第十九回柊会 清経 猩々

d0226702_11151510.jpg第十九回柊会
2018年12月2日(日)14時より@十四世喜多六平太記念能楽堂

おはなし 金子直樹

仕舞
班女 内田安信
和布刈 内田高成

清経 音取
シテ 内田成信、ツレ 佐々木多門、ワキ 大日方寛
笛 藤田貴寛、小鼓 鵜沢洋太郎、大鼓 佃良勝
後見 友枝昭世、塩津哲生、中村邦生
地謡 粟谷能夫ほか

八句連歌
シテ 山本東次郎、アド 山本則俊

仕舞
鳥追船
友枝昭世

猩々
シテ 内田利成、ワキ 大日方陽
笛 栗林祐輔、小鼓 田邊恭資、大鼓 柿原孝則、太鼓 小寺真佐人
後見 内田成信、内田安信
地謡 香川靖嗣


最初の解説ってあまり印象に残らないことが多いのですが、本日は違った。金子直樹さん、「清経を観ると『黒の舟唄』を思い出すんですよね。『男と女の間には深くて暗い川がある』っていうあれ」確かにそういう話ですね。
そして清経は清盛の長男の三男、本来なら三男であるとはいえ直系であるはずなのに、長男重盛が早世してしまい、一族の実権は次男の系統に…。聞きながら、狂言の野村家の太一郎の事を思わず考えてしまった。


仕舞があって、清経。囃子方は皆長袴です。戦場を敵に見つからないよう粟津三郎がやって来る。この人くらい痩せていて背もそこそこだと、忍んでやって来るという感じです。主人の未亡人に「清経は身を投げ空しくなった」と告げるところが聞かせどころですが、なかなかの演技。実は私森常好、好きなんですが、彼がこの場面やると「お腹がつかえているのに良くあんな美声が…」と妙なところが気になってしまうのです。

しかしこの曲で最も良かったと思うのはツレの佐々木多門。謡がしみじみと心に染みます。

夜更けになって美しい笛の音に誘われたかのように清経の霊がやって来る。
藤田貴寛は音取の披きなのだろうか。この前聞いた松田のような風情には欠けるけれど、美しかったです。
半幕からわずかに見える清経。ゆっくりゆっくりと妻の元へ。
別に全体に悪くなかったんだけれど、この前の国立の友枝昭世と笛の松田弘之の組み合わせと比較してしまうので、何となく点が辛くなる。

でも、後半のシテ、なかなかカッコよかった。この人をシテとして観るのは初めてではなかろうか。「内田」さんは喜多に沢山いるので、どの人がどれやらまだはっきりわかっていない私ですが…。次回又観られる機会を作ってみようと思います。


後半は猩々。シテもワキも10歳。舞台で見ると本当に子供だけれど、しっかりしている。シテの子方の方が舞台慣れしていますね。やはり出演機会が多いのでしょう。
直面の猩々というのもなかなかかわいらしいものです。二人とも言葉の意味は難しくてわかっていないでしょうから、よく覚えられました。陽くん、同じところ二回言っちゃったけれど落ち着いて先に進めましたね。
こういう舞台には色々意見もあるでしょうが、デビュー前のアイドルを追っかける若い子の気持ちがちょっぴりわかったオバサンの私でした。


仕舞で和布刈を舞った貴成くん。高校生?大学生?休み時間に見たらロビーに沢山お友達が。こういうのっていいと思うな。利成くん、陽くん二人もお友達に沢山来てもらえばよかったのに。


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# by soymedica | 2018-12-13 12:50 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂十一月 企画公演 石神 調伏曽我

d0226702_10472718.jpg国立能楽堂十一月企画公演 
平成三十年度(第73回)文化庁芸術祭主催《開場35周年記念》
2018年11月30日(金)18時30分より
企画公演 蝋燭の灯りによる

狂言・大蔵流
石神
シテ(男)茂山忠三郎、アド(妻)大藏彌太郎、(仲人)大藏彌右衛門
笛 赤井啓三、小鼓 久田舜一郎

能・宝生流
調伏曽我
シテ(工藤祐経、不動明王)大坪喜美雄、ツレ(源頼朝)島村明宏、子方(箱王)水上嘉、立衆(頼朝の従者)広島克栄、東川尚史、佐野弘宜、佐野玄宜、高橋憲正、ワキ(箱根別当)福王茂十郎、ワキツレ(従僧)福王和幸、福王知登、喜多雅人、矢野昌平、村瀬慧、アイ(能力)大藏吉次郎
笛 赤井啓三、小鼓 久田舜一郎、大鼓 飯島六之佐、太鼓 小寺佐七
後見 佐野由於、水上優、金森良充、金森隆晋
地謡 武田孝史


