銕仙会定期公演九月 柏崎 鱸包丁 枕慈童

d0226702_13291759.png銕仙会定期公演九月
2018年9月14日(金)18時より@宝生能楽堂

柏崎
シテ(前・花若ノ母、後・狂女)観世清和、子方 花若 谷本康介、ワキ 小太郎 森常好、ワキツレ 善光寺住僧 館田善博
笛 一噌庸二、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠
後見 野村四郎、谷本健吾
地謡 観世銕之丞ほか

鱸包丁
シテ(伯父)山本東次郎、アド(甥)山本則孝

枕慈童 盤渉
シテ 慈童 柴田実、 ワキ 勅使 村瀬提、 ワキツレ 従者 福王和幸、矢野昌平
笛 寺井宏明、小鼓 曾和正博、大鼓 亀井実、太鼓 小寺真佐人
後見 浅井文義、泉雅一郎
地謡 浅見慈一ほか


柏崎は前にも銕仙会で観ていますが、今回は家元観世清和が出張ってきての公演。
まず、しずしずと母登場。現代劇だったら「幕が上がるとワキ座に葛桶にかけて物思いにしずんだ母が」というところですが、幕が無いので。こういうときには鏡の間は明るいままなのですね。

柏崎殿は訴訟のため鎌倉に息子と滞在する間に亡くなり、息子は出家してしまった、と家臣小太郎が告げに来る。森常好、痩せたし色が抜けた感じ。ダイエットの成果なのなら良いですが。
守袋を首から下げているのが清経と同じで、ああ、何か良くないことが起こったのだなと思わせる装束(そういうつもりではないのでしょうけれど)。

小太郎が奥方に事の次第を語るこの場面、ワキ方結構難しいのではないでしょうか。観世清和、森常好、良い組み合わせです。前場では小太郎が笠を取り落とすところが素敵でした。
そして奥方はなげきつつ退場。

それにしても、観世清和がシテをすると鏡の間が賑やかですな。誰が何を言っているのでしょうか。

後場は花若と善光寺の僧がやってくるところから始まります。
ついで笹を持った狂女登場。装束に具体的模様が無い、オレンジ系の縞の着物にグレー系の無地の水衣が映えるとてもしゃれた組み合わせ。
観世清和、女性を演ずるときにちょっと足が踏ん張り気味になるのが気になっていたのですが、今回はそういう事も無く素敵。
珍しく絶句して後見の野村四郎が素早くつけていましたが。

女人禁制のお堂に入り込んだのをとがめられて、笹を叩き付けて怒る狂女。
正中で夫の形見の烏帽子・直垂を着て舞うのですが、こういうときの貢献はやっぱり四郎ですよね。何だか早変わりを見ているよう。
舞はさすがに家元。
解説によるとここの謡は難しいのだそうですが、全くそういう感じをさせずにすらすら進みます。

と、そこに居る子供が自分の子であることに気付く狂女。
子供を抱きかかえるしぐさが能には珍しくリアル。
考えてみるとほかの母子離別ものでは「あれは自分の母だ」と、子方が気づく瞬間のせりふがあるのですが、これには無かった。
へえ、と思ったのですが、帰宅して調べると、下掛にはあるのだそうですね。

最後「嬉しかりけれ」と母が一の松で留めて終わります。

ちなみに柏崎の屋敷があったと言われる柏崎市の香積寺から善光寺まではgooglによると徒歩で20時間から30時間、車だと2時間前後だそうです。

面は観世宗家蔵の 深井 花(本面)近江作。
参考は、清田弘 能の表現 草思社


休憩の後は鱸包丁。あらすじは成書に譲るとして、ほとんどが東次郎の仕方話。オチは「ホウジョウ」の意味を予習しないとわからないけれど、東次郎の上手さがしみじみ面白い話。
また東次郎の茫々頭を見たいなぁ。


ここで帰る人多数。もともと満席でなかったのに、7割以下しか埋まっていないような…。


観世流には枕慈童と菊慈童の両方があり、他流の枕慈童は観世流における菊慈童。観世流の枕慈童は漢の時代の話で周の時代に山に流された慈童が出てくるという話。観世流の菊慈童と他流の枕慈童は時代が魏の文帝の時代なんだそうな。何だかややこしく、細部もちょとだけ違うようですが、まあ季節も秋に設定してあるし大筋似たようなものでした。

大小前に縁の模様が面白い(見ようによっては中国的な)一畳台が出され、そこに大宮が載せられます。一瞬見えたシテ方の足がとても小さく見えました。
皇帝の勅使がやってきます。ワキツレが福王和幸、ワキが村瀬提。村瀬はちょっと見ない間に物凄く立派になりました。
すぐに引き回しがおろされ、勅使が童子を発見する体。童子のわきには真っ赤な箱枕がおかれて、周りは菊の花で囲まれています。

皇帝の枕をまたいで流されて、有難い文字を菊の葉に書いてみずに流すと酒になり、という細部がちょっと菊慈童とは違うけれど、まあ、そんな事を語った後で舞に。
最後に常座に出された壺に童子は薬の水を汲み入れ、勅使に捧げます。

勅使一行は退場し、延命の水を称えてめでたしめでたし。

地謡が素敵でした。

面は洞白作の童子。




by soymedica | 2018-09-18 08:20 | 能楽 | Comments(0)
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