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国立能楽堂定例公演十月 木六駄 葛城

d0226702_17475193.jpg国立能楽堂定例公演十月 演出の様々な形
2016年10月21日(金)18時より

狂言 和泉流 木六駄
シテ 野村万蔵、アド(主)能村晶人、小アド(茶屋)野村萬、野村万禄

能 観世流 葛城 大和舞
シテ 浅井文義、ワキ 森常好、ワキツレ 則久英志、大日方寛、アイ 吉住講
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 安福光雄、太鼓 三島元太郎
後見 浅見真州、浅見慈一
地謡 岡久広ほか


なんと、野村萬家の木六駄目当てで買ったのに、遅れてしまって後ろの椅子で見る羽目に。印象薄くなりますよねー。
残念。


でも、浅井文義の葛城が良かったので、まあ良いか。

笛が一噌仙幸から隆之へ。仙幸さん、養生して戻ってきてほしいな。

大和舞の小書きゆえということで、大小前に雪山の作り物が出されます。
山伏たちが葛城山にやってくると、折悪しく雪が降りだします。道行の謡が今一つ。
どこか物陰で雪を避けよう、と相談していると遠くから女が「のうのう」と呼びかける。
ビブラートのかかった美しい声で、笠の下のお顔はきっと美人なのだろうな、と思わせる。

雪で大変でしょうから我が家へと美女が誘ってくれるのに、受ける森は今一つ嬉しそうではない感じ。
女のあばら家についた一行。女は「しもと」を焚いてくれます。そして山伏たちにその由来を教えます。

しもとゆう葛城山に降る雪の間なく時なくおもほゆるかな

女が置いたしもとの作り物を引くのが後見ではなくて地謡後列の人なのがちょっと目を引く。
夜の勤行をしようという山伏たちに女は「私のことも祈ってほしい」と。この、「このみをたすけてたびたまえ」のセリフがとても感情がこもっていてきれい。
そして何やら橋のことを口にすると雪山に消えてしまう。

アイが出てきて葛城山の女神と役行者にまつわる話をしてくれるのだが、発声がちょっと詰まった感じで聞きにくく、疲れてしまった。
役行者は山伏たちの利便のために葛城山から大峰に橋をかけようとしたけれど自らの醜さを恥じて夜にしか働かなかった女神。役行者は怒って女神を縛って閉じ込めてしまったという話ですが、ふと、「健脚を誇る山伏なんだから、橋なぞ要らないのでは?」と思う。

作り物の引き回しがおろされると、頭上に緑のつたを載せた女神が現れる。
美人である。話が違うじゃないか、といつもここで思うが…。それはともかく、面がとても良い。

神様物の後半は前半に比べて没個性的な曲が多く、これも例外ではないけれど、そこを面白く見せるのがシテの実力。
今回も良かったです。この人、地謡など座っているところを見ると地味なおじさんなんですが、あの人がこの面の後ろにいるとはとても思えない。華のある舞台でした。

森は山伏なんだからちょっとやせたほうが良いな。座っているのも辛いでしょう。
囃子も実力陣で良かったけれど、太鼓はもっと締めてある音のほうが好き。
地謡はまあまあだったかな。

面は前シテが深井、後シテが近江の増。

写真は青森の大鰐温泉 大円寺。

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by soymedica | 2016-10-28 17:52 | 能楽 | Comments(0)

ござる乃座54th 萩大名 連歌盗人 首引

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ござる乃座54th
2016年10月20日(木)19時から@国立能楽堂

萩大名
大名 野村萬斎、太郎冠者 中村修一、亭主 高野和憲

連歌盗人
男 野村萬斎、石田幸雄、何某 野村万作

首引
親鬼 深田博治、鎮西八郎為朝 飯田豪、姫鬼 内藤連
眷属 月崎晴夫、金沢桂周、中村修一、岡聡史


萩大名の萬斎演ずるところのバカ殿様、パンフレットに本人が書いているところによると「大名の演技の範疇としては若いうちは強く、大きく演じるものです。一方で現在父が見せる枯淡の芸境には、様式を超えた洒脱さを感じます。(中略)相手を務める若手に基本を見せる意味では様式にのっとった剛直さを意識したいと思いますが、」とあります。
なるほど。
本当に単純な話なのですが、それだけに演ずる人によっていろいろ変わるのが楽しい。


連歌盗人は、連歌の会のお当番に当たっている二人の貧乏人が、金持ちのところに入って連歌の会に必要なものを盗み出そうとする話。忍び入る屋敷の主とはもともと知り合いらしいですね。
盗みに入る萬斎と石田、おそろいの装束で歩みも型もぴたっと合っていて、目に楽しい。
万作・萬斎の組み合わせよりもこちらのほうが実は好き。
最後の謡も良かったです。


