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花花能 蝸牛 土蜘蛛

d0226702_13273829.jpg成田美名子画業40周年記念 花花能
2018年2月13日(火)19時より@GINZA-SIX 観世能楽堂

舞囃 天鼓 盤渉
観世銕之丞
笛 杉信太朗、 小鼓 大倉源次郎、 大鼓 國川純、 太鼓 三島元太郎
地謡 柴田稔ほか計5人

蝸牛
シテ(山伏)野村萬斎、 アド(主)中村修一、 小アド(太郎冠者)高野和憲

土蜘蛛 入違之伝
シテ 谷本健吾、 ツレ(源頼光)観世淳夫、(胡蝶)鵜澤光、 トモ(頼光ノ従者)安藤貴康、 ワキ(独武者)大日方寛、ワキツレ(従者)御厨誠吾、野口能弘、 アイ(独武者ノ下人)内藤連
笛 一噌庸二、 小鼓 田邉恭資、 大鼓 大蔵慶乃助、 太鼓 林雄一郎
地謡 浅見真州ほか
後見 観世銕之丞、鵜澤久、浅見滋一


漫画「花よりも花のごとく」の作者成田美名子さんの画業40周年を記念した催し。3日間にわたって行われ、本日が最終日。
漫画の登場人物に具体的なモデルは居ないそうですが、このキャラクターはあの人の条件や年齢を変えてつくってあるんだな、と読める部分もあり、楽しい。

お祝いムードのなか、席へ。やっぱりこの能楽堂、ロビーが狭いなー。

舞囃は銕之丞の力の入った天鼓。ちと長いかな。お囃子が舞囃子と土蜘蛛とで全員入れ替わるのが贅沢。

狂言は皆の好きな蝸牛。かたつむりとは「頭が黒くて腰には貝をつけ、角のあるものだ」と聞かされた太郎冠者が間違って山伏をつれてきてしまう話であることは有名ですが、萬歳の黒々した頭と黒い頭巾を見てふと思ったのは、白髪や禿頭の演者だったら「頭の黒い」というのは山伏の頭巾のことになるのか?…でしょうね。
中村の長裃、初めてみるなかなか面白い柄ですが、大分生地がくたびれた感じ。
リズムにのった楽しい演目ですが、楽しく見せるのはなかなか大変なのでは。ベテランの萬歳と高野のコンビでとても良かった。


あまりに有名なのに、「親子のための」「子供のための」のような催しで出されることが多いためなのか、実は見るのは二回目の土蜘蛛
まずワキ座前に一畳台が出されます。模様は渋い。銕之丞がその後ろに葛桶と小袖を持って控えています。

御病気の頼光が一畳台の上に座り、葛桶に左手をのせ、さらにその上から小袖をかけると、なるほど病気で脇息にもたれている体。わきには従者が控えています。頼光様、型には風格があるのですが。従者、頼光、胡蝶の三人のうちで胡蝶が圧倒的に上手だなあ、と思っているうちに胡蝶と従者は切戸から退場。

怪しい僧が登場。僧は怪しい歌なんぞを読むんですが、正体を見破られて、むははははぁ、と襲いかかると間一髪で頼光は太刀を浴びせて難を逃れるのでした。ここで蜘蛛の巣が地謡にかかるんですが、うっとうしくても払っちゃいけないんでしょうね。置物のように座り続けていました。

頼光の急を聞きつけてやって来た独武者。橋掛かりで蜘蛛とすれ違います。怪しい雰囲気。
蜘蛛の名がした血をたどって独武者は探索へ、頼光も退場。

あんまり強そうでは無い武者の内藤連が「これから蜘蛛退治だ、蜘蛛退治だ、僕も連れて行ってもらおう」とアイ語り。すげなく「お前は来なくて良い」と断られます。

ここで一畳台を大小前に動かし、カバーを一枚外すと、また別の縁取りが出てきます。ふーん、一畳台の上は緑のフエルトが貼ってあったんだ。
そして上に蜘蛛の塚が載せられます。

