田正造 平凡社
1990年11月30日 初版

泉鏡花から野上弥生子まで。三島由紀夫の近代能楽集などのように能を直接の発想の種としたものから、一部に能がモチーフとして使われるものまで、いろいろな作品を網羅しています。
実は私には名前も初めて、という作家が何人かいました。

この人の文章のリズムに慣れるまでやや大変ですが、面白く読めました。
脚注がついていて話題となっている能のあらすじも書かれており、一応本説の能を知らない人でも読めるようにはなっています。
このダイジェストのしかたがまた面白い。

当たり前のことですが、三島由紀夫と夏目漱石に関しては特に詳しく書かれています。
筆者は結構存分に筆を振るったようで、「卒論でも書こうかという人はこの本を論文のネタにしないで、原点に当たるように」と、
大学の先生らしい注意も(笑)。

昔のことで、インターネットや各流儀のホームページなども無く、作家は能に関する知識を簡単に手に入れられなかったのでしょう。
思わぬ人が思わぬところでちょっとした記述の誤りをしているのを、筆者は見逃しません。

それにしても立原正秋はひどかったらしい。かなりのページを割いてこき下ろしています。
立原正秋の作品は読んだことがないのですが、聞くところによると今の渡辺淳一のような立ち位置の作家だったとか。
(まあ、渡辺淳一は知らないことを知ったかぶりをして書きはしないでしょうが。)
立原正秋、高級婦人雑誌によく取り上げられていたのは覚えていますが、死去とともに急速に忘れ去られた作家のようで、わざわざここに取り上げてこき下ろすほどのものか?とは思いますが。でも、そのこき下ろしぶりがまた面白い。

厚いハードカバーの本です。いったいに能楽関係の本は装丁が立派過ぎると思うのですが、これもその一冊。
内容は立派で結構なのですが、重いし、かさばるから、もう少し軽やかなつくりにしてくれたらな、と注文。
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# by soymedica | 2011-08-04 14:18 | 本・CD・その他 | Comments(0)

Interlude

今週一週間は夏休みです。(でも、期待に反して涼しいですね。)

温泉つき別荘(残念ながら他人の)で、本を読んだり散歩したり。
近隣に全く人の気配が無い所なので大きな音で囃子のCDをかけていたら、連れ合いに「フツーのCDにしてくれない?」と(笑)。
しょうがないから今現在は暖炉の世話に明け暮れています。

八月中は観能予定もあまり無いし。来週からは前々から貯めてある本の感想を順次アップする予定です。
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# by soymedica | 2011-08-02 22:13 | 本・CD・その他 | Comments(0)

東日本大震災 義援能

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東日本大震災 義援能 2011年7月28日
@観世能楽堂 18時半より
正面席3000円


仕舞
経正 キリ 岡久広
網之段 観世芳伸
善知鳥 寺井栄

狂言 二千石(じせんせき)
野村万作 石田幸雄

仕舞 
放下僧 武田宗和
雲林院 高橋弘
融 山階彌右衛門

舞囃子葛城 大和舞
関根祥六
大鼓 柿原光博、小鼓 森澤勇司、太鼓 小寺真佐人、笛 反田智子

能 熊野 読次之伝 村雨留 墨次之伝 膝行留
シテ 観世清和、ツレ 藤波重彦 ワキ 宝生欣哉
大鼓 國川純、小鼓 鵜澤洋太郎、笛 森田弘之
後見 上田公威、観世恭芳



仕舞舞囃子もそれぞれに面白かったのですが、寺井栄の謡はちょっと趣味ではないかもしれない…。



狂言二千石。京都見物に行って、はやりの謡を仕入れてきた太郎冠者。それはみだりに謡う謡では無い、成敗してくれようという主人。泣いたり、笑ったり。最後は笑って終わります。
とても面白かったのですが、なんだか本日万作さんはお疲れのご様子。何がどうだったというわけではないのですが、そう感じました。働きすぎでは。



熊野の二人を現代に置き換えると:

男。年齢不詳。スポーツクラブで鍛えている筋肉の付きすぎない引き締まった体形で、若干日焼け。金のアクセサリー有り。どう見ても定時に出かける仕事では無い。金は妙にありそうな暮らし向き(実際にあるかどうかは別)。
女。目のあたりがポワンとした美人。しかも男と不釣り合いな清楚さ。色白で華奢。頭は良いが自己主張が少ない。
で、このカップル男がわがまま。暴力は振るわないけれど、DVではないかと疑うほどわがまま。どうでも良いけれど未入籍。あるいはどちらかが結婚している。

実家の母を見舞いたがる女。離れると寂しいので(ここんところ事業に影が見えて、一人になるのが余計寂しい)、女をつれて無理やりパーティー。女も心やさしいから付き合うが、男に見えないところで母を思って泣いている。それを男は感じて余計鬱々と楽しまず。でも、無理に宴会やったけれど、「もう止めた止めた。熊野ちゃん、そんなに気になるなら実家にちょっと行ってこいよ」。

朝顔は容貌も品も頭も熊野よりはちょっと落ちるけれど、とっても気の良い熊野の親友。「熊野ちゃん、お母さんのこと取っても心配しているけれど、カレシも良い人だしねー。」なんて他の友人に語るタイプ。

そして、熊野は母を見舞った後、宗盛のところに戻ってくるのです。でも、この恋はハッピーエンドにはならない。


やはり観世清和上手。雰囲気があります。そしてさすが家元の舞台、地謡からなにから、安心して見ていられます。当たり前の話ですが…。

家元は膝行がとても上手なので評判とのことですが、私、能の膝行は初めて見たのでよくわかりませんでした(インド人の召使のやるような、立て膝で進むやり方を想像していました。あれは着物では無理ですね)。

最初に見たのが喜多流の湯谷だったので、いろいろ細部の違いが面白かったです。喜多流では確か朝顔は手紙を渡すと早々に居なくなったと思う。そして、熊野の書く短冊は今回のように華やかなものでは無かったと記憶しています(今回は赤の地に金の模様)。

そして数々の小書き。村雨留や読次之伝をわざわざ小書きとすることに異論はありませんが、墨次之伝、前もって観客に断わっておくほどのことか??と思うのですが。



とても満足しました。3000円はお得。満席だったのも納得です。ですから最後にちょっと寄付して帰りました。

しかしですよ、能楽堂ではスーパーのビニール袋、あれ、禁止してはどうですかね。後ろの爺さん、あれを手に持っている上に手をなぜだか小刻みに動かすから、ずーっと音がしていて閉口した。
今時アラーム時計をしている人もいて、どこかで9時に「ピピ、ピピ」といったのにもびっくりしたけれど。



色々な本に書かれている能ですが今回は
脳の中の能舞台 多田富雄 新潮社
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# by soymedica | 2011-07-29 00:26 | 能楽 | Comments(0)