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本:読んで愉しむ能の世界

d0226702_23415043.jpg読んで愉しむ能の世界 馬場あき子 淡交社
2009年3月12日初版発行 286頁2000円+税

昭和49年(1974年)に雑誌「淡交」に連載されたものだそうです。この人の能の解説の本はどれも楽しいですが、これは若いころに書いたものだけあって全体に「柔らかい」感じがします。この人の書いたものを読むと明日にでも能を見に行きたくなるのですが、そういう上手さは若いころからのものだったのですね。

詞章をちりばめ、見どころ(筆者が良いと思った)について解説、あらすじもざっとはわかります。

後半は能の作り物の楽しさ。そういえばあの作り物を見ながら私もそう思ったっけ、と作者とおしゃべりしている感じになります。

お勧め。
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by soymedica | 2015-10-30 23:43 | 能楽 | Comments(0)

第七回 燦ノ会 井筒

d0226702_12343774.jpg第七回 燦ノ会 井筒
2015年10月21日(水)18時45分より@喜多六平太記念能楽堂
正面席5000円

解説 山中玲子

井筒 
シテ 大島輝久、ワキ 宝生欣哉、アイ 高野和憲
笛 杉信太朗、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井忠雄
後見 塩津哲生、佐々木多門
地謡 友枝昭世ほか


物凄く久しぶりに喜多能楽堂へ。こんなに舞台はピカピカしていたかしらん。

解説は山中玲子先生。伊勢物語の能は世阿弥の時代よりも以前からあったと考えられており、「伊勢物語の秘話を明かす」みたいな筋立ての物だったらしい。井筒もそういう話であったものを、世阿弥がもっと洗練された形に作り上げたと考えられているそうです。たとえば舞台となっている在原寺は盛業中の寺であったものを、廃寺のイメージでつくりかえるなどして高踏的な物語にしたそうです。
聞きやすくてためになるお話でした。


お調べが始まりいよいよ井筒。なぜか本日のお調べはせっかちな感じ。前に出された井筒の作り物はススキが右手側に。

諸国を流れ歩いている宝生欣哉。この人の主張しない演技が井筒のワキ僧にぴったり。廃寺に佇んでいると仏に手向ける水を手に女が。この面がちょっと面白くってい。田舎っぽい美人。

大島輝久、いつもうまいな、と思って見ているのですが、今回「筒井筒…」と謡うところでやはりしみじみ上手だなー、と。地謡やワキとの掛け合いも綺麗で満足の前場でした。

さて、アイが出てきてワキ僧に業平と有常の娘の話を聞かせる。高野には気の毒ですが、私はこの井筒のアイがアイ語りのなかで一番つまらないような気がするんです、誰がやっても。

ま、ともかく冠と直衣をまとった女が登場。この面で男装すると男に見えなくもない。
ゆっくりと序之舞を舞う。これ、退屈せずに楽しめました。こちらの体調が良かっただけでなく、大島の舞が綺麗だったためだと思います。

やはりこの面は面白いな、と思ったのは「見れば懐かしや」と井戸をのぞき込むときに表情が大きく変わるところ。その後寺の鐘が鳴り上を見上げるとまた表情が大きく変わる。
松風の吹く中、女はどこかへ帰っていく。ワキ僧ははっと目を覚まして夜明けが来たのを知ります。

今まで何度か井筒を観たけれど、今回のが一番面白かった。

笛の杉信太朗、きれいだけれど間の取り方がちょっと。名前に覚えが無くて誰?と思った小鼓の吉阪一郎が凄く良かった。

それにしても、井筒の作り物を引くのが早くありませんか?ワキ僧が完全に幕に入ってからにしてほしい。


喜多能楽堂のアフターシアターに良いお店、見つけました。カウンターだけですので大人数には向きませんが、目黒駅近くのキッチンセロ。ワイン好きの方はどうぞ。
http://www.to-vi.jp/cero/
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by soymedica | 2015-10-26 12:36 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂十月定例公演 鎌腹 松風

d0226702_2314137.jpg国立能楽堂十月定例公演演出の様々な形
10月16日(金)18時30分より
正面席 4900円

狂言 大蔵流 鎌腹
シテ(太郎)山本則重、アド(妻)山本則秀、(仲裁人)山本則俊

能 喜多流 松風 身留
シテ 粟谷明生、ツレ 大島輝久、ワキ 森常好、アイ 山本泰太郎
笛 松田弘之、小鼓 曽和正博、大鼓 白坂保行
後見 中村邦生、友枝雄人
地謡 長嶋茂ほか


