国立能楽堂三月定例公演
2015年3月20日(金)18時30分 正面席 4900円 狂言 和泉流 苞山伏 シテ(山伏)高澤祐介、アド(山人)三宅右矩、小アド(使いの者)三宅右近 能 喜多流 頼政 シテ 粟谷能夫、ワキ 森常好、アイ 石田幸雄 笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 白坂保行 後見 友枝昭世、狩野了一 地謡 出雲康雄 苞山伏(つとやまぶし、と読みます)。苞は藁包みの納豆を想像してください。あの中にお昼の弁当が入っているらしい。(そう言えばあれ、藁苞と言いますね、忘れていた。) 樵が山に来て昼寝をしていると、山伏がやってきます。この山伏「大峰かけて葛城や云々 われ本山に帰らん」と謡っているのですが、前の外人さんのスクリーンを見たら「羽黒山」と具体的に書いてありました。うーーむ、深い。 ともあれ、樵の昼寝を見て山伏も昼寝。そこに小賢しい使いの者が来て樵の弁当を食べてしまう。そこで樵が目を覚まし、使いの者は逃げる暇もなく、そそくさと昼寝の真似。 さあ、弁当を食べたのは三人のうち誰?狂言ですから「藪の中」みたいな不条理劇とはならず、山伏が祈って犯人捜し。 この狂言の特徴は、山伏が優秀で、ちゃーんと犯人を当てられるところなんです。 そして犯人を打ち殺そうとする樵をいさめるところもちゃんとした修行者らしくてきちんとしている。いつもバカにされている山伏ですが、こういう曲もあるのですね。 ここの所、頼政をよく観る。割と地味な能なのではないかと思うけれど、平家物語に題材をとっているものだからファンが多いのでしょうか。 諸国一見の僧である森常好が宇治の見どころをたまたま通りがかった爺さんである粟谷能夫に聞く。「勧学院の雀は蒙求を囀る」というのは「門前の小僧習わぬ経を読む」ですな。格好良いから今度使ってみよう。 名所教えがいかにも名所教えで、私もつい行ってみたくなるのは、この間宇治観光をしてきたせいだと思われます。 爺様は、「頼政の死んだ戦は今月の今日でした」と言って消える。「月命日」という感覚、私にはわからないのですが、今にも生きていますね。 ところで、私の席の前には西洋人のカップルが。英語をしゃべる20歳代。男のほうが極めて落ち着かなく、キャップをかぶってみたり、脱いでみたり、女のスクリーンの方を眺めてみたり、首を振って見たり…。退屈だったら出てって良いんだよ。 さらにその隣にいるシャネルスーツの女性はなんとコートを椅子の背にかけていて後ろの女性がスクリーンを見ることができない。後ろの席の人何か言うかな、と思っていたらおとなしくパンフレット読んでいたけれど…。 爺様退場。地元の人の石田幸雄登場。今振り返るとあんまり印象に残らないアイ語りでしたが、逆に印象にのこるような語りはまずいのかもしれない。 後シテ頼政は金、黒、茶色の華やかな出で立ち。能役者って舞台の外で見るとただのお爺さんなのに何であんなに切れ良く動けるのでしょうか。粟谷能夫は品の良い素敵なお爺さんなのですが、これもまたカッコよい動き。頼政って実際に亡くなった時には当時としてはかなりの高齢だったはずですよね。 「埋もれ木の、花咲くことも無かりしに、身のなる果てはあわれなりけり」 と言って退場。 囃子も地謡もよかったけれど、何となく印象が薄いのは曲のせいか、はたまたアクの無いシテの性格のせいか。
by soymedica
| 2015-03-23 13:21
| 能楽
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