カテゴリ:能楽( 406 )

国立能楽堂狂言の会 舟渡聟 清水 禰宜山伏

d0226702_15200321.jpeg国立能楽堂 狂言の会 家・世代を越えて
2018年5月25日(金)18時30分より

舟渡聟 和泉流
シテ(船頭)野村万作、アド(聟)高澤祐介、小アド(船頭の妻)野村又三郎

清水 和泉流
シテ(太郎冠者)野村萬、 アド(主)野村右矩

素囃 鞨鼓
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎

禰宜山伏 大蔵流
シテ(山伏)山本東次郎、 アド(禰宜)茂山千五郎、(茶屋)松本薫、(大黒天)山本則重
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 佃良太郎


同じ流派だけれど、でも違うお家同士の競演(共演?)。この中では大蔵流の山本家と茂山家が一番肌合いが違うような。
最初は万作の胸を又三郎家が借ります舟渡聟
客待ちをしている船頭のところに高澤祐介の婿が酒樽と鯛を持ってやってきます。今回の鯛はとっても薄い。
無理やり酒をねだる船頭と飲まれてしまう聟。隣のお二人は狂言が初めてらしく「これ、面白いな」と。大ウケでした。

さて、やってきた聟が酒をせびった客だと気づき、髭を落として変装したつもりになって対面する万作。髭を落としたのだから、口元を隠さない方が変装になると思うのですがね。
最後は酒宴になって小舞。「まりは枝にとまった」という小歌、何なのでしょうか。
記憶では面目ない、と舅が恥じ入って幕に入るものもあったかと思うのですが、謡でとめていました。
万作が素晴らしいのはいつもの事ですが、聟にしては見かけがちょっと老けている高澤が上手かった。


清水は萬の方が万作より元気そうだなー、と思いつつ爆睡。失礼いたしました。他の方のブログを拝見すると大変面白かったらしい。残念。
そして休憩の後は素囃から禰宜山伏へ。


禰宜で山伏なのでは無く、性格の悪い山伏と気弱な禰宜の話しの禰宜山伏。東次郎の「山伏です」のせりふを聞いて、ああそうそう、山本家は「です」って言うのよね、と。
そしてふと気づいた。茂山家のせりふって京都なまりでしょうか、アクセントが明らかに違います。
有難い大黒様を拝んでどちらに分があるか決着をつけるのですが、もちろん性格の悪くてがさつな山伏が負けます。
体力があって若い千五郎が山伏をやるのでなく、逆の配役になっているのが面白く、そして両者の上手さを際立たせていました。


満足した一日でした。


[PR]
by soymedica | 2018-06-03 10:52 | 能楽 | Comments(0)

第三十六回テアトル・ノウ東京公演 屋島

d0226702_14335325.jpg第三十六回テアトル・ノウ 屋島
2018年5月12日(土)14時より@宝生能楽堂

仕舞
花月 味方団
籠太鼓 観世喜正
野守 観世淳夫

舞囃子 
天鼓 片山九郎右衛門

屋島 弓流 素働しらはたらき 那須与市語
シテ 味方玄、ツレ 武田祥照、 ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 野口能弘、御厨誠吾 アイ 野村萬斎
笛 杉信太朗、小鼓 成田達志、大鼓 亀井広忠
地謡 片山九郎右衛門ほか
後見 味方團、清水寛二


楽しみいしていたテアトル・ノウ。今年は屋島。何回か観ているのですが、見どころが色々あって振り返ると印象が散漫になる曲。
今回は萬斎の那須与一語もつくとあって満席の満席。
囃子方は長裃。地謡も裃姿です。
ふっと気づくと前の席のおばさまはヒョウ柄ブラウス。関西からの味方家の追っかけか?!

