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国立能楽堂二月特別講演 吟三郎聟 楊貴妃

d0226702_2225145.jpg国立能楽堂二月特別講演
2016年2月24日(水)18時30分より
正面席 6300円

おはなし 西哲生

復曲狂言 吟三郎聟
シテ(聟)茂山千三郎、アド(舅)茂山千五郎、(太郎冠者)島田洋海、(教え手)丸石やすし

能 観世流 楊貴妃 臺留
シテ 関根知孝、ワキ 福岡茂十郎、アイ 松本薫
笛 一噌幸弘、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄
後見 木月孚行、武田尚浩
地謡 岡久広ほか


おはなしは関根祥六と西哲生の対談の予定だったのだけれど、関根は体調を崩して出られず、西哲生が一人で解説したらしい。(遅れて行ったので聞けなかった)。

復曲狂言の吟三郎聟。たしかに丸石やすしの方が千三郎より貫録あって、舅としてはこっちの方が聟として頼もしいだろうけれど、ちょっと貫禄ありすぎ。面白かった。
どこかに行く時「さあさあこいこい」というところを、婿はそうも言いにくく、「さあさあござれござれ」と言ってしまう。そこからもう、おかしみがじわーっと。
茂山家の実力は復曲狂言でもいかんなく発揮されました。


楊貴妃。大小前にオレンジの屋根、深緑の引き回しの宮が出されます。あんまりスーッと持ってくるので、あれ、これは中に人が入っていないのだっけ?と思うくらい。
準備ができて、玄宗皇帝に楊貴妃の魂魄のありかを訪ねるように命令された方士登場。息子も大きいけれどお父さんも体格が立派、と改めて感心。宝生閑亡き後、私の一押しのワキ方です。

あちこち探し当てて常世の国にやってくる。字幕を見ていて気付いたのですが、蓬莱とかいて「とこよ」と読ませる部分がありました。蓬莱って熱田神社辺りの事なんですって???(鰻屋さんではなくて)。
常世の国にも「そのあたりの人」というのが居るのが何となく不思議なんですが、とにかく教えられて太真殿にたどり着く。

宮殿の奥から声が。関根知孝って関根祥六の甥だったか。出だしの声が、あれっと思うほど似ていた。
玉のすだれをかかげて立出る、と地謡は歌っているけれど、まだ楊貴妃は宮殿の中。なぜかおろした引き回しは「梨花一枝、雨を帯びたる装いの」まで下に置いたままなのはなぜだろう。この地謡の最後の方(六宮の粉黛の云々のあたり)で簾が披いて楊貴妃登場。後ろの後見が紐をひくと簾(鬘帯らしい)が左右に開く仕掛けで、とても綺麗。

綺麗と言えば地謡に艶があって綺麗。この曲は耳で聞いてわかる詞章が多いので、地謡が綺麗という事は重要ですよね。
シテの謡もこもらずに艶のある地謡と良く合っていました。そして、女性の能面ってそれだけ見るととても美人とは思えないのですが、こうやって天冠下(今回は増)になってみるとこの女性は確かに絶世の美人。
舞もすらーっとした印象。

序之舞の後の最初の謡(名前がついていましたよね)、の出だしが予測していたよりも早くてびっくり。

さて、勅使は都に帰るのですが、橋掛かりでいったん振り返り、そして深く礼をします。ここのところで、方士は楊貴妃に恋していたんじゃないのかな、といつも思うのですが。
楊貴妃の方は全然そんな風もなく、また一人寂しく宮廷に帰って行くのでした。

終わりはもちろん宮を出て橋掛かりから帰るのですが、シテが橋掛かりに差し掛かったところで地謡も扇を置いておしまいとなります。

美しい一曲でした。
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by soymedica | 2016-02-28 22:26 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂二月 企画公演 蝋燭の明かりによる 梟山伏 砧

d0226702_11254322.jpg国立能楽堂二月企画公演 蝋燭の明かりによる
2016年2月19日(金)18時30分より
正面席6300円


狂言 和泉流 梟山伏
シテ(山伏)高澤祐介、アド(兄)三宅右矩、(弟)三宅近成

能 金剛流 砧
シテ 豊嶋三千春、ツレ 豊嶋晃嗣、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 大日方寛、アイ 三宅右近
笛 一噌仙幸、小鼓 曽和正博、大鼓 柿原崇志、太鼓 三島元太郎
後見 宇高通成、廣田幸稔、豊嶋幸洋
地謡 宇高竜成ほか


行ってからろうそく能だったことに気付く。しかも狂言から。今年は謡講が無いのが残念。
そしてひっそりと掲示された、「宝生閑さんのご逝去に伴い」という出演者交代のお知らせが寂しい。

