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外国人のための能楽鑑賞教室 柿山伏 小鍛冶

d0226702_10492123.jpg外国人のための能楽鑑賞教室Discover Noh & Kyogen
2016年6月24日(金)19時より

解説 Richard Emmert

柿山伏
シテ(山伏)野村万蔵、アド(畑主)小笠原匡

小鍛冶
シテ 観世喜正、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 大日方寛、アイ 能村晶人
笛 栗林祐輔、小鼓 森澤勇司、大鼓 大倉慶乃助、太鼓 梶谷英樹
後見 奥川恒治、佐久間二郎
地謡 遠藤喜久ほか


今回は最初が英語の解説、モニターもいつもの英語以外に中国語、韓国語画面付き。すいません。日本人の私も行かせていただきました。
西洋人率高し。どうやって切符宣伝したのかしらん。能や狂言の成り立ちを書いた至れり尽くせりのパンフレットも。あらすじは何と日本の新しい伝統「マンガ」で。でも、英語も中国語も韓国語も母語でない人のために、フリガナ付日本語文もつけておくべきだと、私は思う。

演目の選び方が良いですね。動きがあるし、面もかけているし。直面ものだとかえってとっつきにくいかもしれない。そんなに長くないし。

ビジネスマンというよりもっと若い人が中心ですが、配偶者が日本人と思しき人たちも。驚いたのは前の日本人のおばさん。着物風の派手なドレスに和風の布を編み込んだ髪型。ふくよか。で、案内の人を呼び止めて何を聞くかと思ったら「この画面、ずっと「日本語」と出ているだけで変わらないけれど??」(まだ始まっていないんだから…。)メンタリティーはラテン系とみた。
ともかく、始まるまで結構賑やかなのがいつもと違う感じ。

最初の英語の解説はお稽古歴ウン十年に違いない袴姿の西洋人。色々な人の事を考えてか、かなりゆっくりしたお話で、ちょっと英語力brush upしました。ネット検索したところ、
武蔵野大学のAsian Performing Artの教授で、喜多流の師範(?)らしい。
能や狂言とはどんなものか、舞台や囃子の解説をしてくださいました。弱吟と強吟の解説では実演付き、「強吟」は世界に類のない非常にユニークな歌い方だとおっしゃっていました。囃子の掛け声の実演も。

休憩の後は柿山伏。見所の反応良し、でした。この二人、やはり上手いなー。後見の能村晶人の袴がやけによれていて、汗でも書いたのかしらん。

そして小鍛冶。先日伏見稲荷に行って山を一周してきたので是非この演目を見たくて切符を買ったんです。
観世喜正もそして殿田謙吉も危なげのない良い演技でした。そして、大日方さん、舞台上では本来の人格よりも元気が過剰になるのでは、といつも思っています。日本語のある程度分かる外人には割とゆっくりなセリフ回しで良かったと思います。

帝に使える橘通成が「ご命令だから刀を打て」と宗近に言うのですが、良い相方がいない宗近は困ってしまう。お稲荷さんにお願いを、と思うと童子が出てきて「心配するな」と。この童子の出で立ちが、着物が黄色の地に黄緑の葉(ところどころに白っぽい花)の模様、上にはオレンジの水衣。とても綺麗。狂言の装束色合わせより、能の色合わせの方が私にはしっくりきます。

前場、そして間語りともに日本武尊の叢雲の剣伝説を語るのですが、あんまり本筋との整合性が無い。でもあまりに熱心に謡われるので、もしかしたら宗近は叢雲の剣を作った人の子孫だと言うのを聞き洩らしていたのか??といつも思うのですが、そういうものではないらしい。いかに剣を作ることが重要なお仕事か、と言いたいみたい。

シテ、ワキは中入りするのですが、ワキツレだけが舞台に座って待っていなくてはならない。一番身分が高いんだから、ちょっとお休みしてお茶でも飲みたいでしょうに、といつも気の毒に思います。

一畳台が出されたのち、宗近が出で立ちを改め登場。このキラキラしい衣装が中世ですね。今だったら白一色の装束にしそうな感じ。準備していると、稲荷明神登場。赤頭で狐を載せています。これについてもパンフレットにはなぜ狐なのかちゃんと書かれています。
シテもワキも割と大柄な人なので、結構迫力でしたね。

