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銕仙会定期公演九月 柏崎 鱸包丁 枕慈童

d0226702_13291759.png銕仙会定期公演九月
2018年9月14日(金)18時より@宝生能楽堂

柏崎
シテ(前・花若ノ母、後・狂女)観世清和、子方 花若 谷本康介、ワキ 小太郎 森常好、ワキツレ 善光寺住僧 館田善博
笛 一噌庸二、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠
後見 野村四郎、谷本健吾
地謡 観世銕之丞ほか

鱸包丁
シテ(伯父)山本東次郎、アド(甥)山本則孝

枕慈童 盤渉
シテ 慈童 柴田実、 ワキ 勅使 村瀬提、 ワキツレ 従者 福王和幸、矢野昌平
笛 寺井宏明、小鼓 曾和正博、大鼓 亀井実、太鼓 小寺真佐人
後見 浅井文義、泉雅一郎
地謡 浅見慈一ほか


柏崎は前にも銕仙会で観ていますが、今回は家元観世清和が出張ってきての公演。
まず、しずしずと母登場。現代劇だったら「幕が上がるとワキ座に葛桶にかけて物思いにしずんだ母が」というところですが、幕が無いので。こういうときには鏡の間は明るいままなのですね。

柏崎殿は訴訟のため鎌倉に息子と滞在する間に亡くなり、息子は出家してしまった、と家臣小太郎が告げに来る。森常好、痩せたし色が抜けた感じ。ダイエットの成果なのなら良いですが。
守袋を首から下げているのが清経と同じで、ああ、何か良くないことが起こったのだなと思わせる装束(そういうつもりではないのでしょうけれど)。

小太郎が奥方に事の次第を語るこの場面、ワキ方結構難しいのではないでしょうか。観世清和、森常好、良い組み合わせです。前場では小太郎が笠を取り落とすところが素敵でした。
そして奥方はなげきつつ退場。

それにしても、観世清和がシテをすると鏡の間が賑やかですな。誰が何を言っているのでしょうか。

後場は花若と善光寺の僧がやってくるところから始まります。
ついで笹を持った狂女登場。装束に具体的模様が無い、オレンジ系の縞の着物にグレー系の無地の水衣が映えるとてもしゃれた組み合わせ。
観世清和、女性を演ずるときにちょっと足が踏ん張り気味になるのが気になっていたのですが、今回はそういう事も無く素敵。
珍しく絶句して後見の野村四郎が素早くつけていましたが。

女人禁制のお堂に入り込んだのをとがめられて、笹を叩き付けて怒る狂女。
正中で夫の形見の烏帽子・直垂を着て舞うのですが、こういうときの貢献はやっぱり四郎ですよね。何だか早変わりを見ているよう。
舞はさすがに家元。
解説によるとここの謡は難しいのだそうですが、全くそういう感じをさせずにすらすら進みます。

と、そこに居る子供が自分の子であることに気付く狂女。
子供を抱きかかえるしぐさが能には珍しくリアル。
考えてみるとほかの母子離別ものでは「あれは自分の母だ」と、子方が気づく瞬間のせりふがあるのですが、これには無かった。
へえ、と思ったのですが、帰宅して調べると、下掛にはあるのだそうですね。

最後「嬉しかりけれ」と母が一の松で留めて終わります。

ちなみに柏崎の屋敷があったと言われる柏崎市の香積寺から善光寺まではgooglによると徒歩で20時間から30時間、車だと2時間前後だそうです。

面は観世宗家蔵の 深井 花(本面)近江作。
参考は、清田弘 能の表現 草思社


休憩の後は鱸包丁。あらすじは成書に譲るとして、ほとんどが東次郎の仕方話。オチは「ホウジョウ」の意味を予習しないとわからないけれど、東次郎の上手さがしみじみ面白い話。
また東次郎の茫々頭を見たいなぁ。