二人の従者を連れた独武者が血の跡を辿って塚を発見。
ついに引き回しが下ろされ、蜘蛛が。両手に蜘蛛の巣を握りしめているのがはっきりわかってちょっと(以外にひと巻きが大きい)。

蜘蛛と武者たちの大立ち回り。糸が盛大に投げられます。最初に塚のわきから出た蜘蛛はまた塚に逃げ帰り、正面から出てきたりと、大サービス。欲を言うと、糸投げと糸投げの合間が、懐探ったりただ歩くだけだったりと残念な感じですが。
この蜘蛛の面がちと間抜けな感じで憎めない。

最後に蜘蛛はやっつけられて仏倒れ。倒れた時に面を直していたけれど、あれはちょっといただけない。
独武者の太刀は糸だらけになってしまいましたが、これには懐紙を出してぬぐう、という所作は無いものと見えて、そのまま退場していました。
パチパチパチ。

退場する囃子方が飛んできた糸を丸めて袂にいれてホッと息を吐いたので笑いました。


写真は春日大社観音寺。土蜘蛛塚と言われるものは京都に何カ所かあるらしいのですが、この境内に土蜘蛛塚の一つがあります。



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by soymedica | 2018-02-23 14:44 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演二月 弱法師 地蔵舞 巻絹

d0226702_12515377.jpg銕仙会定期公演二月 弱法師 地蔵舞
2018年2月9日(金)18時より@宝生能楽堂

弱法師 盲目之舞
シテ(俊徳丸)野村四郎、 ワキ(高安通俊)殿田謙吉、 アイ(通俊ノ下人)高野和憲
笛 一噌隆之、小鼓 幸清次郎、 大鼓 國川純
地謡 片山九郎右衛門ほか
後見 観世銕之丞、 長山禮三郎

地蔵舞
シテ(僧)石田幸雄、アド(宿主)内藤連


体調不良であったのだが、久しぶりの弱法師(一時は集中して上演があったのに最近とんと当たらない)。野村四郎の俊徳丸が見たくてやってきました。よって後半の巻絹はパス。ちょっと残念でした。

まず殿田登場。讒言によって息子を追い出してしまった心をいやすためでしょう、通俊は天王寺で施しをすることにします。殿田はなかなか良い雰囲気を舞台上に作り出していると思います。
出だしは持っている詞章と大幅に異なってワキとアイの同吟があります。これ、微妙に節回しが違ってお互いにやりにくそう。

そしてシテ登場。弱弱しく、でも良いところのお坊ちゃんであったろう俊徳丸。
「石の鳥居ここなれや」のところの型が凄くきれい。

父通俊は俊徳丸が登場したとたんに息子が分かっている気配ですが、あまりのことに動揺したのか、まず施しを。
俊徳丸は梅の香りに気づき、袖で受けます。野村四郎、いい具合に声がかすれているのはまさかわざとでは無いでしょうね。しかし、面の使い方がさすが!

父はやはり息子だとはっきり気づき、夜に連れて帰ろうと。そして息子に日想観を勧めます。
俊徳丸は鳥居に向かい南無阿弥陀仏と唱える、ここのところも凄くきれい。
「やはり自分は盲目であったのだ」と気づく俊徳丸。
地謡、のりのりでしたね。

最後、弱法師が名乗るところでなんと絶句。「俊徳丸」が出てこない。これさえも、野村四郎は弱法師の世界に入り込んでしまったためだろうと思える素晴らしい舞台でした。

やっぱりちょっと無理して来て良かった。

面は竜右衛門作の弱法師。


地蔵舞。宿を旅人に貸すことを禁じている地域で泊まる所を探す旅僧。
断る家の主人をだまし、座敷の真ん中に自分の笠を一晩置かせてもらう。隙を見て座敷に上がり込み、笠をかぶってちんまり。「自分はあなたに宿を借りているのではない、この笠に宿を借りているのだ」という頓智。

あきれた主人も泊まることを許し、二人で酒盛り。この曲の眼目はここで舞われる小謡舞なんですが、私の察するところこれは男色をテーマにした凄ーく色っぽい歌ではないかと。
石田幸雄、面白かった。そして万作家の若い人たちはどんどんうまくなりますな。


