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第十三回萬歳楽座 翁 天の川風流 高砂

d0226702_12503774.jpg第十三回 萬歳楽座
2016年4月19日(火)18時30分より@国立能楽堂
正面席


翁 観世清和 三番三 山本東次郎、千歳 観世芳伸、面箱 山本凛太郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓頭取 大倉源次郎、脇鼓 田邊恭資、清水和音、大鼓 亀井弘忠、太鼓 観世元伯
後見 木月孚行、上田公威
地謡 観世銕之丞ほか計8人

天の川風流
織女 山本則秀、牽牛 山本則孝
後見 若松隆、山本泰太郎
地謡 山本則俊ほか計10人

半能 高砂
シテ 大槻文三、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 御厨誠吾、大日方寛
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 観世元伯
後見 山崎正道、川口晃平
地謡 観世銕之丞ほか計8人


面箱を先頭に一同ぞろぞろと入場。の始まり方って好き。凛太郎は何回目なんだろうか、いささか緊張した面持ち。観世清和は平常心。秋篠宮の結婚式の時の紀子&さーやみたい。
三番三の東次郎は上座に片膝たてて座っているのだけれど、その様子がものすごくきれい。橋掛かりには狂言地謡がずらー。この人たち、シテ方の地謡が帰ったら入れ替わるのかな、と思ったら最後まで橋掛かりにいました。

千歳の舞のうちに翁は面をつけ始める。何もしない大鼓が横向いたり前向いたりするのは何か意味があるのだろうか。初めて気づいた。
観世芳伸の千歳、何となく元気が無いように見えたけれど。
そして家元の翁。慣れているし、さすがに型がきれい。でも最近オーラが少なくなったような。

この間、東次郎は後見座で烏帽子を剣先烏帽子に替える。

舞終えた翁が面を取るのだけれど、この一連の作業がものすごく慣れを感じさせる。扱いなれているな、という安心感とその場の緊張のバランスがうまく取れている感じ。
最初と同じように正先でお辞儀をした翁は千歳を従えて帰ってしまいます。このときの小鼓、頭取が小さな声で掛け声をかけているのに初めて気づきました。

そして東次郎の揉ノ段。初めて見ましたが、万作、萬斎の三番叟とは全く違っている。流儀が違うこともあるだろうし、家の性格もあるのでしょうが、舞踏よりは祝祭性を大きく感じさせるもの。一般受けはしないだろうけれど(つまり、ホールでやるには不向き)、素晴らしかった。

凄いなー、とみている間にシテ方の地謡退場。後見もシテ方と狂言方とで交代。
舞終わって黒式尉の面をつける。「汗かいているだろうに大変だろうな」(後見がもちろんお拭きしますが)と思っているうちに、例の面箱持ちとの問答が始まる。鈴をもったけれど、いったいどこが天の川なんだ?と思ったら、太鼓の音がしたら「あら笑止や」と面を取ってワキ柱のところに座ってしまいます。

なになに?と思っていると橋掛かりの所に派手な男女が。女はなんと乙の面。糸巻を持っている。男は牛をひいている。これは棒の先に角を付けた黒頭がついている、と言ったらわかっていただけるでしょうか。西洋の子供の持っている馬の頭のついたおもちゃのノリですね。
東次郎が出て行って「誰?」と尋ねると、牽牛と織女と名乗った後に「能を見に来た」と。ワキ柱のところで鬘桶に腰掛けて二人の由来を話してくれます。

そして東次郎の鈴之段。これも楽しいのですが、それに続いて牽牛と織女が舞います。織女の天冠には小さなカササギが橋を作っています。この二人の相舞は何となく末社の神の舞みたいで楽しい。

地謡が謡いだすのですが、あんまりうまくない。真ん中の人は途中飽きちゃったのか姿勢崩してるし。
終わって東次郎が礼をすると牛にまたがった牽牛と織女は帰って行きます。

全体として華やかで楽しい舞台でした。でも、これなんだろうと思ったら、次の解説で説明してくれました。


今回は最初ではなく、間で藤田六郎兵衛の解説が入ります。
「風流」というのはいくつかあって、有名なのは「蟻の風流」これは「よろこびありや」と謡うと「呼んだ?と蟻が出てくる」という凄いダジャレ。
「餅の風流」というのは餅を頭に載せた役者が出て来るもの。六郎兵衛いわく:
私はこれを大阪でやらせていただきました。千作さんで。あの千作さんが鏡餅を頭に載せて出てくるんですよ。…みちゃいけない。見たら噴き出して笛なんか吹けないですよね。