ここで帰る人多数。もともと満席でなかったのに、7割以下しか埋まっていないような…。


観世流には枕慈童と菊慈童の両方があり、他流の枕慈童は観世流における菊慈童。観世流の枕慈童は漢の時代の話で周の時代に山に流された慈童が出てくるという話。観世流の菊慈童と他流の枕慈童は時代が魏の文帝の時代なんだそうな。何だかややこしく、細部もちょとだけ違うようですが、まあ季節も秋に設定してあるし大筋似たようなものでした。

大小前に縁の模様が面白い(見ようによっては中国的な)一畳台が出され、そこに大宮が載せられます。一瞬見えたシテ方の足がとても小さく見えました。
皇帝の勅使がやってきます。ワキツレが福王和幸、ワキが村瀬提。村瀬はちょっと見ない間に物凄く立派になりました。
すぐに引き回しがおろされ、勅使が童子を発見する体。童子のわきには真っ赤な箱枕がおかれて、周りは菊の花で囲まれています。

皇帝の枕をまたいで流されて、有難い文字を菊の葉に書いてみずに流すと酒になり、という細部がちょっと菊慈童とは違うけれど、まあ、そんな事を語った後で舞に。
最後に常座に出された壺に童子は薬の水を汲み入れ、勅使に捧げます。

勅使一行は退場し、延命の水を称えてめでたしめでたし。

地謡が素敵でした。

面は洞白作の童子。




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by soymedica | 2018-09-18 08:20 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂夏スペシャル 素の魅力 

d0226702_12421702.jpg国立能楽堂夏スペシャル
国立能楽堂開場三十五周年記念 素の魅力
2018年8月30日(木)18時30分より

舞囃子・新作
智恵子抄
智恵子 鵜澤久、光太郎 櫻間金記
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純
地謡 観世銕之丞ほか6人

狂言小唄 花の袖 和泉流
野村又三郎

独吟 泰山府君 金剛流
野村又三郎

仕舞 小歌 宝生流
シテ 宝生和英
地謡 武田孝史ほか4人

一調 放下僧
謡 岡久広、小鼓 曽和正博

袴狂言 釣り狐 前
シテ 野村万作、 アド 野村萬斎


最近舞囃子って観ていませんが、揚幕から登場でしたかね。しかも二人。1人が智恵子、1人が光太郎。実は智恵子抄も高村光太郎もきちんと読んだことないので、「なんだか現実離れした芸術家の恋愛の話」としか思っていませんでしたが、こうして能仕立てにすると面白い。
これ、シテが男性で成立するのかな?とも思いますが。
舞囃子部分を見ただけの感想では非常に良くできています。ここから、新しい能楽を展開させることができたかもしれないエポックメーキングな作品だったのでは。武智鉄二って凄い人だったんだなあ。

次いで野村又三郎の謡。これは解説によると泰山府君の一部を小舞に見立てたものだそうで、花盗人、隠狸、二人袴などで使われるとか。確かに泰山府君は観たことないのに、この謡は何回か聞いたことがあります。又三郎さん、口ひげを生やしてなかなかカッコいい。

放下僧の仕舞と一調、こうやって並べてみると面白い。そして、和英はなんだかちょっとかっこよくなってきた。

そして釣狐。調べたら2014年に「万作を観る会」で芸歴80年記念でやはり袴狂言でやっている。前回は手足に狐の装束をつけていましたが、今回は本当に頭巾だけ。
息が上がってしまうのと、声の制御が一部効かなくなっているのが気になるけれど、運動能力は凄い。

萬や万作の舞台となると滑稽なことをやっているのに客席が畏まっている感が強いのだけれど、今回は白蔵主が未練たっぷりに罠のネズミのところに戻るたびに客席から笑い声が上がって良かった。
ただやはり、4年前と比べると衰えたな、と。芸と体力のバランスが取れなくなってきている。(でも、萬斎くん、そんな全身で心配そうにしたらダメだよ。)

