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国立能楽堂定例公演五月 大般若 賀茂

d0226702_08321497.jpg国立能楽堂定例公演五月
2017年5月19日(金)18時30分より

大般若 和泉流
シテ(住持)野村萬斎、アド(神子)高野和憲、小アド(施主)野村万作
笛 杉市和、小鼓 後藤加津幸

賀茂 素働 観世流
シテ 片山九郎右衛門、ツレ 観世淳夫、ワキ 則久英志、ワキツレ 館田善博、野口能博、アイ 石田幸雄
笛 杉市和、小鼓 後藤加津幸、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺真佐人
後見 観世銕之丞、清水寛二

開始時間になってもまだ明るい季節になったなー。


最初の大般若はお経の名前。
施主の家で鉢合わせした住持と神子がそれぞれ読経と神楽をやってはりあう。高野のポーカーフェイスがおかしい。そのうち神楽が煩い、と言っていた住持が一緒に踊りだし…。
パンフレットによると
「『大般若経』は唐の玄奘三蔵によって集大成された六百巻に及ぶ大乗仏教の基礎経典でありこれを全巻読む”真読”が正式であるが、それは困難なので一部のみ読む”転読”を行う。このときに折本の経典を目の上まで高く弧を描くように飛ばしていくのは今も寺院で儀式の折になされている。」
だそうで、住持がこれをワキ柱、目付柱、シテ柱でやってみせます。
大した筋があるわけでは無いけれど、楽しい演目でした。

萬斎が出演する時に毎度認められる現象ですが、ここで帰ってしまうお客さんがチラホラ。九郎右衛門だって人気なんだよ…。

晩夏の糺の森を舞台にした賀茂。だからと言うわけではないでしょうが、亀井広忠が明るい水色の袴で登場。
正先に矢立台が出されます。播磨の室の明神の神職が登場。美声で清々しい感じが強調されます、
むこうからやってきた水汲みの女に矢のいわれを尋ねます。
水汲みの女は二人とも金地に波の模様の書いてある綺麗な桶を持っています。

水を汲もう、という同吟の部分で観世淳夫がちょっとついて行かないのが気になるけれど、その後のところは大分上手になったような気が。
シテの女の面はやや細面で、ツレの面はふっくらに見える。
女たちは矢の意味と神社のいわれを語って退場します。九郎右衛門の能ってなんだかオシャレな感じがします。

ここからは神職たちの夢の中でしょうか。末社之神が登場。アイが末社の能って好きなんですよね。なんだか一粒で二度おいしい、と言う感じで狂言方の舞も楽しめるし。
考えてみるとシテが九郎右衛門で、アイが石田幸雄とは豪華。

そして女神登場。こうやって天冠の下で見るとやや男っぽい印象の面ですね。観世淳夫、女神の舞もなかなか良いと思いましたが、扇の扱いが若干気になりました。
女神が舞終わるとシテ柱のところに下居するのですが、その場所を作るためにワキとワキツレの三人がごそごそ動くのが何だか滑稽。あれは予定の行動だったのか?女神が笛座前に座るのではダメなのかな。

そして幣を手にした雷神も登場。真っ赤な髪の毛に金色の飾り物をたらしています。これは素働の時につける雷をかたどった飾りだそうですが、髪の毛が赤たど以外に目立たない。
雷神の舞はさすが力強い。

なかなかに満足な一日でした。

面は前シテが増、後シテが怒天神、ツレが近江作の小面。
今回のパンフレットの解説(書いているのは山縣正幸という人)、なかなか内容が濃くて満足。


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by soymedica | 2017-05-29 22:30 | 能楽 | Comments(0)