夕方の屋島に僧の一行がやってきます。宝生欣哉、一時やけに肩に力の入った感じだったのが最近それが無い。瀬戸内の夕方が見えるようです。
囃子も絶好調。
僧の一行は塩屋の翁と漁師に一夜の宿を借ります。僧たちが都から来たと聞くとなぜか涙する二人。
ここでアイの萬斎が登場して橋掛かりにひっそりと座るのですが、やはりこの人目立ちますね。目立つことをしているわけではないんですけれど、周りのお客さんが皆そっちに一瞬視線を向けるのがわかる。自分の演技に自信の無いシテ方はこの人呼ばない方が良いんじゃないか。(味方玄は大丈夫。)

翁が屋島の合戦のありさまを眼に見えるように語ります。前半のヤマですね。シテとツレの語りのつなぎ方が見事。錣引きの話、佐藤継信の最後、囃子方も力いっぱいです。
ここで水衣の型をおろした翁、何事かを予感させるようなことを言って去って行きます。

ここで後見座に裕基くんが。お父さんの那須与一語の後見というよりはお勉強でしょうか。いつ披きかなぁ。
萬斎の那須与一。何回か観た万作のとはかなり質が違う。人の演じ分けは万作よりはっきりしている。そして前回観た時(能のアイではなくてこれだけ独立した公演だった)より所作が自然で上手い。

さて、この間小鼓は床几を蔓桶に変えるのがお約束。
語り終わった本当の塩屋の主は橋掛かりから退場。
ついに義経の霊が出てくる。

一応、義経は床几にかけますが、すぐに立って弓流しへ。落とした弓を一の松から見るところが見せ場できれい。
横歩きするのは、馬が流される様子を模写しているのだそうです。
この合戦のありさまをもっと見ていたいな、と思っているうちに。終板へ。

この「今日の修羅の敵は誰そ、なに能登の守教経とや」との詞章がとても好きなのですが、味方玄、ここも素敵。
義経はそのまま幕に走り入ります。
常座でこちらを向いて留める欣哉が良かった。


来年は7月13日(土)宝生欣哉のワキで定家だそうです。


[PR]
by soymedica | 2018-05-28 21:31 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演五月 咲嘩 朝長

d0226702_15265039.jpeg銕仙会定期公演五月 
2018年5月11日(金)18時より@宝生能楽堂

咲嘩
シテ 野村萬、 アド(主)野村万之丞、 小アド(咲嘩)野村万蔵

朝長
シテ 浅見真州、 ツレ(侍女)浅見慈一、トモ(従者)長山桂三、 ワキ 宝生欣哉、 ワキツレ 大日方寛、御厨誠吾、 アイ 能村晶人
笛 竹市学、 小鼓 幸清次郎、 大鼓 國川純、 太鼓 三島元太郎
後見 浅井文義、谷本健吾
地謡 観世銕之丞ほか


浅見真州の朝長だというのに、空席の目立つ見所。しかもお客さんに若い人が少ない…。
咲嘩、どんな曲だろうと思っていたら、これは何回か観たことあるぞ。題名と内容と結びついていなかった。
野村萬、この年でまた一つ突き抜けて可笑しみが増しました。何だか見ているだけで楽しい。しかし、万之丞君のせりふが聞きにくいのは直してあげた方が良いと思います。


朝長。囃子方が入ってくると、小鼓の幸清次郎、年取ったなあと思う。そして今回大鼓の音が小さいような気がするのは気のせいでしょうか。
曲の内容を示すように、僧の一行はしみじみした謡。青墓へとやっとたどり着きます。

そこに侍女と従者を従えた何となく金持ちそうな女が。手には榊。長者の装束は渋い金地に草花が描かれているようで、豪華でかつ落ち着いている。何となくこの三人の声のハーモニーがお化けでも出て来そうな感じに聞こえる。そして地どりも小さな声で暗い…。

墓の前の僧を見つけた長者。僧はやっぱり「某」って名乗るんですよね。しかも詮索が厳しい時節柄、墓参りには朝長の死後10年たってやっと来られたと打ち明けます。
それを聞いた長者が朝長の最後を語ります。ここのところはさすが浅見真州、しみじみと上手ですが、地謡も負けず劣らず情感たっぷり。にしめます。

長者が中入りした後の能村のアイ語り、この人こんなに語れる人だったのか。

そして後シテ登場。出た瞬間思ったのは「これは若武者だ」という事。前シテの女性から見事に雰囲気を変えるのはさすが。ちょっとするとその神通力が消えて何となく年取った感じになってしまったのはお疲れなのでしょうか。

幼い頼朝は捕えられてどうなってしまうかわからない、父も兄も亡くなってしまい、弔ってくれる青墓の長者に感謝する朝長。
最後のクライマックス、馬に乗ったまま膝を矢で射貫かれる型のところまで、いつもちょっと長いと感じるのですが、そこをだれずに持っていくのはさすがのベテラン。でも最後の射られる型のところはもっと若々しくやってほしかったかな。

