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国立能楽堂一月企画公演 松囃子 祝祷芸の様々 菊池の松囃子 高砂 松囃子 靭猿

d0226702_12271513.jpg国立能楽堂一月企画公演 松囃子 祝祷芸の様々
2016年1月23日(土)13時より
正面席4590

菊池の松囃子 
勢利婦

御松囃子御能保存会
舞人 田嶌晴雄、太鼓 原口政信、大鼓 吉田繁、菊本清範、後見 田嶌慎太郎
地方 田神清敏ほか8人

舞囃子 高砂 
宝生和英
笛 松田弘之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 大倉慶之助、太鼓 大川典良
地謡 武田孝史ほか4人

狂言 和泉流 松囃子
シテ(万歳太郎)野村又三郎、アド(兄)松田高義、(弟)奥津健太郎

狂言 大蔵流 靭猿
シテ(大名)茂山七五三、アド(太郎冠者)茂山宗彦、(猿引)茂山逸平、子方(猿)茂山慶和


あまり期待していなかった菊池の松囃子(熊本県)。これがとても面白かった。
演能前に正先に出された三方。プログラムによると蓬莱三方というのだそうで、三方に白米を森、炭で岩山に見立て、鶴(唐辛子のくちばし、花を尾に見立てた茗荷)、シイタケの亀が載せてある。これがひかれると切り戸から出てきた地謡が老松の前に2列に並ぶ。揚幕からは囃子が出てくる。小鼓が無い。さらに先ほど三方をひいた人が橋掛かり寄りに空の三方を前に控えている。

やがて揚幕から幣のついた笹を担いだ舞人がやってきて正先で礼をし、(私たちにお辞儀をしているわけでは無くてお城の能舞台の向かいにある「将軍木」に礼をしているのです)「天下泰平云々」とおめでたい口上を述べた後舞いはじめます。謡の文句も面白いし、舞の動作もダイナミック。小鼓が無く、大鼓2台なんだが、プロの囃子方の音より何となく湿っていてちょっと違う。

良いものを拝見しました。


次いで舞囃子の高砂。全員侍烏帽子に長裃。地謡に宝生流のベテラン人が勢ぞろい。宝生和英も地謡も凄く力強くておめでたい。実は宝生和英の密かなファン。でもこの人、真面目できちんとして危なげが無いんですが、何かが足りない。年取るとその何かがついてくるものなのだろうか。
ともあれお正月らしい清々しい舞囃子でした。


名古屋の和泉流の三人による松囃子。毎年めでたい松囃子のご祝儀に行く万歳太郎。いつも前年の暮れに米をくれる兄弟が、今回は忘れたものか米が来なかった。だからと言って行かないのも何だし、行ったら思い出してくれるかしらん、と布施無経の坊さんのように色々工夫をしてそれとなく催促。やっと思い出してもらって鞨鼓を打ちながら舞を舞う、という話。
アドの兄弟二人の着物の段熨斗目がそれぞれ何となく金銀を想像させるような素敵な色使いでした。
これも春らしい楽しい曲。名古屋の和泉流、東京とはずいぶん違うけれどこれもまた好きです。


靭猿。あまりに有名ですが実は観るのは初めて。釣狐は演ずることのできる年齢幅がひろいけれど、これは子ザルの年齢の子がいるかどうかに左右されますからね。
おじいちゃんとその息子2人、孫、の共演。

大名の被り物が面白い。鍋蓋のような形の麦わら帽子というか…。騎射笠というのだそうです。
あらすじはとても有名なので省略しますが、今回思ったのはこの曲の主役は猿引きだな、ということ。
昔、万作―萬斎―裕基が靭猿をするドキュメンタリーを観たことがあるので何となく主人公は猿かとぼんやり思っていましたが。

猿が助かるまでの演技力、謡など、猿引きには見せ所が満載。今回、逸平って上手いな、と思いました。ひょうひょうとした感じだけれど、結構怖いお父さんなんじゃないだろうか。
許されて子猿が踊る前の物着の時にはお面を押さえてなにか話しかけるお父さん。子猿がうなずいたところを見ると、「見えてるか」くらいのことを聞いたのでしょうか。

私の好きな七五三は前半は笠で顔が見えないし、後半は着ているものを皆猿引きにやりつつちょっと踊る、くらいの出番しか無くて、残念でしたが、逸平の面白くて上手な謡がたくさん聞けて良かったです。

最後に猿はサル引きにおんぶされて帰ります。お疲れ様。

ますます茂山家が好きになりました。
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by soymedica | 2016-01-25 12:32 | 能楽 | Comments(0)