楽しい解説のあとは、藤田の笛で熊本の震災の被害者を追悼。


半能の高砂
シテが梅若玄祥から大槻文蔵に変更。どうしちゃったのかしらん。玄祥、道成寺でふらついたという話だし、体型からして冠動脈か。脳梗塞?などと考えているうちに宝生欣哉一行が名乗り。そしてあの有名な「高砂や」に続いて行きます。

華やかでおめでたい雰囲気。大槻文蔵ってかっこいいけれどちょっと迫力に欠けるな、という気が時々するんですが、住吉明神なんていうのはこういう品の良い人がよろしい。途中袖紐が冠に引っかかってしまうという場面もありましたが、(何となくそうなるのではないかという予感がしたのは何故)そこも後見の助けですーっとクリアーしてしまうベテラン。

こんなにきれいなものがあるのだから、熊本も日本も大丈夫さ、と思えた一日でした。
ちなみにこの萬斎楽座の第一回目は震災の年の4月1日。休止していた国立能楽堂再開の初日公演だったそうです。

次回は10月13日。
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by soymedica | 2016-04-26 12:52 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演四月 悪坊 朝長

d0226702_1232585.jpg国立能楽堂定例公演四月 
2016年4月15日(金)18時30分より

狂言 和泉流 悪坊
シテ(悪坊)三宅右近、アド(出家)野村萬斎、小アド(茶屋)石田幸雄

能 観世流 朝長 三世十方之出
シテ 観世清和、ツレ(侍女)坂口貴信、トモ(従者)角幸二郎、ワキ 福王茂十郎、ワキツレ 福王知登、矢野昌平、アイ 高澤祐介
笛 松田弘之、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 小寺佐七
後見 木月孚行、上田公威
地謡 角寛次朗


何故に本日の定例公演はこんなに力の入ったキャスト…。

悪坊は悪太郎の簡易版みたいな話で、大酒のみの乱暴者が無理やり出家をお供にしてしまうが、寝ている間に長刀をとられ、という話。後の場面で念仏を自分の名前かと思う、といった部分が無いバージョン。

しかし、三宅右近ってこんなに面白い人だったか。あんまり意識して観たこと無かった。大変失礼いたしました。萬斎にとっては大オジサンくらい?親同士が従兄?こういう大先輩の芸をきちんと受け止めて引き立てることができる萬斎も偉い。黄色っぽい袴の色が面白かった。


朝長はいつもきちんと観ようと思うのだけれど、これ、長くありませんか?いつも途中でだれちゃう。今回もこんなに素敵なキャストなのに、前半眠くなってしまった。

朝長にゆかりのある清凉寺の僧が青墓に葬られている朝長を弔いにやってきます。お参りをする僧の一行、さすが武士の縁者だけあって、様子が立派。
おなじ墓に参ろうとしてやってくる女長者とその侍女。装束の色が橋掛かりにいるときには白い小菊を散らしたように見えたが、舞台に入ると金茶の葉っぱが紫の地にちらしてあるように見えた。いずれにせよとてもしっとりして美しい。観世清和、女をやるとき時々足が開き気味になるのが気になるけれど、大筋ではいつでもどんな時でも安心して観られる演者。
だから、眠くなるのか。前半はオーラが伝わりませんでした。

アイの高澤がよくわかる説明をしてくれたので、眠気が飛びます。朝長だけでなく、義朝、義平の最後も語られました。

女長者の宿で僧の一行がお弔いをしていると、朝長の幽霊が。
トンボの模様の装束。
なんだかわかりにくいな、と前回観たときに思った理由がわかりました。朝長の最後をクライマックスとして最後にもっていくために、父の最後がその前に謡われるのですね。

膝を射られるところと切腹のところの所作はさすが。でも若干ジェスチャーっぽかったかも。
最後扇を閉じたあとの退場まで緊張が途切れないのはやはり実力者観世清和、でも本人自身が不完全燃焼だったのかも。


面は 前シテが深井、後シテが今若(河内)、ツレは小面。
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by soymedica | 2016-04-20 12:33 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会四月定期公演 雲林院 子盗人 歌占

d0226702_1143597.jpg銕仙会四月定期公演 
2016年4月8日(金)18時より@宝生能楽堂

雲林院
シテ 浅井文義、ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎、アイ 三宅右矩
笛 一噌庸二、小鼓 大倉源次郎、大鼓 佃良勝、太鼓 三島元太郎
後見 野村四郎、長山禮三郎
地謡 浅見真州ほか