鎌腹ってそんなに好きでは無い演目なので、ちょっと遅れてもいいやと思ったら間に合ってしまった。そしてこれが面白かった。プログラムの解説によると鎌腹には3つの終わり方があり、1.太郎は死ぬのをあきらめ、山に仕事に行く、2.様子を見に来た妻と仲直りをする、3.様子を見に来た妻と再びケンカになるバージョンがあるらしいです。

今回は様子を見に来た妻がやけにしおらしく、そして亭主は妻が来たとなると力強く「鎌腹を切る」と。仲直りバージョンですね。いつも東次郎や則俊の陰に隠れてしまう則重、則秀が熱演でした。


松風は実は結構好きな演目。羽衣よりも外れの舞台が少ないのはなぜか。もしかしてツレのいる曲は見せ易いのかもしれない。

何の変哲もない松が正先に出されます。
囃子が始まってから綺麗な潮汲み車が目付柱付近に。桶は一つ。森常好の僧が出てくる。この人の滑らかな美声だと、須磨の浜辺の寂しさも何だかゴージャスに。あの松が松風村雨の跡か、弔ってやって今晩は塩屋に泊めてもらおうというと、本当に雛にはまれなという感じの美人の二人が。

このシテとツレ、声の質が良く似ていますね。大島輝久は喜多流の若手注目株、ベテランの粟谷明生も力まないで素敵な謡をきかせてくれます。
そして喜多流はいつも地謡が綺麗だと思う。人数が少ないので息が合いやすいのだろうか。
ところで、月は一つ、影は二つ、で観世では潮汲み車の桶は二つだったのですが、なぜ喜多は一つ?二つ使う演出もあるのだろうか。それとも月は行平で影とは松風村雨なんだろうか。

塩焼のつらい生活を嘆きつつ潮汲み車を引いて戻ってきて、見慣れぬ僧を見とがめる二人。いささかの押し問答のうちに僧は塩屋に泊めてもらうことになります。「ここは行平ゆかりの地ですねー」などと語ると涙をこぼす女あるじ。

「実は私たちは松風村雨の幽霊なんです」と言われても、僧は驚かない。昔は死者の世界が近かった。
行平の肩身の衣を抱きしめて涙する松風。
この場面も後の狂乱の表現も割と抑えめで好感が持てました。

物着は正中で行われます。
中の舞の笛が物凄く綺麗。
松を回るところが見せ場なのだそうですが、技術的には難しいのかもしれないけれど、別に???と毎回思う私。

全体としてはしっとりして寂しく、綺麗な舞台でした。
…大鼓の掛け声が今一つだったかな。


面は小面。銘は小姫だそうです。



…ところで鍋の「ゆきひら」って行平と関係があるんだろうか?
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by soymedica | 2015-10-21 23:14 | 能楽 | Comments(0)

第十二回萬歳楽座 狸腹鼓 羽衣

d0226702_22334616.jpg第十二回萬歳楽座
2015年10月15日(木)18時30分より@国立能楽堂
正面席12000円

狂言 狸腹鼓
狸 野村萬斎、漁師 石田幸雄
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠

能 羽衣 和合之舞
シテ 観世清和、ワキ 宝生閑、ワキツレ 殿田謙吉、大日方寛
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 観世元伯
後見 観世芳伸、坂口貴信
地謡 梅若玄祥


萬歳楽座、今回はやんごとなき方がいらっしゃっていないためか、それとも回を重ねて安定してきたためか、祝祭ムードは少なく会場の雰囲気も落ち着いていました。
いつもの藤田六郎兵衛のお話も淡々と。藤田流の羽衣の序の舞の笛は序・破・急とだんだん速くなっていくのですよ、などと話してらっしゃいました。