茂山狂言会 茫々頭 寝音曲 空腕

d0226702_21315622.jpg茂山狂言会
あの太郎冠者・この太郎冠者・その太郎冠者

2016年1月16日(土)13時より@セルリアンタワー能楽堂
正面席8000円

解説 茂山茂

茫々頭ぼうぼうがしら
太郎冠者 茂山七五三、主人 網谷正美

寝音曲
太郎冠者 茂山千五郎、主人 松本薫

空腕そらうで
太郎冠者 茂山正邦、主人 茂山茂


久々のセルリアンタワー。
茂山のお家って、役者さんが物品を売っているのがとっても好もしい。ま、萬斎がやったら大変なことになるだろうけれど…。

まずは茂の解説から。
太郎冠者とはなんぞや、から始まり、「四郎冠者」が出てくる曲は無い、とか
主人がシテの場合「大名狂言」、太郎冠者がシテの場合「小名狂言」という、というようなトリビアが楽しい。
萩大名の太郎冠者は機転が利くし、都に知り合いもいるし、薄情だし、田舎から連れてきた従者ではなく京都の人材派遣会社で雇った太郎冠者だろう、という推測にはうなずかされました。


茫々頭は何回見てもちょっと不思議に感じる曲ですが、餓鬼花亭漫筆さんのブログに面白い解釈が出ていました。

さて、京都の土産話の最初の北野の松の話:松の枝にカラスと雀が止まっている。雀が上の枝のカラスを見てチチー、カラスが下の枝の雀を見てコカー。あれは親子ですな…。何だか落語にできそうな。これを絶妙の間で七五三がやると可笑しいのなんの。

なぜ都の女が太郎冠者を宴席に連れて行ったのか、というところからこの話はさっぱり分からなくなるのだけれど、そこを何となく面白く見せてしまうのが七五三。
満足しました。


千五郎の寝音曲。これは茂に言わせると「気味の悪いくらい仲の良い太郎冠者と主人」。謡を聞かせるのが主眼であるのはもちろんですけれど、結構この主人役がどうかで面白さの度合いが変わってくると思う。本日は松本の主のお人よしぶりがとても良くて楽しかった。千五郎と七五三、ずーっと元気でやってほしい。


空腕。最近どこかで絶対茂山正邦のこの太郎冠者を観たはず、だけれど今日の方がずっと良い、と観ながら思っていました。調べたら去年の3月に逸平の主人で観ていました。正邦は舞台の空気を支配している感じで、前回よりも格段に良いような気がしましたがどうでしょう。
割と長めの曲で、暗闇の中おびえる様子を一人で演じなくてはならないのでなかなか飽きさせないように演じるのは大変ではないかと思われるのですが、楽しかった。


来年もまた来ますね。
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by soymedica | 2016-01-20 21:33 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂一月定例公演 岡太夫 蟻通

d0226702_15273775.jpg国立能楽堂一月定例公演 
2016年1月15日(金)18時30分より
正面席4900円

狂言 和泉流 岡太夫
シテ(聟)野村萬斎、アド(舅)石田幸雄、小アド(太郎冠者)深田博治、(妻)竹山悠樹

能 宝生流 蟻通
シテ(宮人)田崎隆三、ワキ(紀貫之)飯冨雅介、ワキツレ 椙元正樹、岡充
笛 竹市学、小鼓 野中正和、大鼓 佃良勝、太鼓 徳田宗久
後見 宝生和英、佐野由於
地謡 小倉敏克ほか


岡太夫、観た覚えのある狂言なんだが、ブログ検索しても出てこない。ま、ともかく、聟入りものではあるけれど、「文蔵」のように物の名前を思い出すパターンの狂言でもあります。
最後に新婚夫婦がいちゃいちゃして終わります。竹山悠樹、この人もだんだん上手に。野村万作家は男の子が少ないけれどお弟子さんがグングン上手になりますね。


蟻通は観世喜之と福王和幸の組み合わせで観て大変に面白かった記憶のある演目なのですが、今回は宝生流。紺の狩衣に白大口の紀貫之、ワキツレは長裃で無帽。出だしのワキとワキツレの同吟がやけに重く、幸先悪し。

玉津島神社に行く途中の紀貫之が蟻通神社の前あたりでにわかに日が暮れ大雨にあい、しかも馬までが倒れ伏してしまう、というシチュエーション。これ、凄く大変なことだと思うのですが、なぜか淡々と謡は進んでいきます。

そこに青い傘(柄が凄く長いのはなぜ?)をさして右手にたいまつを持った神職登場。白大口に両肩を上げた狩衣を着ています。面は小尉だそうですが、とても良いもののように見えます。耳を出すかつらの着け方は宝生流特有だそうですが、何となく不思議。
宮守がきちんと働いていないぞ、と嘆きつつ歩いていると、そこに紀貫之が声をかける。

真っ暗な中に火が見えて、やれやれ助かったと思う貫之と、下馬もしないこの人は何だ?と思う禰宜。そのやりとりがやけに淡々としている。貫之君、本当はそんなに困っていないんじゃないの?

