国立楽堂企画公演 月間特集 近代絵画と能 2017年2月18日(土)13時より 蝋燭の灯りによる 庶民のたのしみ 謡講 井上裕久 独吟 盛久 サシ・クセ(今日観世の節・二段下ゲで謡う) 五目謡 熊野 謡講形式の素謡 井上裕久、吉波壽晃、浦部幸裕 八島 弓流 奈須与市語 シテ 香川靖嗣、ツレ 佐々木多門、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、館田善博、アイ 三宅右近 笛 松田博之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 亀井忠雄 後見 中村邦生、友枝雄人 地謡 粟谷能夫ほか 本日は年に一度の謡講。井上さんのお話と、井上さんのおじいさんの時代に盛んだった謡講の説明。 本日の盛久は、今の形式と昔の井上家の方式。大成版謡本というのは、観世流の全国の謡を統一する目的もあって作られた本なので、そこから外れた京観世の節付けはおじいさんの代に封印されたそうです。その再現。現在の形式(強吟)と京観世の弱銀と続けて聞かせてくれました。 五目謡というのは五目飯の五目と同じ意味で、いろいろな謡が混ざっているもの。ちょこっと謡うと次の謡へしりとりのように続いていく。間違いを芸にしてしまったような。 このほかにもいろいろの遊びがあって、先年やった替謡(替え歌)とか、「のもか謡」は「の」「も」「か」の音は言わない。うっかり行ってしまったら罰杯。 「謡講」の提灯がかかっていたら樽酒をもって参加する。「出樽」というのですが、音読みすると「しゅっそん」ですが、「そん」は縁起が悪いので「しゅったる」と言うそうです。 明治の末には途絶えてしまった謡講ですが、井上家(園家の弟子家)が復活させたとのことで、本年も3月第一週に杉本家(四条烏丸駅のそば)で行うとのこと。ちょっとそこまでは行けないけれど。 熊野の謡も楽しかったし、また来年も来てくださいね。 蝋燭能は八島。 友枝昭世体調不良のため、ということで地頭に変更がありました。人づてに聞くと翌日の式能には出ていたということで、良かった良かった。 蝋燭能ってあまり好きじゃないのですが、八島のような曲は暗がりでやるのも良いかもしれない。ワキの雰囲気作りが上手だったせいかな。いかにも「夕暮れに一夜の宿を塩屋に求める僧たちと、その見る夢」という雰囲気。 香川は好きな演者なのですが、二番目物も大変に宜しい。「都から来た人」と聞いて塩屋に泊めて話を聞こうとする流れや、自分の正体をほのめかして消えるまでのストーリーが観ていてとても自然に入ってくる。 オヤ、と思ったのはツレの若い男が中入りせずに笛座の後あたりに後ろ向きに座っていること。 そして後場で再登場。 調べるとこれは喜多流のやり方なのだそうで、初めて見ました。 小書きの弓流ですが、落とした扇をこの蝋燭能の明るさで拾うのか?と思ったらその型はしませんでした。が、十分楽しめました(というか、無い方がはらはらしないから良いんじゃないかな)。 ちなみに能ドットコムの解説によりますと 通常は入らない囃子事があり、弓に見立てた中啓を落とす型をする。また、弓を拾い上げる場面を演じる小書を「素働(しらはたらき)」といい、両方の小書を演じる場合には「大事(だいじ)」と称する。 だそうです。 そしてアイが那須与一語だったのにびっくり。何となく蝋燭能ってそんなことしないものだと思っていました。これはそんなに薄暗くなくても良いのでは…。もっとスポットライトあててやってあげたほうが、聞くほうも肩に力入れて聞くしね。 今回も地謡陣良し。囃子も良し。 喜多流の舞台ってやっぱり良いな。 那須与一語も聞けたしね。 面は前シテが三光尉、後シテが平太。
by soymedica
| 2017-02-24 13:18
| 能楽
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