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by soymedica | 2018-09-04 08:29 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂 夏スペシャル 働く貴方に贈る 瓜盗人 通盛

d0226702_11423075.jpg国立能楽堂八月公演 国立能楽堂夏スペシャル 働く貴方に贈る
2018年8月2日(木)19時より

対談 石田ひかり 大倉源次郎

瓜盗人 和泉流
シテ(男)高澤祐介、アド(畑主)前田晃一
笛 一噌幸弘、小鼓 曾和鼓堂、大鼓 大倉慶之助、太鼓 大川典良

通盛 金春流
シテ 高橋忍、ツレ 井上貴覚、ワキ 則久英志、ワキツレ 館田善博、アイ 三宅近成
笛 一噌幸弘、小鼓 曾和鼓堂、大鼓 大倉慶之助、太鼓 大川典良
後見 横山紳一、山中一馬
地謡 辻井八郎


まずは石田ひかりと大倉源次郎の美男美女対談から。石田ひかり、もう40代後半だとは知らなかった。お話は大倉源次郎の方がうまいな。引き出しも多いし。石田ひかりはTV番組のまんま、訥弁。

瓜盗人、観るのは二度目の演目。萬家の方が万作家より演出が地味なのに、囃子方の人数は多い(万作家は笛のみ)。瓜にしろ桜にしろ、盗んだものをご進物にして引っ込みがつかなくなって…と言うところがのどか。昔の夜の瓜畑は満月でなかったら暗いでしょうね。
高澤祐介の演技、楽しめました。


通盛は平家の武将通盛と小宰相の局の悲しい話。武骨な通盛が一生懸命歌を贈った小宰相の局。統子内親王の取り持ちで中の良い夫婦になった二人。小宰相の局は戦場にまで同行しますが、結局一の谷の合戦で通盛は戦死。小宰相の局はその後を追って海に身を投げたという話。

まず、夏場の修行をしている僧の一行のところに舳先に赤いかがり火をつけた船がやってきます。舳先は目付柱の方に向けておかれます。次いで尉と女がやってきます。これ、薄暗い能楽堂でLEDのかがり火でやったら面白いだろうな。
二人はここは小宰相の局が身を投げた海だと僧の一行に教えます。
船の中でかなり頻繁に向きを変えたりするものですね。前回梅若玄祥&紀彰で見た時にはどうだったか。
身投げをした女は後見座へ。尉は中入り。

ここでアイが出てきて、通盛と小宰相の局のなれそめを語ります。この語りによって悲恋の物語が盛り上がりますね。良い語りだったとは思うのですが、私には残念ながらピンと来なかった。

さて後場。ワキの読経が響き渡ります。目立ちすぎず、かつピリッとした則久が凄い。
なぜ前場の通盛が尉なのかわかりませんが、後場は凛々しい。ツレは後見座から大小前、さらにワキ座へ。
うっとりとわが君を見ているのでしょうか。

通盛は床几にかけたりもしますが、勇ましいカケリも素晴らしい。
ちょっと残念だったのは地謡。誰か二人くらい下手。
余韻を残してシテ退場。その後を小宰相の局。
面白かったのは小宰相の局が立ち上がったそのあとにわき方がもぞもぞ横にずれて、それから立ち上がって帰ること。
今座っているところから帰ってはダメなのかな。

面は前シテが三光尉、ツレが小面、のちシテは中将。

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by soymedica | 2018-08-12 11:42 | 能楽 | Comments(0)

体感する能 七人猩々

d0226702_15553556.jpg和の会主催宝生流能楽公演 体感する能

謎解き!体感ナビ 狂言
金子直樹、谷口賢志、甲斐田裕子
構成/脚本 内田裕士

狂言 蚊相撲
シテ 山本泰太郎、 アド 若松隆、山本則孝

謎解き!体感ナビ 能楽

能 七人猩々
シテ 宝生和英、ツレ 高橋憲正、東川尚史、佐野玄宜、當山淳司、金森良充、川瀬隆士、 ワキ 野口能弘
笛 栗林祐輔、小鼓 飯富孔明、大鼓 佃良太郎、太鼓 小寺真佐人
後見 藪克徳、今井基
地謡 武田孝史ほか


プログラムには第十四回と書いてあるが、第十回ファイナルとも言っているし、「体感する能」が第十回なのか?和の会として十四回目なのか…。
前回このシリーズを見た時にはこんな構成だったろうか?狂言と能の前にそれぞれ解説が入る。そして、ロビーでは装束や面の体験コーナーが。
能の時にはwearable deviceというらしい字幕や解説が写るメガネが貸し出されて、SF映画から抜け出たようなお客さんもちらほら。

