<   2018年 01月 ( 4 )   > この月の画像一覧

国立能楽堂定例公演一月 鬼継子 忠度

d0226702_15335448.jpg国立能楽堂一月定例公演 
2018年1月19日(金)18時30分より

鬼継子 和泉流
シテ(鬼)石田幸雄、 アド(女)野村萬斎

忠度 宝生流
シテ(老人・平忠度)佐野登、 ワキ(旅僧)福王和幸、 ワキツレ(従僧)村瀬慧、矢野昌平、 アイ(所の者)高野和憲
笛 森田保美、 小鼓 森澤勇司、 大鼓 石井保彦
後見 宝生和英、渡邊茂人
地謡 辰巳満次郎ほか



鬼継子はたぶん見るのは初めて。狂言の鬼はちょっと間抜けでしかも女好きが多いのだが、この主人公も一人子供を抱いて夜道を歩く女にプロポーズ。子守を頼まれたらその子を食べたくなってしまう。
女の夫が地獄に落ちている理由が、「老馬の歯を作り変えて若馬にして売った」というのがなるほどなるほど。
あんまりオチの無い話。
石田幸雄と萬斎の組み合わせって好きだな。


忠度は見るたびだんだん好きになる話。
藤原俊成の身内の僧たちが西国行脚をしている。とても若い一行。福王和幸は「旅の僧」というにはぴっちり小綺麗すぎる印象で損をしているような気がします。この度の村瀬の謡は三人でやっているせいかまあまあ。少しずつよくなっています。

なんだか良い桜の木があるぞ、と言っているところにお爺さん登場。
汐を焼いて作っているお爺さんにしては品がよろしい。教養もある。ただ気になるのは、後ろを向くと鬘の下から真っ黒な髪の毛が首筋に。
忠度の話をし、一夜の宿ならこの桜の木がよろしいではないか、という老人。

中央で着座しているシテの杖の位置を直す後見。ちょっと不思議だったけれど、最後には体の向きを変えてすっと杖を持って立ち上がる。
考えてみるとこの能の前場は割と長いのだけれど、さらさらと演じた感じがしました。
この人の持ち味なのでしょうか。

アイは高野。今日はずいぶんと格式ばっているなー、と思ったけれど格調高くて良い語りでした。
桜のいわれ、「さざ浪や」の歌を入れると俊成が約束したいきさつなど、語ってくれます。
満足しました。

後シテ登場。
「あなた、俊成の縁者なら、定家に頼んで私の歌に名前をちゃんと入れてください」と、かなりはっきり頼む。
そしてちょっとの間床几にかけますが、その後は橋掛かりまで使って忠度の最後を再現。
これもダイナミックというより、いかにも平家の上品な武者というイメージなんですが、
最後に「箙をみれば不思議やな、短冊を」のところで手が上手く後ろに回らず手間取る。
後見がすかさず手伝います。

忠度って本当はどういう人だったんだろう。勇猛な田舎育ちの武将で、でも和歌が好き。どちらの面を強く押し出すか演者によって違うのかしらん。本日は後者の方のお考えだったのかしらん、と思った一日でした。

また近々この曲を観てみたい。

本当は江崎欽次朗がやるはずだったワキ。ご病気だとか。昨年8月に拝見した時にはお元気そうでしたが、ここのところ立て続けですので心配ですね。

面は前シテが三光尉、後シテが中将。




[PR]
by soymedica | 2018-01-30 21:42 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演一月 翁 玉井 佐渡狐 鷺

d0226702_16163396.jpg銕仙会定期公演一月
2018年1月13日(土)13時半より@宝生能楽堂

翁 柴田稔、 三番叟 野村万之丞、 千歳 青木健一、 面箱 河野佑紀
玉井 
豊玉姫 谷本健吾、 玉依姫 安藤貴康、 海神ノ宮主 観世銕之丞、 彦火火出見尊ひこほほでのみこと 宝生欣哉、 従者 則久英志、御厨誠吾、 鱗ノ精 山下浩一郎
笛 藤田次郎、 小鼓頭取 曾和正博、 脇鼓 曾和伊喜夫、森貴史、 大鼓 大倉慶之助、 太鼓 小寺眞佐人
後見 大槻文藏、浅見慈一
地謡 清水寛二ほか

佐渡狐
シテ(佐渡の百姓)野村万蔵、 アド(越後の百姓)能村晶人、小アド(奏者)野村萬
後見 山下浩一郎

シテ(鷺)浅井文義、 ツレ(王)浅見真州、 ワキ(蔵人)森常好、 ワキツレ(大臣)館田善博、森常太郎、梅村昌功、野口能弘、野口琢弘、(輿舁)高井松男、吉田祐一、 アイ(官人)能村晶人
笛 松田弘之、 小鼓 大倉源次郎、 大鼓 亀井忠雄、 太鼓 小寺佐七
後見 観世銕之丞、北浪昭雄、永島忠侈
地謡 野村四郎ほか