この週は忙しかったのですが、無理をしていったのは実はこの首引が見たかったのです。鬼の娘が人の喰い初めをする、その相手が為朝。

播磨国印南野という寂しいところを夜通りかかった為朝。なかなかりりしい若者です。姫鬼がお食い初めのために近づこうとすると、扇ではたいてしまう。泣いて親の元に戻った姫鬼。腕相撲でも足相撲でも負けてしまう。じゃあ、首引きという殊になるのですが、ずるいことに眷属が出てきて姫に加勢する。
親鬼の親ばかぶりが楽しい。眷属のはいていた赤かぶ模様(?)の袴も面白かったな。


本日のお客さんはただやたらと笑うのではなく、ここぞというところでのって笑う人が多かった。
来てよかったです。


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by soymedica | 2016-10-25 08:30 | 能楽 | Comments(0)

フリック

フリック The Flick
2016年10月15日(土)13時より」@新国立劇場小劇場

作 アニー・ベイカー、翻訳 平川大作、演出 マキノノゾミ
美術 奥村康彦、照明 中川隆一、音響 内藤博司、衣装 三大寺志保美、

エイヴリー 木村了、ローズ ソニン、サム 菅原永二、スカイラー 村岡哲至


ネタばれあります。

東海岸の大学町のさびれた映画館。いまだにアナログ。
従業員は掃除、ポップコーン売り、切符売り、映写までやるが、映写が花形。
従業員は基本的に中流の下の白人らしい。
そこに映画マニアの黒人青年が従業員として加わる。

原作はピューリッツァ賞をとったというだけあって考えさせられる良い本ですが、3時間を4人(うちほとんどは3人で)で引っ張るというのがちとつらい。映画館の客席のみで繰り広げられる話なので、場面の転換も暗転だけで行われる。
以上を、日本人の存在感(物理的な意味でも)で小劇場とはいえ新国の大きさの客席を引っ張るのはちょっと。

話をもう少し刈り込んでも良かったかもね。

とはいえ、観てよかった舞台でした。

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by soymedica | 2016-10-18 18:09 | その他の舞台 | Comments(0)

銕仙会定期公演十月 縄綯 松風

d0226702_14391761.jpg銕仙会定期公演十月
2016年10月14日(金)18時より@宝生能楽堂

縄綯
シテ 山本泰太郎、アド(主)山本則孝、(何某)山本東次郎

松風 見留
シテ 浅見真州、ツレ 長山桂三、ワキ 宝生欣哉、アイ 山本凛太郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原崇志
後見 浅井文義、清水寛二
地謡 観世銕之丞ほか



縄綯は若干長いけれど好きな演目。借金の形に取られてしまった太郎冠者。ああだこうだと言って元の主人のもとに戻ってきて、売られた先の悪口を言う。
シテが東次郎で無かったのは残念ですが、泰太郎も熱演。でも、橋掛かりで様子を伺っている東次郎が舞台全体の雰囲気を支配しているように見えました。
縄は和泉流とちがって実際の縄では無くて運動会の綱引きで使うような小道具でした。なぜか後見が一度引っ込むのが不思議。


豪華メンバーの松風。正面席に空席があるのは、年間を通して席を押さえている高齢の方が来られないものかと。だって中正面も脇正面もぎゅうぎゅう。

諸国一見の僧の宝生欣哉登場。照明のためか、ちょっと痩せたのか、宝生欣哉の鼻筋がすごく通って見えました。最近若手のワキの舞台を観ることが多かったのですが、やはりこの人の空気の作り方は彼らと比べて格段に上手。
何やら由緒ありげな松を見て、村人にいわれを訪ねます。きりりとした地元の凛太郎がやってきて、いわれを教えてくれるので、塩屋にとまって念仏でもしようということに。

ここで後見の清水が水桶を目付柱に置きに出ます。
清水寛二と西村高夫は銕仙会のあの年代のなかの二大ハンサムだと思うのですが、清水は髪が黒すぎると思う…。
そしてもう一つ、大鼓の柿原ってあの声の涸れ具合は喫煙のせいではないでしょうか。だったら、早急に禁煙するように誰かが言わないと…。

などと考えていると、二人の潮汲み女がやってきます。能をはじめとして種々の文学は「どこにも属さない人」が主人公になることが多いですね。この二人も行平の寵愛故に、自分たちの所属する階級から外れてしまった姉妹。

ツレは後見が出した潮汲み車に載っているのと同じ桶を左手に持っています。

激しい労働を終えて月が出てから帰ってきたと言うにはあまりに上品な二人。上品な地謡。この前半の詞章がとても美しいのもこの曲の人気の理由なのでしょう。
シテの掛けている面がとても綺麗。特に上下に動かすと大きく表情が変わって素晴らしい。

シテは扇を開いて水を桶に汲み入れますが、この時のかがみ方がちょっと齢を感じさせる。

塩屋の二人が帰ってきたので宿を借りようとする僧。一度は「ぼろ屋だから」と断るのが能のお約束(民話のお約束でもあろうか)。
僧が松風村雨のお弔いをしようというと、思わず落涙する二人。何となくこの辺の緊迫感が今一つ。
床几にかけている松風に後見が烏帽子と長絹を渡します。
そしてそれを着けた松風は松を行平と見違えて抱き着こうとします。これを村雨が「あさましや...」と止めようとするのですが、私の好みから言えば、止め方が優しすぎて迫力不足。あんまり松風の狂乱を止めると言う感じにならなかったのが残念。

