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銕仙会青山能5月 文山賊 東北

d0226702_8385398.jpg銕仙会青山能5月 
2016年5月25日(水)18時30分より

仕舞
杜若 クセ 鵜澤久
敦盛 キリ 北浪貴裕

文山賊ふみやまだち
シテ 高澤祐介、アド 三宅右矩

東北
シテ 鵜澤光、ワキ 館田善博、ワキツレ 野口能弘、森常太郎、アイ 前田晃一
笛 一噌隆之、小鼓 鳥山直也、大鼓 佃良太郎
地謡 柴田稔ほか計6人


満席。膝が痛くて正座の席は困る、というお年寄りが数人ぶつぶつ。この能楽堂初めての人のためにはそういう注意も前もってしておかないといけないのかもしれない。
なぜか最前列で双眼鏡で何事かをのぞくおじさん。装束でも見ているのかと思ったけれど、囃子方を見ているようにも見える。おけいこしている人かな。
最前列で補聴器を鳴らすおじいさんが…。後者には注意してほしいものです。本人は気づかないでしょうから。


文山賊、二人ともノッていました。こういう演目は、演者が楽しんでやっているとこちらも楽しい。
狂言の小品はこのくらいの大きさの舞台が見やすいし楽しいですね。


東北は筋だけ読むと何が面白いのか、という作品ですが、これが舞台にかかると風情があります。
東国からやってきた僧の一行 ―東国と言ってもそんなに遠くからでは無いような印象ですが― が東北院で綺麗な梅に気付きます。地元の人がこれは「和泉式部という名前だ」と教えてくれます。そんなに丁寧に教えたわけでもないような気がしましたが「ねんごろにお教えいただき」と感激してまた梅を眺めます。
館田一行の謡って何となくそのまま洋楽の譜面に移せそうな感じがして面白い。

と、そこに美女が一人。本日は母上が仕舞をやった後なので、あまりに声が似ているのに気づいてびっくり。女性は梅の正しい名前(好文木あるいは鶯宿梅)を教え、また「これは和泉式部が植えて軒端の梅として眺めていたものです」、と教えます。現代だったらこういう事を言う人はおばさんに決まっている、と思ったらちょっと笑ってしまいました。
東北院の西には和泉式部の寝室も残っているらしい。

そして、女性は「私こそ梅の主」と言って消えてしまいます。すると、さっき梅についてちょっといい加減なこと(たぶん地元の人たちはそう信じていたのでしょうけれど)を言ってしまった門前の人が出てきて、和泉式部の事を教えてくれます。
ところで、囃子方がくつろぐとき、小鼓は笛の方を向いていたのですがいつもそうでしたっけ?いつもは大小が向かい合っていたような。

一行が待っているうちに和泉式部の霊が現れます。長絹は紫の地に藤の模様。梅の模様では曲との重なりが煩いし、デザインも難しいかも、と思いながら見ました。
後半。謡にはまあいろんな説明や理屈も織り込まれているのですが、メロディーと舞を楽しむという趣向。
前半ちょっと重かった大鼓は調子を上げてきましたが、惜しむらくは笛が苦しくなってしまった。

でも、そんなことがあってもこのシテ、とても良かった。舞の途中で静止した姿勢が良いのと、動きにタメがあり、目に心地よい。
前に銕仙会で胡蝶を観た時より数段良いと思う。単に演技が会場の大きさに会っていると言うだけでなく上手になったのだな、と思って調べたら前回は2012年。4年も前でした。
ファンになりました。


面は 都築港の若女
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by soymedica | 2016-05-31 08:40 | 能楽 | Comments(0)

桑田貴志 のうまつり 悪太郎 鉢木

d0226702_16453934.jpg桑田貴志 のうまつり
2016年5月21日(土)@宝生能楽堂
カンフェティ席5500円

仕舞
実盛 観世喜正
景清 観世喜之

狂言 悪太郎
シテ(悪太郎)野村萬斎、アド(伯父)深田博治、小アド(僧)中村修一

鉢木
シテ 桑田貴志、ツレ 小島英明、ワキ 森常好、ワキツレ 森常太郎、アイ(二階堂の下人)高野和憲、(早打)飯田豪
笛 一噌庸二、小鼓 幸正昭、大鼓 亀井広忠
後見 奥川恒治、鈴木啓吾
地謡 観世喜正ほか


