宴の身体

d0226702_23152618.jpg宴の身体 バサラから世阿弥へ 松岡心平 岩波現代文庫

一言で言うと、こういう系統の本があったらまた読みたいので、誰か紹介してくさだい、という読後感でありました。気に入りました。
色々な雑誌に執筆されたものを一冊にまとめた本ですが、その際かなり編集に気を使ったとみえて統一感があります。

能を生んだ中世という時代、連歌やさらに高級とされた詩歌との関係、踊念仏そのほか宗教との関係などなど、一般向けにさらっと読めるように書かれています。
研究書ではなく、ハウツーものでもなく、満足感たっぷり。

ところで、「幽玄」とは、もともと少年美を言ったらしい。それも17,8までの。発育の良い今で考えると15,6歳くらいまででしょうか。何となくピンとこない。子方ってもう少し小さな子を考えていたせいかもしれません。
でも、確かにヴィスコンティの映画「ヴェニスに死す」のあの男の子は「幽玄」かもしれないな、とふと思いました。

後書きや奥付からは1991年に単行本として発行され、2004年に文庫化されたものだと思うのだが、きっと評判が良かったのでしょうね。
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# by soymedica | 2011-06-23 23:16 | 本・CD・その他 | Comments(2)

国立能楽堂 音曲聟 通盛

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国立能楽堂 定例公演 6月17日(金)18時30分
正面席 4800円

音曲聟 和泉流
シテ(聟)三宅近成、アド(舅)三宅右近、小アド(太郎冠者)三宅右矩、小アド(教えて)前田晃一

通盛 観世流
シテ 梅若玄祥、ツレ 梅若紀彰、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 御厨誠吾、アイ 高澤祐介
笛 松田弘之、小鼓 曽和正博、大鼓 白坂保行、太鼓 金春國和


本日は職場を早く出て何か食べてから、と思っていたら帰り際に呼び止められたり電車が少し遅れたりで、結局ぎりぎり。
能楽堂前の路上に、こんなんで東京の道を曲がれるのだろうか、と思うような長―――いストレッチリムジンが止めてあったが、関係者やお客さんのでは無いでしょうね。でも、あの辺あんな車が止まりそうな建物はありませんが。もしや能楽界の大パトロンとか。


まず、狂言。音曲聟とは、うーーーむ、聟に恥をかかせまいとする優しい舅。招待客の野蛮人の王様に恥をかかせないようにフィンガーボールの水を飲んだイギリス女王(ヴィクトリアですよね、今のエリザベスじゃないよね)のような話。
この狂言のおうちの人たちは皆なかなかのルックス。あとで玄祥さんや地謡の銕之丞さんを見ていてふと思ったのですが、狂言の人って太った人いませんね。


通盛。昔は人気曲だったそうですが、そして私はとっても良い話だと思うのですが、意外なほど解説本が少ない。手持ちの本では下の本(すでに絶版)だけ。能楽堂のプログラムの解説も良かった。

平家の多くの人が海に沈んだ鳴門で一門を弔っている僧。その前に現れた漁師と女。それは通盛とそのあとを追って死んだ小宰相の二人の霊でした。後場では合戦前の最後の別れを惜しむ二人と、討ち死にする通盛の様子が演じられますが、最後の晩愛人(通盛には本妻、とはいってもまだ子供、が別にあった)と別れを惜しんでいると、弟に「何やってるんだ!」と言われてしまうのが、恥ずかしい、と。昔からどこでも長男は優しくて、次男はきかん気だったのですね。

地謡には受勲した銕之丞さんも。でも、だれか一人だけ妙なビブラートの美声を発していたような、あれが銕之丞さんに思えたのですが、まさかね。

今回は結構予習していったので舞台もじっくり見られたのですが、席の選択を間違った。正面席前のほうの右端だったら
のですが、ワキ柱がじゃまになってワキツレがほとんど見えない!!これは残念。多少前の頭が邪魔になっても、真ん中寄りを買うのだった。(国立能楽堂はこの席を一番良いランクで売っているけれど、もっと細かい席割をしている公演ではこの席はランクが落ちるのも、尤もな話。)


さてさて、今回も本を買っちゃった。でも、文庫本で800円だから、と、自分に言い訳。
今日は品揃えがいつもと違うな、と思ったら檜書店ではなくて、能楽書林でした。

参考は
能の平家物語  秦恒平 朝日ソノラマ
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# by soymedica | 2011-06-18 13:02 | 能楽 | Comments(0)

太郎冠者を生きる

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太郎冠者を生きる 野村万作 白水社

1984年に単行本として出された本の文庫化。
万作は1931年生まれだそうだから、まだ53歳の時です。ちなみにあのネスカフェの広告が1977年。あのとき「猿に始まり狐に終わる」というコマーシャルを見て、子供ながら「これ、見てみたいな」と思った記憶があります。

出版されたのが古いので、その間襲名があった人もあり、誰が誰やら最初はちょとややこしいですが、面白い本です。東京に出てきてやっと一家をかまえたおじいさん(万斉)が一家の基礎を作り、それをしのいで芸の基礎を作った父、万蔵。息子たちはさらに父を越えようか、という時点での話です。

気の向くままに口述したものをあとから字にした、ということです。編集者の手が入ってもいるようですが、本人が語る面白さや臨場感はあってもいささか統一性に欠ける仕上がりの本になってしまっています。すぐれたジャーナリストに聞き書きをして書いてもらった方が良かったのでは、とも思いますがこれはこれでまた別の面白さがあるかもしれない。