今月号のプログラムには綺麗なカラーの絵が載っていて、20円高かったです。

蝋燭能で梟山伏を観るのも何となく変わっていて楽しい。隣のお兄さんがとても楽しそうに笑う人だったので私の楽しさも倍に。
三宅のお家は派手さは無いけれど、堅実。


。芦屋の何某は閑から欣哉に変更。観ているこちらの心持か、家のトップになってから短時間ですが何となく演技の質が変わったような(良い方向に)気がする。小柄なのはいかんともしがたいけれど、謡に落ち着きがもう一つ加わったような。
ろうそくの光に夕霧と何某のシルエットが綺麗です。

ここで夕霧に伝言を託して主人は退場。橋掛かりに出たとたんに何となく気配が消えるような感じがするのは、ろうそく能のなせる業か。ろうそく能では本舞台と橋掛かりの距離がはっきり感じられます。

夕霧が蘆屋の妻のもとへ。夕霧が派手な着物なのと対照的に妻は物凄く地味な出で立ち。ひょっとしたら蘆屋の何某よりも年上なので焦っているのかもしれない。
それにしても本日の見所は非常に静か。

ここで後見が砧を正先に持ち出します。
シテは後見座で唐織の肩を脱ぎます。
どうなるのかな、とみていると「いざいざ砧うとうよ」のところでまた後見が砧をワキ座へ。そこで妻と夕霧は砧を打つのですが、杵は扇で代用するのではなくて、ちゃんと黒地で先が金色の物が二本用意してありました。

シテは実年齢が77歳。動きがゆったりしているのは地なのかもしれませんが、夕霧との対比が綺麗。実は最初に出てきたときにはやけにギクシャクした感じだったのですが、だんだん調子がでてきました。関節に油が乗ったのか(笑)。

「殿はこの年の暮れにも御下りあるまじいにて候」と言われ泣く妻。観る角度によるのかもしれませんが、ろうそくの明かりで見るとあのシオリの動作が本当に泣いているように見える。

中入りで後見が正先に砧を戻します。
間語りもなかなかしっとりした感じで良かった。

後ジテはつまり妻の幽霊なんですが、白っぽい装束で一部に金が入っている。大口が淡いグレーか銀色に見える。とても綺麗。
そして前半の妻の弱さと対照的に動きがダイナミック。地獄から来た、というよりも、夫の願いに答えてどこか別の世界から来た幽霊といった体。

何だか太鼓の音がとっても湿っていたのが気になりましたが。

地謡もとても良かった。

砧には実にいろいろな演出の方法があるらしく、今度は観る前にもっと勉強して行こう。

面は前シテが曲見 大和作
後シテが霊女
ツレが小面


参考は能の鑑賞講座一 三宅襄 檜書店
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by soymedica | 2016-02-22 11:29 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会2月定期応援 盛久 樋の酒 胡蝶

d0226702_836238.jpg銕仙会2月定期公演 盛久 樋の酒 胡蝶
2016年2月12日(金)18時より@宝生能楽堂

盛久
シテ 西村高夫、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ(太刀取)則久英志、(輿舁)野口能弘、御厨誠吾、アイ 河野佑紀
笛 藤田次郎、小鼓 後藤嘉津幸、大鼓 國川純
後見 清水寛二 永島忠侈
地謡 観世銕之丞ほか

狂言 樋の酒
シテ(太郎冠者)野村萬、アド(主人)野村虎之介、小アド(次郎冠者)野村万蔵

胡蝶
シテ 安藤貴康、ワキ 大日方寛、アイ 能村晶人
笛 寺井宏明、小鼓 古賀裕己、大鼓 柿原光博、太鼓 小寺佐七
後見 鵜澤久、山本順之
地謡 馬野正基ほか


盛久は初めて見る演目です。まず囃子無しでシテが登場。輿には乗っている体ですが、被り物も無く、輿の色も地味。捕虜ですからね。この輿舁の装束の模様が二人一組の柄でなかなか凝っていました。
シテの盛久が土屋三郎の護送で鎌倉に送られる。盛久がまず京都で清水の観音様にお参りしたいと願うと、それは紳士同士のこと、土屋三郎も許す。西村はなかなかハンサムなので直面の役が映えます。

春の清水寺を立って、鎌倉に護送されます。この道行の地謡, 西の方の地名がやたらと細かく謡いこまれているのは伝統的な名所観なのでしょうね。なぜか若干一人地謡でテンポがずれているひとがいましたが、全体として地謡が非常に綺麗でわかりやすかった。
西村の謡もわかりやすいので、楽しい。