もっと何回も見て知りたい曲です。

[PR]
by soymedica | 2018-05-20 13:38 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂企画公演 花折 江口

d0226702_14570892.jpg国立能楽堂企画公演 西行生誕900年記念
2018年4月29日(日)13時より

解説 平田英夫

舞囃子 松山天狗 三段之楽 金剛流
シテ 金剛龍謹
笛 一噌隆之、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井広忠、太鼓 林雄一郎
地謡 宇高通成ほか

花折 和泉流
シテ(新発意)小笠原匡、アド(住持)野村萬
立衆 野村万禄、能村晶人、野村万之丞、河野佑紀、上杉啓太

江口 金剛流
シテ 金剛永謹、 ツレ 豊嶋晃嗣、宇高徳成、 ワキ 福王茂十郎、 ワキツレ 福王知登、矢野昌平、 アイ 野村万蔵
笛 一噌隆之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠
後見 宇高通成、廣田幸稔、工藤寛
地謡 豊嶋三千春ほか


まず、解説から。能楽堂での解説ということで、ちょっと戸惑っているように見えた平田先生ですが、すぐに流れるようなお話に。
能の中に出てくる西行と遊女の問答歌には二通りの解釈があると言う話で、一つは能の解釈と同様、宿を断った遊女(妙 たえ、として伝えられる)を西行が咎めると、遊女が返歌でやりこめたのだ、というもの。もう一つは遊女と西行は旧知であって、単なる挨拶の歌のやり取りであり、結局泊めた、という解釈。こちらは後世の「西行は立派な人だ」という見方に影響されているかも。
などなどのお話があって、
西行は自ら道化となることによって、聖と遊女の関係に新たな道を開いたのではないか、という示唆で終わりました。
うーん、20分で説明するには内容が膨大ですね。

平田先生は西行学会の前代表ということですが、「西行学会」という学会があるのですね。ホームページによると2009年創立というまだ若い学会です。


さて、その後、舞囃子の松山天狗。金剛龍謹って西洋人のようなハンサムだなー、と思いつつ寝てしまった。後で解説を読んだら珍しい曲らしいので、残念。


そして花折。西行桜のパロディーということで、「花見客が煩いから断れ」と言って出かけた住持。でも、お留守番の新発意は結局客に負けて入れてしまう上に、大宴会。ここの宴会芸が見どころ。昔の人は風流でしたね。今の人がカラオケボックスで練習するのと同様、宴会に備えてお家で練習したのでしょうね。
ところで「花折」なんだか最近親しい名前だな、と思ったら、最近良く買う鯖寿司屋さんの名前でした。


いよいよ江口。重い曲だからか、地謡前列もとってもベテラン。諸国一見の僧も何だか重々しい方です。福王パパ、好きなんですよね。
天王寺に行く途中、江口の里に着いた一行は江口の長の旧跡をみようと地元の人に聞いてみます。
地元の人の教えるのはちょっと高くなったところにある場所でしょうか。

僧が西行の「世の中を、厭うまでこそかたからめ、仮の宿りを惜しむ君かな」とふと言ってしまうと、どこからか女が一人。
永謹、大きい人だからか、面を掛けると小顔の美人に見えます。
前回も感じたのですが、コトバの間の取り方が観世流とちょっと違うのか、「絶句??」と思うくらい長い間があります。だれか付けたら!?と思うと何事も無かったように次が続くのがちょっと面白い。

歌をめぐる僧と女のやり取り、字にすると難しいのですが、舞台で聞くと何となくわかったような気になるから不思議。

女は、私は江口の君の幽霊よ、と言って消えて行きます。

万蔵が、「さっきの僧たちはまだいるかしらん」と立ってみると、まだ一行がそこにいるのに物凄く驚く。そんなに驚かなくても…。
どうもこの人観ていると、「太一郎追い出した人」というイメージがわいてきて(実際はどんないきさつかは知らない)、当分の間悪役イメージがかぶりそう。
アイ語りはさすが上手。