狂言 子盗人
シテ(すっぱ)三宅右近、アド(主人)高澤祐介、小アド(女)三宅近成

歌占
シテ 馬野正基、ツレ 安藤貴康、子方 馬野訓聡
笛 藤田貴寛、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井洋佑
後見 観世銕之丞、山本順之
地謡 清水寛二


雲林院は初めて見る演目、と思っていたら観世会の定期能で観ていた。それも万三郎で。でも、寝ていたらしい。

まず正先に桜の作り物が出されます。これ、こだわって本物を使ったらどうだろうか。
森常好登場。大口をはいた役が似合うな。
この蘆屋の公光は伊勢物語の読みすぎで夢にまで出てきたので、若者二人を連れて雲林院にやってきたのでした。上げ歌のところものすごくきれい。

すると、おじいさんがやってきて一行に声をかける。ここまですごくテンポよく滑るよう。おじいさんは全体に金茶でまとめて、腰帯が緑でおしゃれ。舞台の桜とマッチして春を感じさせます。
公光はもともと話好きなので、業平と高子の夢を見たことをすらすらとしゃべってしまう。
すると、おじいさんは自分は業平かな、そうじゃないかな、と言って消えていく。

シテとワキの息がぴったりあってなんだかきらきらした前場でした。もそっと、地謡がしゃれた感じでもよかったのにな。

そして、公光は花のもとでまどろむはずなのに、桜は片付けられてしまうのでした。
(実はアイ語りのところでうとうとしちゃったので聞いていませんでした、失礼。)

在原業平登場。初冠のための目の錯覚かもしれないけれど、なんだか背が高くなったよう。やはり面は私には高貴な美男子には見えないけれど、ちょっとうつむいたところを斜め30度くらいから見るとまあまあ見られるかな。

とてもきれいな序の舞。貴公子を感じさせる舞でした。
浅井義文って地味だけれど味わいのあるシテ方ですね。
初めての演目でしたが満足してじっくり味わえました。

常太郎君、もそもそしない!

面は前シテが笑尉 河内作、後シテは中将 河内作


子盗人。前に一度観た時には、子供を寝かしつけた乳母は退場したような気がしたのだけれど、今回は舞台上に残っていました。
実生活でも人が赤ん坊をあやしている姿は楽しいものですが、それをうまく取り込んでいますね。
今日覚えたひとこと:
相撲の果ては喧嘩になり、博打の果ては盗みになる。


ちょっと不気味な歌占は好きな演目です。馬野も上手だし。
安藤お兄さんに連れられて出てきた馬野訓聡くん、少年ぽい顔つきになっていてびっくり。もともとはツレではなくワキがやっていた役だとのこと。それで安藤の装束もよくワキが着ている長裃なのかな。

実は上掛の詞章がなかったので喜多流の詞章(国立能楽堂パンフレット)を持って行ったのですが、差異がなかなか面白かった。

親を探しに行く子供に、良く当たる占いをさせてみようと待つ二人。出てきた歌占をする男、髪は真っ白なのに顔は若い(今回は洞水作の若男でしたが、直面や邯鄲男のこともあるそうです)。この面の選択がなかなか難しいと思いますが、今回、全体の雰囲気に良くマッチしていたと思います。それと、狩衣の下からちらっと見える着物の柄が素敵。

占いをすると、ツレの父の病気については心配ないと。そして少年の父の行方に関しては「もう会っている」。この親子の問答が緊迫してリズムも良く、満足。お父さんとしてはここに一つの見せ場を持って来たかったのでしょうが、見事に成功しています。

後半も地謡が力強く、聞かせます。渡会はいやだいやだと言いつつ、地獄の曲舞を見せます。そのうちに渡会は狂乱しますが、ふっと正気に戻って息子を連れて帰って行きます。後半はもっとおどろおどろしい方が私の好みですが、楽しく観られました。
囃子陣も若々しくて良い感じでした。