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by soymedica | 2018-02-19 11:31 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂狂言の会 鍋八撥 蛸 千切木

d0226702_16175987.jpg国立能楽堂 狂言の会
2018年1月31日(水)18時30分より

鍋八撥 大蔵流
シテ(鍋売り)大藏吉次郎、 アド(鞨鼓売り)大藏教義、 アド(目代)善竹忠一郎

素囃子 男舞
笛 小野寺竜一、 小鼓 田邊恭資、 大鼓 佃良太郎

蛸 吐墨 和泉流
シテ(蛸の霊)野村萬斎、 ワキ(旅僧)野村万作、 アイ(所の者)岡聡史
地謡 石田幸雄ほか計5人

千切木 大蔵流
シテ(太郎)茂山七五三、 アド(何某)茂山千作、 アド(太郎冠者)茂山千三郎、 立衆 茂山千五郎、茂山宗彦、茂山茂、茂山逸平、茂山童司、丸石やすし、 アド(太郎の妻)茂山あきら


鍋八撥はまえに万作一門で観て面白かった演目。
八撥とは鞨鼓の事。新しい市を立てるときには為政者も物売りが来てくれるかどうか心配。よって、一番乗りの売り手にはご褒美がある。その一番乗りにやってきたのが八撥売り。肩衣はタンポポ模様かな。油断して居眠り。次に鍋売りがやってくる。肩衣は雪持笹のように見えたが…。

双方が売り物を自慢したり、賄賂を使おうとしたり、果ては棒と鍋とでやりあおうとしたり。
この曲の眼目の一つに八撥売りの身体能力を見せるところがあるのだけれど、さすがに切れ味よろしい。1981年生まれ。もっと若くても演技に不安があるし、もう少し年取ると、身体能力は落ちるでしょうし。

そして何だかよくわからない理由のまま舞に入り、八撥売りは側転大車輪で幕入。それを真似しようとした鍋売りは…。
大藏家の発音ってなんだかわかりにくい人が多いけれど、吉次郎も若干。でも、良い味を出していました。
教義、初めて意識してみましたが、はつらつとしていました。吉次郎のちんまりした感じと好対照で面白い舞台でした。
あ、今回ちゃんと鍋は割れました。
後見が紙の塵取りと羽箒でお掃除。


完全能仕立ての。これも一度万作家の会で見た事が。
まず、旅の僧の万作登場。声のかすれと発声が凄く苦しそう。大丈夫かな、と思っているとなんと卒塔婆の陰で休んでしまう。
そこに怪しい男登場。この前シテの足遣いが面白い。
怪しい男は成仏できないと言って去って行きます。

いよいよ蛸の霊登場。頭に蛸を被っているのですが、これがおかしくって見所からはクスクス笑。賢徳とうそふきを合わせたような専用面だそうですが、何となく萬斎に似た面(失礼)。
狂言にしては珍しくここら辺から完全に字幕が出ます。

カケリのところで「蛸のつらかった思い出を音楽的舞踊的に表現したもの」との解説が大真面目に出てきて、私一人でウケていました。
もう少し派手に墨を吐いても良かったかな。白いものよりも、角度によっては見えにくいので。


千切木は萬斎、東次郎のシテで観ています。今回は大好きな七五三のシテ。
千作が連歌の会をしようとするのですが、何かと文句ばかり言う太郎は呼びたくない。千作はなかなか風格のある演技なのですが、脚がつらそう。流儀になくても蔓桶に座ったらいいじゃない、と思うのは私だけなんでしょうね。

一門の皆が連歌の講中として頑張ります。呼ばれなかった太郎、こういう人って嗅覚鋭く、会があることを嗅ぎ付けるんですよね。やってきて色々文句を言ってついに我慢しきれなくなった皆にコテンパンにやられます。

で、妻に促されて仕返しを。それも妻に向かって「お前名代で行け」という腰抜け。
途中脇正面に置いた棒がころころ転がって落ちるかと思いましたが、そこはベテランの二人、大丈夫でした。あれ、落ちたらお客が拾って後見に渡すんだろうか?