解説では谷口賢志の一人芝居があったり、プロジェクター使ったりと意欲的だったけれど、見所のお客さんって意外に「能を見るのは初めて」タイプは少なかった。学校公演なんかでは喜ばれそうな構成なのだけれど、高校とか美大とかに売り込んではどうかな。


解説によると蚊相撲の蚊の嘴は細長い棒でしたが、何となく紙をストロー状に丸めたものかと思っていました(家による違いもあるのかもしれない)。
蚊の精を雇い入れてしまった主人と太郎冠者。相手が蚊の精だと気づいても相撲に勝ちたい!というところがすごい。
蚊は風に弱いということで、一生懸命あおいでついに嘴を抜くのだけれど、あおぐのは普通の扇でした。和泉流だったか、巨大な団扇を持ち出す家もあったり、相手が蚊の精だと気づくまでにどのくらいかかるかとか、細部の変化が色々ある曲ですね。


七人猩々
囃子方も地謡も裃姿。
正先に壺、後ろに一畳台。出てきた高風はセリフを言うだけで、ひしゃくで酒を汲むシーンが無くて残念。
どうもロビーでの説明を小耳にはさんだ限りでは猩々面には雌雄があるらしいのだけれど、鑑別できず。
二番目に出てきたのがシテ。扇を開いて構えたり、ほかとちょっと違う。

いくら酒を飲んでも「面色変わることなし」ってそうでしょう。もともと赤いもの。
7人が華やかに舞を披露しました。でも7人もいるとかえって躍動感が欠けて、ちょっと不完全燃焼でした。

そして解説でも言っていたように祝言能なので、そんなに説明がいるだろうか?帰るとき後ろの人がハイテク眼鏡について「これ、ちょっと煩い感じだったわね」と言っていたのもむべなるかな。


物品で色々買ったり、楽しかったけれど今回最後。若い家元にはまた新機軸を考えてほしいな。

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by soymedica | 2018-08-04 20:00 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演七月 花筐 鏡男 木曽

d0226702_17101796.jpg国立能楽堂定例公演七月
2018年7月18日(水)18時30分より

仕舞 花筐 クルイ 観世流
梅若紀彰

鏡男 大蔵流
シテ(男)大蔵彌太郎、アド(妻)大蔵基誠

木曽 願書
シテ(覚明)観世銕之丞、ツレ(木曽義仲)観世淳夫、(池田次郎)柴田稔、(木曽郎党)北波貴裕、長山桂三、谷本健吾、安藤貴康、青木健一
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 山本哲也
後見 清水寛二、西村高夫
地謡 梅若紀彰ほか


写真は開演前の能楽堂の中庭。6時半だとまだ明るい。

梅若紀彰の仕舞。やっぱりこの人ハンサムで上手、と思いながら見ていたんですが、バックの謡が今一つな感じで残念。

鏡男は、訴訟ことごとく収まり、田舎に待つ妻に都のお土産として鏡を買って帰ったら、妻が鏡の中の女に嫉妬し、というお話。能の松山鏡の狂言バージョン。
西洋では鏡を見る女は化粧するビーナスなんだが、日本ではわわしい女…ふふふ。
最初に囃子が出たな、と思ったら夫がお土産にする鏡の謂れを行っている間にさっさと帰ってしまうのであまりの出番の短さにびっくり。
全体に曲としてはちょっと冗長かな。

安宅、正尊と来てこれで三大読み物制覇となりました、木曽
あらすじは何という事の無い、木曽義仲が礪波山にこもる平家軍攻撃の前夜、部下の覚明に戦勝祈願の願書を書かせ、覚明がそれを読み上げ舞を舞う、というものです。