さて、狸の腹鼓。観るのは昨年のござるの座に続いて二度目。うーんと遠くで御調べの音が。笛座前に一畳台が出され、それを秋の花とススキで飾った竹垣で囲む。
後見は万作と深田。

いかにも狸をとって狸汁にして楽しく酒を飲みそうな猟師の石田。今日も狸狩にやってきました。

ふと気付くと揚幕前に姿勢を低くした狸が。またいなくなり、今度は杖をついて歩いて出て来る。いなくなった夫の狸を探して身重の狸が出てきたのでした。広野に着くまでの道行きを謡うと、一度囃子方は引っ込みます。

尼に化けた狸は漁師に「殺生をするものではない」と弓矢を捨てさせるのに成功し、別れて行きます。地味な場面ですが萬斎も石田も上手い。

ところが狸の尼は帰り道で犬に出会いおびえているところを漁師に見とがめられてしまいます。この場面で50センチはあろうかという生け垣を着ぐるみをきたまま飛び越える萬斎、びっくり。

命乞いをする狸に「腹鼓を見せたら助けてやろう」と漁師。ここで再び藤田が登場して笛を。面白いメロディーでたしかに耳につきますね。
腹鼓の場面も初回と違って欄干をたたいてみたり、狸自身が楽しんでいる風情。
すっかり楽しくなった漁師。一緒に踊って幕の中へ。月の夜に響く漁師の楽しげな笑い声。狸も一人残って月を見上げてからくるっとでんぐり返しをして退場。

前回観た時よりもだいぶ演技がこなれてきて「有難い曲」というより「楽しい見どころ満載の曲」となってきた感じ。秋だなー、と感じさせてくれました。


羽衣。一の松当たりの欄干に衣がかけられます。割と渋い色。白竜登場。最近は宝生閑が出てくると嬉しいだけでなく、「今日は大丈夫か」と。本日は途中からワキ後見のように後ろでそっと椅子を差し出すお弟子さんがついていらっしゃいました。使うとちょっと姿勢が崩れるのが残念。

最初のワキ、ワキツレの同吟は全部省略。白竜が「美しい花が降ってくるし、こんなきれいな衣が」と、橋掛かりの衣を取り上げて戻ってくると、美しい天女がよびかけます。宝生閑の歩き方がスタスタとした感じ。舞台でゆっくり重々しく歩く体力が無くなってきたのかな。

その衣をもっていかないでおくれ、と天女。天女の衣ならなおさら返せないと言われ嘆く、その嘆き方が身も世も無い感じでこちらもだんだん気の毒になってくる。白竜もそう思ったのか、「踊るなら返そう」と。
ふと、観世清和のそのしおる手を見て「この人も年取ったな」と思った。

有名な「この衣を返したらそのまま天に上がってしまうだろう」「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」のやり取りのあと、物着。
白地に藤の花と蝶の模様の長絹、腰巻とつゆ、鬘帯にはオレンジ。

今まで羽衣は何回も見ましたが、真に「ああ、これは天女の舞だ」と納得したのは今回が初めて。ここまで行くには何度も稽古をするのでしょうけれども、それを感じさせない自然さ、優美さ。袖を被くところが凄くきれい。どの瞬間を写真に撮られても大丈夫ですよ、という感じ。
大満足でした。

家元の羽衣という事で、地謡陣も後列玄祥、観世銕之丞、大槻文蔵、観世喜正、という豪華メンバーだったのですが、私としては満足度は低かった。もっと若々しく明るくさらーっとやってほしかったです。

