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精霊の王

精霊の王_d0226702_16562569.jpg精霊の王 中沢新一 講談社
2003年第一刷、2006年3月14日第7刷

出版された時に非常に話題になったのを記憶しているのですが、既に絶版なのか古本で入手。箱根の芦ノ湖畔のみやげ物屋になぜかあったものより状態は良好。
民俗学の話なのかと思って読み始めたら、金春禅竹の「明宿集」を核にして「宿神」というものを考える本。

縄文時代から禅竹の時代までの「神様」や人々の考える「パラレルワールド」これらを支配するのが「宿神」の概念であったこと、それは時代時代によって形を変え、時代が下ると仏教の神やもっと権力者に近い神に置き換えられて忘れ去られたかのようであったこと、などなど。あちらの世界(死後のではなく)とこちらの世界をつなぐものは西洋でも「ラッキーチャイルド」と考えられていた胞衣(羊膜のこと?胎盤のこと??)を被った子供であること。洋の東西を問わず、人間の発想は同じなんだな思うのですが、この筆者「だからそれは真実である」と言いだしそうで何だか怖い。

誰に向けて書かれた本なのかよく分からないのですが、価格と装丁、出版社を考えると一般向けなのかな。主題は一つとしても、副主題をたてて3冊くらいのシリーズにしてくれた方がド素人には理解しやすい。それと、どこまでが筆者の新しい考えなのか、どこまでが既に広く受け入れられている見解(そういうものがこの分野にあるとして)なのか、物凄く分かりにくい。

プロローグに「この本を読み終えた方は、これまで語られてきた『日本人の精神史』というものが、根底からくつがえされていく光景をまのあたりにすることだろう。石の神、シャグジの発する不思議な波動にはじめて接して以来何十年もの歳月をへて、ようやく私の学問はその波動の発する宇宙的メッセージに接近し、それを解読していく方法にちかづくことができたような気がする。」とありますが、それほどのダイナミズムは残念ながら感じませんでした。でも、話題になっただけのことはあって読んで後悔しない本です。
by soymedica | 2012-08-26 17:02 | 本・CD・その他 | Comments(0)
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