中の舞、要所要所のポーズの作り方はさすがですが、袖の被き方が中途半端になってしまって残念。そして後姿が何だかお疲れの様でした。
僧の夢の中で2人の美しい姉妹は帰って行き、最後に僧はシテ柱のところで遠くを見やるのでした。

シテもツレも人気と実力十分な二人ですが、年齢差が大きい。その年齢差が橋掛かりに立って向かい合っているだけで感じられる。その後にも感じたのですが、浅見真州は肩でも痛いのではないだろうか。昔見た喜多流の塩津&香川位に年齢が揃っていた方が良いと思います。
見留の小書きがついていますが、演出は極めてオーソドックスでした。

地謡はとても綺麗でしたが、座り直しが派手で、私の座っている場所からはかなり煩わしい動きになっていました。あんな板敷に座って1時間以上と言うところにそもそも無理があるのでは。派手に座り直すくらいなら座椅子使ってもほしいと思います。

面はシテが作者不詳の節木増、ツレは小面(銘:早蕨)で近江作。

写真は敦賀の気比の松原です。


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by soymedica | 2016-10-17 10:37 | 能楽 | Comments(0)

第13回ユネスコ記念能 鴈礫 紅葉狩

d0226702_22242412.jpg13回ユネスコ記念能 夜の部 若手競演秋の能

2016年9月30日(金)1645分より@国立能楽堂

正面席6000


解説 観世喜正

仕舞

岩船 豊嶋幸洋、清経キリ 本田布由樹、野宮 佐野登、龍田キリ 友枝真也


鴈礫がんつぶて

シテ 大蔵彌太郎、アド 吉田信海、大蔵基誠


紅葉狩 鬼揃

シテ 武田宗典、ツレ 佐川勝貴、武田文志、谷本健吾、青木健一、坂井音晴

ワキ 大日方寛、ワキツレ 館田善博、野口能弘、野口琢弘

アイ 善竹富太郎、大蔵教義

笛 小野寺竜一、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 河村眞之介、太鼓 小野寺竜一

後見 武田宗和、藤波重彦

地謡 観世銕之丞ほか


解説と仕舞には間に合いませんでした。


ということで狂言の鴈礫から。実は大蔵家の狂言はあまり好きではないのですが、これは面白かった。大蔵彌太郎、頑張っていますね。

おバカな大名が形だけ強そうに弓をもって鴈を射ろうとすると、通りかかった誰かの太郎冠者が礫でその鴈をしとめてしまうという…。

最初に大名が矢をつがえるときに逆向きにつがえるのは別の演目でもみたような。八幡前だったか…。

ダイナミックでテンポの良い舞台でした。


紅葉狩は戸隠に鬼退治に来た平維茂が美女の酒宴に出くわしてというあの話です。


まず、美女6人と太めの侍女登場。シテの掛けている面が格段によろしい。

同吟が良く揃って詞章が解り易いうえに、すり足でフォーメーションを変えるところが何だかからくり人形が動いているようで美しい。

そして、武田宗典ってどんどん上手になりますね。人気出そう。

橋掛りの侍女の善竹富太郎、目立たないと思っているのかもしれないけれど、そこで何度も座りなおすと相当気になります。


平維茂と三人の従者登場。維茂の謡は迫力あるのですが、従者の三人はちょっと弱そうだ。

「あの美女は誰だ?」と従者が尋ねると侍女は「さるお方」とだけ言って退場。

下馬する体で弓矢をワキツレに渡すと、ワキツレたちも退場。


宴に招かれた維茂はワキ柱のところで腰掛けています。

美女たちは次々と舞うのですが、待っている女たちの面の角度が相当にバラバラなのが妙に気になる。座っている席のせいだろうか。

舞が急の舞となってシテが山の作り物に入ってしまうとここでツレが立ちあがって退場するのですが、このときにもあんまりフォーメーションが宜しくなかった。


宴会で寝込んでしまった維茂に神剣を与えに石清水八幡の末社之神、武内がやってきます。

これがなかなか上手。お客さんの笑いを誘っていました。


維茂が狩衣を脱いで烏帽子をとり、戦闘態勢に入ると、橋掛かりからは衣を被いた女たちが。手には紅葉の枝を。山からも鬼が。シテは黒頭でツレは赤頭。

維茂は一人で6匹の鬼を相手にしてとっても強いのですが、チャンバラは以前に見た宝生流の方が派手だったなー。


ともかく、やられた鬼の親分はかしこまって降参。めでたしめでたし。

ワキ・シテの順番に退場。


「つきせぬやどこそめでたけれ」の祝言でした。


しかし、鬼揃はspectacularではありますが、話としては深みが無い。たまに見てスカッとしたいけれど、まあ、それだけ、という筋。

本日演者が皆さん上手だっただけに、台本の弱さが目立ってしまいました。

写真は石清水八幡に行くケーブルカーです。


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by soymedica | 2016-10-02 22:26 | 能楽 | Comments(0)