そして天女は霞に紛れて幕に入り、宝生閑が厳粛な面持ちで留を踏んだのでした。

初めて羽衣って良い曲だな、としみじみしました。
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by soymedica | 2015-10-18 22:39 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂十月普及公演 咲嘩 夕顔

d0226702_8351394.jpg国立能楽堂十月普及公演
2015年10月10日(土)13時より

解説 闇に消えた儚い恋 梅内美華子

狂言 和泉流 咲嘩
シテ(太郎冠者)松田高義、アド(主)野村又三郎、(咲嘩)佐藤友彦

能 金剛流 夕顔 山端之出 合掌留
シテ 宇高通成、ワキ 大日方寛、ワキツレ 殿田謙吉、梅村昌功、アイ 奥津健太郎
笛 一噌幸弘、小鼓 幸清次郎、大鼓 柿原崇志、
後見 金剛永謹、豊嶋幸洋、宇高竜成
地謡 松野恭憲


ぼんやりと前を行く人を眺めていたら、あら、お洋服姿の馬場あき子さん。今日は喜多流だったっけ?と思ったら解説の梅内さんがお弟子さんだったのですね。
その梅内さんの解説、源氏物語の夕顔の巻の概観と、謡の中に出て来る和歌などの解説をオーソドックスにするものでしたが、丁寧で好感が持てました。

狂言の咲曄。伯父さんがどんな人かも知らないまま主に言われるとおりに都に行って詐欺師の咲曄を連れ帰る太郎冠者。主と咲曄がポーカーフェイスで御座敷で対面しているのだけれど、それをぶち壊す馬鹿正直な太郎冠者の話。
野村又三郎家って派手さは無いけれど好きです。


金剛流って観世や宝生に比べて小さいとおもうのですが、はずれの無い舞台をすると思う。今回の夕顔も丁寧で風情のある舞台でした。
ワキが舞台中央に、ワキツレが橋掛かりに。名乗りのあと三人がいつもの位置に着こうとすると、幕の内側から「山の端の…」とうたう声が。それにかぶせてワキが不思議やなー、というところ、風情がありました。

シテが姿を現し、改めて「山の端の…」とうたいます。最初のうちには女性なのに太くて低い声だなー、と思うのですが、だんだん舞台が進行していくうちに「この声でなくては」と思うようになります。このシテもそう。謡は非常に綺麗ですが、若干詞章が聞き取りにくい。でも、そこは国立能楽堂、字幕があります。

女は僧の尋ねるままにここで亡くなった夕顔の話をして消えていきます。シテは実際はどんな姿形の人なのか良く知りませんが、とてもしっとりして良い前場でした。

里人が夕顔の話を聞かせてくれます。そこで僧たちは夕顔を弔っていると夕顔の幽霊が。

本当は恋の執着のために成仏できないでいる夕顔をたっぷり見せて最後に成仏する、という筋なんですが、最後の「あけわたる…」のところがとてもきれいで、夜明けとともに成仏していく夕顔の印象だけが残る舞台でした。

面は孫次郎。
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by soymedica | 2015-10-16 08:37 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演十月 連歌盗人 江口

d0226702_9594929.jpg銕仙会定期公演十月 連歌盗人 江口
2015年10月9日(金)18時より@宝生能楽堂

狂言 連歌盗人
シテ 野村万作、アド 野村萬斎、小アド 石田幸雄

能 江口 干之掛
シテ 観世銕之丞、ツレ 長山桂三、谷本健吾、ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎、アイ 野村萬斎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 林吉兵衛、大鼓 柿原崇志
後見 岡田麗史、野村四郎
地謡 浅見真州ほか


連歌盗人、割と長い演目で、石田幸雄が登場する前に寝落ちしてしまった。本日は万作、萬斎のテンポに乗れなかった。


江口は比較的重く扱われる曲ですね。前に見たのは観世宗家。今回は銕仙会の銕之丞。
小鼓が大きい人のためか、柿原崇志がやけに縮んで見える。それとも痩せたかな。
旅の僧の一行が登場。すでにこの時代にすたれてしまったという江口の里につく。森常太郎ってなかなかハンサム。

あらすじとしては、江口の里に着いた観光中の僧が、有名な西行法師の歌(西行法師が泊めてほしいと言ったのに遊女が出家を泊めるわけにはいかないと言ったお話に基づく)を思い出していると里の女が現れ、江口の長の話をする。じつはその女は江口の長の幽霊。後場ではその江口の長が普賢菩薩となって去っていく。

