五雲会 松虫ほか

d0226702_09314694.jpg五雲会 
2017年11月18日(土)12時より@宝生能楽堂

松虫
シテ 和久荘太郎、ツレ 亀井雄二、内藤飛能、金森良充、ワキ 館田善博、アイ 善竹大二郎
笛 成田寛人、小鼓 森貴史、大鼓 原岡一之
後見 前田晴啓、金森秀祥
地謡 辰巳満次郎ほか

観たのは上記のみですが、そのほかに咸陽宮(シテ 金井雄資)、葛儀(佐野弘宜)、殺生石(山内崇生)、狂言の口真似と栗燒がありました。咸陽宮、観たかったなー。


松虫は、酒屋にやってくる数人の男たちが、「松虫の音を聞きに行き阿倍野で倒れてしまった男」の話をし、彼をしのんで酒を飲みます。
なんだか不思議な客だ、と酒屋の主人が思っているとかれらはどこかへ去って行きます。シテだけ後までちょっと残り、自分は実は倒れた男の友人(で後追い自殺した)男の霊であると打ち明けます。
そして後場では阿倍野で倒れた友を懐かしむ男(これもまた故人)がやってきて舞を舞う、という話。

シテは宝生流若手第一人者の和久荘太郎。この人、なかなかハンサムだと思うのですが、物凄く表情が硬い。いつもこうなのか、力がはいっているのか。謡も所作もすてきなんだから、もっと普通の顔をしてほしい。
なんかね、ツレもピリピリしている感じで。

今回のアイは善竹大二郎。この人いつも今一つだなー、と思っていたのですが今回なかなか。明るい感じで良かった。

後シテで登場したのはいかにも幽霊らしい男(あの面はなんだろう)。酒を友と飲んだ日をしのんで舞を舞います。

前回観たのはシテが梅若紀彰。それが初見だったのですが色々な人の話を総合すると、かなり変わった演出だったらしい。でもとても印象に残った演目だったので、他の人が演ずるとどうなのか、ずっと気になっていました。
今回はいかにも宝生流らしい地味でまじめな舞台でした。
それはそれで良いのですが、そして今回のやり方が本来のやり方だと思うのですが、もう少し軽い感じでやっても良かったのではないかな。


本来は今まで見た事のない咸陽宮を見るつもりで(しかもシテが金井!)買ったチケットですが、残念なことに間に合わず。
松虫も気になる演目だったので満足でした。

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# by soymedica | 2017-11-21 09:32 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演十月 御茶の水 養老

d0226702_18053231.jpg国立能楽堂定例公演十月 演出の様々な形 養老改元1300年
2017年10月20日(金)18時半より

御茶の水 大蔵流
シテ(新発意)松本薫、アド(住持)網谷正美、(いちゃ)茂山千三郎

養老 水波之伝 観世流
シテ 武田尚浩、前ツレ 武田文志、後ツレ 武田祥照、ワキ 福王茂十郎、ワキツレ 村瀬慧、矢野昌平
笛 竹市学、小鼓 幸正昭、大鼓 大倉慶之助、太鼓 小寺佐七
後見 武田宗和、津田和忠、清水義也
地謡 武田志房ほか


御茶の水(和泉流では水汲)にせよ、清水にせよ、翌日のお茶会のために日が落ちてから水を汲みに行かされるという狂言、お茶席では「今朝一番の水を汲んで参りました」って言うのが定番のような気がするが、昔は違ったのだろうか。
東京ではあまり見かけることのない松本のシテ、網谷も千三郎もとても良かった。大蔵流は西と東では相当違いますが、西も大好き。


養老は今まで面白いと思って見た事が無いのだけれど、今回は面白く観られました。何しろ福王パパがカッコいい。ご長男もハンサムですが、お父様の渋さにしびれました。ワキもワキツレも白大口。勅使は紺地に金の狩衣、ワキツレはオレンジと威儀を正しています。
彼らは美濃国に不思議な水が出たらしい、調べるようにという天皇の命を受けてやってきたのでした。(ヘルメットに作業服じゃないのね)。