やっぱりこの演目は動きが合って面白い、殿田謙吉が「最近小鍛冶が良く出る」とつぶやいていましたが、私はあんまり出会わない演目なので面白かった。

若手の地謡もよかったですが、メリハリが今一つ。
囃子…。大小がちょっと。頑張ってね。
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by soymedica | 2016-06-26 10:51 | 能楽 | Comments(0)

コペンハーゲン

d0226702_2150637.jpgコペンハーゲン(シスカンパニー)
2016年6月14日(火)18時30分@世田谷パブリックシアター/シアタートラム

作 マイケル・フレイン、翻訳 小田島恒志、
演出 小川絵梨子


ハイゼンベルグ 段田安則、ニールス・ボーア 浅野和之、マルグレーテ・ボーア 宮沢りえ


1941年ドイツ占領下のデンマークにかつての恩師であるボーアを訪ねたハイゼンベルグ。そこで二人が交わした話を振り返る、という心理劇。二人は原子爆弾作成の可能性、その倫理性について話したのか?ハイゼンベルグはナチスのスパイだったのか?すでに三人は亡くなっており、戦後の報道、連合軍による尋問の記憶、などを交えて三人が出ずっぱりで会話するという地味な劇。

テーマは今の遺伝子操作の倫理性に通じるところもあるけれど、それだけでなく長男を目の前で事故で失ったときの父親(ボーア)の行動の倫理性、共同研究とは何か?成果は誰のものか?などを行ったり来たりする。

観念的な話だけれど、それほど退屈せずに3時間見られたのは演出と役者の力か?実はあんまり宮沢りえを上手だと思ったことは無いのだけれど、割とはまり役でした。

量子力学に関する難解な用語が頻出する、というのは嘘です。どういった理論か、だけをぼーーーんやりと知っていれば楽しめるかとは思いますが。シュレディンガーの猫、くらいの用語は知っていた方が良いかもしれない。
しかしながら休憩時間に周りのお客の話を聞いていて思ったのだけれど、ボーアとはだれか、ロス・アラモスとは、マンハッタン計画とは何か、オッペンハイマーが原爆投下後どうしたか、という基本的科学史の知識が無いと、これを観るのは無理かもしれない。

最後に「あの人たちって実在の人?」という後ろの席の兄ちゃんの発言を聞いて椅子からずり落ちそうになった...。

そんなに受ける話とも思わないけれど、演出家の心を刺激するのか日本では数回上演されているらしいです。でも、活字で読んだ方が面白いかもしれない。
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by soymedica | 2016-06-18 21:52 | その他の舞台 | Comments(0)

第十回 日経能楽鑑賞会 酢薑 安宅

d0226702_22504613.jpg第十回日経能楽鑑賞会
2016年6月9日(木)18時30分より@国立能楽堂

酢薑
シテ(酢売り)野村  萬
アド(薑売り)野村 万蔵

安宅 勧進帳・酌掛之伝
シテ 浅見真州、ワキ宝生欣哉、ツレ(源義経)坂口貴信、ツレ(義経ノ郎等) 西村高夫、浅見慈一、長山 桂三、北浪貴裕、谷本健吾、柴田稔、伊藤嘉章、清水寛二、武田 尚浩、 アイ(強力)能村晶人、(太刀持)野村虎之介
笛 一噌隆之、小鼓、林吉兵衛、大鼓 佃良勝
後見 観世銕之丞、永島忠侈


久々の脇正面。幕が上がるときのばさっという音に驚く。
狂言の酢薑は津の名物薑売りと、泉の名物酢売りとが楽しく洒落を言い合うもの。二人の明るい演技が楽しい。さすが萬と万蔵。


安宅は良くかかる演目ですが、子方ではない義経は初めて。
富樫登場。真面目そうな役人です。山伏を捕まえる関が作られたことを観客にわからせ、部下に「山伏を通してはいけないよ」と。

小鼓はなじみのない方。掛け声は良く通るのですけれど、何となく音が弱い。
ずらずらと偽山伏登場。全員色違いの水衣できれい。弁慶はヤグルマギクの大口、義経は銀色に光る大口ですが、後は皆さん白。謡はとても揃っていて力強く綺麗。動作も揃っている。となると気になるのは視線の向け方。一人だけ視線が下向いていたりするととても目立つので、そこにも気を配った方が良いかもしれない。