前に銕仙会の正月プログラムを見たときには大雪で、見所がらがらだったなーと思いつつ、到着。本日は晴天のために皆さんおしゃれして満席。
それにしてもいつもと違って客層が宜しく無い。年に一度正月気分を味わうために来る人が多いのだろうか。なかなかおしゃべりが終わらない、なかなか着席しない。遅れてきて後ろに立っている人がいるというのも落ち着かないものです。

は誰がやってもたいして違わない様な気がしますが、まあ、上手い人は上手いし下手な人は下手、かな。何やっても上手な柴田は翁も上手かった。ブログ確認したら初役だそうで、びっくり。
翁を何十回もやっていると思われる観世清和がさらっと謡うのに対して、こちらの翁は力強い謡でしたが、それもなかなか好し。
千歳の青木も若々しくて良い。やはり千歳はある程度若年でないと感じが出ないですよね。

面箱の河野は割と緊張していたけれど。それとやや箱の位置が低くは無かったか。
万之丞は割と慣れた感じで舞っていたが。
終わって面を後見に返すところがわりと無造作な感じでした。あれはあれで、良いのだそうですが。


引き続き玉井。古事記の海幸彦山幸彦の話ですね。
唐冠の宝生欣哉が二人のお供を連れてやってきます。そしてお兄さんの釣り針を無くしてしまい、代わりのものではなくもとの針を返せ返せと言われるので探しに行こうと、言います。
皆が海底に着くと、欣哉は後見座へ、お供は囃子方の後ろへ。

なぜ?と思ったらここで初めて正先に井戸と桂の作り物が出されるのです。
準備が済むと、彦火火出見尊は井戸をチェックし宮の様子をうかがうためにワキ座へ。

二人の姫登場。最初に出てきた方がわりとふっくらした顔立ちの美人で、次に出てきた方があごが細くて薄幸の美人風でしたが、後からのほうが奥さんになる豊玉姫でした。
尊は「美人が来たけれど、声かけにくいから隠れよう」と、木に隠れているとその姿が井戸にうつる。海底の都では女性は積極的で「あら素敵、あなたのお名前は?」と女性のほうが声をかける。
三人が名乗りあっていると、大小前に一畳台が出され、尊は台上へ。めでたしめでたし、結婚したのでした。

ここで、もういらないからと井戸と木の作り物はひかれてしまいます。
そして、姫は懐妊。
そこで釣り針のことを打ち明けて探し出して帰る、というのもなんだか変だけれど、竜宮の遺伝的多様性に寄与したからもう竜宮の側でも聟殿に用は無いというのかもしれない。

姫たちが尊への贈り物の準備のために引っ込むと、アイ(鱗の精だそうだ)登場。釣針が赤目という魚の口に引っかかっていたことなどを話したあと、舞を見せてくれます。なかなか楽しかった。

そしてお姫様がそれぞれ玉をもって登場。ひとりが上が白の舞衣に下が深緑の大口、もう一人は上が赤で下がオフホワイト、と二人揃うと視覚的に豪華。玉の色も金属光を放つものと緑青のようなものとをそれぞれ持っています。
次いで姫たちが幕の方を向くと、龍王登場。巨大な龍を頭の上にのせ、髪の毛は真っ白、黒っぽいお顔に黒いあごひげ。半切の模様は鱗模様のあいだに竜がいるまさに玉井のためのもの。狩衣は碇の模様の様です。自然木の枷杖を持っています。
頭の上の龍の作り物が巨大だなー、と思ったら、これは老体の龍なので、春日龍神の龍戴などよりも大きいのだそう。そして、しっぽには雄なので剣が付いているそうですよ。

龍王は巨大な釣針を尊に渡します。そして一畳台の上へ。
2人の姫も尊に玉を捧げます。
姫たちが舞った後龍王も降りてきて舞いますが、舞うと言うよりも龍戴が大きいので歩く感じ。でも、最後にその巨大な龍の上に袖を返すのですよね。

尊の前に置かれた玉をどうするのかな?と思ったら、最後に姫たちがまた捧げ持つのですが、そのときに豊玉姫がよろけたのでびっくりしました。
龍王が尊の袖を取って鰐の背に載せます。
尊、玉を捧げた二人の姫、尊の従者、の順に幕へ。
それを見送る龍王がカッコ良かった。

面は
豊玉姫が増女で洞水作、玉依姫が北沢一念作の小面、海神ノ宮主が要石悪尉で出目半蔵作。

ここまでで3時間。浅井文義の鷺、とても残念だったけれど失礼しました。

参考は演能別にみる能装束 観世喜正ほか 淡交社

[PR]
by soymedica | 2018-01-20 15:16 | 能楽 | Comments(0)