切符をいただいたので行ってきました。天気も良いし、水道橋まで行くのは面倒、と思っていましたが、行って良かった。
でも、悪太郎は疲れていたので後半寝てしまった。ごめんなさい。萬斎と深田みたら、良いかな、と思って…。


鉢木は地味だけれど好きな演目。パンフレットには桑田の写真が使われていてこの人ビジュアル的にどうよ、と思っていた(失礼)のだけれど、会の最初の挨拶に出てきたお顔を拝見したらきりっとした感じ。曲が始まってからもなかなか良い感じの方でした。写真が良くないのか、動いているときの方が良く見えるタイプなのか。

ま、それはともかく、貧乏な常世の妻が出シ置で座っている。茶系の縦じまの着物なんですが、縦じまって装束としては珍しいような気がする。顎の細い面で、面の色が濃いのかツレの小島が色白なのか、あんまり面と肌色の差が無い。

そこに旅の修行僧とは言え、なんだか恰幅も良いし、声もよろしいお坊さんが一夜の宿を借りに来る。外は大雪だし妻としては泊めてやりたいけれど、僧侶とはいえ主人の留守に勝手に許可するわけにもいかず、「お帰りをお待ちください」と。そこで僧は囃子方の後ろで待つことにします。

ふと気が付くと常世が一の松で「ああ降ったる雪かな」と。とても重要でとても有名な言葉なので、シテもちょっと緊張気味。
雪の中を妻が「お客様があるのですが」と迎えに行く。
この曲を語るときに、「妻」については誰も解説しませんが、この人、とても良い人なんだろうなー。

常世は、泊めて差し上げたくはあるけれどこのあばら家には、とお断りします。食事にも事欠く毎日でお客がくるとまた大変だから、という気持ちもあるのでしょう。
この夫婦、ふたりとも気の毒な僧を泊めてやりたいけれど、お互いを思いやって断ったのではないのでしょうか。

でも、やはりこの大雪、夫婦の心は一致して泊めてあげようということになり、常世は追いかけて呼び戻します。
「駒とめて、袖打ち払う影も無し さののわたりの雪の夕暮」
この「さの」は上野国ではないのだという事を、今日せりふを聞いていて初めて知りました。

夫婦は粟を炊いて僧をもてなします。ここで邯鄲の話を持ち出して教養高いところを見せます。
いよいよ盆栽を薪にするために持ち出します。松の盆栽ですが雪の細工が今一つ。
大切な、梅、桜、松を切って薪に。驚く僧に、「来ていただいたおかげで私たちも火に当たれます」と。
しかし、薪というものは入会地でだれでも取れるのかと思いましたが、それは百姓だけの特権なのでしょうか。その辺のことも勉強してみたいな。

驚いたことにここで初めて常世は名前を聞かれます。この辺も民俗学的に面白いところかもしれませんね。ここまで落ちぶれても、鎌倉殿のために馬を飼っているというのが凄い。
僧はもてなしに感謝して旅立っていきます。また鎌倉でお会いするかもしれませんね、と。

アイが最明寺殿が武士に召集をかけていることを語ります。

森常好の時頼、凄く豪華な出で立ちです。
そして痩せ馬にのった常世登場。いかにも痩せ馬に乗った感じ。ドン・キホーテを連想しましたが、桑田、上手ですねー。
でも、貧乏侍の割に、持っている長刀が先の悪太郎よりも立派。長刀がかぶらない演目の方が良かったかもしれません。

時頼は「みすぼらしい武士を探して来い」と命令。これ、時頼が二階堂に、二階堂が家来に、という伝言ゲームが毎回笑えます。

常世は覚悟して御前に。時頼のお褒めの言葉がとても良かった。やはり森は上手い。書付を投げ与え、感動した常世はそれを皆に見せます。
めでたしめでたし。

おめでたい演目ではありますが最後は祝言。まだワキが橋掛かりにいるうちにおめでたくおさめました。

桑田貴志、とても良かった。次回は来年の5月13日(土)だそうです。都合が合えば行ってみたい。演目は花筐。女性をどう演じるのか興味があります。
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by soymedica | 2016-05-23 16:47 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演五月 千鳥 江野島

d0226702_9392225.jpg銕仙会五月定期公演
2016年5月13日(金)18時より@宝生能楽堂

千鳥
シテ 太郎冠者 山本東次郎、アド(主)山本則孝、(酒屋)山本則俊

江野島 道者
シテ 観世銕之丞、前ツレ 北浪貴裕、後ツレ 観世淳夫、子方 長山凛三、馬野訓聡、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、御厨誠吾
笛 藤田次郎、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺佐七
地謡 浅井文義
後見 浅見真州、西村高夫、清水寛二