新関が作られたらしいと、皆で相談。「打ち破っていくぞ」とはやる者。ここ、かっこよかったし、諌める弁慶も老練な感じで息が合っています。結局畏れ多いことながら義経に変装してもらうことに。義経が大人だと、子方の時とは違い微妙なニュアンスが生まれてくると、まずここで感じさせます。

強力は後見座で笈と笠、杖を置きます。なぜか笈は後見座に、笠と杖は笛座のわきから出てくる。ここで義経の装束の肩を上げるのだが、常々私が恐れていた通り、後見二人とも結構なお年なので近距離作業が今一つ。ちょっとスリリングでした。

偵察に行った剛力は関の厳重な警備と木の根元に転がる山伏の首に肝をつぶして駆け戻ります。

一行は「本当の山伏だ」と言って抜けようとします。なぜ富樫は本物の山伏を通すことにしたか、について最近刊行された喜多流の粟谷明生の本に、なるほど、と思わせる解説があったので、興味のある方は読んでみてください。

実はこのクライマックスのところがあまり面白くなかった。勧進帳を読み上げる場面。浅見はあまり声の通らないタイプである上に脇正面とは反対を向いて読んでいるので、迫力がない。ここはもうちょっと切羽詰まった朗々とした読み上げが聞きたかったです。

そして関を無事通ったか、と思うと肝心の義経が止められてしまう。これにいら立ったふりをした弁慶が「この役立たず!」と義経を杖で打つ。
そして通す、通さないの押しあい。うーん、これも脇正面だとちょっとね。でも、水衣の色がきれい。

義経も関を通り、山伏姿に戻ります。
関から離れて一安心。押し合いの間後見座にいた弁慶と義経が位置を替えます。このとき上座を譲る弁慶が義経に目礼する様子が面白い。弁慶は主人を打ってしまったことの弁明、義経はそれに対してお許しの言葉を。これ、大人の義経でやると、全体がboy’s loveじみてきて、「なるほどそういう話だったのね」と思わせる。

と、そこに富樫が酒を持ってやってきたとの知らせ。顔を見合わせる義経と弁慶。
ひとまず義経は隠れ、弁慶たちがお相手を。お酌を試合、弁慶が舞を舞います。この場面が通常とちょっと違うのが「酌掛之伝」。舞いつつ橋掛かりまで行った弁慶が一の松でそっと酒を捨てるのが印象に残ります。
舞はもっと迫力あっても良かったかな。何しろ弁慶ですから。浅見真州というとジェントルマン、というイメージが強いので、余計上品に感じてしまうのかもしれません。

そして一行は急いで富樫の前を失礼するのでした。

大人の義経、面白かった。子方では出ない微妙なニュアンスがでるので。
そして「船弁慶」の義経が大人でもそんなに艶めいた感じにはならないのではないかと思うのですが、この「安宅」の義経の役者が大人になると先に書いたように色っぽい感じ。
浅見真州、プロデュース力のある人だと思っていましたが、今回も面白かった。


上記にあげたのは
夢のひとしずく 能への思い 粟谷明生 ぺりかん社
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by soymedica | 2016-06-13 22:51 | 能楽 | Comments(0)

番外編 クレーメルとドゥバルグ@サントリーホール

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2016年6月7日@サントリーホール

ラヴェル: ヴァイオリン・ソナタ ト長調
    : 夜のガスパール
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番 ト長調 op.27-5
フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調

ヴァイオリン:ギドン・クレーメル
ピアノ:リュカ・ドゥバルグ



物凄く久しぶりのコンサート。こんな切符が前日に買えてしまった。
ピアノの兄ちゃん(実はただの伴奏者では無かった)はノーネクタイに上着、クレーメルはシルクのような光沢のある長い黒いシャツにズボン。白髪で白いお髭。何となくシャガールの絵に出てくるバイオリン弾きか、屋根の上のバイオリン弾きか、というイメージ。

何年もコンサートに行かないうちに演奏者もお客さんも服装がカジュアルになったんだなーと感心。
なぜクレーメルの演奏会に「夜のガスパール」??と思ったら、このドゥバルグ君は注目のピアニストらしい。何やら彗星の様に現れて、というフランス人。
だからこういう選曲になっています。