むこうから薪をしょって右手に水桶を持つ若い男がやってきます。桶は小書きによる持ち物だそうです。こちらも勅使に会うのですから(あらかじめわかっていたとはどこにも書いていないけれど)白大口。水衣は緑系統で質素。続いて出てくる老人も白大口。ばあさまは出て来ませんね。
老人と若者は親子で、養老の水のいわれを語り、勅使一行を案内します。ここの問答が非常にきれいで、実際に水の流れが目に見えるようです。

地謡が水の有難さをうたいあげますが、ここで何回か杖を扇に持ち替えるところがあって、シテは緊張するのだと、国立のホームページで武田尚浩が語っていました。悠々とやっているように見えましたがね。
地謡が若いせいか、何となく声が高くそれこそ瑞々しい。
そして若い囃子陣がとてもさわやか。

ここで親子は退場。息子の退場のテンポもゆっくりゆっくりなのが面白い。まず楊柳観音が出てきて舞います。これは小書きによるものだそうです(普通は末社の神が出る)。この舞、袖の扱いが上手いな、と思っていたら次に出てきた山神も上手。親子ですねー。
山神の出で立ちは頭に「ケーキ??」と思うようなお花を載せています。これも小書きによるものだそうで、花は赤いシャクヤク。
2人の舞を堪能して終わりました。

満足して面がなんだかチェックしてくるのを忘れました。

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# by soymedica | 2017-11-05 18:07 | 能楽 | Comments(0)

ござる乃座56th 舟渡聟 なごりが原

d0226702_20444705.jpgござる乃座56th
2017年10月19日(木)19時より@国立能楽堂

舟渡聟
船頭 野村万作、聟 野村萬斎、姑 石田幸雄

素囃子 早舞
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井広忠、太鼓 桜井均

新作狂言 なごりが原
作 石牟礼美智子、構成 笠井賢一、演出 野村萬斎
祇園の笛万呂/櫛稲田媛 野村萬斎、影身の守・草比古 深田博治、虫比古 高野和憲、 精霊 中村修一、内藤連、飯田豪


人気曲の舟渡聟。この前は万作の船頭で聟が中村修一でした。その時に比べて万作の息切れが酷い。そして演技のモードが「わしゃお前(萬斎)に任せた」という風に感じられるのは体調のせいか、共演者によるのか、それとも私の気のせいか。
でも、しつこく酒をねだるところなどはさすがに上手い。
おひげがちゃーんと灰色になっているところなんて、芸が細かいですね。
この次の新作狂言を見つつ思ったのだが、万作家の代替わりは非常にうまく行っているのではないだろうか。

さて、今回のもう一つの目玉、石牟礼美智子原作のなごりが原
舞台装置が狸腹鼓に良く似ている。あちらもやはり秋の野の風景でしたっけ。
秋祭りの終わった夜、そのあと行われる動物たち、精霊たちの祭りでも笛麻呂に笛を吹いてもらおうとする影身たち。櫛稲田姫も満月の中海からやってくる、というお話。
笛麻呂と櫛稲田姫、同一人物がやるというのはなぜか。萬斎の舞を見せたいからか?それとも両者が舞台に上がってしまうとあまりに説明的になって神秘性が無くなってしまうから??

海から灯籠を掲げた精霊がやってきて会場の照明が落とされたりと、ほのぼのした短編アニメのような味わいのある一品でした。



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# by soymedica | 2017-10-23 20:45 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演十月 呂蓮 遊行柳

銕仙会定期公演十月

2017年10月13日(金)18時より@宝生能楽堂


呂蓮

シテ 野村万作、 アド(宿主)中村修一、小アド(妻)飯田豪


遊行柳

シテ 清水寛二、 ワキ 宝生欣哉、 ワキツレ 大日方寛、則久英志、 アイ 深田博治

笛 一噌庸二、 小鼓 幸清次郎、 大鼓 柿原崇志、 太鼓 小寺佐七

後見 浅見真州、谷本健吾

地謡 観世銕之丞ほか



呂蓮は最近観たなぁ、と思って調べたらなんと4年前だった…。記憶にある石田幸雄の呂蓮と万作の呂蓮との与える印象の違うのに驚く。なんか万作は何をやっても突き抜けて透き通った感じ。

そして中村が最近上手になって来たのに驚く。もう一歩階段を上ってほしい気がするけれど。

修行中の僧―とはいっても字が書けるだけ大したもの、といった程度―が、心ならずも宿を借りた家の主を出家させてしまうことになる。そして、名前をつけてくれと言われ考え付いたのが呂蓮。これが題名。