万作が他のジャンルに色々踏み込んだり、海外公演をやったり、というのは初めてしりました。今の二世萬斎が、留学したり、現代劇をしたりするのは、やはり万作を意識してのことなのですね。

「釣狐」のあとにくるのは、「普通の太郎冠者を普通に演じる」という課題だそうです。万作59歳の時点を評した人は「まだまだ」と、文庫のための後書きに書いていますが。

これは絶版になってしまっているのでアマゾンの古書で買いました。
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# by soymedica | 2011-06-15 21:01 | 本・CD・その他 | Comments(0)

国立能楽堂 子盗人 熊坂

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国立能楽堂 普及公演 6月11日(土)
午後1時より
正面席 4800円

解説 義経伝説と盗賊 佐谷真木人

狂言 子盗人
シテ 石田幸雄、アド 高野和憲、小アド 野村万作

熊坂(金剛流) 長床几 青のヶ原道行
シテ 金剛永謹、ワキ 高安勝久、アイ 深田博治
笛 寺井久八郎、小鼓 曽和正博、大鼓 佃良勝、太鼓 桜井均
後見 廣田泰三、豊嶋幸洋



解説は真面目そうな先生。私の聞きたいことを話してくれました。義経伝説のあれこれなど。考えてみると私の常識は日本史の伝説部分が完全に欠落している。だって、日本史で義経ってあまり教えないでしょ?お話としては面白いけれど、本筋に絡む人ではない。そういえば忠臣蔵も教えませんよね。忠臣蔵がどんな話だかごく最近理解しました。でも、世の中の人はどこでそういう常識を身につけるのでしょう。


まず、狂言子盗人。盗みに入った家に寝ていた赤ん坊があまりに可愛いのであやしているうちに家の者に見つかってしまう間抜けな泥棒の話。解説で、サザエさんに出てくるような泥棒だと言っていましたが、うまい説明ですね。
石田幸雄、なかなかはまり役。孫をあんなふうにあやしそうな…。野村万作はもっと厳しい爺さんのような気がする。


熊坂
先に書いたように私は義経の話ってあまり得意じゃないのだけれど、熊坂長範ってどこかで聞いたような気がします。歌舞伎にも登場する有名な大泥棒だそうで、義経に退治されてしまった人。これは、熊坂が法体の幽霊になって出てきて旅の僧に「私を弔っておくれ」と頼むのが前場。後場は熊坂が義経の一行に夜襲をかけて逆に打ち取られてしまう様子を長刀を持って舞う、というもの。同じ話をリアルタイムとして語る「烏帽子折」を「現在熊坂」、こちらを「幽霊熊坂」と呼ぶのだそうです。

シテは前場は直面、後場は長霊べしみという特別の面をかけます。

…それでですね、金剛永謹さんと言う方、結構えらの張った立派なお顔なのですよ。ですから、大変失礼ながら後場の長霊べしみ面とあまりギャップが無いというか…。前場も幽霊らしくとっても怪しげな感じを出していました。今後私がチェックすべき能楽師リストに入れておこう。

金剛流というのは京都が本拠地だそうです。何となく謡がやさしい感じ、と思うのは先入観に縛られているでしょうか。舞が定評があるとききました。
小書きの長床几というのは後場の比較的長い間腰をかけたまま舞う、という演出だそうです。


本日は満席。脇正面に20人ほどの女子高生のグループがいたせいもあるのでしょうが、ちょっとびっくりしました。だって、この演目、あまり解説書にも無いし、人気演目では無いだろうと思っていたので。金剛永謹人気なのでしょうか。正面席は若者(私から見て)と、中年男性が目立ちました。
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# by soymedica | 2011-06-11 17:51 | 能楽 | Comments(0)

ベッジ・パードン

ベッジ・パードン

作・演出 三谷幸喜、企画・制作 シス・カンパニー
出演 野村萬斉、深津絵里、大泉洋、浦井健治、浅野和之
@世田谷パブリックシアター
S席 9000円



三谷幸喜の新作、ベッジ・パードンを見に世田谷パブリックシアターへ。
満席。

三谷幸喜は救急車騒ぎや離婚騒動の中、2作目御苦労さま(ま、余計なお世話か)。留学した漱石が恋をする、というお話。漱石さん、森鴎外になっちゃうの?と思わせる笑いあり、涙ありの3時間。
若干削って2時間くらいにした方が気軽に見られるのに。

漱石役は野村萬斉。萬斉、普通に立っている姿勢が「カマエ」。あれはわざと何だろうか??そして発声なども現代劇の役者とは異なるということがはっきりわかる。なので萬斉を現代劇の中に放り込むと、何だか一寸ズレがありまさに異邦人。初めに萬斉ありきの脚本だったらしいが、彼の異質性を上手く生かしたものだな、と感心。

一人11役などのアクロバットをする浅井和之、上手いな。
この劇は漱石を取り囲む他の役者が上手くないと漱石の異邦人性が浮き彫りにされないのだが、そして漱石役が別のしっかりした文脈を持っていないと成り立たないのだが、そこが上手く言っているので、とても楽しい。

これ、今後再演されることがあったら配役で印象がずいぶん変わるに違いない。

ということで大満足でした。
    
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# by soymedica | 2011-06-08 08:11 | その他の舞台 | Comments(0)