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二十五世観世左近二十三回忌追善能 弱法師、江口ほか

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二十五世観世左近二十三回忌追善能
4月1日11時より@観世能楽堂
正面席15000円


弱法師 盲目之舞
シテ 山階彌右衛門、ワキ 福王和幸、アイ 山本則秀
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井弘忠
後見 寺井栄
地頭 角寛次朗

狂言 二千石
主 山本則孝、太郎冠者 山本東次郎

仕舞
天鼓 観世三郎太
雨月 中入り前 浅見真州
清経 キリ 寺井栄
半蔀 キリ 坂井音重
籠太鼓 浅井文義
錦木 キリ 武田志房

独吟 鐘之段 藤波重和

能 江口 平調返
シテ 観世清和、ツレ 関根知孝、浅見重好、ワキ 福王茂十郎、アイ 山本東次郎
笛 一噌康二 小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄
地頭 観世銕之丞
後見 野村四郎

仕舞

恋重荷 彩色
関根祥六 森常好


前日あたりから桜がちらほら。代官山の南斜面が都内では桜が一番早い、とはタクシーの運転手さんの弁。
本日席は正面席最後方中正面寄り。遠いけれど、全体が良く見渡せました。


弱法師。地謡が登場し、ベテラン揃いなのにびっくり。左近の次男もしっかりやれよ、というお目付けのような…。

相変わらず背の高い(縮まないか…)福王和幸が登場。この人、体格のせいで何となく木偶の棒のような感じがしていましたが(失礼)、もしかして凄く上手いのでは、と感じつつ見ました。

弱法師登場。前髪の無い髪型のかつらです。一の松で謡い出す。この人を最初に見たのは吉野静だったと思うのだけれど、その時には全然良いとは思わなかったのだが、前回の三輪あたりから「あれ?」、と思うくらい私の中では注目株。謡の強弱の自在さが好き。姿勢も決まってきているし。演出も橋掛かりまで大きく使うもので飽きさせない。

弱法師は今まで野村四郎、片山九郎衛門で見ていますが、結果から言うと今回が一番良かった、と思うほどの出来でした。(野村四郎、森常好コンビのときには初回だったので何が何だかわからなかったというのもありますが)。囃子方にも大満足で、盛り上がった舞台でした。


二千石は、太郎冠者が主を見て「亡くなった先代にそっくり」と泣く話。貰ったパンフレットは土屋恵一郎解説という力の入ったものだったのですが、そこで「追善供養にふさわしい狂言」とありました。なるほど。東次郎、相変わらず素敵。


江口は西行法師の伝説に基づいた能。中世の有名なお坊さんが遊女を救う話というのはたくさんありますが、「遊女」というのは私たちが考えるような江戸時代のものではなく、もうすこし高級なものであったらしいです。
旅の僧が西行法師を偲んで江口の里で歌を口ずさむと、江口の遊女の霊が現れる。後場ではその遊女がツレを従えて古の舟遊びの様子を見せるというもの。(私は何となく法然の室の泊の遊女の話と混同していました。)

もちろん、観世清和、今回も素敵な謡と舞でしたが、毎回100点だと110点を観たくなるのがお客の常。凄いカリスマ性を感じさせるときと、そうでもない時がありますが、今回は後者。
彌右衛門と清和、声の質が似ていて兄弟なんだな、と思いました。そして観世清和はきっと毎回自分のビデオを見てチェックしているんだろう、と感じたのでした。前に気になった些細な所は次回は直っていますものね。

今回のアイの東次郎、良かったです。年寄りなのに大活躍。ここに東次郎を持ってきたのは大正解だと思います。

さて、後シテとツレ。シテは紫の大口。追善能だからでしょうか(本には緋の大口がデフォールトとある)。ツレも豪華なメンバーで謡いもすてきなのに、すぐに切り戸口から退場。もったいないというか、あまりに贅沢な設定ですね。

ワキはさっきの和幸のお父さん。これもまた似た感じ。こうやって血縁を感じさせる出演者を選んでいるのも追善能だから(笑)??

囃子も地謡も良かったです。観世銕之丞の地頭たぶん最高の出来ではないと思うのですが、それだけに名地頭と言われるわけがちょこっとだけわかった気がしました。



ここまで見てすっかり満足して残りは見ずに帰りました。

参考は
能の鑑賞講座 三 三宅譲 檜書店
by soymedica | 2012-04-03 22:01 | 能楽 | Comments(0)
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