近松心中物語

d0226702_11160002.jpg近松心中物語
2018年1月12日(金)18時半より@新国立劇場中劇場

作:秋元松代、 演出:いのうえひでのり
忠兵衛:堤真一、 梅川:宮沢りえ、 与兵衛:池田成志、 お亀:小池栄子
市川猿弥、立石涼子、小野武彦、銀粉蝶


もともと30年ほど前に近松を土台にして書かれた戯曲らしいのですが、評判が良く、何回も再演されているようです。
シスカンパニーと「いのうえひでのり」の組み合わせなら上質の娯楽作品に出来上がっていること間違いなし。早くチケット押さえて正解でした。さらに主題歌(?)を石川さゆりが歌ったり、といろんな層を取り込む努力がされています。

筋書が定番で先が見えるので、それだけ役者の魅力や実力が必要な話だと思いますが、その点も満足。
特に小池栄子が良かった。

舞台美術が良いなー、とおもって名前を見たら松井るみさん。
検索するとこの人の舞台を随分観ていて、しかも素敵だと思ったものばかり。
本日の収穫でした。

まだ、チケットあるようでしたら、皆さんも見に行ってね。

[PR]
by soymedica | 2018-01-15 16:14 | その他の舞台 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演一月 難波 松楪

d0226702_15114434.jpg国立能楽堂定例公演一月
2018年1月6日(土)13時より

難波 金春流
シテ 金春安明、 ツレ 金春憲和、 ワキ 殿田謙吉、 ワキツレ 大日方寛、則久英志、 相 山本則秀
笛 一噌隆之、 小鼓 曾和正博、 大鼓 内田輝幸、 太鼓 三島元太郎
後見 本田光洋、横山紳一
地謡 辻井八郎ほか

松楪 大蔵流
シテ(攝津国の百姓)山本則孝、 アド(丹波国の百姓)山本則重、 アド(奏者)山本東次郎
笛 一噌隆之、 小鼓 住駒光彦、 大鼓 内田輝幸、 太鼓 三島元太郎


解説が無いのに、終了予定が4時となっていたので狂言と能とどちらが長いのだろう?と思っていたが、能が110分の予定になっていた(実際は2時間以上かかったらしい)。

役者たちにとっても難波は比較的遠い曲らしい。
まず、正先に紅梅の作り物が出される。
天皇の臣下が熊野三山で年を越して津の国(攝津)難波に到着。梅が名木であるのでいわれを聞こうと言うと、おりしも若い女と大口の翁(右手には箒)が登場。なぜか女は楓模様の着物。なんだか紅葉狩りみたいね、とこの辺の装束の約束事が全く分からない私。

出だし、囃子方の大小の息が合っていないような気がしたのだけれど、この辺からは安心。翁と女は橋掛かりで謡うのだけれど、親子の訳者で声質が似ているために一瞬どっちが謡っているのかわからなくて面白い。
後見の本田、暇そう。

「難波津に咲くやこの花冬ごもり、今は春べと咲くやこの花」の歌にかけて、仁徳天皇の即位のお話が延々と語られます。ところどころ聞いた記憶のあるようなエピソードもあるのですが、何せ語られない部分も多く、詞章を見ていても良くわからない。でも、地謡が綺麗。地謡陣が若いのは遠い曲で覚えるのが大変だから???

女と老人はそれぞれ花の精と仁徳即位を勧めた王仁だと明かして消えます。
そこに、梅の精が。面はうそふきかな。笛を吹きます。吹いているのはもちろん囃子方で、「おや、音が後ろから聞こえてくるような」と言って笑いを取るのはお約束。

アイが帰った後、ここで後見が梅の作り物を引きます。プログラムの写真では後シテと梅が同時に写っているので、そういう演出もあるのでしょうか。
ともあれ、木花開耶姫と王仁登場。王仁は一の松で蔓桶にかけています。姫は舞台に入って天女の舞を。この御姫様は目の小さなちょっと変わったお顔ですね。

次いで王仁の舞。「楽」と言うらしい。とても立派な鳥兜をつけていますが、これをつけると全体に下を向いているように見える上にだんだんかぶとが面にかぶさってくる。後見が神経質に何度も直します。
この「楽」もまた長い。そしてハコビが面白い。

木花開耶姫も王仁も、何となく舞が地味。観世流を見慣れているせいですかね。
そして地謡がおめでたい文句を連ねて終了。
王仁の舞の時にワキ柱のところに座っていた姫が立って帰ると、そこにワキがもぞもぞと詰めます。何かするのかなー、と思っているとただ立って帰るだけ。やっぱり定位置から引っ込むというのがお約束なんでしょうか。

長かったー。でも、もう一度観ても良いかな。

面は前シテの老人が小尉、後シテの王仁が鷲鼻悪尉、ツレは前ツレの女と後ツレ木花開耶姫が増。

伊藤正義「謡曲入門」(講談社学術文庫)に詳しい解説があります。

え、松楪はどうしたかって?ごめんなさい、ほとんど寝てしまって肝心のところが観られませんでした。これもおめでたい舞の曲だったらしいのですが…。

[PR]
by soymedica | 2018-01-08 18:03 | 能楽 | Comments(0)