能の魅力を知る 仇討の光と影 曽我兄弟

d0226702_10040979.jpg能の魅力を知る 仇討の光と影 曽我兄弟
2017年5月13日(土)13時より@セルリアンタワー能楽堂

小袖曽我 物着
朝比奈
夜討曽我 特別演出による

曽我十郎祐成 中村邦生
曽我五郎時致 友枝雄人
母 大村定
団三郎 金子敬一郎
鬼王 内田成信
古屋五郎 佐藤寛泰
御所五郎丸 大島輝久
縄取 谷友矩、友枝雄太郎
侍女春日局 山本則秀
大藤内 山本則孝
狩場見廻人 山本凛太郎

笛 栗林祐輔、小鼓 成田達志、大鼓 谷口正壽、太鼓 小寺真佐人
後見(小袖曽我)狩野了一、粟谷浩之、(夜討曽我)佐々木多門、粟谷浩之
地謡(小袖曽我)友枝昭世ほか計6人、(夜討曽我)香川靖嗣ほか計6人

朝比奈三郎 山本泰太郎、閻魔 山本則重


間に狂言の朝比奈を挟んで、能の小袖曽我から夜討曽我まで一日でやってしまおうという試み。夜討曽我には「禅師曽我」の前段を挟み込んであります。
なぜ間に「朝比奈」かと言うと、朝比奈三郎義秀は、仇討に逸る曽我五郎の鐙の草刷りを引き捕えて意見忠告した人だかららしい。

5月の中頃。まず前もって母と侍女が舞台へ。母は蔓桶にかけます。
小袖曽我のシテは兄の十郎祐成。弟と従者(乳母子なのでしょうか?)の4人登場。弟は勘当されているが、仇討の前にお母さんにそれとなく別れを告げようとやってきたのです。状況を説明する謡を歌うと、全員後見座へ。ここでは従者はすぐに引っ込んでしまいます。兄弟も弓を置いて橋掛かりへ。
弟の勘当を解くために、まず兄が母のご機嫌を取ろうと相談し、兄だけが母の待つ家へ。しかし、友枝雄人ってこんな声だったっけ。この人凄くまじめそうだけれど、地味。

母親のご機嫌が良いと見て取った十郎祐成が弟を呼ぶ。でも弟が家の中に向かって呼びかけても、侍女の春日局は知らん顔。母も子供は祐成と九上の禅師しかいない、と言う。ここでもう一人男の子がいることが明らかに。
すごすごと戻る五郎。橋掛かりでは十郎五郎の会話、舞台では母と侍女の会話が同時進行。狂言のようですね。

もう一度母にお願いしようと戻る祐成。この曲はこの母親の説得の場面が見せ場の一つなのでしょうけれど、今の時代にちょっと。
ちなみに勘当されたわけは、仇討に逸る兄弟の弟だけでも助けようと母は五郎を出家させようとしたのに言う事を聞かなかったかららしい。確か箱根の寺から逃げ出したとか聞いたような気がします。

とにかく言葉を尽くして勘当を解いてもらった五郎。母に小袖を貰います。これは狩場への門出祝なのですが、当然そこには敵の工藤も行っていると考えるべきですよね。後の夜討曽我では母に最期の挨拶をしなかった、と言う心残りがあることになっていますが、この時点で母も二人が仇討に行くと当然思っていたのでは…。

それはともかく、母にもらった小袖を羽織った五郎。五郎だけでなくなぜか十郎も同じ模様の小袖を羽織って舞を舞います。
ここの相舞が最大の見せ所。今回シテ・ツレともにオジサンなのですが、これを若い男二人がやったらちょっと色っぽい感じなのでしょうね。これから死んでしまう美少年二人が派手な着物をまとって二人で舞う、というのはすごく受けたのでは。

そして朝比奈を挟んで夜討曽我へ。
(朝比奈はすごく強い亡者となった朝比奈が、最近商売あがったりで貧乏な閻魔様に勝つお話。)

夜討曽我では配役は同じですが、シテは弟の五郎時致。
出で立ちは小袖曽我の最初と同じです。
これから死を覚悟の仇討に行く兄弟。母に形見を渡す役を団三郎か鬼王のどちらかにだけさせるわけにはいかないので、二人一緒に暇を出そうと相談するふたり。
ところが返されるくらいならば互いにここで相打ちして死のうという従者二人。結局説得されて二人で母親に形見を届けに行きます。