地謡にとっても髪の毛の沢山ある人がいてびっくり。山中迓晶さんでした。
義仲の一行入場、まず木曽義仲、次に覚明、そして郎党たち。覚明に扮した銕之丞は頭巾で別人のよう。
木曽義仲は観世淳夫。出だしちょっと不調でびっくり。義仲に状況を報告する柴田の上手さが光ります。

山中に八幡神社を見つけた一行は喜び、覚明が戦勝祈願の願書を書き、読み上げます。
懐から紙を出して書くのではなく、後見座に行ってもらってくるのがちょっと不思議。常座で朗々と読み上げる、ここが第一の聞かせどころ。

そして次いで宴会となります。そこで覚明が舞うのも第二の見せ所。
長袴で良くあんなことできるなー、と思ったらやはりそこが見せ場らしいです。
安宅を見慣れていると数珠を持っていないのが不思議ですが。
解説を読むと覚明とは軍付きの坊さんでは無くて書記だそうですから、数珠は持ちませんね。

短い曲ですが、面白かった。いろんな役者で観てみたい曲です。




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by soymedica | 2018-07-29 22:15 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演7月 杜若 二人大名 熊坂

d0226702_16014110.jpg銕仙会定期公演7月
2018年7月13日(金)18時より@宝生能楽堂

杜若 素囃子
シテ 浅井文義、ワキ 福王和幸
笛 一噌隆之、小鼓 曽和正博、大鼓 佃良勝、太鼓 小寺真佐人
後見 清水寛二、浅見慈一
地謡 浅見真州ほか

二人大名
シテ(大名・甲)山本泰太郎、アド(大名・乙)山本則秀、(通りの者)山本則孝

熊坂
シテ 観世淳夫、ワキ 宝生欣哉、アイ 山本凛太郎
笛 内潟慶三、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 金春國直
後見 観世銕之丞 永島忠侈
地謡 西村高夫ほか


ちょっと季節外れの杜若。小書きの「素囃子」とは、パンフレットによると:序の舞がイロエに代わるほか、「恋之舞」と同様にシテが真の太刀を佩き、初冠に梅や杜若の心葉を挿して日陰之糸をたらすなど、いでたちも変化する。ということなのですが、後半も比較的長いので、そして狂言もあるので、舞を短くしました、と言う感じ。
浅井文義は地味だけれど好きな役者です。

旅の僧がなぜか長袴でやってくる。
昔、福王和幸が杜若の旅の僧で出てきたら似合わないだろうな、と思っていたけれど、実際に見てみるとこの人の華やかな外見が割とマッチ。きっと咲いている杜若は光琳の杜若のような豪華なものなんだろうな、と思わせる。

そこに不思議な女がやってきて、ここがあの業平が杜若の歌を詠んだところだと教えます。
そして一夜の宿を申し出ます。

なんかやっぱりこの浅井文義、地味だなあと思っていたのが後場で裏切られました。
ビブラートがかかったようなちょっと特徴のある華やかな謡で、男装の麗人がキラキラと動くさまがとてもきれい。
橋がかりまで大きく使って、色々な女性とちぎったこと、それは歌舞の菩薩である自分の救済の方法であったことを告げます。日本のドン・ファンにはそういう謂れがあるんですよ。

最後の「色ばかりこそ昔なりけれ」のところで、ふっと何かをのぞき込むようなしぐさをしたと思ったのは気のせいだったのでしょうか。そして、「杜若花あやめ、梢に鳴くは」のところで最初に上を見上げ、次に下を向くのが不思議でした。こういうところ、お稽古している人に聞いてみたいな。

後半、立ち姿の時つま先が開くのがちょっと気になりました。

面は孫一(伝 竜右衛門作)


ここで失礼しようかと思ったのですけれど、狂言の二人大名、観たことない演目だったのでこれ見てから帰ろうと。

二人の大名がやってくる。泰太郎の長裃の柄が雪輪。季節じゃなくても良いのかな。
通りがかった則孝に無理やり太刀持ちをさせたら、逆に脅されて芸をさせられた挙句に太刀もひとこし(短い方の刀)も取られる羽目に、という話。
二人の大名がさせられる芸が面白い。
鶏の喧嘩のまねとか、犬の噛み合う真似(犬はビョウビョウと鳴くのは本当だ!)。起き上がり小法師のまねなんて本当に大変そうだけれど面白い。