千鳥、今まで大蔵流と和泉流何回か観て、有名曲の割に面白くないなー、と思っていたのですが、本日初めて面白く感じました。こちらの体調や心持のこともあるかもしれませんが、やはり東次郎の腕ではないかと。
皆さんご存知のように、酒屋につけをため込んでいる主人に、「お前は酒屋の主人と親しいのだから今夜の客のために一樽酒をつけで買って来い」と言われる太郎冠者。あの手この手で樽をかすめ取ろうとするところが見せ場。酒樽を代金なしで主人の目の前からかすめ取ると言う結構無理のある設定のせいか、「主人は最後には太郎冠者に酒樽を持って行かせるつもりだったのだ」とか色々な解釈があります。
そんな事お構いなしに一心に演技して全身を使って一生懸命酒樽をとってこようという直球勝負の東次郎の演技が楽しかった。


江野島。珍しい曲の上に小書き「道者」の上演は久しぶりとのことで、事前口座があったりと色々力の入った公演です。

まず、一畳台が大小前におかれ、その上に大宮が。中には弁財天と童子の計三人が入っているはず。子方もあの装束をつけて上手く移動するもんだと、感心。
欽明天皇の御代に江野島が突如として現れ、天女が出てきたりしてそれを祝ったというので、これは大変と勅使がやってくる。宝生欣哉も若い二人も偉そうで元気。

そこに釣竿を持った爺さんと若者登場。「この島はありがたい島だぞよ」と謡う。若者のはずの北浪貴裕、ちょっとビジュアル的におじさん。同吟が若干聞きにくいのですが、どうやら責任は銕之丞にありそうな。絶句もしていたし。
偉そうな勅使はみればそれとわかりそうなものだけれど、田舎の漁師は「あんたたち誰?」。勅使だとわかるとかしこまって、天人や龍神たちが壮大な土木工事をして島をつくった様子を語ります。
そして江野島がいかにありがたいか語るのでした。

そしてやっこらさと、座ると、「昔人をとって喰らう大蛇が鎌倉に住んでいたけれど、弁財天が『結婚してあげるからそんなことやめなさい』というので、大蛇は殺生をやめ、龍口明神となった」と、教えます。
本日地謡がとても良い。地味だけれどやっぱり浅井は実力者。

そして、お爺さんは「実は私はその龍口明神」と言って消えるのでした。
ワキがちょっと後ろに下がり、ワキツレの二人もワキの後ろに回って場所をあけます。作りものがいっそうガタガタ。中で準備しているのかしらん。

「道者」の小書きですので、間狂言が華やか。かるーいイメージの神職が腰にひしゃくをさして登場。江野島ができて、弁財天も来たし、寄付金を集めないと。待っていると参詣人(道者)がとてもたくさんやってきます。先頭の則重がちょうどワキの入場の時のようなつま先立ちの礼をするのが面白い。

ところが彼らはお賽銭を渋る。怒った神職はひしゃくを放り出して数珠をさらさらと揉むと、アーラ不思議、鵜の精が現れて参詣人たちをいさめます(というか脅かします)。鵜の精は金属光沢のある黒っぽい装束でそれらしい。面もかなり黒っぽく(何かな)、黒頭。何回も飛び安座しますが、最後の方はさすがにつらそう。
道者達は脇正面にずら―っと並んで一斉に橋掛かりの方を向いたり、舞台の方を見たり、これも派手。
最後は全員しずしずとお帰り。

すると、作りものの中から女神さまの声が。うーん、淳夫君もわりと直球勝負ですね。引き回しが下ろされると(これ、一畳台の上に乗っているので後見が背の高い人でないとできないかも)、きれいな女神さまの両脇に可愛い童子が。女神は玉を勅使に捧げます(でも女神の舞に邪魔だからすぐに後ろに押しやられてしまうのがおかしい)。