由比ヶ浜で処刑される前に土屋に礼を言う盛久。この曲は観世十郎元雅の作だそうで、この時代の人の考える立派な武士道が反映されているのか。源平の戦いの時代はもっと何でもアリだったのでは、というのは私の辺ケンカ。
長々お経を唱えたりするところも結構聞かせます。
そして、いざ処刑、となると太刀に有難い光線があたって(観音ビームですな)、真っ二つに。ここは、従者が後方から太刀を盛久の前に投げる形で表現されます。

「おお、これはどうしたことか」「観音様のご利益か?」とアイが解説。なかなか良い語りだったのですが、セリフが短く、物着がやや遅れ気味。
物着と言っても、烏帽子、直垂をつけるだけですが。

服装を整えた盛久と土屋は頼朝の御前へ。これは、頼朝が実際に出るわけではなく、正面席あたりにいらっしゃると言う形で表現されます。
そして地謡が前の晩盛久と頼朝が同じ夢を見ていたのだ、という奇跡を歌い上げ、二人と(そしてワキー観客たちも)観音様のありがたさに感動します。

命拾いした盛久は頼朝にお酒まで振舞ってもらい、かっこよい舞を舞って退場します。
めでたしめでたし。

この曲好きだな。


樋の酒。この前に休憩かと思ってホールに出てしまったので慌てて戻る。萬以外でこの曲を観る機会が無いのだけれど、なかなか楽しい曲です。
萬と万蔵の掛け合いが楽しい。そして、最後に未練たらしく萬が酒を飲むところで会場爆笑。狂言はこうでなくっちゃ。


若手が青山能から銕仙会へ、というのは緊張するものらしい。胡蝶。前回観たのは鵜澤光。実のところ、前回も今回も、この曲がなぜ面白いのかわからない。小品で舞もあるし、たとえていうなら綺麗な宝石箱、というイメージの曲なのかもしれませんが。

正先に紅梅の作り物が出されます。
よく見ると地謡の観世淳夫の座っている位置が高い。前は一番笛柱よりだったのに。この曲に何回か経験があるとか、そういったことで決めるのだろうか。

なんだか出だしの笛が今一つでしたが、すぐに持ち直す。ワキ僧の大日方が京都見物にやってくる。何だか由緒ありげなお屋敷の梅。見惚れていると遠くから「のうのう」と声が。この「のうのう」が物凄く長くて、曲のイメージと合わない。そして橋掛かりのところでの謡にちょっと躓いたのではないか?

お召し物は(後シテもだけれど)オレンジ系統でまとめた小面のお嬢さん。屋敷のいわれや、実は自分は胡蝶の精で季節的に梅の花には会えないのだ、などと語る。この人の謡、音程も節回しもしっかりしているのに発声に難があると思う。

ともあれ、色々語った胡蝶の精は僧に供養を頼んで消えてしまう。
そつのないアイ語りが終わり、僧が待ち受けている。この大日方も真面目なんでしょうね。「きちんとやらなきゃ」という気持ちが伝わってくる。
そして胡蝶の精が出てきて舞を舞う。シテはかなーーーり、緊張していたのではないだろうか、物凄く硬く感じられる舞でした。袖の扱いなどきっちりしていて、真面目な人柄をうかがわせる舞台でしたが、もっと楽しくやってほしいな。

若い地謡陣。扇をとるたびに派手に伸び上がって足を緩めるのが(気持ちはわからないではありませんが)あまりに目立つと気になります。あれは歳をとると慣れるのでしょうか。盛久の地謡陣はあそこまで派手にやらなかったと思う。

ともあれ、シテとワキに思わず「お疲れさまでした」と声をかけたくなってしまうような舞台でした。

この曲、ベテランで観てみたい。
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by soymedica | 2016-02-16 08:38 | 能楽 | Comments(0)

本:狂言のすすめ

d0226702_1724576.jpg狂言のすすめ 山本東次郎 玉川大学出版部
2010年9月1日第5刷発行210頁 1800円プラス税

1993年に新版が発行された時のあとがきに15年後の改訂とあるので、ずいぶん若いころの執筆です。
後に書かれた「狂言のことだま」よりもはるかに肩に力が入っています。評論家、和泉流、皆批判されています。演者から見た狂言の解釈、ということで、とくに論拠を示さない解説があったりもします。
ここまで自分で演じている狂言を真面目にそして力いっぱい擁護するのは素晴らしい。

ということで、読み物単体としては読みにくかったり、「そうかな」と思うところもありますが、ここに書かれている心情や心構えを知って東次郎の舞台を見ると、なるほどな、と納得がいきます。
やっぱり役者は舞台の上で説得すべきですね。
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by soymedica | 2016-02-08 17:26 | 本・CD・その他 | Comments(0)