蝋燭の灯りで見るのが、石神と曽我モノ、と言うのはどうなんだろう。特に調伏曽我の上演は稀なんだからちゃんと見たかったなあ。

石神は、離婚の是非を妻が石神様に聞きにくる、と知った夫が石神に化けて離縁されないように頑張るというお話ですが、そこの滑稽な動きが良く見えなかった。まあ、夜にお参りしているという設定だからそういうものだと言われたらそれまでですが。
石神へのお礼に神楽を舞う妻があまりに楽しそうなのでつられて夫も踊ってしまい、ばれる。ここはもう少し明るい照明でも…。
ところで当時は皆さん神楽ぐらいは嗜みとして舞う事ができたのでしょうか。


曽我モノのうち、調伏曽我は初めて。こんなに人数が必要な話は国立でしかできないかもしれません。

まず頼朝一行登場。頼朝ですから、従者が沢山。鎌倉を朝たって箱根につきました。ですから地元の人も物見高くやってきます。箱根神社の人たち(「この寺の」というせりふがあるので、神宮寺の人たちでしょう)も将軍を見ようとやってきます。
箱王もその中にいます。

箱王の子方くん、10歳とのことですが、とてもしっかりしていて大したものです。場数を相当踏んでいるのでしょうか。
とてもたくさんのワキツレ。福王流、こんなに人が居たんですねえ…。薄暗がりではっきりわかったのは茂十郎と和幸だけでしたが。
頼朝一行の中に敵の工藤が居ると知って興奮する箱王を何とかごまかそうとする別当。そして箱王を見た工藤は、「お前の父を殺したのは自分では無い」と説得。
言いくるめられて箱王は泣く泣く帰ります。

ここでツレも立衆も中入り。

あきらめきれない箱王はどこからか太刀を盗み取って敵を討とうと。驚いた別当は箱王を返すと同時に調伏を誓います。
後場では子方が見られなくて残念。

別当は調伏のための護摩壇を用意するように能力に命じます。(もちろん作るのは後見とそのお手伝いの人々ですが)。
作り物が沢山。大小前には一畳台に乗せた小宮。ワキ座には護摩壇に見立てた一畳台が置かれます。

護摩壇の端に何か黒っぽいものがあるのは、どうも鬘(髪の毛)らしい。
福王パパが呪い(??)を唱えると、宮からは不動明王が。どんな面だかはっきりしないのが残念。
地謡によると矜羯羅、制多迦もやってきたらしい。

出てきた不動明王はなかなか恐ろしい動きを。でも、もう少し力強い感じが欲しかったかも。何しろ派手目に動いてくれないと見えないから、恐ろしいというよりも「明王も見えなくてもたもたしているのかな?」と思ってしまう。もう少しやみくもに動く若い役者にならせるべきだったのか。

最後には剣の先にあの髪の毛を刺し通すという、能にあるまじきリアルさ。
これは箱王の本望が成就することを示しているのです。

…めでたしめでたし、なのか??

あの薄暗がりの中でしっかりと舞台を締めるのはさすが福王茂十郎。素晴らしかったです。

面は出目金之助作の不動。

箱根神社、今では神宮寺は無くなってしまいましたが神社の宝物殿の前あたりに寺があったことを示す碑が建っています。


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# by soymedica | 2018-12-07 21:58 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会青山能十一月 清水 天鼓

d0226702_15283368.jpg銕仙会青山能十一月
2018年11月28日(水)18時半より@銕仙会能楽研修所

仕舞
道明寺 柴田稔
江口 キリ 野村四郎

狂言 
清水
シテ(太郎冠者)野村太一郎、アド(主)深田博治

能 
天鼓 弄鼓之舞
シテ 鵜澤光、ワキ 御厨誠吾、アイ 高野和憲
笛 一噌幸弘、小鼓 鳥山直也、大鼓 亀井洋佑、太鼓 林雄一郎
後見 長山桂三、西村高夫
地謡 谷本健吾ほか


毎度のことながら、見所は満員。手元のスマホではキャパ200とあるが、友人の目測では定員いっぱい入っていると(日本野鳥の会か、君は)。
若い人と外人が多いのがここの特徴だけれど、結構な高齢者も。もうこういう椅子席ではない会場というのは時代に合わないかもですね。ちなみに人生の後半に差し掛かっている私ですが、畳のある家に住んだことは無い。