全員に居留守を使われてホッとした太郎。そしてなぜか妻も夫に惚れ直した風で、めでたしめでたしだったのでした。

上に掲げてあるのは河鍋暁斎の「蛸」。


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by soymedica | 2018-02-12 16:23 | 能楽 | Comments(0)

Noh Climax

d0226702_11352546.jpgNoh Climax
2018年1月27日(土)13時より@セルリアンタワー能楽堂

1「序」  
父尉 翁:居囃子
お話 杉本博司
2「暗」松林図屏風
平太「屋島」谷本健吾、 痩男「善知鳥」坂口貴信、 真蛇「舞働・祈」大島輝久
3「明」松図屏風
   「羽衣」鵜澤光、 猩々「猩々乱」大島衣恵
笛 竹市学、 小鼓 吉阪一郎、 大鼓 亀井広忠、 太鼓 大川典良

「暗」の屏風:松林図屏風(六曲一双) 杉本博司 2017年
「明」の屏風:松図屏風(六曲一双)進藤尚郁 1735(享保20年)


舞台の上に切戸口を隠すようにやや斜めに屏風が置かれています。
見所がかなり暗くなると、屏風の後ろで翁の居囃子が。これは誰だったのか。
そしてその後揚幕から杉本登場。

まず、屏風の説明から。白黒の松の写真なのだが、長谷川等伯の松林図屏風に想を得て作られたもので、松は皇居前の松。
この屏風の前で屋島を演じたそうで、最初はスイス、次は2001年のツインタワーの崩壊直後のNYで行ったそうです。
その後この屏風の前で能のハイライトだけをフェスティバル・ドートンヌでやろうとしているのだがそれが延び延びになっているので、では日本で、というのが今回のNoh climaxのきっかけだとのこと。

そして舞台中央に置かれた箱からまず父尉を出して見せます。鎌倉時代のものだそうで、比較的大きさは小さい。
次に萬媚。これは予定では羽衣の面とするはずだったけれど、こんな色っぽい面はまずいということで変更したそうで、プログラムは萬媚のままになっていました。かなり大ぶりな面です。下間少進作(作らせた、という意味らしい)。
最後に喝食の面。
説明が終わると、屏風の裏から囃子方が出てきて、常の地謡座あたりに準備。


まず屋島。常の舞囃子とはちょっと違うようだけれど綺麗な舞。装束は新品のように見えるが…。最後は弓を拾って幕に駆け込む。

間をおかずに目付柱付近に笠が置かれる。今度は屏風の後ろから登場した善知鳥の猟師。なんかこれはおどろおどろしくて怖かった。最後は杖をはったと落として再び屏風裏へ。

と思う間もなく揚幕から白頭、真蛇の面の演者が。これが外人には一番受けそうだけれど、怖さと言う点ではさっきの方が上。道成寺風でもあるし、六条の御息所風でもあるし、という感じ。

ここで休憩。
皆さんシャンパンを楽しまれたみたいだけれど、私はちょっと我慢。お客さんは比較的若くて能のファンというより杉浦のファンではないだろうか。

後半は普通にお調べあり。屏風は金地に松の絵に替わっている。
その屏風の前に対角線一杯を使う感じで囃子方が座っている。地謡は屏風の後ろ。二人くらいかな。

羽衣の天女。面は前述のように萬媚のはずだったというが、何に変更したか特に解説は無し。きっちり舞を決めた天女は橋掛かりで袖を被いて後ずさりして帰る。

次いで猩々。実は大島衣恵を見るのは初めてなんだけれど、想像していたよりダイナミックなイメージの舞だった。
瓶があると外人向けなんだがな。

休憩の20分を入れて90分。
媚びない能楽入門、伝統芸能入門、あるいは新しい舞台の在り方、として面白かった。楽しめました。





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by soymedica | 2018-02-04 14:00 | 能楽 | Comments(0)