国立能楽堂一月特別講演 鱗形 舟船 唐船

d0226702_18233332.jpg国立能楽堂一月 特別公演 
2016年1月31日(日)13時より
正面席7700円

能 金剛流 鱗形
シテ 廣田幸稔、ワキ 高安勝久、ワキツレ 小林努、丸尾幸生、アイ 松本薫
笛 槻宅聡、小鼓 林吉兵衛、大鼓 谷口正壽、太鼓 観世元伯
後見 金剛永謹、豊嶋幸洋、今井克紀
地謡 豊嶋晃嗣ほか

狂言 大蔵流 舟船
シテ 善竹忠重、アド 善竹十郎

能 観世流 唐船 盤渉・手掛之応答
シテ 武田志房、子方(日本子)武田章志、長山凛三、子方(唐子)藤波重光、馬野訓聡、ワキ 福王和幸、アイ(箱崎の従者)大蔵吉次郎、(船頭)大蔵千太郎
笛 藤田次郎、小鼓 観世新九郎、大鼓 國川純、太鼓 桜井均
後見 武田宗和、武田尚浩、武田友志
地謡 浅見真州ほか


鱗形のアイが末社の神から所の者へ、唐船に盤渉・手掛之応答の小書きが(笛方のものだそうです)。既にプログラムはこのようになっていたので、急な変更と言うわけではなさそう。

鱗形は金剛流廣田家で大事にされているそうですが、地謡も後見も重鎮が勢ぞろい。北条時政が江ノ島に参詣すると、弁財天が現れ、三鱗形の旗を与え一家の加護を約束する、とそれだけの筋で短い。
昼に蕎麦屋酒して行ったので何となくうとうとしながら観るのにふさわしい小品でした。

ワキの高安、歩みがよたよたなんですが謡は良かった。そういえば宝生閑、亡くなったんですねー。直前まで全国の舞台を務めて、移動は車いすだったそうです。
地元の女が北条時政に声をかけて、実は私は弁天様よ、と大小前の一畳台の上に置かれた宮に入って行くところはお約束なんですが、社殿の作りものに入る前から中で準備している人が忙しいのか、引き回しが大きく揺れてちょっと見苦しかった。

引き回しがおろされると、中からは鳥居の冠をつけた女神さまが。時政に与える三つ鱗の旗を持っています。オレンジに金の三つ鱗の旗で派手派手しいのですが、何となく形状はかき氷屋さんの旗のよう。

女神はめでたい舞をまって帰って行きます。最後に扇を閉じてシテの後ろ姿が明らかに「ホッとした」というようにツキものが落ちたようなのが面白かった。


この二人で舟船かー、と思ったらこれが意外に(失礼)面白かった。和泉流のほどしつこくないのだけれど、何となくホンワカして楽しかった。


そして唐船。今日のチケットが高いのはこの登場人物が多いせいか?(子供だけど…。)最近講談社の日本の歴史シリーズ(第一巻が旧石器ねつ造事件の真っただ中に刊行されて回収騒ぎになった)の「周縁から見た中世日本」を読んでいたら、この「唐船」に言及されていて、なんだか旧知の人物に会ったようで嬉しかった。

で、今回の箱崎の某は福王和幸。何となく本日は印象が薄い(いつも体格の割には薄いかな)。従者の吉次郎、この人のしゃべり方は最近の黒柳徹子の様だ。
何といってもこの能のみせどころは可愛い子方。13年前に中国においてきた子供と日本の子供が同じ年なのは御愛嬌だけれど、同い年で良くお稽古のできた子方をこれだけ並べられるというのはすごい。最後船の中でなにか不具合があったのかひとりモソモソしていたけれど。

日本子のほうがどっちかというとソース顔(古いかな)で、唐子の方が古典的な日本の悪ガキ。どちらも謡も上手だし、きちんとできて凄い。
今回は唐子が日本にやってくる場面で橋掛かりでも舟は帆をあげてくれました。前回の銕仙会の時とはちょっと色合いが違って紫、黄、緑、朱、緑、黄、紫、と、挙幕の様でした。

今回は中国人船頭は中国語をしゃべらない。あれは名古屋の野村家のものなのだろうか。

日本の子は置いて行け、という箱崎の命令に悩んで身投げしようとする祖慶官人。
箱崎もその嘆き様に心を痛め、じゃあ皆で帰って良いよ、と。
船の中で喜びの舞を舞う祖慶官人。前回の大槻文蔵の方がここは嬉しさがにじみ出る舞でした。今回はどちらかと言うとまじめに訥々と。

今回は日曜のせいかいつもとお客さんの層が違う感じ。終わって感想を述べ合うお友達同士のお客さんがいない。男性一人客が多かった印象でした。


面は鱗形が増、唐船が阿古父尉あこぶじょう。
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by soymedica | 2016-02-03 18:27 | 能楽 | Comments(0)