観世会定期能 6月

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観世会定期能 2011年6月5日(日)@観世能楽堂
正面席12500円


写真は観世能楽堂前の梅の木になっていた梅。(桃じゃないよね??)


賀茂
シテ 浅見重好、前ツレ 武田文志、天女 下平克宏、ワキ 大日方寛、アイ 三宅近成
大鼓 大倉正之助、小鼓 幸信吾、太鼓 小寺真佐人、笛 一噌康二

狂言 名取川
三宅右近、三宅右矩

千手 郢曲之舞
シテ 角寛次朗、ツレ 観世芳伸、ワキ 宝生欣哉
大鼓 守家由訓、小鼓 大倉源次郎、笛 松田弘之

仕舞 
芦刈 観世恭秀
自然居士 関根祥六
芭蕉 観世清和
猩々 武田宗和

能 鵺 白頭 附祝言
シテ 山階彌右衛門、ワキ 高井松男
大鼓 亀井実、小鼓 観世新九郎、太鼓 桜井均、笛 杉信太郎



賀茂

美しい女性が川で水を汲んでいると、上流から矢が流れてきたので持ち帰り軒にさすと、女性は妊娠し、子をうみました。子に「父は」と尋ねると、子は軒の矢を指差し、たちまち雷神が降りて来て、母も子も、神になりましたというお話。
これには「矢がホトに刺さり」、というちょっと直截なバージョンの神話もあるとか。
ネットで賀茂神社のホームページをみると、どうやら下賀茂神社にこの伝説があるらしい。上賀茂神社は雷神らしいので、こっちがお父さんかともおもうのだが、特に何も書いていなかった。忘れなければそのうち調べてみよーっと。誰か知っていたら教えてください。
(しかし、下賀茂神社のホームページに皇紀2671年ってでかでかとあった。何のことかわかる人、いないんじゃないだろうか。

それはさておき、楽しめました。脇能って退屈そうだと思っていたけれど(誰かが「竹生島」って退屈だと教えてくれたので)、前に見た「絵馬」もこれも華やかですばらしい。
シテの水汲み女が来ていた小袖が灰緑というのか、ちょっと抑えた色が使ってあってシック。

アイは末社の神様ということで、神様にもいろいろランクがあるのです。かるーいノリで、ワキに「ようこそ。偉い神様たちが出てくる前の退屈しのぎに、舞をおみせしましょう。」なんて、言っちゃいます。

後場の舞は天女と雷神と2種類見られて対比が面白いし、お得。



狂言の名取川は、忘れっぽい男が、川に名前を流しちゃう話。
こういう上品な笑いが能の間に入ると肩の力が抜ける、というのがよくわかる。


千手

一の谷の合戦で捕らえられた平重衡のもとに源の頼朝から遣わされた千手前が訪れる。出家を許されなかった重衡と千手は舞を舞い、酒を酌み交わして、一夜を惜しむという話。
林望さんの本によると、重衡は才気煥発、モテモテの色男だったようで、捕らえられた後もあちこちで惚れられていたらしい。
お能では、品よく酒酌み交わし舞を舞うだけだけれど、原作となった平家物語では前夜は入浴する重衡のお背中を流したり...。そこに座っているワキの狩野介宗茂さん、気を利かせてひっこまないと。

とてもきれいなのですが、あんまり印象に残らない曲でした。





これを見に来たのでした。(でも間で寝てしまった。まあ、大勢に影響ないが)。
どうも私は小鼓の観世新九郎がいつも気になる。「あれで、良いの?ああいうものなの?」というふうに。今まで何回か聞いた大倉源次郎のときには思わないから、相性でしょうか。
頼政に退治され、うつぼ舟に入れて流された怪物の「鵺」が化けて出るのを、旅の僧が祈って成仏させる話。
もともとが化けものなんだから、化けて出るって言うのも不思議な…。