どうやら性空上人という有難い御坊様の夢のお告げで江口の長=普賢菩薩ということになったらしい。(実際はもっと複雑です、ハイ)。

僧の一行がもっと有難いお姿をみたいものだ、と待っていると、後見が一の松のところに屋形船をだします。
ツレ、江口の君、そして脱ぎ下げのツレがやってくる。最初のツレがとっても可愛い。(この順番でやってくるときには誰が「お幕」って言うんでしょうね。)

そして「この舟は江口の君の川遊びの舟よ」などと
ワキと問答して、舞台へ。
すぐに船の作り物片付けてしまうのが残念。三人乗ってこちらを向いている姿がとても素敵なのに。

シテは正中で床几にかけます。やっぱり長ともなると偉いんですね。
クリのところ、何だか詞章がとっても難しいんですが、地謡がとても綺麗。

そして序之舞へ。永謹、手そのものの形も仕草もとても綺麗。
笛がちょっと...。大した破たんはありませんでしたが。

そして遊女は菩薩となって空に帰って行くのでした。
あんなにきれいな女の人のなかに、叔父さんの金剛永謹が入っているなんて信じられないなー。
素晴らしい舞台でした。


面は
前シテが是閑の増、後シテが増阿弥の増、ツレが満照の万媚、満永の小面

[PR]
by soymedica | 2018-05-07 17:18 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演四月 武悪 籠太鼓

d0226702_17561160.jpg国立能楽堂四月定例公演
2018年4月20日(金)18時30分より

武悪 和泉流
シテ(武悪)石田幸雄、 アド(主)野村萬斎、小アド(太郎冠者)深田博治

籠太鼓 舞入 宝生流
シテ 田崎隆三、 ワキ 殿田謙吉、 アイ 高野和憲
笛 一噌幸弘、 小鼓 古賀裕己、 大鼓 大倉慶之助
後見 宝生和英、水上優、金森良充
地謡 小倉敏克


石田と深田の武悪、とっても期待して出かけたのに、途中から眠くなってしまった。たぶん舞台のせいでは無くて私の体調のせいだと思う。ごめんなさいね。でも、太郎冠者が小アドとは気づかなかった。太郎冠者が武悪を打つか打たないかの駆け引きのところが見せ場だと思うのだけれど。


籠太鼓は見るのは二度目ではなかったか。前回石田幸雄のアイがとても印象に残っている。今回の高野も良かった。
まず、大小前に大きな籠が出されてこれが牢屋。
松浦某と従者登場。自ら某と名乗るって変な気がする。松浦の謙吉、とか言えばいいのに。
ま、それはともかく松浦の何某は喧嘩っ早くて相手を殺してしまった関の清次という男を牢に入れている。名前からしてチンピラっぽいのだけれど、ちゃんと奥さんがいるらしい(そういうのに限って妻は美人と言うのは昔から)。

従者の高野は牢屋の番をまかされている。ちょっとへつらう感じで清次に話しかけている(実際は牢はもぬけの殻)のが面白い。牢屋がもぬけの殻なのに高野びっくり。
とりあえず行方を知っていそうな妻を呼び出す。

説明が難しいのだけれど、妻の着ている装束が素晴らしい。地味な色合いだが豪華。しかし、シテは御年なのか、ハコビがちょっと心もとないのと、立ったり座ったりいかにもつらそうなのが気になります。
妻は夫の代わりに牢屋に入れられてしまいます。
松浦の某はちゃんと高野が牢屋に定期的に行って番をするように、牢屋に太鼓をかけて時刻ごとに打つようにいいますが、高野はついつい打ち過ぎて「これは明日の分」なんて言ってごまかす。

最初牢屋の中での妻の謡がぶちぶち切れる感じなので気になりますが、だんだんエンジンがかかってくるとやっぱりそこはベテラン、上手です。
でもこの人、何か肺でも悪いんではないだろうか、喫煙者かな、と思わせる感じ。

某は妻と一対一で話し合い、妻の夫を思う心に打たれて手づから戸を開いて出してやります。昔から美人はトクですね。
ところが、妻は「この牢こそ夫の形見」と言い張って、牢屋から出てこない。
今の設備の整った刑務所と違ってじめじめして狭いところだろうに…。

面白かったアイは退場してしまいます。

ともあれ牢の中でごそごそ肩脱ぎした妻は、牢から出て来ます。すかさず着衣を直す後見。
そしてここでちょっと舞を。これが小書きの舞入りらしい。
そして太鼓を見つけます。