ここに禅師曽我が挿入されます。
また母親が今度は装束を替えて登場。出し置きです。団三郎と鬼王が橋掛かりで「使いの泣きて帰りしは…」と謡った後に舞台へ。
「これから仇討に入るお二人の形見をお持ちしました」と。三人で泣く。

と、団三郎が突然「いかに申し候 箱根へ人を御上せたまへ」???母「箱根と申しについて思い出したり 急ぎ九上の寺へ上りそうらへ」???
調べたところによると禅師がいるのは新潟の弥彦神社の側の国上寺なんですが(大江山の酒呑童子の修行の寺でもあるらしい)。

そして大藤内。則孝の大藤内も凛太郎の見回り人もそれぞれちょっと固いながらも良かったのですが、二人の掛け合いがもっとスムーズに行くと良いかな。(ま、比べているのが東次郎なんで…。)

討ち入りの場面。既に兄の十郎は死んでいるらしい。それを知らず暗闇の中で兄を探して呼ぶ五郎。
結局物陰に女のふりをして潜んでいた武士に捉えられてしまうのですが、この演目を喜多流で観るのは初めて。今までは観世流だったので、喜多の地味な感じがめづらしい。舞台上の人数も観世より少ないのではないだろうか(烏帽子折れとごっちゃになっているかもしれませんが)。
派手に倒れるのはひとりだけでしたね。
そして友枝雄太郎がかっこよくなっているのにびっくり。次は大風がどういう風に成人するか楽しみな一族。

ま、それはともかく残念なことに五郎は捉えられてしまいましたが、仇討は果たされたのでした。


写真は箱根の曽我神社。
箱根神社の階段の中ほどにあります。そして「寺」の跡が駐車場の端っこのほうにあります。明治まではちゃんと神宮寺があったらしい。

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by soymedica | 2017-05-22 21:03 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演五月 忠度 

d0226702_11124975.jpg銕仙会定期公演五月
2017年5月12日(金)18時より@宝生能楽堂

忠度
シテ 柴田稔、ワキ 館田善博、ワキツレ 森常太郎、則久英志、アイ 善竹富太郎
笛 藤田次郎、小鼓 古賀裕己、大鼓 柿原光博
後見 観世銕之丞、北浪昭雄
地謡 小早川修ほか


ちょっと遅いけれど桜の能。

三人の僧がやってきます。(何だか本日の大鼓はいつにもまして表情というか顔の筋肉が大きく動いて面白い。)
須磨というのは中世になっても、とても寂しいところだったらしい。その淋しい岸辺にやってきた三人。俊成卿の身内のものなのですが、桜の若木発見。「これは有名な若木の桜かもしれない」と思った一行は向こうからやってきた老人に目を止めます。

木の葉を手に出てきたこの老人は塩を焼いたりして暮らしている貧しい海人らしいのだけれど、この「山賤か」と聞かれ「はい海人です」と言う問答は、「猿楽言 さるごうこと」の残存だそうです(小学館)。

この辺でシテが落とした木の葉を拾いに後見が出てくるのですが、北浪昭雄ってお幾つくらいなのだろう。あまりに動作が辛そうでそちらに注目してしまった。
そしてアイの善竹富太郎、やっぱり今回も長く座っていると足が辛そう。もっとゆっくり出てきたら良いのに。

夕暮れ時なので僧たちは老人に一夜の宿を頼みます。この老人の面、やけにリアルでシテの顔に張り付いているのではないか、と思うほど。
宿を頼まれた老人は「生き暮れて木の下蔭を宿とせば、花や今宵の主ならまし」の歌を持ち出し…。

消えた老人を不思議に思った一行が、善竹に尋ねる。この話はアイ語りがないと、ちょっとわかりにくいかもしれませんね。まあ、能を見に来る人は忠度の話を知らないという事は無いでしょうけれど。