ですから前は謡やコトバが重要になっているのですが、森常好の美声と、銕之丞の深みのある声が重なってとても綺麗。銕之丞の謡は物凄くわかりやすい。
前シテの面は節木増というのだそうですが、これが美人。もう前場だけでおなか一杯という感じ。

アイは萬斎。狂言とアイと同じ日に同じ人がやるのは珍しくありませんか?出てきたところで長袴の裾が何かに引っかかったのか、若い人が幕から出てきて直す場面があって面白かった。萬斎って声が歳よりも若い。そして野村万作家の人たちは装束の色合わせが上手。

大鼓の柿原、縮んだだけでは無くて体調も今一つなのか、アイ語りが終わって床几にかけているほんの少しの間に居眠り!でも、その辺の若い奴とは違って演奏はちゃんとしているのがベテランというもの。

綺麗な舟が橋掛かりに出されて、遊女たちがやってくる。これ、前に見た時にも橋掛かりに出してありましたが、本舞台に出すこともあるらしい。物凄く豪華な衣装を着たシテ。棹サシの装束が水色を基調にしているのが珍しい。
まず、地謡が「川舟を泊めて逢瀬の波枕」と謡いはじめるのですが、これは上掛だけで、普通はシテとツレが謡う部分だとか。

ツレの二人は舟の中で謡ったあとすぐに切戸口から退場してしまってもったいない。一緒に舞っても良いような気がするけれどそうすると印象が散漫になるでしょうね。

後場の謡は漢語が多くて難しいのですが、シテの優美さでそれも気にならない。私が退屈してしまうはずの序之舞も綺麗。神様の舞はこんなにも綺麗なのか、という感じ。つまみ扇というのだそうですが、開いた扇の要の少し上をもって垂直に掲げる形があって、これが好き。
そして最後に雲に乗って帰って行くのでした。

満足したなー、と思ってふと見ると常太郎がしびれが切れて立てないらしく、面白かった。

もう一度見てみたい舞台でした。


江口の遊女伝説については先月の国立能楽堂のパンフレット(385号)に詳しいです。
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by soymedica | 2015-10-12 10:01 | 能楽 | Comments(0)

東京茂山狂言会第二十一回 棒縛 太刀奪 素袍落

d0226702_20473891.jpg東京茂山狂言会 第21回
千作が愛した太郎冠者たち
2015年10月8日(木)19時より@国立能楽堂

棒縛り
茂山七五三、茂山逸平、茂山宗彦

太刀奪
茂山千三郎、茂山あきら、茂山童司

素袍落
茂山千五郎、茂山茂、茂山正邦


楽しい茂山一家の会です。
まずは皆が好きな棒縛。これを見るたびに、中国の民話「天国でも地獄でも皆物凄く長い箸をもってご馳走を食べます。天国ではその長い箸で向かいの人の口にご馳走を入れてあげるのでお腹いっぱいです。地獄では長い箸で自分の口に入れようとするのでご馳走が食べられず皆餓えています」という話を思い出す。

見事縛られながらも酒を飲むことに成功した太郎冠者と次郎冠者、酔っ払いうるさいぞ、という宴会を始めます。七五三の運動能力の高さと舞のうまさにしびれた一曲でした。今年の5月にも観ているんですが、何回見ても良いなー。七五三の間の取り方が秀逸。


太刀奪、ちょっと前後の曲に喰われましたがこれもなかなか。あきらと童司、不思議な感じの親子ですね。

素袍落。実はこれを観て本当に面白いと思ったのは今回が初めて。千五郎、縮んだ感じがしたのは装束の肩衣が新しくてパリパリだからかな。
明日かねてよりの願いの伊勢参りに行くという主人。どこから出発するのか、割と近くに住んでいるのではないだろうか。京都かな、奈良かな。

礼儀上誘っていた伯父さんを一応形だけ誘いに行かされる太郎冠者。太郎冠者の千五郎が小柄でおじさんの正邦は大きい。逆だったらビジュアルとしてどうなんでしょう。伯父さんは体も大きいけれど心も鷹揚な人。
そうかそうか、まあ、一応誘ってくれてありがとう。急なことで行けないが、いつも苦労している太郎冠者、自分は下戸だから到来物の良い酒でも飲むか、餞別もやろう。

