国立能楽堂開場三十周年記念 特別企画公演
12月7日(土)13時より 脇正面席7000円 釣狐 大蔵流 シテ(伯蔵主、狐)山本東次郎、アド(漁師)山本則俊 笛 松田弘之、小鼓 住駒充彦、大鼓 大倉栄太郎 素囃子 神舞 笛 藤田次郎、小鼓 鵜沢洋太郎、大鼓 柿原光博、太鼓 大川天良 太鼓負 和泉流 シテ(夫)野村万作、アド(妻)野村萬斎、 小アド 参詣人 井上松次郎・佐藤融・野口隆行・奥津健太郎、祭頭 石田幸雄、舞人 野村又三郎、神子 深田博治・高野和憲、稚児 野村裕基、白丁 月崎晴夫・破石澄元、警固 竹山悠樹・破石晋照 電話かけ続けて結局手に入れられなかったチケット、何とかゲットしました。脇正面のなかなか良い席でしたが、隣と前はどう考えても風邪ひきさん。観たい気持ちはわかるけれど、遠慮してほしいな。 関係者席まで満席の中、釣狐が始まります。囃子が演奏する中、怪しげな出家が登場。伯蔵主の頭巾は白い鶴と黒いカラスの絵がかいてあるように見えました。後から登場した甥は伯蔵主を追い抜いて座ります。後見二人はなんと長袴。 着物の裾、後ろが長くないかな、と思うのですが、足があまり見えると具合が悪いですからね。 さて、甥の家を伯蔵主が訪ねたところで囃子は退場。家にたどり着くまでも、とてもまっとうな出家とは思えない怪しい動きではっとさせられます。数珠を鳴らすのがとても効果的なのですが、休み時間にどこかで見たことのある紳士が周りに解説しているのを小耳にはさんだものでは、和泉流では数珠はならさないのだそうですね。 この怪しい出家、「狐なんか殺しませんよ」と嘯く甥に白状させて、狐を殺すことがなぜまずいかを「殺生石」の話を引き合いにコンコンとさとします。説得された甥は伯蔵主の目の前で罠を捨てますが、この時すでに怪しいと思っているのか、じーっと伯蔵主を見つめます。これ、脇正面でないと見えないかもしれない。 そして伯蔵主の帰り道に捨て罠。でもその真ん中には若ネズミの油揚げがあります。それに引かれる伯蔵主。「一族の敵」とかなんとか言って罠を打ち据えるのですが、やっぱり食べたくなって狐の姿になって戻ってくることにします。ここのしぐさが人間だったり、狐だったり、本当に楽しませてくれます。ここまで来ると着物の裾を大きくまくり上げ、狐の脚がはっきり…。 怪しい思った甥が捨て罠を見に来ると罠が散々に荒らされています。やはりあれは狐が伯父に化けたものであったかと、罠をしかけます。捨て罠を組み立ててあそこに置くのが良いか、ここが良いか、としきりと行ったり来たり。ここもなかなか見せ場なのですが、ちょっと硬い感じ。 そして狐登場。ここから先は鳴くばかりでセリフはありません。結局罠にはかかるのですが、逃げおおせます。橋掛かりで衣を後見がかぶせます。 この幕入で拍手したかったのですが、国立のお客さん、あまりにお行儀がよく、拍手は最後の最後。 堪能しました。 太鼓負は「万作を見る会」で見たものと配役が全く同じ。とても楽しめました。 祭りの時はいつも警固役の夫にじれた妻が「もっと良い役を貰っていらっしゃい」。太鼓を背負うのは「もっと良い役」では決してないと思うのですが、夫婦ともにそうは思っていないらしいです。 この夫、人が良くてまじめで、とかくないがしろにされやすいタイプだけれど、底抜けに明るい。舞人が舞えばそれについて、神子が舞えばそれとも一緒に、稚児が側転すると真似したくなっちゃう。 そしてそんな夫の良いところを一番わかっているのがわわしい妻なのでした。 舞人、野村又三郎が「舞の袂も色々の」と謡っているのに表示板は「数々の」。あれ、と思ったら同吟は「数々の」でした。家ごとに違うのでしょうか。 三十周年記念にふさわしい大人数の華やかな曲でした。 能楽堂のパンフレットの田口和夫先生の解説が面白かった。
by soymedica
| 2013-12-10 07:56
| 能楽
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