最初の方は女神と童子の相舞ですが、長山クンは全くわが道を行くタイプ、馬野クンは皆と協調したいタイプ。それぞれ上手で先が楽しみ。
天女の舞はあまり優雅ではありませんが、ともかく終わって笛座前の葛桶に腰掛けます。このとき、三人で座れるようにと後見が童子を人形のようにひょいっとずらすのが面白い。
しかしこのあとかなり長い間、天女は肩で息をしていましたが、大丈夫だったのでしょうか。

勇壮な五頭竜王登場。観世銕之丞の鬼神ものっていままでみたことあったろうか。体格の割に何となく弱いのが気になる。何となくみていて「腹筋弱そう」と感じさせる動作であるのと、ポーズの最後の最後で四肢の先の力が抜けてしまうように見える。まあ、あの体格で装束をつけてあの動作ですから辛いのかもしれませんが。
竜王の舞の終わりころには淳夫の息もおさまって、皆で退場。

全体を通してなかなか面白い舞台でしたが、舞台そのものの面白さだけでなく再演の意義や研究にも重点を置いた公演だったのかもしれません。

江ノ島は関東人にはとても近しい島。皆遠足などで一度は行ったことがあるはず。曲目も派手だし、子供も出て来る。入門講座の定番は土蜘蛛と紅葉狩らしいですが、これも良いのではないでしょうか。ちょっと長いし予算オーバーしそうですが。

前シテの面は出目栄満作の朝倉尉、後シテは洞水作の真蛇、後ツレは作者不詳の小面。
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by soymedica | 2016-05-18 09:40 | 能楽 | Comments(0)

セルリアンタワー能楽堂開場十五周年記念特別公演 翁 養老

d0226702_132588.jpgセルリアンタワー能楽堂 開場十五周年記念特別公演
2016年5月7日(土)13時より 
正面席12000円


翁 片山九郎右衛門、三番三 山本泰太郎、千歳 武田祥照、面箱 山本則孝
狂言方後見 山本則秀、山本凛太郎

養老 水波之伝
シテ 片山九郎右衛門、ツレ(天女)武田友志、(樵夫)武田祥照、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、御厨誠吾
後見 味方玄、梅田嘉宏
笛 一噌隆之、小鼓 幸正昭、脇鼓 森澤勇司、後藤嘉津幸、大鼓 亀井広忠、太鼓 前川光範
地謡 観世喜正他


本当に最近づいている。
なので、順番には書かずに、思いついた順に書いてみます。

翁、三番三と一口に言ってもそれぞれ本当にちがうとしみじみ面白い。本日は小鼓が幸清流で初めてだし。とても良かったです。もともと幸正昭の鼓が好きだということもありますが。

セルリアンタワーの能楽堂はホテルの中だけあって、案内などのサービスが丁寧。

入ってきた一同、今までになく装束が華やか。特に小鼓の三人は黄色の装束なので真ん中で三人にぎやかな印象。ま、演奏の時には上は脱いでしまうのですが。地謡陣もなかなか明るい模様。
全員が入った時の配置で三番三の泰太郎がやけに端っこにいるような気がする。あとの揉之段でもあやうく目付柱にぶつかるのでは?くらいの迫力だったので、セルリアンの舞台は小さいのかな。橋掛かりが短めなのと、舞台の高さがやや低いな、とはいつも思っていましたが。

千歳が清々しくて良かった。私の目には非常に若く見えるけれど、30歳近いかもしれない。切れのある動きで力まない声も美しい。

今回一番驚いたのは翁面。黒式尉かと思った。黒地に金の線描きのように見えましたが。間違って箱に入れちゃったのかと。そのうちだれか面に詳しい人に教えてもらいましょう。

三番叟は前回の大蔵彌太郎ほどではありませんが、やはり土臭い舞で力強い。和泉流が舞踊の要素が大きいとしたらこちらは伝統の祈りの要素が強いのだろうか。ダイナミックな動きなのに「肝の据わった」舞でした。