妻は心を慰めようと太鼓をうち始めます。ここ、謡がはっきり聞こえなくて残念。
さらに狂乱した妻は牢に入って自ら戸を閉めて座り込み。
松浦某もこれにはびっくりしたのかあきれたのか(ここがよくわからない)、「夫婦ともにゆるしてやるから」と。
まあ、許してやるにも言い訳が必要で、某の親の供養の年(十三回忌?だったか)なんだそうな。

やっと牢から出る妻。立つのが凄く辛そう。関節に油をさしてあげたい。
出てきて某に手を合わせ感謝します。
地謡は弾むような喜び、と言うのではなく、とても静かに終えたのでした。

面は曲見。

[PR]
by soymedica | 2018-05-02 09:59 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂普及公演四月 止動方角 小塩

d0226702_13091513.jpg国立能楽堂四月普及公演
2018年4月14日(土)13時より

解説 「小塩」にはなぜ引歌がかくも多いのか
天野文雄

止動方角 大蔵流
シテ(太郎冠者)大藏吉次郎、 アド(主)大藏彌太郎、善竹十郎、善竹大二郎

小塩 観世流
シテ 浅井文義、 ワキ 福王和幸、 ワキツレ 村瀬提、村瀬慧、アイ 大蔵教義
笛 藤田六郎兵衛、 小鼓 観世新九郎、 大鼓 國川純、 太鼓 三島元太郎
後見 野村四郎、 浅見慈一、 谷本健吾
地謡 浅見真州ほか


天野先生、見慣れない頭につけて口元に来る形式のマイクで登場。国立本日使いおろしのマイクだそうで。
小塩は1465年興福寺一条院での初演がわかっている禅竹作の能。大和四座の競演だったそうで、時期が9月ではあったのですが「小原野花見」。これはその年義政が小原野で盛大な花見(雨だったらしいが)をしたことを踏まえてのこと。また、義政がその当時(結局は実現しなかった)22番目の勅撰集を編纂中であったことも踏まえ非常に多くの和歌が詠みこまれている。漢詩も3つほど読み込まれているそうです。

ところで小原野/小塩山は現在京都芸大とか京都大学日本文化研究所のある辺だそうです。
後日グーグルでチェックしたところ、西行桜で有名な勝持寺のあるあたり。大原野という公園もあるようです。

筋に沿った解説もしていただいて、狂言へ。

と言っても実際に観た時からすでに1週間以上経ってしまっているので淡い印象しかないのですが(講演はメモ取っていましたが、舞台は記録もしなかった)。

とても有名な止動方角ですが、観るのは初めて。
賢徳の面に着ぐるみの馬は体力的にとても大変と聞きましたが、それを感じさせない動き。
我儘な主人の彌太郎、甥を甘やかす善竹十郎、そのせいでひどい目にあっていて意趣返しをする吉次郎、と面白かった。

小塩。観世流で診るのは初めてかもしれない。
正先に花の作り物が出されます。花見にやってきた一行。ワキが諸国一見の僧でないのは、この能が作られた時の状況を反映しているのでしょうか。
福王流の謡に今一つ馴染めないのですが、福王パパのときは感じないので、福王和幸の個性の問題かもしれない。そして、村瀬のお二人はちょっと上手になりましたが、もともとの声が高いのですね。

桜をしょった爺様がやってくる。
浅井文義って上手ですが地味。その個性が小塩の役柄にマッチしていると思います。
国立ですので詞章が完璧に解るせいもあってか、舞台上に華やかな花見が再現されている感じが素敵。
でも、お爺さんは夕方になるとしょっていた桜をぽいと落としていなくなってしまうのでした。

あれは誰だろう、と言い合っていると、それは在原の業平の霊ではないかと教えてくれる人が。
じゃあ、夜になったら何かが起こるであろうと期待して待っていると、一の松に桜の花のついた車が出て来ます。
そして貴人が。浅井はそんなに大きな人ではないと思うのですが、烏帽子の先が車の屋根にひっかかりそうで心配。あれ、もう少し背の高い人だったら無理なサイズですね。

