復興と文化 特別編 老女の祈り
名取ノ老女 2016年3月26日(土)13時より 正面席 毛越寺の延年 老女 藤里明久 おはなし 小田幸子、小林健二 復曲能 名取ノ老女 名取ノ老女 大槻文蔵(梅若玄祥) 護法善神 金剛龍謹(宝生和英) 孫娘 松山絢美 熊野山伏 殿田謙吉 笛 竹市学、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純、太鼓 小寺真佐人 後見 赤松禎友、武富康之、豊嶋幸洋(武田孝史) 地謡 観世喜正ほか (カッコ内は25日の配役) それわが朝は粟散辺土の小国なれども 人の心のやわらかなれば、大きに和らぐと書きて、大和の国とは申すなり 能舞台の正面奥、シテ柱と笛柱の間に大きな藍染の幕が張ってあり、囃子のところは舞台裏、という仕掛けになっていました。 延年の舞 老女 です。後ろからお坊さんが出てきて正先に小さな漆塗りの机を運んでくる。鈴と中啓がおいてある様子。 次にしーんとした中を黒い面で長い白髪のおばあさんが登場。机の前で身づくろいをし(髪を撫でるしぐさをする),踊る。右手に鈴(持ち手の先にリング状に並べてあるタイプ)、左手には扇。これは後で広げた時に気づいたのだけれど、骨は赤い漆塗りで、金・銀・赤の彩色の紙を貼ったとても派手なもの。 鈴を振りつつ舞台の三方を清めて帰る。三番叟の原型なんだろうか。 パンフレットを斜め読みした感じでは、毛越寺の延年の行事ではいろいろなこと(演劇も含め)が行われ、それの一部らしい。 ついで、小田幸子&小林健二の解説。まず、パンフレットやポスター(帰りにくれたので一部もらった、後で額装しようか)の山越えの阿弥陀様の図は鎌倉時代のもので、江戸時代の添え書きがついているそうです。 名取の老女は信心深く、熊野に48回行くつもりが47回めで歩けなくなり、ついに輿に乗っていくと、浜ノ宮で阿弥陀様を見る、という場面の絵なんだとか。 そしてもう一つパンフレットの裏表紙にもある葉っぱ。これは梛(なぎ)の葉で、熊野の神木とされているもの。この葉の虫食いが文字に見えて神意を伝いえる、というのは熊野に関する説話につきものなのだそうです。ちなみに、梛の自生の北限は九州当たりであり、より北のほうにあるのは全国の信者が持ち帰って植えたものだとか。 今回の復曲では、クリ・サシ・クセ部分を熊野権現の本地の物語に、老女と現れるのは従者(男性)であったのを孫娘に、そして名所教えを入れたところが大きな変更点だそうです。 パンフレットにはそれぞれ二日にわたる公演の老女役、護法善神役の4人が文を載せていますが、それぞれの世代の感じ方を伝えてくれて面白い。このパンフ、手に入ったら舞台をご覧にならなかった方も是非読んでみてください。面白い。 さていよいよ名取ノ老女の始まり。ワキは二日とも殿田謙吉。なかなか良い人選だったと思います。若くて上手、そしてなかなか賢いので、こういう新作にぴったり。 名取ノ老女を訪ねようとやってくるのですが、笛がとても綺麗。 子方に続いて老女登場。老女は照明が当たると金色に輝いて見えるような装束。遠目には麻のような張りのある生地の水衣を着ているように見えます。子方の肩に手を置いて歩く形が、ちょうど現在の盲人を誘導する形と同じ。 一の松を挟んで二人で謡う。 「婆さま、わらはは花を摘んで参りませう」っていうところで思わず「お花摘みに行く」を想像して笑ってしまいましたが、もう死語なのでしょうか。 と、知らないおじさんが少女に声をかけます。 昔の事なので、おじさんは山伏でもあるし、少女は素直に応じておばあさんの所に案内。山伏と老女はナギの葉に現れた歌を読み、感涙にむせびます。 この時、私の見ていた角度からは子方の装束のオレンジと婆様の水衣の裾から除くオレンジ(国立能楽堂所蔵の江戸巻の紅地白鷺太藺模様縫箔の復元だそう)とが上手くマッチして凄く綺麗でした。 ここで舞台を360度ぐるりと見まわして名所教え。閖上の由来ってそうだったのか。 そして熊野神社の由来のお話のあと、山伏が「こんなにおめでたいことがあったのだから、舞を舞ってはどうか」とお勧めします。 狩衣の模様は松、頭には金の烏帽子で舞っていると、 そこに護法善神が。 一度揚幕から姿を見せた後引っ込み、その後勢いよく。金剛龍謹、凄くカッコ良かった。あまり東京で見る機会のない金剛流ですが、金剛流の将来は安泰だなー、と思わせる演技。印象的でした。 最後に橋掛かりにシテが幣を捨てて退場なんですが、それを拾った後見も橋掛かりから帰ったのが面白かった。 これはなかなかこなれた復曲能でした。また上演してほしいな。 面は 老女:白洲正子が所蔵していたもので、石原良子復元。 護法善神は大飛出、徳若作。
by soymedica
| 2016-04-03 16:32
| 能楽
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