と、それはともかく、これはオチが面白い。どうしようもない亭主を愛する気の強い妻が「のう、いとしいひと」となるあのパターンの話。



渋い渋い演目の遊行柳。世阿弥の西行桜を意識して観世信光が作った曲ということですが、柳、それも切株の柳を主人公にするとは。

遊行上人の一行が上総から北上し、白川の関に至ります。能のこの出だしの道行きがどの曲でも好きなんですが、これも素敵。秋の南東北ってこんなですよねー。

「風のみわたる景色かな」と、大小前の塚のつくりものの両側に僧が立つ構成が美しい。


お約束通り一行に呼びかける老人の登場。清水ってこんなにやせ形だったっけ?着つけのせいかな。それにしてもこの人はやっぱり上手い。舞台に入るまでかなり長いこと橋掛かりで謡うのだけれど、正面席の地謡寄り後方に座っていた私でもはっきりと詞章がわかる。声が大きいとか力強いというのではなく、ちゃんと老木なのだけれど。


この老人は西行法師の歌に呼んでもらったと言う生涯のハイライトを語って消えていきます。


地元の人が出てきて謂れについて語ります。しかし、この地元の人、なんでそんなこと知っているんでしょう。うーん、深田はこの装束に合うな、と思っているうちに寝落ちしてしまいました。失礼。


塚の中からなにやら声がしてきます。引き回しを降ろすのかそれとも後ろから出てくるのか?と一瞬考えてしまいましたが、前者でした。茶と金の狩衣に渋い緑の大口。素敵な色合わせ。


柳の徳が色々語られます。ぼんやり聞いていてなぜここに源氏の柏木が?と思ったら、蹴鞠つながりらしい。ちょっと無理があるような気もするけれど、柳の華やかな思いでというとその辺ぐらいでしょうか。

柳の精の舞はとても上品。素晴らしかった。

最後に柳の精は去っていくのですがその前に作りもののそばに下居する所があって、とても綺麗でした。


やはり清水寛二は上手い。


面は前シテが堀安右衛門の髭阿痩尉、後シテが作者不詳の皺尉。この皺尉がとても良かった。


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# by soymedica | 2017-10-20 13:09 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂特別公演 楊貴妃 宗八 烏帽子折

d0226702_13431378.jpg国立能楽堂特別公演
2017年9月30日(土)13時より

楊貴妃 金剛流
シテ 豊嶋三千春、ワキ 福王和幸、アイ 井上松次郎
笛 赤井啓三、小鼓 住駒匡彦、大鼓 柿原崇志
後見 松野恭憲、廣田幸稔、豊嶋幸洋
地謡 宇高通成ほか

宗八 和泉流
シテ(宗八)松田高義、アド(有徳人)佐藤智彦、(出家)野村又三郎

烏帽子折 観世流
シテ 観世銕之丞、ツレ 西村高夫、子方 片山清愛、立宗(盗賊頭)観世淳夫、(盗賊)谷本健吾、橋本忠樹、小島英明、奥川恒治、安藤貴康、長山桂三、柴田稔、桑田貴志、永島充、北波貴裕、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 則久英志、アイ(盗賊)野村万蔵、川村佑紀、能村晶人、(宿の亭主)野口隆行
笛 一噌隆之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 三島元太郎
後見 片山九郎右衛門、清水寛二、梅田嘉宏
地謡 観世喜正ほか


かなり力の入った出演者構成の特別講演。まずは楊貴妃から。金剛流のことはあまり知りませんが、豊嶋三千春と言えば重鎮。道理で地謡陣構成も力が入っている。なぜか前列の方が年取っている感じ。
あまりなじみの無い笛の赤井啓三。袴が派手な緑色で目を引く。
大小前に一畳台が出され、その上に小宮が置かれる。屋根は赤で引き回しは濃紺。宮を載せるときにちらっとシテの足袋が見えた。

亡くなった楊貴妃が忘れられない玄宗皇帝。方士に楊貴妃の魂魄を探しにいかせます。こんな美男に探しに行かせるのはまずいだろう…。残念なことに、私、この人の謡があんまり好きではないのですが。
蓬莱についてたまたまそこにいた松次郎に楊貴妃の行方を尋ねる方士。井上松次郎の語りが良い。この人は名古屋の人でしたっけ、あまり観ないのですが、上手だと思う。

