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国立能楽堂企画公演 髭櫓 名取ノ老女

国立能楽堂企画公演 髭櫓 名取ノ老女_d0226702_15151143.jpg国立能楽堂企画公演 復曲再演の会
2017年7月28日(金)18時30分より

髭櫓 和泉流
シテ(男)石田幸雄、アド(妻)野村萬斎、小アド(告げ手)野村又三郎
立衆 高野和憲、竹山悠樹、中村修一、野村太一郎、岡聡
笛 竹市学、小鼓 田邊恭資、大鼓 佃良太郎、太鼓 林雄一郎
地謡 野村万作ほか

復曲能 名取ノ老女

名取ノ老女 梅若玄祥
護法善神 金剛龍謹
孫娘 松山絢美
熊野山伏 殿田謙吉
笛 竹市学、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純、太鼓 林雄一郎
後見 大槻文蔵、武富康之、豊嶋幸洋
地謡 観世喜正ほか

平成28年国立能楽堂復曲初演
監修・台本作成 小田幸子、小林健二
節付 梅若六郎玄祥
演出 大槻文蔵


髭櫓。大蔵流でも和泉流でも見たことあって華やかな演目。石田幸雄が髭櫓の扉を押し開くとき、確かに客席のほうに「どうだ!」という視線を送ったと思うぞ。
お客さん大喜び。巨大な毛抜きも面白いけれど、女たちがそれぞれ手にするにわか作りの長刀が面白い。
後の名取の老女もそうだけれど、スペクタキュラーな演目で、新しいお客さんを集めるのにぴったりな本日の二曲。
それにしても、石田幸雄、役柄も自身の風格も、長老になりましたな。


お次は昨年、大槻文蔵のシテで観た名取の老女。その他は太鼓を除き子方を含めほぼ同じ顔ぶれ。

梛木の葉を懐に入れた山伏がやってくる。ありがたい夢を見た山伏は名取の老女を尋ねて高館山のふもとにやってきます。
そして子方と老女が登場。曲を通して笛がきれいなんだが、ここの一声、物凄く息が長い。
老女は金、ベージュ、オレンジの色合わせで華やか。
花を摘み、蝶をおいかけ、そして普段からおばあさんの昔話を聞いているらしい孫娘の、のどかな雰囲気。

老女は「名取の老女」と呼ばれ、地元名士なんでしょうね。孫娘に尋ねて老女に会うことのできた山伏。お告げの虫食いが書いてある梛木の葉を渡すと、老女は感激します。勧進した熊野神社三社を山伏に教える名所教えの場面が素敵。

そしてそのあとに、いつも孫娘に聞かせている熊野神社のいわれ(天竺の王の多数いる妃のうち一人だけが妊娠すると、妬んだ他の妃たちが彼女を殺して山中に捨てるが、王子は無事誕生し、死んだ母の乳をのみ、オオカミに育てられ…)を。この話だけでも民俗学的に面白いのですが、謡が良くて話はテンポよく進みます。

そして物着の間に子方は切戸から退場。
老女は右手に梛木を、頭には金の烏帽子を。これがキンキラ金ではなくて、地の黒い色がところどころ見えるようになっていてなかなか渋い。
神楽を一生懸命舞う老女がシテ柱に抱き着くと、そこに護法善神が登場し、老女をほめる。
今ここで気づきましたが、後見はそれぞれの流儀の人が一人ずつついているんですね。

護法善神の金剛龍謹がさわやかな謡で老女と対照的。そして飛安座したり、橋掛かりの手すりに片足をかけて 横につつっっと動いたりと見ていて楽しい。最後には幣を捨て回転。
前回観た時には畏まって拝見、という感じで見ていたので、こんなにも楽しい曲だったということに気づかなかった。
そして実は梅若玄祥のファンの私。二度目で大体話の運びもわかっていたし、じっくり堪能した一日でした。

面は石原良子作「老女」と泥小飛出(でいことびで)
写真は熊野那智神社(高舘山)からの眺め

by soymedica | 2017-08-04 17:53 | 能楽 | Comments(0)
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