これ、夏休みに子供に見てやらせる教室の題材にしたら面白いだろうな。


熊坂は失礼して帰りました。

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by soymedica | 2018-07-22 17:13 | 能楽 | Comments(0)

セルリアンタワー能楽堂定期能七月 喜多流 忠度

d0226702_22212387.jpgセルリアンタワー能楽堂定期能七月 喜多流 忠度
2018年7月7日(土)14時より

おはなし 馬場あき子

忠度
シテ 友枝昭世、 ワキ 森常好、 ワキツレ 大日方寛、吉田祐一、 アイ 奥津健太郎
笛 一噌隆之、小鼓 曾和正博、大鼓 大倉慶之助
後見 中村邦生、友枝雄人
地謡 香川靖嗣ほか


馬場あき子先生、絶好調。まずは「皆さん、『青葉の笛』という唱歌をご存知ですか?」先生は小学校4年くらいの時に習ったそうで、一番が敦盛、二番が忠度をうたったもので、日中戦争が盛んになるにつれて歌われなくなったそうです。なぜなら、芸術の天才が戦争のために消えて行くのを惜しんだ歌だから。戦争が盛んになると命(芸術)をなげうつ風潮を良しとするようになってきたから、と。

武士にとってなぜ和歌が重要であったかと言うと、下賤の者であった武士が貴族と言葉を交わす唯一の方法であったから、とか
須磨の若木の桜と言えば当時の人は「光源氏が手植えした」とすぐにピンと来た、などの色々有益な情報が満載のお話。

そして、忠度を討ったのは「岡部六弥太」ですが、その功績で今の岡部(埼玉県)一帯に広大な領地を得た。そして六弥太は一等地に自分の墓よりも大きな忠度の墓をたて、忠度桜、忠度橋も作った、それは現在も観ることができるということです。岡部清心寺に忠度は弔われているそうです。


しかし、最近セルリアンタワーではツキの無い私。今回は何が起こるかと思ったら、目の前に凄く大きな男性が。隣の普通サイズの男性より座ると頭一つ大きい(幅もある)。ので、かなり視界が遮られて始まった忠度。
出だしからちょっと不安を感じさせる笛。一噌隆之、いちど絶不調の時に当たり、その時以来偏見が消えない私。(今回一声の後はふつうでした)。

ワキとワキツレ登場。ワキツレその2のほうがその1よりもたぶん年配。宝生流は殿田謙吉の休業で色々人手のやりくりが大変なのか。
森常好も酒量に注意して頑張ってほしい。
それはともかく出家した俊成の関係者がやってくる。これが須磨の若木の桜か!と。

向こうからやってきた卑しいお爺さん。「『そもそもこの須磨の浦ともうすは淋しき故にもその名を得る』なんて、その辺のお爺さんは言いませんよね」(馬場あき子談)。
「これなる桜」と昭世爺さんが言うと、本当に舞台上に桜があるよう(前のおじさん、邪魔!)。海人が持って出た榊を置いた瞬間も見ることができなかった…。

地謡がきれいなのは喜多流の常の事ですが、その地謡が「山の桜も散るものを」と謡うのをバックに昭世爺様をみていると、本当にそこに桜の枝があるように感じられます。ちなみに桜には香りは無いと思うのですが、今舞台を思い出しても何となく良い香りがするような。
そしてお爺さんはどこかに行ってしまうのでした。

不思議に思った僧たちが地元の人に尋ねると、それは忠度の霊ではないかと。この地元の人、そつがないけれど何となく印象が薄い。アイはその方が良いのでしょうね。

僧たちがうとうとしていると、風が吹いてきたのでしょうか、それとともに武将が姿を現します。矢には短冊が。
俊成に自分の歌を託して戦いに出ていく忠度。

場面は合戦に移ります。
船に乗ろうとする忠度。ここのところ、大鼓の掛け声が大きすぎてシテ謡が聞きづらい。大鼓ものっているのでしょうが、そこはちょっと抑えてほしいな。