美味しい酒を振舞われてだんだん酔っぱらっていく太郎冠者の芸が見もの。ここが見どころなのだけれど、長いし、その先がどうなるか読める展開なので、芸の力で客を引き付けるのは凄いことだと思う。楽しい場面でした。

主人の茂もしわい感じで良かった。


最後は松本薫が祐善。そう、千作の追善でしたね。

これぞ誠の極楽世界 これぞ誠の極楽世界の
  あみかさや南無あみかさの ほのかに見えてぞ失せにける


皆さん、次回は来年3月17日ですぞ。
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by soymedica | 2015-10-10 20:51 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会青山能九月 おひやし 龍田

d0226702_11275871.jpg銕仙会青山能九月
2015年9月30日(水)18時30分より@銕仙会能楽研修所

仕舞
班女クセ 谷本健吾
藤戸 鵜澤久

おひやし
シテ(太郎冠者)深田博治、アド(主)岡聡史

龍田
シテ(神巫、龍田明神)長山桂三、ワキ(旅僧)大日方寛、ワキツレ(従僧)野口能弘、御厨誠吾、アイ(里人)内藤連
笛 藤田貴寛、小鼓 森澤勇司、大鼓 原岡一之、太鼓 大川典良
地謡 馬野正基


早めに行ったので、割と前の方と思ったら、前のおじさまがちょっと大きめの人だった。ワキ正面を選べばよかったかな。自由席だと諦めが悪いのが私の悪い癖。

おひやしは舟ふなと似たような主従もの。こういう小品結構好きです。深田が良かったし、岡もまあまあ。


ちょっと季節が早いけれど、龍田。シテの長山桂三は私の見たところ銕仙会の中堅の中で頭一つ抜きんでた存在。今回も期待して切符を買いました。
まず、大小前に一畳台が出される。観世淳夫と青木健一が運んだのだが、下がって位置を確認した青木が大きく位置を直したのが珍しかった。上には華やかなオレンジの引き回しをかけたお家を載せます。

全国納経の旅の僧が、奈良から河内へ向かおうとする途中で龍田川にやってきました。すると、「川を渡るな」と難癖をつける女が出てくる。本日の僧の大日方、あまり力まず良い感じです。
女についていくと、枯木立の中に一本だけ御神木の紅葉が綺麗。これが御神木で実は私は龍田明神、と言って女は御殿の中に消えていく。


アイの内藤クン、昔ハンサムな子だなー、と思ったけれどだんだんおじさんになってきた。

ま、それはともかく、神々しい龍田明神が現れる。前シテよりもちょっと老けているんですが、神様というのはそういうものなんでしょうか?と思ったら後の解説で馬野が、「前・後同じ面でやることもあります。」と言っていました。冠をかぶった時に映える増は「天冠下」というらしい。

最初のクセのところでは幣をもって、神楽の所では扇をもって舞います。特に後場には筋はありません。綺麗な言葉が連ねられて、きれいな舞を楽しみますが、やはり長山の舞は危なげが無いだけでなく、引き付けるものがあります。袖をかずくとろこが今一つかな、と思ったけれど、二度目は良かったし。特に神楽では何気ないしぐさが綺麗に決まっていました。

囃子が今一つだったかな。特に大鼓に気になるところが多かったです。

面は前シテが作者不詳の小面、後シテが洞水の増女。
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by soymedica | 2015-10-04 11:28 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂九月企画公演 「ガラスの仮面」より 紅天女

d0226702_2031376.jpg国立能楽堂九月企画公演 新作再演の会
2015年9月25日(金)18時半より
正面席6300円

おはなし
美内すずえ 聞き手 中井美穂


漫画「ガラスの仮面」より 紅天女

美内すずえ監修
植田紳爾 脚本
梅若六郎 演出・能本補綴

阿古屋・紅天女 梅若玄祥、仏師・一真 福王和幸
東の者 茂山七五三、西の者 茂山千三郎
月影千草 岩崎加根子
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 加藤洋輝
後見 山崎正巳利、永島充、松山隆之
地謡 観世喜正ほか