なお、後見に座っている凛太郎、侍烏帽子が似合ってかっこよかった。


引き続いての養老。地謡がぞろぞろいつもの位置へ。みんなミノムシのように座ってかわいらしい。
勅使の宝生欣哉は紺地に大きな金の模様が飛んでいる狩衣がとてもよく似合っている。従臣たちはオレンジと金の組み合わせでこれも華やか。最初に出てくるワキの装束って大切だな。

ここでありがたい水が得られると聞いたやってきた三人、おじいさんと木こりの若者に「養老の滝」のいわれを聞きます。これを語って聞かせる尉の面が素敵。やや鋭角につくってある頬のあたりがモダン。
九郎右衛門は上手なのは当たり前と思ってみているからあまり感心もしないけれど(もちろん良かった)、木こりの若者の武田祥照もgood。

でも、翁から一連でやると、この前場、ちと長いですね。

演出側もそう思ったのか、本日の水波之伝という小書きはアイ語りがなく、シテとツレが中入りすると、いきなり後ツレの天女が登場して舞を舞う。記念の能にふさわしい華やかさ。
そして山神登場。頭には牡丹?かと思われる花を載せています。さらに華やかになった舞台の最後は地謡が「君は舟、臣は水…万歳の道に帰りなん」と歌い上げて終了。

なんだかお正月になったようでした。
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by soymedica | 2016-05-12 13:04 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂企画公演 翁 末広がり 春日龍神

d0226702_17112732.jpg国立能楽堂企画公演 特集・寺社と能〈春日大社〉
2016年4月29日(金)13時より

金春流 能 翁 十二月往来・父尉延命冠者
翁・父尉 金春安明、翁 高橋忍、金春憲和
千歳・延命冠者 茂山茂
三番三 大蔵彌太郎
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、清水晧祐、飯冨孔明、大鼓 大倉慶之助
後見 金春穂高、金春康之、佐藤俊之、三番三後見 茂山良暢、島田洋海
地謡 高橋汎ほか

狂言 大蔵流
シテ(果報者)大蔵彌右衛門、アド(太郎冠者)大蔵基誠、(すっぱ)大蔵吉次郎
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 大倉慶之助、大鼓 大川典良

能 金剛流 春日龍神 龍神揃
シテ 宇高通成、前ツレ 宇高徳成、後ツレ 種田道一、廣田幸稔、豊嶋晃嗣、宇高竜成、山田夏樹、惣明貞助、小野芳朗、漆垣謙次
ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 則久英志、大日方寛、大蔵教義
笛 杉信太朗、小鼓 住駒幸英、大鼓 亀井広忠、太鼓 三島元太郎
後見 松野恭憲、豊嶋幸洋、工藤寛
地謡 金剛永謹ほか


づいている今日この頃。三人も翁が出てくると言うのでどうやるんだろう?と思って出かけました。結果は「そりゃこうするしかないよね」という空間配置でしたが、春日大社舞殿で薪能の初日にやられるときにはもっと狭い場所でやるので、今回演出を若干変えてあるとのこと。そもそも「なぜ三人翁か」などが今月の国立のパンフレットの最後に書いてあります。お勧め。

しーんと静まり返る中、面箱を持った三人が出て来ます。先頭が千歳、後の二人が三番三後見。後の二人の面箱は翁面しか入っていないので若干小さい。続いて翁が三人。装束は白一色。幕の奥ではカチカチと切火の音がずーっとしています。後見以外全員が橋掛かりから登場するので何だか壮観。

小鼓の大倉源次郎の着物が艶のある緑で派手ではないけれど凄く綺麗。この舞台にぴったり。

国立のスクリーンには千歳の舞は「若者によって舞われる前奏」と解説していましたが、上手い説明ですね。やはり千歳は狂言方がやる方がしっくりします。
翁全員が面をつける。

そして翁三人が立ち上がって囃子方の前に並ぶ。全員が脇正面の方をみると、三番三の彌太郎が立ち上がって翁と向き合う。彌太郎が小柄なので何だか翁を睨みあげているような具合。

十二月往来の問答、初めて聞きましたがなかなか良いものです。どこかで使いたい。そして金春安明の発声って「ん」の音がとても綺麗。
翁たちが向きを変えたりするので面の位置が観察できるのですが、憲和の面の位置があれで大丈夫なのか?というほど他の人とずれているな、と思ったら後ろを向いたときに控えめに直していました。