ところで、この歌占について天野文雄がパンフレットに面白いことを書いていたのでちょっと引用させてもらいます:
伊勢神道は鎌倉中期(1275)から十年ばかりの間に渡会行忠、渡会家行によって集大成されたが(中略)こうして成立した伊勢神道の特色は神を仏の垂迹とする神仏習合の両部神道にたいして、神本仏従の立場に立つ反本地垂迹思想であり(中略)伊勢の神にとっては渡会氏のシテが仏教的な教戒である「地獄の曲舞」を歌うことはとんでもないことだったはずである。


前の列の女性、雲林院も歌占もなんと手書きの詞章を持っていらした。びっくり。
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by soymedica | 2016-04-13 11:44 | 能楽 | Comments(0)

第十回香川靖嗣の会 八句連歌 野宮

d0226702_22163293.jpg第十回香川靖嗣の會
2016年4月2日(土)14時より@十四世喜多六平太記念能楽堂

お話 馬場あき子

狂言 八句連歌
シテ 野村万作、アド 深田博治

能 野宮
シテ 香川靖嗣、ワキ 森常好、アイ 高野和憲
笛 一噌隆之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原崇志
後見 塩津哲生、中村邦生
地謡 友枝昭世ほか


   昔に帰る花の袖
   月にと返す景色かな



桜が満開の土曜日。

まずは馬場あき子さんのお話。ざっと六条御息所と源氏の関係を話しつつ、いろいろなエピソードを教えてくださいました。源氏物語が好きな人には常識なのでしょうが、六条御息所にはモデル(徽子女王)がいた、というのは初耳でした。
この野宮の場面というのは舞台上で無常(旅の僧)と妖艶(御息所)が出会うところにあること、文言上は御息所があの車争いの時の車に乗って登場するということで御息所の気持ちを見事に表していることなどをお話になりました。
小柴垣は源氏との思い出の象徴、鳥居は聖なるもののシンボルであり、その鳥居を出たり入ったりすることの見苦しさに御息所は気づき、車に乗って帰ったのではないか、とも。お話を聞いているうちに、この巻(賢木)だけでも原文を読んでみようかな、という気分になりました。


狂言の八句連歌。深田博治に借金をしてどうもきまりの悪い野村万作がうまく歌を詠んで意気投合、借用証を返してもらう、という話。万作&萬斎もよいけれど、万作&深田も面白い味わい。

花盛り ごめんなれかし 松の風
桜になせや(なせじ) あめのうきくも 
幾たびも かすみにわびん(わびぬ) つきのくれ
おいせめかくる 入相の鐘
にわとりも せめてわかれば のべて啼け
ひとめもらさぬ こひのせきもり
なのたつに つかいな告げそ しのびつま
あまりしたえば ふみをとら


さて、期待の野宮。一言でいうと、素晴らしかった。というか何がどんなに良かったかがうまく説明できないのですが、技術が向上して細部にまで神経がいきわたると、こんなにまで素敵なお話になるのか、という。私のイメージでは香川は割と地味な人なのですが、花のある舞台でした。

正面に出される鳥居と小柴垣。この小柴垣は正面に平行ではなく、垂直にしつらえられており、安定が良い。

最初に登場するのはもちろん旅僧の森。無常を感じさせるには若干ふくよかすぎるのと、声が良すぎる森ですが、安心できる人選。かなり強弱のメリハリの効いた謡です。僧がふと気が付くと美人がひとりやってきます。シテは声が小さいのですが、とてもわかり易くてきれいな謡。ここですでにはっと引き込まれる感じがします。

野宮の前場ってあんまりおもしろくないな、と思っていたのですが、時間のたつのを忘れました。
面は現代ものなのでしょうか。表情があって、うつむいた加減がとても良いもの。ただの里女ではないな、と感じさせるのにこの面と上手な使い方も一役買っていたと思われます。

中入り。柿原のトレードマークの白いハンカチで汗を拭く様子、久しぶりに見た。長いことかけて絞めなおしていましたが、鼓自体は変えなかった様子。
アイの高野も主張しすぎず良かったです。アイ語りはうまくやってやろう、という気が見えすぎると良くないと思う。

そして後シテは紫の地に金の車の模様の長絹。おそらく面は同じなのでしょうが、さらにすごみの加わった美人に見える。シテの型ばかり見ていて気付かなかったけれど、地謡がなかなか良かった。

序の舞。残念なことに笛が今一つの調子でしたが、それを補って余りあるふんわりした美しい舞。
そして破の舞へ。
鳥居を出たり入ったりと大きな動きをするのは観世流なのだろうか、ここであまり派手な動きはなく、地謡に身を任せての動きのように見えました。