待ち謡に応えて忠度の霊が出てきます。
若いやさしげな男というイメージ。忠度の役は、あまり武張っても歌人のイメージと合わないし、さりとて能は合戦の場面だし(しかも忠度は結構強い)、「優美な修羅能」というのは演じるのは難しいのではないだろうか。
今回面がとても優しかったので歌人のイメージが前面に出た感じですね。装束は華やかな赤の着物(縫い箔だろうか)に深緑色の長絹のようにも見える柔らかいものを重ねており、華やかでした。

なかなか良い舞台だったと思うのですが、
本日八割の入り。正面席の通路わきがズラーっと空席なのは、年間チケット客が来ていないのでしょう。柴田稔、良い役者なのに、残念。かくいう私も後半は見ていないのだけれど。


前シテの面は出目満志の笑尉、後シテは大和の中将。
写真は大津の長等山公園。


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by soymedica | 2017-05-16 21:42 | 能楽 | Comments(0)

観世能楽堂開場記念祝賀能三日目 翁 高砂

d0226702_15513333.jpg祝賀能三日目
2017年4月22日(土)13時より

 
観世清和
千歳 観世芳伸、三番叟 野村万蔵、面箱 野村万之丞
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 曾和正博、脇鼓 幸正佳、曽和伊喜夫、大鼓 柿原崇志
後見 木月孚行、武田尚浩
地謡 武田志房ほか

独吟
業平餅 野村萬

仕舞
西行桜 クセ 梅若万三郎
雲林院 キリ 観世喜之


舞囃子
鶴亀
野村四郎
笛 藤田朝太郎、小鼓 亀井俊一、大鼓 石井保彦、太鼓 徳田宗久

仕舞 
老松 角寛次朗
東北 キリ 武田宗和
岩船 観世喜正

高砂 祝言之式
シテ 観世恭秀、ワキ 森常好
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 小寺佐七
地謡 岡久広ほか


GINZASIXの地下に新能楽堂開設。権利関係はどうなっているのだろう。それはさておき、ビルの開業が20日だったので開業後初の週末。歩行者天国だし、天気はそこそこだしと、凄い混雑。5丁目の角から目立つように袴姿の若い役者がプラカード持ってご案内。これは非常に助かりました。

裏の入り口から入ってエスカレーターを降りると正面にはポスターと影向松の装飾が。
そして入口へ。
人が多いのと、花が多いのとでやや狭目のロビーがますます狭い。
観世流の重鎮たちがロビーに立ってお客様にご挨拶。
お客さんもドレスアップした人多い。ジーンズで来なくて良かった―。

1時開演を10分遅らせましたが、そんな必要も無いほど皆さん早めに着席。
お稽古している人やファンの他に、ビルの関係者などの人もいる模様。

。観世清和の翁って結構観ているけれど、新しい能楽堂で見るとまた新鮮。健康に注意して100までやってほしい。
新 万蔵の三番叟も良かったけれど、(同世代ではあるけれど)萬斎以降の能楽師は皆萬斎の三番叟を意識していると思う。この人も同じ。
観ている方も比べるけれどね。
それより後半、後見の能村晶人が何かしきりに乗り出すように注視しているのが気になりました。別に装束にまずい所は無かったようだけれど。

萬の業平餅も楽しい。見所はしーんとしていましたが、観る方もここで緊張を解く場面ではないだろうか。

野村四郎の舞囃子、きりっとしてさすが。

仕舞も色々出ましたが、隣のおばさまたちは万三郎の生徒さんらしい。万三郎のようなハンサムな先生に習うのは良いだろうな。
そして観世喜正の声を褒めていた。

最後はベテランのシテとワキの高砂
観世恭秀、ちょっと声が小さくて聞き取りにくかったです。

なにはともあれ、皆さんおめでとうございます。

あ、ビルの中チェックするの忘れた。

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by soymedica | 2017-05-01 17:12 | 能楽 | Comments(0)