ここは蟻通神社だぞ、と地謡が謡うところで後見が傘をひくのですが、この傘はちゃんと閉じることができます。作った人は大変だったでしょうね。

シテ、面使いの細部や型の細部が相当に残念な人だな、と思ったら手で面の位置を直している。そこに原因の一つがあったらしい。クセの前のところで後見が肩をおろしてそのついでに再び面を調整。でもたぶんこの後も面の位置がずれてきたのではないだろうか、という面使いがありました。プロでもそういう事あるんですね。

この辺りでワキの動きが小さいな、と思うのはお歳のせいですかね。
シテが後半扇と幣を交換したり、又戻したり、両後見がひそひそ話をしたり、そしてシテの謡がだんだん乱れてきたりと、何だか忙しい。そしてネギは幣でシテ柱をたたき、それを肩越しに放り投げて退場。何となく「終わってよかったですね」と声をかけたくなる。

貫之も喜んだようだけれど、型が小さくて良くわからん。とりあえずワキ留で終了。

…いろんな意味で面白い舞台でした。

なお、googleによると、蟻通神社から玉津島神社までは車で50分、電車で1時間半くらいだそうです。
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by soymedica | 2016-01-17 15:29 | 能楽 | Comments(0)

俳優座 城塞

d0226702_8504347.jpg劇団俳優座公演 城塞
2016年1月12日19時より@世田谷パブリックシアター・シアタートラム

作 安倍公房、演出 眞鍋卓嗣

男 斎藤隆介、男の妻 清水直子、男の父 中野誠也、従僕 斎藤淳、踊り子 野上綾花


満州で大儲けして引き上げの時に妻と娘を見捨てた父親と息子。終戦後17年たった今、息子はその事業を継いでさらに金持ちに、父親は精神を病んでいる、という出だし。

そのシチュエーションを数分で大体のところをわからせるのは上手いな、と思うのだけれど、この辺の歴史に関心のない向きにはピンと来ないかも。
初演が1962年。その時にはあまり当たらなかったとか。あまりに満州引上げと朝鮮戦争の軍需景気の記憶が新しかったから、却って当たらなかったのかな。今見ると階級対立とか国とは何か、よりも父と息子あるいは自我の対立・自分のしてしまったことにいかに向き合うか向き合わないか、というもっと個人的なメッセージを強く感じさせる話。

男の独白のせりふのところなんぞはいかにも古めかしい感じがするけれど、大体においてテンポよく話が展開して2時間ちょっと飽きずに楽しかった。

安倍公房の小説は朗読や朗読劇にするとなかなか味わい深いものがあるのですが、今回初めて観た戯曲も良かった。

お客さんに5,60歳代の男性が多い。(落語以外のたいていの舞台ものは女性の客の方が多い)。そして正面席のうんと前の方のおばさん二人組、開幕までも大声で話をしていたけれど、休憩後は芝居が始まってからもしばらくの間大声でおしゃべりしていたのにはびっくり。
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by soymedica | 2016-01-13 08:52 | その他の舞台 | Comments(0)

十一人の少年 東京乾電池

d0226702_12451438.jpg劇団東京乾電池創立40周年記念プレ公演
十一人の少年

2016年1月6日(水)19時より@下北沢 ザ・スズナリ

作 北村想 演出 柄本明
CAST
青木 前田亮輔、スモモ 中村真綾
別保 西本竜樹、小林 飯塚三の介、スガ子 麻生絵里子、太田 田中洋之助、ヘタムラ 杉山恵一
ほか


時代の設定は昭和30年代、いや40年代ですかね。素人劇団をやっている地方公務員、ガード下で物乞いをしている眼の見えない若い女とそのヒモ、から話が出発して世界はミヒャエル・エンデの「モモ」に。

第二十八回岸田國士戯曲賞受賞作品だそうです。1984年の受賞ですね。
若干冗長な感じを受けました。たとえば私には別保の物凄い悪妻のエピソードがなぜあそこに挟まれるのかピンとこない。終わりのシーンももうちょっと刈り込んだ方が。

でも、面白かった。主演の中村真綾が素敵でした。

実は「モモ」を読んだことが無いので、今度読んでみよう。
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by soymedica | 2016-01-08 12:46 | その他の舞台 | Comments(0)

喝食抄 堂本正樹能劇評論集

d0226702_2125834.jpg喝食抄 堂本正樹能劇評論集 ペリカン社

1993年11月1日初版第一刷 287頁
定価3000円(税込)とありますが、絶版です。

いやあ、面白かった。評の書かれた時代がちょっと古いので、今の名人が売り出し中の話が満載。友枝昭世が道成寺のひらきのときに鐘入りのときに頭を鐘のてっぺんにぶつけてその後入院したとか、戦後間もなく作られた装束をそれと知らず「伝来」と有難がる能役者の話とか。

そして今当たり前と思っている作り物の出し方とか型付けが、この時代には新しい試みだったらしいということもわかって面白い。

色々な雑誌に書かれた評論やエッセイのまとめ。そのうち「橘香」は梅若の雑誌ですがその「芸能」「テアトロ」「プリズム」毎日新聞などは、能楽の媒体ではないので、かなり辛口になっています。家元制度にかなり辛口なこの人。観世清和を実力者登場とも認めていますが、とっても叩かれている人も(笑)。

手に入ったら是非読んでみてください。
巻末にかなり詳細な索引があるのが有難い。
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by soymedica | 2016-01-02 21:26 | 能楽 | Comments(0)