忠度は結局岡部の六弥太に討たれてしまうのですが、ここからなぜかシテは六弥太になりかわり、有名な「行きくれて」の歌の短冊を発見します。田舎侍とは言え、六弥太は字が読めたのですね。

もっと見ていたいなあと思いましたが、忠度は「わが後弔ひてたび給へ」と消えて行くのでした。





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by soymedica | 2018-07-16 09:55 | 能楽 | Comments(0)

狂言劇場 特別版 三番叟、鷹姫

d0226702_16385394.jpg狂言劇場 特別版
2018年7月1日14時より@世田谷パブリックシアター

舞囃子 三番叟
野村裕基
笛 武市学、小鼓頭取 鵜澤洋太郎、脇鼓 古賀裕己、清水和音、大鼓 亀井広忠

鷹姫
老人 大槻文蔵、鷹姫 片山九郎右衛門、空賦麟 野村萬斎、
地謡 観世喜正、鈴木啓吾、坂慎太郎、大槻裕一、深田博治、高野和憲、中村修一、内藤連、飯田豪、野村太一郎
笛 武市学、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 大川典良


まずは裕基君の三番叟から。披きの時より動きがきっぱりした感じ。まだまだ基本に忠実で余裕が感じられないのが若者らしい。
古典芸能を長くみている方はこうやって役者が成長していくのを見守る楽しみもあるのでしょうね。


今回の鷹姫は前回(https://nohkyogen.exblog.jp/23868922/)観たのとだいぶ違って能仕立て(前回はアイルランド外交樹立60周年でアヌーナとの共演でした)。とはいえ、いわゆる「新作能」とは違いましたが。

地謡が岩の役も兼ねていて、鷹姫の周りに座っているのですが、マスクのために誰が誰やら良くわからない。深田と高野は声でわかったけれど、あとは。
後ろの席のおばさまによると、「転がった(岩なので)のは皆狂言方ね」だそうです。

能仕立てとはいっても、照明を使ったり水を白い布で表したり。
空賦麟の衣装も何だか面を掛けていれば蘭陵王か?という感じでした。なかなか良いデザイン。
綺麗で考えさせられる内容ではあったのですが、「能」なら完全に暗黙の了解の進行と言うものがあるし、「現代劇」ならもっと科白と動きが違うし、観ていて疲れました。

二回続けて観てみればより理解が深まったかも知れない。

ということで、萬斎さん、またやってね。



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by soymedica | 2018-07-08 16:53 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演六月 神鳴 遊行柳

d0226702_10292540.jpg国立能楽堂定例公演六月 
2018年6月15日(金)18時30分から

神鳴 大蔵流
シテ(神鳴)大蔵基誠、アド(医師)大藏吉次郎
笛 小野寺竜一、小鼓 岡本はる奈、大鼓 原岡一之
地謡 大蔵教義ほか

遊行柳 青柳之舞 観世流
シテ 坂井音重、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、野口能弘、アイ 大蔵彌太郎
笛 一噌庸二、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 小寺佐七
後見 観世恭秀、武田尚浩、坂井音雅
地謡 観世銕之丞


神鳴は和泉流の萬斎&石田コンビで観たのが初回でこれは二度目。針をうつところの所作が若干違いますが、筋立ては同じ。藪医者が京都の競争に敗れて東くだり。武蔵野で落ちてきた雷に針治療を。お礼に良い天候を約束してもらうというもの。
健康保険の無い時代ですから、お医者も客が裕福になって治療代が払えることが重要なのですね。面白かったけれど大蔵家の発声ってみんなやや聞きにくい。


ちょっと前から国立のホームページに「殿田謙吉病気療養のため宝生欣哉に」と告知があったのですが、どうなさったのでしょうか。
地味な演目ですが話題になることの多い遊行柳。大小前に塚の作りものが出されます。
遊行上人の一行がやってきます。全国を布教して歩いているにしては白い大口袴というきちんとした格好。
曲にあったしっとりした謡の僧たちですが、一人だけ何だかあっていない感じ。