切能というのだそうですが、鬼が出てきて盛んに舞う後半は、私にはどの曲も同じに見えます。前半、「いや、やられちゃったよ」と、鵺になったり頼政になったりのところのほうが、面白い。いや、後半の舞も見事でしたが。




参考
賀茂:能へのいざない 味方玄 淡交社
千手:能よ古典よ! 林望 檜書房
鵺:同上、
  粟屋能の会のホームページ、演能レポートに詳しいです。
  http://awaya-noh.com/modules/pico2/content0059.html
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# by soymedica | 2011-06-06 20:27 | 能楽 | Comments(0)

第27回 二人の会

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第27回 二人の会

2011年6月4日(土)14時
@十四世喜多六平太記念能楽堂
A席(正面後方) 7000円






狂言 二人袴
シテ(親)山本東次郎、アド(舅)山本則俊、アド(太郎冠者)遠藤博義、アド(聟)山本凛太郎

能 松風 見留
シテ 塩津哲生、ツレ 香川靖嗣、ワキ 宝生閑 アイ 山本泰太郎
大鼓 柿原崇志、小鼓 大倉源次郎、笛 一噌仙幸



そういえば「二人の会」があるんだ、と仕事の後で電話したら券ありと。1時少し前に能楽堂に到着し、扉の前で待つこと15分。かなり良い席が残っていました。2階自由席3000円というのも魅力的だったけれど、オペラグラスが無かったので。

時間が余ったので駅まで戻って何か食べよう、と歩いていたら、前から見覚えのある男の人が。思わず挨拶しそうになって踏みとどまった。粟谷明生でした。きちんとしたふつーのビジネスマン、という感じで地味に歩いていました。

有名な二人が演じる会ですが、どうやら塩津哲生と香川靖嗣の二人が交互にシテをやる、というコンセプトらしい、と当日パンフレットを見てわかった次第。
会場はお弟子さんらしいオバサマ(かなりおばあ様に近い)たちと、なぜか大学の先生と女子学生たち、という組み合わせ多し。


二人袴、有名ですね。舅どのに挨拶に行ってこい、と言えば「人形買ってくれなきゃいかない、子犬ほしい」などという幼い息子。「ああ、買ってやる、買ってやる」なんて甘やかすから聟入り(嫁のうちに挨拶に行くこと)にまで付いて来て欲しい、なんて言い出して、結局袴が足りない、ってことになっちゃうのですよ。
たぶん凛太郎クンの実年齢が聟に想定されている年齢に近いのでしょうね。息子を呼ぶのに「凛太郎」なんて呼んでましたから。
この聟の役をもっと年のいった人がやることはあるのでしょうか。


能 松風
とても有名な曲なのだそうですね。シテの塩津哲生はかなりでっぷりとした体形らしく最初のうちはそれが気になったのですが、途中からは全く気にならなくなったのは素晴らしい演技のためでしょう。でも、この方股関節が悪いのでは?(失礼)。

田舎に隠遁した業平が愛人とした現地の純真な姉妹が、業平が都に帰ってしまった後も業平を慕い、幽霊になって出てくるという話です。姉のほうが業平の残した狩衣と烏帽子を身につけて狂乱の舞を舞うところが見せ所。

謡では「月はひとつ、影は二つ」となっていて、私が見た写真でも水桶は二つの演出でしたが、喜多流は水桶は一つが普通なのでしょうか。

解説では
  ― 「破ノ舞」の中、松と舞台端の挟間を廻り込む難技を示す。橋掛りに舞い流れ、扇をかざして作り物を見込、み「破ノ舞」を舞い納める演出が小書「見留」である -
とのことです。

だったら、舞手の体格を見込んで、作り物をもっと奥に置いたらいいのに(笑)。だって、かなり引きずってびっくりしたんですもの。

今回、あまり主張しない笛が曲と合って良い感じではなかったかと思ったのでした。


色々な本で言及されている曲ですが、
これならわかる、能の面白さ 林望 淡交社
能 中世からの響き 松岡心平
能の表現 清田弘 草思社
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# by soymedica | 2011-06-04 23:15 | 能楽 | Comments(0)

