宝生流 時の花「夏」7月28日(土)16時より@宝生能楽堂
正面席6000円 水汲 シテ 高沢祐介、アド 三宅近成 杜若 沢辺之舞 シテ 大坪喜美雄、ワキ 宝生欣哉 笛 寺井宏明、小鼓 曽和正博、大鼓 國川純、太鼓 金春國和 後見 宝生和英、東川光夫 不思議なお客さんあり。一番前の席で見ていた軽装の40歳代くらいかと思われる男性。結構大荷物。狂言が終わるなり出て行ったのですが、休み時間ずっと外の柱の陰。私が誰かが居るのに気づいて、のぞきこんだら、ふっと眼をそらしてどこかに行くふりをしてまた戻ってきた。??と思っていたら能では戻ってこない。あれは狂言のどちらか出演者の出待ちしているのだと思うのですが…。能楽関係者はプライバシーに関するガードが低い(切符の注文先が自宅電話だったりする)ので、注意したほうが良いと思います。 水汲ですが、大蔵流の「御茶の水」の住職が出てこなくて、もっと謡に重点を置いたもの、と言えば良いでしょうか。なかなか謡がよくて楽しめました。暑い中やってきてちょっとこういうのを見るのも楽しいな、と感じました。ただ、「狂言らしい狂言」を期待してくるお客さんにはちょっと不満だったかも。 暑い中、と言えばロビーには綺麗に花が飾ってあり、しかも水の見える生け方で綺麗でした。もちろん杜若あり。ゆっくり眺めて楽しんでいらっしゃるお客さんがたくさん。 能楽コンシェルジェという方もいらして、質問したかったことがあったのですが、気後れしてしまいました。 杜若。実はあんまり得意な曲では無かったのですが、本日は集中して楽しめました。たぶん見るのは喜多流で一回、観世で二回、これが4回目。役者好みの曲なのでしょうか。クセを全部やってくれる演出なので大変結構。前回の観世流(鵜沢久)とは大変に違う印象を受け、どちらもそれぞれ良かった。 それと、地謡もシテも言葉がとてもはっきり。観世はどちらかと言うとメロディーラインが全面に出ますが、今回の宝生は「言葉を聞かせるぞ」、という感じ。 さて、お約束の旅の僧が杜若を眺めていると、綺麗な女の人がやってきて、「ここは杜若の名所なんですよ」。2,3言葉を交わすと女のほうから「家へ泊りにいらっしゃい」。(私は毎回ここで、田舎の娼家か小遣い稼ぎの女の家にとまった旅の僧の夜中の妄想の話かな、と下世話な想像をしてしまう。誰か面白い短編小説を書かないかな。) で、家に行くと「これを見て」と、冠(今回は藤の花)と長絹をつけて女が現れる。そして「本当は私は杜若の精」と言って、業平の思い出を語りつつ舞う。 これ、クリ、サシ、クセみんな省略する演出もあるのですが、一番良いところが無くなってしまうし、何の話だか不明になっちゃう。やはり今回のようにたっぷりクセを聞かせてシテの動きを見せてほしい。地謡は言葉がはっきりわかって楽しかったのですが、そのせいで若干もりあがりが不明。「ここを聞いてほしい」という主張はあまり感じさせませんでした(無いのかもしれないし、それならそれで結構)。 最近この杜若の後シテは誰なのか(業平なのか、高子なのか、杜若なのか)という話を読んだのですが、まあ、そういうことは研究者に任せて、楽しかったな。 ところでこの「時の花」という催しはホームページによると: 「時の花」は、〈春夏秋冬〉をテーマに、 その時〈季節〉ごとの魅力を楽しみ、 真の花〈能〉を堪能する、宝生流の新しい企画公演です。 能という一期一会を通じて四季の風情を感じ、 和のおもてなしで贅沢なひとときを過ごしていただきたい。 さらに、能への関心・理解を深めていただけるよう サービス面での充実も図ることで これからの能楽界の活性化・発展につなげられたら―― そのような思いをこめて、世阿弥の言葉を持つ 「時の花」を公演名に選びました。 年4回の公演では、季節にちなんだ1曲を上演し、 パンフレットや会場構成・演出など すべてのデザイン面で四季をアピールしていきます。 また、初の試みとして、演目からイメージされる情景を表現した 「和のおもてなし」による特別演出もご期待ください。 ということです。心意気は感じるし、素敵な催しでした。でも御客の開拓なら、能楽堂の外(たとえばホテルのロビーとか)に出ていくか、あるいはもっと斬新な(浴衣で来たお嬢さんにはサービスとか、最後にシテと写真をとれるとか)、思い切ったサービスが無いと無理なのでは。 狂言では「写真・動画取り放題」というのがありましたよね。 頑張ってほしい。 秋の切符も買いましたよ。
by soymedica
| 2012-07-30 21:15
| 能楽
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