クレーメルはもちろん良かった。
この人が弾くとイザイも素敵(残念ながらCDは無かった)。

ドゥバルクはまだ良くわからないです。ピアノって私はもう少しパキパキ弾く人が好きかも知れません。夜のガスパール聞きながら、「この人がバッハ弾いたらどうなるだろう」と考えていました。
どうやら後ろの席のオジサンはピアノ目当てだったらしく、ガスパールのあとの拍手が凄かった。

最後のフランク、この二人が弾くとこんなに面白い曲なのかと思って楽しかった。クレーメルは楽しそうでしたが、ドルバルクはもう少し真面目に弾いてました。何となく、この人、20年後にはあんまり弾いていないのでは(作曲しているとか、隠遁生活に入るとか)という気がしました。1990年生まれ。

アンコールはやはりイザイの子供の夢でした。
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by soymedica | 2016-06-08 22:43 | その他の舞台 | Comments(0)

第五回桂諷会若手能 生田敦盛

d0226702_212867.jpg第五回桂諷会若手能
2016年5月28日(土)14時より@セルリアンタワー

お話 表きよし

生田敦盛
シテ 長山桂三、子方 長山凛三、ワキ 大日方寛
笛 杉信太朗、小鼓 大山容子、大鼓 原岡一之
後見 観世銕之丞、長山耕三
地謡 武田宗典ほか計6人


表きよしさんのお話し。表あきらさんの息子さんでしょうね、お名前からして。ソフトな語り口がアナウンサーのようなおじさま。生田敦盛は金春禅鳳の作。「おとぎ草子」に同じ話が出ている、などとの話をしてくれました。

お話は予定時間ぴったりに終わったと思うのだけれど、なかなかお調べが始まらない。始まったと思うとちょっと心配になる不安定さ。
そしてなんと(当然のことではあるけれど)銕之丞が自らわら屋を運んで来て、大小前に置く。

囃子なしで子供と僧(法然上人)がやってくる。僧がこの子は敦盛の子で、夢でもいいから父に会いたいと賀茂神社にお参りしているのだと説明。
この曲は小品ですけれど、前半の子方の謡が印象的。「子方のできるうちに経験させたい」というお父さんの長山桂三の希望でこの曲を出すことになったそうです。凛三くん、もうこのくらいになると「口移しで教えられて」謡っているのではなく、かなり自覚的に考えて謡っている様子が明らか。

賀茂神社のお告げは、生田の森に行け、とのことで、二人は生田の森に向かいます。
日も暮れてきたので宿を借りようと考えると、一軒の藁屋が…。こういう野中の一軒家には鬼がいたり幽霊がいたりするのがお約束。
やはりここには父、敦盛の幽霊がいたのでした。

若いお父さんだなー、と思うけれど、十代で亡くなっているわけだし(真面目に考えると絶対に年が合わないのはおいておいて)。子供は幽霊でも会いたかった父なので駆け寄ります。シテの子方を見下ろす形がきれい。そしてその角度が一番面としてもきれいに見えます。正面席から見ていたので、子方は背中しか見えませんでした。中正面取ればよかったかな。

実は父は武士の常として修羅道に落ちていたのですが、子供の熱心な祈りに心打たれた閻魔様が一夜だけ解放してくれたのでした。こどもが僧形でちょっとがっかりしてしまった父でしたが、自分の華やかだった最後を思い出して舞を舞います。

大口に模様が入っていてきれい。これを紋大口と呼ぶのだそうですが、雑誌「観世」の本年4月号の「能装束制作の現場から」によるとなかなか織が難しくて高価なものらしいです。この上演のためにあつらえたのか?
舞の最中に見ると面は座っているときほど素敵では無かったけれど、剣を持って舞う様子が形良かった。

当然のこととは言え後半はシテの演技中心。子方はちょっと退屈で、もぞもぞしちゃいましたが、大きな姿勢の崩れも無く、立派でした。
こうやって自ら会を立ち上げて作って、親子で演能の機会を増やしていくとますます上手になるのでしょうね。
そして周囲の若手も出演の機会が増えます。出だし不安だった囃子もまあまあ。地謡は若々しくて良かったです。

もっと凛三クンの活躍を見たい方、11月23日は「烏帽子折」だそうです。
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by soymedica | 2016-06-02 21:29 | 能楽 | Comments(0)