第5回 日経能楽鑑賞会

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第5回日経能楽鑑賞会 6月2日 6時半より
@国立能楽堂
正面席10000円

狂言 蝸牛 野村万作、石田幸雄、深田博治

天鼓 
シテ 浅見真州、ワキ 宝生欣哉、アイ 石田幸雄
大鼓 亀井忠雄、小鼓 大蔵源次郎、太鼓 観世元伯、笛 一噌康二










狂言と能1番で正面席1万円とは高い!
そのせいかいつもの国立能楽堂のお客さんより(服装から推測する限りでは)平均年収は数百万ほど高め。素敵なおばさまの数人づれとか、休み時間や終わった後に名刺交換をする紳士とか。そして「浅見先生」を連発する女性多し。習っているから「先生」なのか?
そういえば切符を買うとき電話した日経の人も国立能楽堂の人も「先生」とつけていた。習っているなら先生と呼ぶのは当然としても、切符売る側が敬称つけてどうするのよ。

いつもは閑散としている売店の前に人だかりが。でも、売っているのはいつものものだった。

しかしですよ、中入りの瞬間にどこかで「メールです」と甲高い携帯着信音が響き渡ったのには驚いた。今日は携帯妨害装置が働いていないようなのには気づいていたが…。

それと、観世でもいるのだがバッグか財布に鈴をつけている人。演能中に音がするんですが…。


気を取り直して、まずは狂言から。
野村万作が素晴らしいのはさておき、深田博治が良かった。
狂言の後から入ってくる人が多かったのですが、是非ご覧になられては。


天鼓

鼓の夢を見て授かった息子(故に天鼓と名付けられる)に本当に天から鼓が降りてくる。それを帝(中国の後漢時代)が召し上げて、抵抗した息子は呂水に沈められてしまう。ところが召し上げた鼓は鳴らない。
というシチュエーションのなか、帝のお使いが天鼓の父のところにやってくる。父親なら音を出せるだろう、と。

自分も殺されること覚悟で出かけた老父は見事鼓を鳴らす。帝は喜び、褒美をとらせ、さらには呂水のほとりで天鼓の管絃講をする。
それに喜んだ天鼓の霊が現れて鼓を打ち鳴らして舞い踊る、という筋。

何となく(気のせいかもしれないけれど)、地謡の部分が少なくって物足りなかった。あの男性合唱が好きなのですよね。
それと短期間の間に、日本を舞台にした普通のパターンー名所を織り込んだセリフを言って「着きにけり」と、旅の僧が満足するあれーに馴染んじゃったので、出だしから不思議な感じ。

肝心のシテはどうだったのかというと、「慣れてますなー」という感じ。ドミンゴ東京公演、といえば近いかな。上手だし、花もあるし、ソツも無いし。でもなんであれだけ多田富雄が好んだのかは良く分からなかった。

…間狂言の間にいきなり文庫本を取り出して読んでいる女の人がいたのには驚いた。


あらすじは
味方玄 能へのいざない 淡交社
その他
能ー中世からの響きー 松岡心平 角川叢書
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# by soymedica | 2011-06-03 00:21 | 能楽 | Comments(0)

東京観世会 2011年5月28日

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東京観世会 2011年5月28日(土曜)午後1時から4時20分
@観世能楽堂 
指定席7870円