「ガラスの仮面」だいぶ読んだけれど、全部は読んでいません。
アップした写真とおんなじクリアファイルを売っていて、誰かに頼まれたのかおじさまが購入。「すいません、袋に入れていただけますか」わかります、その気持ち。オジサンには気恥ずかしいかも。

30分ほどの対談がありましたので、本物の美内すずえさん、見られました。小柄で頭のよさそうな話をするおばさま(実際に頭が良いのだと思います)。
植田紳爾さんは、宝塚の脚本家でベルバラなどを手掛けた人だとか。SB席にはいつもあまり見ない紳士が多く出入りしていたのはその関係の方達でしょうか。

最初に客席が暗くなって橋掛かりにライトアップされた月影千草役の岩根加根子登場。「劇・紅天女とは何か」を説明します。無くても良いのですが、能を知らない人とか、能は知っているけれど「ガラスの仮面」を読んだことのない人、にはあったほうが親切かな。

このナレーションの最後の方にかぶせて御調べが始まります。照明も普通に明るくなります。上にしだれ紅梅の花を載せた塚の作りものが大小前に。狂言口開けと言っていいのかな、喧嘩ばかりしている東西の国のものが天変地異に怯えて退場。この七五三、千三郎が上手い。それにしても物凄く派手な衣装。ここで、「この演劇は舞台装置も幕も無い象徴的なやりかたのものなんだよ」と見ている者にわからせる仕組み。

旅の仏師、登場。何だか福王和幸、音が安定しない。美内すずえが「聞いてわかる言葉に、と注文した」と言っていた通り、セリフはほぼ現代語なので、やりにくいのかな。
仏の像を刻んで全国を回っている彼は、かつて今と同じ動乱の世に一真という仏師が梅の木で天女を刻んだという話を聞き、吉野の里にやってきたのです。

道行きを謡ったり、揚幕の向こうからシテが「のうのう」と呼びかけたりするところは普通のパターン。呼びかけた女に一夜の宿を借りる仏師。ここで、仏師は南北朝時代の仏師一真と阿古夜の話を聞かされます。女は作り物の中へ。後場はそのお話。

能をやる人は皆照明をいじりたくなるらしく、今回も物着で半暗転。個人の会なんかでも客席の照明を物凄く落とす人とか、舞台の照明をちょっと暗くする人とかいますよね。

後シテならぬ後ワキの一真が右手に斧を持って登場。簡単に言うと、一真は阿古夜という里の霊能者と恋に落ちるのだけれど、実は阿古夜は梅の精。運命に導かれて一真は斧で愛する梅の精が宿っている木を切り、天女の像を作る、というお話。もちろん天女は作り物の中から出てきて綺麗な舞を舞います。
後に話を盛り込みすぎ。後にも狂言方が出て来るし、ばっさり前場を切っても結構面白いのではないだろうか。

福王和幸の謡が不安定なのに対し、玄祥はさすがに上手い。現代劇やらせたら福王はダイコンかもしれないけれど、玄祥は結構上手いんじゃないかな。

ところで、全部現代語で語られているこの「紅天女」ですが、狂言方の部分以外は全て字幕あり。でもなぜか念仏(真言かな)を唱えるところでは字幕が出ませんでした。いまパンフレットを見たら、狂言方の部分も全部セリフが起こしてありました。

最後には舞を舞った天女が後ずさりしつつ退場。

観終わって結構面白かったけれど、うーん、ワキが本当に福王和幸で良かったんだろうか。確かにビジュアル的には宜しいけれど、もう少し爺さんがやった方が生々しく無く能らしくてよかったんじゃないだろうか。
それと、謡の力にビックリ。全体も良かったし、観世喜正が一人で謡うところもあるんですが、これも良かった。かなり地謡陣が舞台を引っ張ったところがあると思う。

もう一度見ても良いかな。
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by soymedica | 2015-10-01 20:34 | 能楽 | Comments(0)