銕仙会定期公演三月
2019年3月8日(金)18時より@宝生能楽堂 熊野 村雨留 シテ 片山九郎右衛門、 ツレ 観世淳夫、 ワキ 殿田謙吉、 ワキツレ 大日方寛 笛 竹市学、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠 後見 観世銕之丞、泉雅一郎 地謡 野村四郎ほか 鴈礫 シテ 善竹十郎、 アド(道通り)善竹富太郎、(仲裁人)野島伸二 皇帝 シテ 小早川修、 ツレ(楊貴妃)鵜澤光、(病鬼)馬野正基、 ワキ 福王和幸、 ワキツレ 村瀬慧、矢野昌平、 アイ 善竹大二郎 笛 栗林祐輔、小鼓 田邊恭資、大鼓 大倉慶乃助、太鼓 梶谷英樹 後見 浅見真州、谷本健吾 地謡 清水寛二ほか バタバタしていたので、本日のシテが誰かなんてチェックする暇がなく(もちろんチケットを買う時点では知っていたはずだが)入場。お調べの時点で「この笛、凄い」と思ったら竹市学だった。やっぱりね。 今年は熊野の当たり年とどなたかおっしゃっていた。九郎右衛門のシテで熊野なのに空席ありはちょっと銕仙会さんチケットの売り方を考えたほうが良い。 宗盛と従者登場。痩せた殿田にもだいぶ慣れてきました。痩せたけれど宗盛らしい豪華な雰囲気を出しています。 朝顔登場。熊野の母からの手紙をもって京都にやってきたのでした。観世淳夫、だんだん上手くなるけれどやっぱり謡の基線がずれる。頑張ってね。 何となくこの辺で眠くなってはっと気づくと「文之段」。よかった、目が覚めて。 九郎右衛門、さすがです。今観世淳夫がシテをやったらここで目を覚ましていられる自信は無いなあ。 下居して手紙を持っている熊野。右手に扇を持っているのですがこの型がとてもきれい。 熊野が読み終わった手紙を下に置くと後見がひきます。このとき朝顔は正面から見ると熊野の真後ろに下居。こんなフォーメーションでしたっけねえ。 何回も観ているようで意外と気づかないものです。 さてここで車が出されます。舞台脇正面側に車に乗った熊野とその後ろに朝顔、ワキ柱側に宗盛。この形が何となく好きです。そして、増と小面の面の違いが良くわかる。どちらも良い面なのですが、増は幸薄そうな美人。 市内から清水寺への道のり。九郎右衛門は京都の人だから土地鑑は大分あるのだろうか、それとも地元民は意外に清水寺になんか行かないのだろうか、と考えながら聞いていました。地謡に合わせて微妙に姿を変える熊野。さすがです。 舞を所望された熊野は「深き情けと人や知る…。」で三の松までしおりながら下がり、そして舞います。ここも良いし、雨の後の型も素敵。 と、熊野は袂から短冊を出して歌を書きつけます。これを宗盛に渡す時も見どころですが、囃子の盛り上げが素敵。 面の使い方がうまく、まるで生きているかのような表情。 帰国を許された熊野、嬉しさのあまり小走りに橋掛かりまで行き、戻ってきて舞台上で、あれは「ゆうけん」扇というのかな、晴れ晴れとした型。留めておしまい。 鴈礫。大変失礼ながら狂言タイムはお休みタイムにしようと思っていたのですが、面白くて寝るどころでは無かった。 昔、今一つだなあと思っていた善竹十郎がそこはかとなく可笑しい。面白かった。この人のは見逃さないようにしようと固く誓ったのでした。 面はシテが節木増、大和作(片山家蔵)、ツレが小面で銘「子有通」作者不詳。 初めての演目の皇帝。「皇帝」とは玄宗皇帝のこと。とても分かりやすい筋でダイナミック、初心者向きだと思いますが、若干筋が整理されていない感じがするのが上演回数が少ないゆえんか。信光作だそうです。 まず、地謡前と脇正面がわに一畳台が一つずつ出されます。地謡側のものには手前寄りに幕を引き回した小宮が。後見が葛桶入れたり、何やら装束をいれたりしています。 官人の善竹大二郎が皆様に参内を促して引っ込むと、皇帝がお供を連れて登場。この時だけ太鼓あり。そのあと太鼓はやっぱり後場までお休みです。皇帝は脇正面側の一畳台に堂々と座ります。ワキツレの一人が持ってきた大きな剣をそばに置きます。装束の袖で薙ぎ払いそうだな、と思っていたら案の定あとで落としてしまいました。 小宮の幕が下ろされます。中からは楊貴妃が。地味な色の小袖を羽織っていてご病気のよう。冠から下がっている瓔珞がチャラチャラ鳴るところを見ると、あれは金属らしい(皮のものもあると聞いたが)。恐らくわざとでしょうが地味な燻したような金色。 もともと美人の楊貴妃は病気になっても美しい。でも、皇帝は気が気ではありません。 と、気が付くと橋掛に一人の老人が。老人は全く普通の着流しの日本人なのがちょっと…。老人は「私は鍾馗の霊です。貴妃さまの枕元に鏡を置いてください。私がお治ししましょう」というとどこかへ。 前シテは舞台に入らないまま引っ込みます。 楊貴妃の病気はどんどん悪くなっていくので玄宗皇帝は寄り添って看病します。楊貴妃は子方がすることがあるらしいのですが、納得。ちょっと能にあるまじきリアルな感じになりますね。 皇帝はやっぱりここは和幸では無くて福王パパの方が感じが出るかなあ。 と、ここで後見の浅見真州がえっちらおっちら台に置かれた鏡を運んできます。この曲、後見が結構重労働です。一畳台のそばに置かれた鏡を皇帝の従者が正先へ。と、そこに病鬼が映ります。一畳台の下にさっき落とした剣をあわてず騒がず拾った皇帝、病鬼に切りかかりますが、鬼はどこかに逃げてしまいます。実際、ワキ柱の影に袖をかずいて下居。ご丁寧に後見がそれに黒布をかけています。相当に姿勢が苦しそうだと思っていたら、何か不都合があるらしく、後見の谷本が布の奥に耳を近づけているようすが見える。 鍾馗の霊登場。揚げ幕が上がってもなかなか出て来ない。歩みも重々しく、一の松で見得をきります。馬に乗ってきたらしい。これに気付いた病鬼は布を被いたままワキ座でじたばた。でも、気を取り直して鍾馗に立ち向かいます。橋掛でも舞台でも派手な大立ち回り。作り物が多いので大変です。 鍾馗の小癋見が漫画チックで良い感じ。 追い詰められた病鬼は切られて前転で派手に退場!病鬼、誰がやっているのかと思ったら馬野正基。いつもうまい役者だと思って見ていましたが、こんなに運動能力が高いとは。 するとあーらめでたや貴妃の病気は治り、脇息は不要に。そして羽織っていた青ぽい衣を取ると、下からは華やかな衣装。いかにも病気が治りました、という演出です。 レディーファーストで退場となったのでした。 あれ、玄宗皇帝の影が最後うすくなってしまったなあ。 あー、面白かった。 前シテが髭阿瘤尉で堀安右衛門作、後シテが小癋見で古元休、ツレの楊貴妃が小面で銘「閏月」作者不詳、病鬼が志かみで石原良子作。
by soymedica
| 2019-03-13 08:56
| 能楽
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