弱法師
シテ 野村四郎、ワキ 森常好、アイ 野村万蔵
大鼓 柿原崇志、小鼓 幸清二郎、笛 一噌千幸

狂言 雁大名
野村萬、野村扇丞、野村万蔵




仕舞
絹巻キリ 岩屋 稚沙子
敦盛クセ 河西 暁子
網の段 山階 弥次
歌占キリ 津村 聡子

鵜飼 附祝言
シテ 大松洋一、ワキ 高井松男、アイ 野村太一郎
大鼓 亀井実、小鼓 住駒充彦、太鼓 小寺佐七、笛 栗林祐輔


すぐ後ろで観世のカメラマンが写真を撮っている目付柱寄りの正面席でした。
でも、端の席が取れなかったら自由席のほうが空いているのでよいかもしれない。


弱法師

後妻の讒言で一度は捨てた我が子俊徳丸。父親は、放浪の末盲目となった俊徳丸と天王寺で行きあい、連れ帰る、という話。三島由紀夫の小説にもなったし非常に有名ですが、もとはこんなシンプルな話だったのですね。

本日は野村四郎目当てでチケットを買ったのですが、弱法師はもしかしたら当たり役なのでしょうか。それこそよろよろした感じです。ほかの人の弱法師と比べてみたいと感じました。

しかし、このお父さん(通俊)、ひどい人ですね。息子と確信しているのに「昼間は人目があるから夜まで待って連れて帰ろう」って…。



狂言 雁大名

大名がそんなズルしちゃて良いの?という可笑しな能。
雁を売る商人が妙に立派なのも可笑しさを増します。



鵜飼

禁漁の石和川(今の笛吹川)で鵜飼漁をして、簀巻きにされて淵に沈められた漁師の怨霊の話。旅の僧(日蓮だと言われているそうです)が泊まったお堂に漁師が怨霊として出てきます。後シテは、閻魔大王。漁師は生前何にも良いことをしなかったけれど、坊さんに親切にしたからまあ、許してやろう、と。

楽しめました。舞が見どころということですが、謡も良かった。

ところで、後シテの閻魔様、走って入ってくるのだから、最後も走って退出したらどうかと思うのですが。閻魔様しずしずと退場、ってどうなのよ。というのは、あまりに素人な感想でしょうか。鬼が出てくるものでもいつも退場はしずしずとですよね。



今回仕舞は全員が女性でした。そして全員が全員とも袴の着付けの後ろ姿で若干歪んでいるのが気になったのでした。


弱法師:あらすじで読む名作能50 多田富雄 世界文化社
    能楽への招待 梅若猶彦 岩波新書
    (あらすじの説明ではなく、梅若での演能の心得に関する解説あり)
鵜飼:演目別に見る能装束 観世喜正 淡交社
    装束好きのおばさま向けの写真集かとおもったら、なかなか役に立つ本です。
    お勧め度高し。
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# by soymedica | 2011-05-29 10:16 | 能楽 | Comments(0)

能の見える風景

能の見える風景 多田富雄 藤原書店
182ページ 2200円

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我が家に糸井重里のホームページで発見して買った黒い土鍋がある。土鍋にしては何と作った人の名前もわかる高級品。(伊賀の陶工福森雅武氏。今でもほぼ日刊イトイ新聞で買える。)
この本を読んでいたら、何とその人の作った土鍋はあの白州正子が愛用していたらしい(もちろんネット販売の普及品とは違うのだろうが)。糸井重里はどうしてこの人に土鍋を作らせようと思ったのだろうと不思議に思っていたのだが、きっと白州正子経由なのだろう。

それはさておき、本は多田富雄が見た能の評を集めたもの。どちらかというと厳しい研究者、というイメージの多田富雄はこんな優しげな(内容はやさしくないが)文章も書いたのですね。
能に対する愛着が伝わってくる文章です。
とことどころ舞台に対する感情移入がすごく激しいのに、嫌味にも青臭くもならない文章が凄い。

なお、書かれたのは筆者が脳幹梗塞に倒れた後のものばかりです。それ以前のものを集めた「脳の中の能舞台」、ぜひ読んでみよう。
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# by soymedica | 2011-05-28 00:15 | 本・CD・その他 | Comments(0)