後場にはこれでもかこれでもかと有名な歌がひかれ、華やか。
確かにちょっと長くて疲れる能ですが来てよかったと感じさせる舞台でした。

面は前シテが笑尉、後シテは中将。

[PR]
by soymedica | 2018-04-26 12:25 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演四月 藤戸 花盗人ほか

d0226702_22592090.jpg銕仙会定期公演四月
2018年4月13日(金)18時より@宝生能楽堂

藤戸
シテ 片山九郎右衛門、 ワキ 宝生欣哉、 ワキツレ 大日方寛、則久英志、 アイ 深田博治
笛 寺井久八郎、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井広忠
地謡 野村四郎ほか
後見 浅井文義、北浪昭雄

花盗人
シテ(男)野村万作、 アド(何某)石田幸雄

国栖 白頭 天地之声
馬野正基ほか


今改めてプログラムを見ると後列に野村四郎と浅見真州を並べた凄い地謡。京都から九郎衛門を迎えての力の入った藤戸。お調べが聞こえてきてぎりぎりセーフ。それにしてもなんだか笛が不安なお調べ。
でも、始まってみるとややかすれるけれど普通に素敵な笛でした。

藤戸の渡りで先陣の幸を立て、恩賞に児島を賜った佐々木盛綱がやってくる。いかにも新しい領地に乗り込んで張り切っている感じの宝生欣哉と二人の従者。
早速「何か訴えることのあるものは来なさい」と呼びかける。
と、そこに老婆が一人。藤戸のシテの装束は地味だけれどいつも惹かれるものがある。

漁師の息子を殺したのはあんただろう、という老婆。
しらを切る盛綱。
ここのやり取りも良いし、じっと定座で盛綱を見つめる老婆の型も素晴らしい。

根負けした盛綱が「そんなに言うなら教えてやろう」というと、盛綱をじーっと見据えて老婆はどっかりと舞台の真ん中に座る。
漁師の息子に浅瀬を教えてもらったけれど、これを自分一人の秘密にするにはこの漁師を殺さなくては、と殺したことを告白する盛綱。
欣哉の状況の語り方が凄い。あまり真に迫っているので母は「息子を返せ」と、ワキに詰め寄ってしがみつく。今まで見たこの場面の縁起の中では一番激しい。
(たぶん欣哉はこういうの嫌いだろうな…。)

母を軽くいなした盛綱は下人の深田に家まで送っていくように言う。
深田は母の後ろ姿に語りかけつつ送っていく。このときの母親の背中の演技が素敵。

盛綱は殺した漁師の供養をしようと、深田におふれを出させる。
漁師の亡霊が出てくる。そういえば能には水死体の登場がおおいなぁ。

前シテの母が盛綱をじとーっと見つめるしぐさが多かったのに対し、息子である殺された漁師はほとんど盛綱を見ない。
二度刺される型のところはもちろん、盛綱とは反対のシテ柱を向いている。何だかこれが妙に胸に迫る。

最後に弔いを感謝するところで初めて盛綱を見るのだが、それでも視線は合わない。
杖を捨てて退場。

素直に面白かった。

前シテは是閑作の深井、後シテは氷見の蛙(かわず)。


万作と石田の花盗人。先月の国立のカレンダーは桜の木に縛られちゃった万作でした。
筋は皆さんご存知桜の花を盗みに入った泥棒が見つかり、上手い歌を読んで木の持ち主に気に入られ、酒をご馳走になった挙句に桜の枝をお土産に持って帰ると言うもの。

これ、万作の十八番ですね。萬斎と組むときは「もうわしゃお前にまかせた」という雰囲気の万作ですが、石田と組むときにはちゃんと真面目にやっています。

本日はちょっとお疲れモードで明日も早いので、後ろ髪を引かれる思い出はありましたが、国栖は見ず。良かったんですってねー。





[PR]
by soymedica | 2018-04-21 15:40 | 能楽 | Comments(0)