宮の奥から声が。姿が見えないと、どんなに謡が上手くても絶世の美女というよりはダミ声のオバサンが謡っているような感じがするのが不利な曲ですね。景清なら良いけれど…。
方士が声をかけると引き回しが下ろされます。
鬘帯のすだれがかかっていることが多い宮の作りものですが、今回はそういう余計なものは無し。

やっぱり姿を見せると声の違和感は無くなりますね。
楊貴妃は玄宗皇帝との日々を懐かしみ、二人の秘密の言葉を教えます。
そして舞なのですが、このシテかなりご高齢ですね。遠目にも息が上がっているのがわかるところがありました。残念。

舞終わった楊貴妃は釵(かんざし)を方士に渡すと、方士はそれを手に橋掛かりへ。二の松あたりで振り返って下居します。このあたりの情感って小督に似てませんか?

ワキが退場すると楊貴妃は宮に入って下居、柱にすがって扇で顔を隠します。ここ、脚がよろよろして宮の真中に入れないのか、わざとなのか、ちょっと観る者に考えさせるくらい心配…。
そして、宮から一歩出て一畳台の上で留めます。

うーん、十年前にこのシテで観てみたかったな。


宗八は聞いたことがあるけれど初めての演目。
僧侶が嫌でにわか料理人になった男と、料理人が嫌でにわか坊主になった男が雇い主の家で出会い、結局互いの仕事を交換することになると言うお話。
料理人が作るように命ぜられるのが「鯛のうしお汁」は良いとしても、「鮒のなます」…。ちょっと嫌だな。
法華経を読む読み方が「ムリャリャムリャ…」だって、フフフ。

まな板、鯛、鮒、菜箸と包丁の作りものが面白い。万作家の作りものはまな板に磁石がしのばせてあるとか。


さてサラブレッド片山清愛くんの子方卒業記念の烏帽子折。何んと国立能楽堂では初演だそうです。
商人の吉次たちの一行に牛若が連れて行ってくれと声を掛けます。声嗄れしていて、練習の成果なのか声変わりなのか(後者みたい)。それにしても今時の子は顔が小さいなー。
一行が鏡の宿につきます。ワキとワキツレは囃子方の後ろへ、子方は後見座へ。

と、早打がやってきて、「鎌倉殿が牛若を探している」と触れまわります。
これを聞いた牛若。早く元服して姿を変えて追手をかわさないといけないと、一の松から烏帽子屋に声を掛けます。
時間外の客を不審に思う銕之丞の烏帽子屋。考えてみるとこの曲、シテの出番が少ないのですが、銕之丞、なかなか素敵でした。
そして、九皐会と京都観世会の混成の地謡がこれまた宜しい。皆で清愛くんを盛りたてようとしているのかな。

烏帽子は左折にしてくれ、という若い客を不審に思う烏帽子屋。(ただでさえ夕方に烏帽子屋に行くのは変なのに、平家の風とは反対に折れ、というのは不用心!)烏帽子の礼に刀を渡す。それを見た烏帽子屋の妻は「これは源氏関係の人間だ」と。この場面については国立の今月のパンフレットに小林健二が詳しく書いています。

この烏帽子、普通の立烏帽子ではなく、侍烏帽子。「三番の左折」の詞章と合わないような気がするのですが、誰か解説してくれないかな。

一行は赤坂の宿へ。
盗人の襲撃があるという噂におびえる吉次たち。「大丈夫、やっつけてやる」という牛若を頼りにします。大丈夫?!
お約束の狂言方の偵察陣。ハハハ。萬斎がやった時にはもっと華やかだった。万蔵は地味だなー。
普通に考えると先の烏帽子屋が盗賊に情報を売ったと考えるのが普通だけれど、その可能性を女房とのエピソードが消して、かつ祝言性を増しているのですね。

お約束のチャンバラ場面。今回は仏倒が少なくて若干地味でしたが、清愛 vs. 淳夫の御曹司対決もあったし、銕之丞の仏倒もあったし、満足。
清愛くん、早く大きくなって東京にも沢山来てね。






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# by soymedica | 2017-10-12 09:09 | 能楽 | Comments(0)