最後、ぎりぎり囃子の笛が幕に入るまで皆しーんと余韻を楽しんでいました。
 

ちなみに次回は9月3日で遊行柳、来年4月1日は隅田川だそうです。
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by soymedica | 2016-04-10 22:18 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会青山能三月 口真似 葛城

d0226702_2054685.jpg銕仙会青山能三月
2016年3月30日(水)18時30分より@銕仙会能楽研修所

仕舞
放下僧 小歌 岡田麗史⇒観世銕之丞に
花筐 クセ 清水寛二

狂言 口真似
シテ(太郎冠者)善竹富太郎、アド(主人)野島伸仁、(客)善竹十郎

能 葛城
シテ 長山桂三、ワキ 則久英志、ワキツレ 梅村昌功、御厨誠吾
アイ 善竹大二郎
笛 杉信太朗、小鼓 大山容子、大鼓 大倉慶之助、太鼓 梶谷英樹
地謡 西村高夫

  しもと結う葛城山に降る雪の間なく時なく思ほゆるかな


数日前に仕舞が岡田から観世銕之丞に変更になっていたが、どうしたんだろう。インフルエンザ(また流行っている)程度の事なら良いのですが。

狂言の口真似。そんなに面白い話ではないけど、まあまあ面白かったのはこちらの心持のせいか、それとも演者か。


能の葛城。シテの長山桂三は同世代の演者の中で頭一つ抜きん出ていると思う。
若い囃子陣がなぜかつんのめるような勢いで開始。大鼓のせいかな。
山伏の一行登場。美声である。だが、雪に降りこめられたというよりは、これから雪山登山でもしようかという感じ。

と、急に静かになった舞台に「のうのう」と女の声が静かに響く。
雪をかぶった笠のせいで顎から下しか見えないと、かえって面の顎が動いているように見える。手に綿菓子のように見える雪をかぶった細木(しもと)を持っている。女は「雪でお困りでしょう、ぼろ屋ですが如何」と誘うのだが、山伏一行はどうも綺麗な女の家で宴会でもしそうな勢い。

女が後見座で笠をとると、手に持っていたしもとの雪も落ちる。
全体を通して型も謡も綺麗なシテなのに、しもとを拾うところで、なぜかギョットするほど雰囲気が崩れたのはなぜだろう。

夜になりお勤めをする山伏に、女は自分のためにも祈ってほしいと言って、自分は実は役行者の怒りをかった葛城明神で今も蔦で戒められているのだと打ち明けて消えてしまう。

里人から葛城の岩橋の話を聞いた山伏たち。この里人、さっきの太郎冠者にそっくり。御兄弟ですね。
山伏は勧められて早速お祈りを始めます。

と、美しい女神が。自分の姿が醜いのを恥じていたと言いますが、美人。控えめな方だったんでしょうね。天冠には綺麗に紅葉した蔦の葉。女神と山伏の問答。ワキは美声で音量十分ですが、なぜか雰囲気で女神に負けている。

美しい舞を舞った後、女神は消えて行きます。

囃子もワキも今一つの中で、シテが輝いていましたが、やはり長山桂三には大物のワキや囃子陣と対抗してほしい。そういう訓練も大切じゃないかなー、と思いながら舞台を観ていました。


最後の西村の解説が、奇しくも「ワキが場を作る」話でした。おそらく宝生閑を思い出していたものと思われます。

前シテの面は洞白作の深井、後シテは作者不詳の増女
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by soymedica | 2016-04-04 20:06 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂 復興と文化特別篇 名取ノ老女

d0226702_2085142.jpg復興と文化 特別編 老女の祈り 
名取ノ老女

2016年3月26日(土)13時より
正面席

毛越寺の延年 老女
藤里明久

おはなし
小田幸子、小林健二

復曲能 名取ノ老女
名取ノ老女 大槻文蔵(梅若玄祥)
護法善神 金剛龍謹(宝生和英)
孫娘 松山絢美
熊野山伏 殿田謙吉
笛 竹市学、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純、太鼓 小寺真佐人
後見 赤松禎友、武富康之、豊嶋幸洋(武田孝史)
地謡 観世喜正ほか
(カッコ内は25日の配役)