狂言ござる乃座57th 佐渡狐、苞山伏、富士松、狂言獅子 双之舞

狂言ござる乃座57th
2018年3月25日(日)14時より@国立能楽堂

佐渡狐
奏者 野村万作、 越後の百姓 野村裕基、 佐渡の百姓 野村萬斎

苞山伏
使いの者 深田博治、 山人 岡聡史、 山伏 内藤連

富士松 太郎冠者 野村萬斎、 主 石田幸雄

小舞
海老救川 野村太一郎
芦刈 野村万作

狂言獅子 双之舞
白獅子 野村萬斎、 赤獅子 野村裕基
笛 藤田六郎兵衛、 小鼓 幸正昭、 大鼓 亀井広忠、 太鼓 小寺真佐人


相変わらず女性客の多いござる乃座。でもセルリアンタワーほどでは無いな。
まず、佐渡狐。萬斎の手になるパンフレットの解説によると、越後の百姓の役柄は「楷書」、佐渡の百姓、奏者の行書の芸に進む段階のものだそうです。
それを読んでから観るとなるほどなるほど。
今まで見た佐渡狐の中で一番面白かった。でも、祐基に比べてやはり萬斎、万作は上手いなー、と感じさせるその違いって何なんでしょうね。偉大な祖父・父を持つと、中年過ぎまできっと大変だよ。

苞山伏。山人の弁当(納豆を包むような藁苞に入っている)を盗んで食べたとぬれぎぬを着せられた山伏が、犯人を祈りだす、というもの。若手二人と深田という組み合わせ。これがなかなか面白い組み合わせで良かった。
しかし、ちゃんとした法力のある山伏って、狂言ではこれだけじゃないかな。
和泉流占有曲だそうです。

富士松。これ、なんと今までに3回観ている(記録によると一回は万作家で二回は萬家)のですが、途中で寝落ちすること2回、さっぱりわからなかったこと一回と、なんだかなー。
詞章を写真として保存しておいたので見てください。

小舞の海老救川。小舞を面白く見せるのは難しいけれど、やはり太一郎君もちょと苦戦。どこが悪いのか私にはよくわからないけれど、ベテラン陣との違いは明らか。何が違うんだろう。続いて長老万作の芦刈。ね、こちらの方が退屈せずにみられるでしょ。(しかし、野村家は皆高齢になっても足腰が強いね。)

最後は本日最大の見せ場、狂言獅子双之舞。能の望月でシテ方がやる獅子舞、額に扇をつけてやるあれ、あのいでたちの紅白2匹の獅子が舞うもの。側転、逆立ちなど、アクロバティックな動きを親子二人で見せる。萬斎ってもう50でしょ?大したものです。
パンフレットによるとごさる乃座10thで越後獅子―これは狂言の越後聟の舞を、これのみ単体とした小書き「祝言之式」によるもの―をやって以来、能楽の獅子舞の要素、越後の角兵衛獅子をミックスして工夫してきたものだそうです。

おめでたい雰囲気の中に終わったのでした。アクロバティックな動きの時には拍手しても良いんじゃないかなー。見所の皆さん、あまりにお行儀が良かった。

d0226702_12171936.jpg

[PR]
by soymedica | 2018-04-02 18:03 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演三月 太刀奪 求塚

d0226702_09403706.jpg国立能楽堂定例公演三月 
2018年3月16日(金)18時半より

太刀奪 大蔵流
シテ(太郎冠者)善竹忠一郎、アド(主)善竹隆司、(通りの者)善竹大二郎

求塚 観世流
シテ 観世清和、ツレ 坂口貴信、林宗一郎、角幸二郎、ワキ 福王茂十郎、ワキツレ 福王和幸、福王知登、アイ 善竹十郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 小寺佐七
後見 武田宗和、武田尚浩、上田公威
地謡 観世銕之丞


遅れて行ったので求塚から。笛の藤田が入ってきて痩せたなー、と思う。そして全体に色が白くなった感じ。ご病気でしたか??
そう思っているうちに大小前に塚が出されます。
西国から来た僧三人が浦々を伝って生田の里にやってきます。謡、福王パパが圧倒的に上手。

三人は遠くに見える綺麗な菜摘女たちに土地の事を聞いてみようと。
と、真っ白な装束でそろえた四人の女がやってきます。本当は最後の一人(シテ)がちょっと離れてやってくる3:1なのだろうけれど、前の三人のうち一人が何となく遅れて2:1:1に見えてしまう。皆左手に籠を持っています。お正月の七草粥の寄せ植えみたいなのを手付き籠に入れて八百屋さんで売っているじゃないですか、あれ。
何だかとても清々しい感じの四人です。