さて、清水。これは何となくいつもよりも短いような気が。でも水汲みを断る口実に太郎冠者が「先祖があそこに身を投げまして」と言うのは初めて聞いたかな。
深田と野村のコンビ、なかなか良かった。
太一郎の肩衣が瓢箪鯰なのが何となく可笑しい。


最後の淳夫の解説にもあったが「天鼓」は王伯と天鼓という前後のシテの対照性が見せどころで能楽師に好まれる曲。実はあんまり好きな曲ではないので、公演がかち合った時などは天鼓で無いほうを選ぶのだが、それでも何回となく観ている。今回は鵜澤光だから来ました。

女性のシテというのは恐らく鵜沢親子しか観た事が無い私。光のほうは声が、と言うより立ち姿が女性。今回も出だし橋掛に立った姿を見て女性だな、と感じたのだが、話が進むにつれてお爺さんに見えてくる。私の見方が変わったというよりは、鵜澤光が人物になりきったのではないかと思う。彼女は上手い。

帝が鼓を手に入れた理由、そして天鼓が死んだ理由が明かされ、今またその父の王伯が召される経緯が語られます。全体にちょっと湿っぽすぎるかな、と言う感じに流れて行きました。アイの高野が舞台を締めます。管絃講を触れる口上も良い。その華やかさが目に浮かぶよう。

後場では帝の主催する管絃講に天鼓の霊が現れて鼓を打ち、舞います。装束が黒の縁取りのしてある赤と金のちょっと面白いものでした。天真爛漫な少年の霊が舞う様が楽しい。橋掛かりから鼓を見るのですが、その型が綺麗。
前場は何となく地謡が乗りきれていない様な感じだったのですが、後場は良かったです。

頭の中では帝がワキ柱のそばの葛桶にかけて天鼓の舞を観ているような気がするのですが、最初から最後まで帝は出て来ないんですよね、これ。

「弄鼓之舞」の小書きでは笛が盤渉調へと高くなり、太鼓が加わり、さらに後シテが鼓を打つなどに変わるそうです。
面は前シテが堀安右衛門の小牛尉、後シテが中村直彦の童子。

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# by soymedica | 2018-12-07 13:44 | 能楽 | Comments(0)

MUGEN∞能 千鳥 国栖

d0226702_17501417.jpgMUGEN∞能
2018年10月31日(水)18時半より@観世能楽堂

一調
班女
林宗一郎、 大鼓 亀井忠雄

狂言
千鳥 
太郎冠者 野村太一郎、酒屋 野村萬斎、主 中村修一

仕舞
藤戸 
観世清和

国栖 白頭 天地之声
シテ 坂口貴信、天女 観世三郎、姥 林宗一郎、子方 谷本康介、ワキ 宝生欣哉、アイ 茂山逸平、茂山宗彦
笛 一噌隆之、小鼓 飯田清一、大鼓 亀井忠弘、太鼓 林雄一郎
後見 上田公威、野村昌司
地謡 観世清和ほか


最初に茂山逸平、坂口貴信、野村太一郎、林宗一郎が出てきてそれぞれの曲の解説
野村の千鳥の解説を聞いて、和泉流と大蔵流とではそんなに違うのかと驚く逸平。先代千作は「この頃は請求書が毎月来る。昔は節季払で良かったのに」と嘆いていたそうですよ。
「パンフレットが無いので」と一調や国栖の説明も。
解説はパンフレットにして終了時間を早くするか、解説でそれぞれの素の顔を見せるか、前者を選んで正解だったのでは?と思われる客層でした。


一調。林宗一郎は決して下手ではないし(上手い)、亀井忠雄はもちろん名手、だけれど何となく私にはピンと来なかった。林の頑張っている感が前に出すぎたのかな。


千鳥は萬斎の胸を借りる形の太一郎。2,3年前とは打って変わった達者さ。よほど練習したのでしょうか。こんなに上手くできるんだったら昔からそうしたらよかったのに。
ただ、中盤ちょっとだれましたね。まだまだ君はできる。


ここでちょっと仕舞をスキップして腹ごしらえに。
今回は愛弟子の坂口のシテだし、三郎太出演だし、家元も頑張ってますねえ。


能は国栖。ちょっと速足の王がやってきます。輿の左右の棒の角なが度が違うのが気になる。揃えて持ってほしいな。(たぶん前下がりに持っている方が正しい)。
おつきの欣哉、家元の風格が出てきました。下宝は欣哉の前後の世代が結構いますが、やはり地位が人を作るというか稽古や舞台の数が違うのか、彼がダントツの安定感。
御座を据えると輿かきはすぐ退場。囃子の後ろにしばらく控えている場合もありますが、何が違うのでしょうか。