翁舞は三人でやるのかと思ったら二人は常座に控えています。
このギシギシいう音は何?と思ったらどうやら小鼓の緒を締めるときの軋みらしい。誰かの緒が新品なのだろうか。

それにしても後見座での三番三の準備がとても長い。烏帽子を替えている(今回は金の烏帽子に鶴の模様)だけでは無いような。

皆が「萬歳楽」と謡いだすと、ツレは立ち去って、延命冠者と父尉の問答になります。ほんのちょっとの登場。せっかくだからもっと活躍してほしい。
ところで、シテ方が面をとるときには後見が後ろに座ってほどいているけれど、金春流はそうなのでしょうか。観世は自分でほどいていたような。

彌太郎の揉ノ段。これが物凄く力の入った、土臭い舞。足拍子なども物凄く強くて何回も踏むので思わず「行軍骨折」という言葉が頭をよぎる。こんなにエネルギー使って、鈴之段が持つのか??と心配になるほど。でも、見ている方は充実。
鈴之段もちょっと泥臭い感じ。これは大蔵家だからなのか、彌太郎だからなのか。山本家や茂山家とも何だか違う。
見終わったこっちも汗かきました。また観たいな。


次いで末広がり。大蔵彌右衛門の発声は聞き取りにくい。中啓の扇を買いに行くはずが、何を買うのかわからなくて間違って傘を買ってしまう話。
この傘が真っ赤で開いて見せるところがなかなか印象的でした。
太郎冠者に古い傘を売りつけるすっぱが「これさえ歌えばご主人のご機嫌になること間違いなし」と教える歌:
  かさをさすなる春日山
  これも神のちかいとて
  人が傘をさすなら
  われもかさをさそうよ
  げにもさあり
  やようがりもそうのよ

前に何回か観ている演目なのですが、前に見たとき囃子つきだったろうか?しゃぎり留でした。


今回は龍神が沢山出てくる龍神揃という小書きの春日龍神。今思い返してみると、記憶に残るのは後場の龍神たちの並んだ様子のみ、という凄さでした。

気を取り直して最初たどってみます。明恵上人が中国への留学の挨拶のために春日明神にやってきます。明恵上人は声も良いし、姿も立派。すると、危険な渡海をさせたくない春日明神は時風秀行を使わします。
このシテ、立ち姿が凄く上品。
ふと、囃子陣を見ると小鼓がみたことない人。金沢の方だそう。太鼓は眠そうである。後場しか出番がないんだし、人間国宝なんだから、必要な時だけ舞台に出てくるようにしたらいいのに、そういうわけにはいかないのか。

シテは立ち姿が素敵、箒もお洒落、と思っていたら、お爺さんはクリのあたりから正中に下居してしまった。後見が肩をおろすついでに箒も持って行ってしまうし、残念残念。

あまりにしつこく行くなと言われ、明恵上人は入唐渡天は止めます、と言ってしまう。しかし、そんなにしつこく止めるあなたは誰?ときくと、
お爺さんはにわかに声色が変わって、「私は時風秀行だ、夜までいたら良いものを見せてやるぞ」と、いなくなってしまう。

アイは末社の神。派手なことはしないでアイ語りをして帰ります。

ここでワキツレがワキの後方に移動。たくさんの龍王が出てくるんだな、と期待させます。

そして龍神たちの入場。なんだか幕のところでもたついているな、と思ったらシテの龍神の龍が物凄――――く大きくてつかえそうになっていたようです。今まで見た中で頭に載せてるものとしては最大。
次いで竜女が二匹(二人?)、続いて龍神が六人。それぞれ難しい名前がついていて名乗りをします。
本舞台に竜女と龍神2人が入ってVの字をつくったところは華やか。
龍女の一人は何だか薄幸の美女のような面。

龍女の舞は相舞なんですが、ちょっと合っていなかったな。
シテもまさかと思ったら動きます。舞働きですが、良くあんなもの頭に載せて動けますね。袖がちょっと引っかかったのをむしり取ったりと大変そう。

うーん、華やかで楽しかったけれど何だかじっくり楽しむという感じでは無いですね、この演出。

楽しい連休初日でした。
写真は何年か前に撮った春日大社の藤。
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by soymedica | 2016-05-02 17:19 | 能楽 | Comments(0)