福王パパがこの土地について色々と尋ねると、「フン」と言った感じで「知っているなら聞かないでよ」「そんなことも知らないの?」「求塚なんか知らないわよ」というツンデレな人たち。何となく三人声をそろえて言うと怖い。やっぱりこの世の人ではないのだな。
求塚のここの所、好きです。

三人の女が居なくなってしまい、一人だけ残る。その女がながながと求塚のいわれを語る。ああ、求塚とは乙女塚の音のずれから来ているのだな、と思いながら見ている。さすがに観世清和、上手い。地謡が二人の男が「刺し違えてむなしくなりぬれば」と謡うのですが、そこで菜摘女が左手を胸に充てる仕草をするところ、素敵でした。
その女も消えてしまいます。

アイ語り。凄くゆっくりした語りでした。悪くはなくて雰囲気に合っているなー、と思っているうちに寝てしまった…。

さて、僧たちが処女を弔っていると塚の中から声が。
前場のときも思ったのだけれど、久しぶりに聞く観世清和の謡、こんなだったかなー。ちょっと変えたのだろうか。

引き回しが下ろされると、中には病み衰えた女。前場で使った面とこの面と雰囲気のどこかが似ているのか、本当に前場の女がやつれた感じ。
装束もどこか連続性を感じさせる。
シテとワキの掛け合いが素晴らしい。丁々発止という感じ。
「あら熱や耐えがたや」のところで腕を交差する型もgood。

扇をうまく使っているのだがこの扇がまた素晴らしい。このために作ったものだろうか、青っぽい金属光の地に遠目には金の植物のむこうに真っ赤な三日月(?)模様。

最後の「亡者の影は失せにけり」。最初は下居で扇で顔を隠す。二度目は立って出るのだが、この姿が美しかった。
満喫しました。

面は、前シテが出目の節木増、後シテが氷見の霊女りょうのおんな、ツレは小面(金剛大夫極有とあったがどういう意味か?)、栄満(人偏だったが)の小面と、作者不詳のいなのめ

[PR]
by soymedica | 2018-03-23 13:03 | 能楽 | Comments(0)

万作狂言会 蝸牛 孫聟

d0226702_12184057.jpg万作狂言会 
2018年3月10日(土)14時より@セルリアンタワー能楽堂

お話 葛西聖司

蝸牛
山伏 内藤連、 主 岡聡史、 太郎冠者 中村修一

孫聟
祖父 野村万作 舅 深沢博治、 太郎冠者 月崎晴夫、 聟 飯田豪

お話は狂言一般について。
なんだかやりにくそうだった。

先日満斎の山伏、高野の太郎冠者で観たばかりの蝸牛。まだまだあの二人には勝てないけれど、なかなか面白かった。
見ながら、この間寄生虫の本に出ていた「ナメクジを食べる」話を思い出した。ああいうぬるぬるしたものを食べて、年寄りの関節や腰の痛みを和らげる、という民間療法があるそうで、カタツムリを食べる、と言うのも同じ意味なのでしょう。

終わり方が、面白くて、主に「何をやっている!」と言われた山伏が法力で姿を一瞬消し、最後に「でんでんむしむし!」と叫んで脅かすというもの。このタイプは初めて見たような気がする。

今回、劫量を経た(こうりょうをへた)という新しい言葉を覚えました。

孫聟は初めての演目。
本日はきっと聟入りがあるからうるさい祖父を友達のところにやろうと相談する舅と太郎冠者。
こういうことに限って良く聞こえる年寄りはそれを聞きつけて隠居所から出てくる。

何となく直面でやると思っていたので、万作が面をかけて出てきてびっくり。たいして曲がってもいない腰を曲げて面をかけてかなり長いセリフを言うのだからかなり体力を使いそう。
面は顔の左が麻痺しているようなそういう作り。装束は柔らかそうだから絹かも。

聟登場。お決まりの「舅にかわいがらるる花聟でござる」のセリフで見所がクスっと笑うのが何となく好ましい。この聟、気が利いているのかいないのか、「お祖父さんに会いたい」と言いだす。
さっきから隠居所でまだかまだかと待っていたお祖父さん大喜び。
酒盛りにも参加し、聟を隠居所に誘ったりと、大はしゃぎ。

最後はちょっと寂しい終わり方だけれど、でも良かったね、お祖父ちゃん。



[PR]
by soymedica | 2018-03-19 12:20 | 能楽 | Comments(0)