   それわが朝は粟散辺土の小国なれども
   人の心のやわらかなれば、大きに和らぐと書きて、大和の国とは申すなり



能舞台の正面奥、シテ柱と笛柱の間に大きな藍染の幕が張ってあり、囃子のところは舞台裏、という仕掛けになっていました。
延年の舞 老女 です。後ろからお坊さんが出てきて正先に小さな漆塗りの机を運んでくる。鈴と中啓がおいてある様子。

次にしーんとした中を黒い面で長い白髪のおばあさんが登場。机の前で身づくろいをし(髪を撫でるしぐさをする),踊る。右手に鈴(持ち手の先にリング状に並べてあるタイプ)、左手には扇。これは後で広げた時に気づいたのだけれど、骨は赤い漆塗りで、金・銀・赤の彩色の紙を貼ったとても派手なもの。

鈴を振りつつ舞台の三方を清めて帰る。三番叟の原型なんだろうか。
パンフレットを斜め読みした感じでは、毛越寺の延年の行事ではいろいろなこと(演劇も含め)が行われ、それの一部らしい。

ついで、小田幸子&小林健二の解説。まず、パンフレットやポスター(帰りにくれたので一部もらった、後で額装しようか)の山越えの阿弥陀様の図は鎌倉時代のもので、江戸時代の添え書きがついているそうです。
名取の老女は信心深く、熊野に48回行くつもりが47回めで歩けなくなり、ついに輿に乗っていくと、浜ノ宮で阿弥陀様を見る、という場面の絵なんだとか。

そしてもう一つパンフレットの裏表紙にもある葉っぱ。これは梛(なぎ)の葉で、熊野の神木とされているもの。この葉の虫食いが文字に見えて神意を伝いえる、というのは熊野に関する説話につきものなのだそうです。ちなみに、梛の自生の北限は九州当たりであり、より北のほうにあるのは全国の信者が持ち帰って植えたものだとか。

今回の復曲では、クリ・サシ・クセ部分を熊野権現の本地の物語に、老女と現れるのは従者(男性)であったのを孫娘に、そして名所教えを入れたところが大きな変更点だそうです。

パンフレットにはそれぞれ二日にわたる公演の老女役、護法善神役の4人が文を載せていますが、それぞれの世代の感じ方を伝えてくれて面白い。このパンフ、手に入ったら舞台をご覧にならなかった方も是非読んでみてください。面白い。


さていよいよ名取ノ老女の始まり。ワキは二日とも殿田謙吉。なかなか良い人選だったと思います。若くて上手、そしてなかなか賢いので、こういう新作にぴったり。
名取ノ老女を訪ねようとやってくるのですが、笛がとても綺麗。

子方に続いて老女登場。老女は照明が当たると金色に輝いて見えるような装束。遠目には麻のような張りのある生地の水衣を着ているように見えます。子方の肩に手を置いて歩く形が、ちょうど現在の盲人を誘導する形と同じ。
一の松を挟んで二人で謡う。

「婆さま、わらはは花を摘んで参りませう」っていうところで思わず「お花摘みに行く」を想像して笑ってしまいましたが、もう死語なのでしょうか。
と、知らないおじさんが少女に声をかけます。

昔の事なので、おじさんは山伏でもあるし、少女は素直に応じておばあさんの所に案内。山伏と老女はナギの葉に現れた歌を読み、感涙にむせびます。
この時、私の見ていた角度からは子方の装束のオレンジと婆様の水衣の裾から除くオレンジ(国立能楽堂所蔵の江戸巻の紅地白鷺太藺模様縫箔の復元だそう)とが上手くマッチして凄く綺麗でした。

ここで舞台を360度ぐるりと見まわして名所教え。閖上の由来ってそうだったのか。
そして熊野神社の由来のお話のあと、山伏が「こんなにおめでたいことがあったのだから、舞を舞ってはどうか」とお勧めします。
狩衣の模様は松、頭には金の烏帽子で舞っていると、
そこに護法善神が。
一度揚幕から姿を見せた後引っ込み、その後勢いよく。金剛龍謹、凄くカッコ良かった。あまり東京で見る機会のない金剛流ですが、金剛流の将来は安泰だなー、と思わせる演技。印象的でした。

最後に橋掛かりにシテが幣を捨てて退場なんですが、それを拾った後見も橋掛かりから帰ったのが面白かった。

これはなかなかこなれた復曲能でした。また上演してほしいな。

面は 老女:白洲正子が所蔵していたもので、石原良子復元。
護法善神は大飛出、徳若作。
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by soymedica | 2016-04-03 16:32 | 能楽 | Comments(0)