今度は幕から紺色の船が出てきて一の松のところに据えられます。
その船に、老夫婦がやってきて乗ります。婆様が釣竿を持っていて、やや婆様の方が背が高い蚤の夫婦であります。
仲がよさそう。
自分のあばら家の上に紫煙たなびくのを見て驚く二人。

シテが舞台に入ってくると船は橋掛にたてかけて干してある体。

家に行ってみるとやんごとなき一行が。しかもお腹を空かせている。
お婆さんは根芹を、お爺さんは焼いた国栖魚(鮎)を献上。
尊い方はお魚を裏返して食べるなどという事はなさらず、半身をお爺さんに下げます。
お爺さんがそれを川に放すと、なんとその魚は泳ぎだす!!このお爺さんの演技が真に迫っていて目の前に川があるかのよう。

吉兆だと喜ぶ間もなく、追手がやってきます。
うろたえる王の一行に「安心しろ」というお爺さん。
老夫婦はよろよろと橋掛から地謡前へ船を運んできます。そして王を船に隠すのでした。

狂言方扮する二人の追手。「ちょっとしか出ませんよ」と言っていましたがどうしてどうしてなかなかの存在感。王を捉えて手柄は立てたいが、面倒なことは避けたい2人。
そんな二人を相手にお爺さんは一世一代の見栄を切って追い払います。

やれやれ、と船から王をお出しして船は脇正へ。
(ここから先のお片付けは後見のお仕事)。
お爺さんは正中に下居して後見が衣の方を下ろします。
お爺さんとお婆さんは王に有難い言葉をいただき、王のお立場を思いやって涙を流すのでした。

2人が居なくなると天女登場。なぜツレが前と後と違う人がやるのかというと、お婆さんから天女に変身する時間が取れないからなのですね。
天女、ちょっと太鼓のリズムに乗りすぎで、優雅と言うよりおきゃんな天女ですね。立ち姿の美しさはさすが訓練の賜物。

次いでやってきた蔵王権現が凄い。面の色が面白くて、青銅製??と一瞬思った。袴が紫と金、上は金と薄い黄緑。私好みの派手さ。
この力強い舞が後場にもカタルシスを与えてくれて、とても満足の夜でした。

パンフレットが無かったので小書きの説明は、三宅襄の能の鑑賞講座一によると、
白頭は後シテが赤頭から白頭になり、面は不動か蔵王。位は強く重くなる。幕内で謡いだし、型も替わる。天地之声は観世流にあり、他流の白頭に似る。白頭と併用される、
とあります。


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# by soymedica | 2018-11-05 17:50 | 能楽 | Comments(1)

狂言ござるの座58th 悪太郎 柑子 三人片輪

d0226702_23133790.jpg狂言ござるの座58th
2018年10月24日(水)19時より@国立能楽堂

悪太郎
悪太郎 野村萬斎、伯父 石田幸雄、僧 野村万作

柑子
太郎冠者 野村萬斎、主 深田博治

三人片輪
博打打 (唖)野村太一郎、(盲)中村修一、(いざり)内藤連
有徳人 野村裕基


ごさるの座、今回のトップバッターは重鎮三人。お互いに安心感のある相手だと演技が安定して悪太郎のおかしみも増します。
良い意味で三人が楽しみながら我が家でやっているような感じ。
萬斎もオリンピックなんかにかかわらないで、狂言と世田谷PTだけやっていればいいのに。

柑子もまたシテが萬斎。なぜ連続して、と思ったら「ごさるの座」は萬斎の会だったのだ。万作一家の会かと何となく思っていました。
柑子は万作が得意としている曲ですが、萬斎も臭みの無い演技ができるようになってきて面白い。

三人片輪。これ、タイムリーですよねー。官公庁の障碍者採用ごまかし事件の真っただ中ですものね。
こちらの有徳な裕基君は、積極的に障碍者を雇用しようとするのですが、博打打が障碍者に化けてやってくる。
この三人が留守中に宴会をやるのが見どころ。

お家の会を続けて観ていると、若い役者の成長がわかって面白い。中村&内藤、まだまだではあるけれど、狂言小舞、昔よりは上手くなりました。
太一郎は子供のころからやっているので一日の長がありますが。
皆偽装がばれて、ドタバタと退場。
裕基君、背は高いんだけれど何となく演義から受ける印象がまだ子供ですね。皆に守られているけれど、お父さんがオリンピックにかかりきりになったら君がお家を背負うんだよ!


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# by soymedica | 2018-11-01 17:37 | 能楽 | Comments(0)