広い道を行こうと思っていたら向こうからやってきた妙なお爺さんに「こっちの道が有名だからこっちを行くように」と。
このおじいさん、声良し、謡良しなんですが、音重さんてこんな感じだったかしら。最近息子さん達の大活躍であまり拝見していなかったからかも。

有名な朽木の柳を教えた老人はぱたんと杖を落として塚へ。音重さん、痩せたなー。

2ブロの髪型の土地の人登場。横から見ると視覚的になかなか面白い。土地の人は僧の一行に西行の柳の謂れを聞かせます。
その話を聞いて夜のお勤めをする僧たち。と、塚の中から柳の精の声が。かなり音程が高い。

塚から出てきた柳の精は金髪でモスグリーンの狩衣、茶色の大口と、とても現代的で美しい。
ただ、次にやる所作が見えるような力のため方がちょっと残念。これから袖を返すぞ、返すぞ、、、やっぱり返した、と言うような。序の舞まで行くと相当にお疲れの様子がはっきりと見所にもわかりました。小書きの青柳の舞は四季を表す序の舞の春の部分だけを舞うとかで、舞が短いのですが、それでよかったと思います。それでも120分の長丁場でした。

後シテの面、正面からみるとただの尉面ですが、斜め横やちょっと俯いた角度で見るととても素敵でした。
舞台上は僧の数珠の房と囃子方の調緒くらいしか色の無い地味な世界の遊行柳でした。

面は前シテが三光尉、後シテが石王尉。




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by soymedica | 2018-06-24 10:30 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂狂言の会 舟渡聟 清水 禰宜山伏

d0226702_15200321.jpeg国立能楽堂 狂言の会 家・世代を越えて
2018年5月25日(金)18時30分より

舟渡聟 和泉流
シテ(船頭)野村万作、アド(聟)高澤祐介、小アド(船頭の妻)野村又三郎

清水 和泉流
シテ(太郎冠者)野村萬、 アド(主)野村右矩

素囃 鞨鼓
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎

禰宜山伏 大蔵流
シテ(山伏)山本東次郎、 アド(禰宜)茂山千五郎、(茶屋)松本薫、(大黒天)山本則重
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎


同じ流派だけれど、でも違うお家同士の競演(共演?)。この中では大蔵流の山本家と茂山家が一番肌合いが違うような。
最初は万作の胸を又三郎家が借ります舟渡聟
客待ちをしている船頭のところに高澤祐介の婿が酒樽と鯛を持ってやってきます。今回の鯛はとっても薄い。
無理やり酒をねだる船頭と飲まれてしまう聟。隣のお二人は狂言が初めてらしく「これ、面白いな」と。大ウケでした。

さて、やってきた聟が酒をせびった客だと気づき、髭を落として変装したつもりになって対面する万作。髭を落としたのだから、口元を隠さない方が変装になると思うのですがね。
最後は酒宴になって小舞。「まりは枝にとまった」という小歌、何なのでしょうか。
記憶では面目ない、と舅が恥じ入って幕に入るものもあったかと思うのですが、謡でとめていました。
万作が素晴らしいのはいつもの事ですが、聟にしては見かけがちょっと老けている高澤が上手かった。


清水は萬の方が万作より元気そうだなー、と思いつつ爆睡。失礼いたしました。他の方のブログを拝見すると大変面白かったらしい。残念。
そして休憩の後は素囃から禰宜山伏へ。


禰宜で山伏なのでは無く、性格の悪い山伏と気弱な禰宜の話しの禰宜山伏。東次郎の「山伏です」のせりふを聞いて、ああそうそう、山本家は「です」って言うのよね、と。
そしてふと気づいた。茂山家のせりふって京都なまりでしょうか、アクセントが明らかに違います。
有難い大黒様を拝んでどちらに分があるか決着をつけるのですが、もちろん性格の悪くてがさつな山伏が負けます。
体力があって若い千五郎が山伏をやるのでなく、逆の配役になっているのが面白く、そして両者の上手さを際立たせていました。


満足した一日でした。


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by soymedica | 2018-06-03 10:52 | 能楽 | Comments(0)