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本:狂言兄弟 千作・千之丞の八十七年

d0226702_16502336.jpg狂言兄弟 千作・千之丞の八十七年
茂山千作・茂山千之丞、宮辻政夫編
毎日新聞社 2013年5月30日発行293頁2200円

出版された直後に千作が亡くなるという期せずしてタイムリーな本になったもの。千作、千之丞の舞台は見たことがありませんが、千作の息子の千五郎と七五三の伯母ヶ酒を見て「なんて面白いのだろう」と思ったこと、そしてラジオで千作のインタビュー(もうその当時は演じていなかった)を聞いたのがこの本を手に取るきっかけでした。

1919年生まれの千作、1923年生まれの千之丞の戦前からの話ですから、面白くないわけがないのですが、小鼓方の国宝として有名な曽和博朗がまとめた言葉が凄い「結論として言うと、茂山家は面白い家です」。

孫可愛さのあまりに戦時中に結婚した千作の新婚のホテルの隣に泊まり込んでしまうお爺さん、苦労した妻に突然先立たれた千作が自殺するのではないかと心配する弟、(この奥さん、酒癖の悪い千作を床柱に縛り付けたり、「出ていけ」と言われたら「私はおとうさんおかあさんに可愛がられているから出ていく必要はない、あんたが出ていけ」と言ったという人)、戦後闇屋で設けた弟…。

うつ病になったり、歌舞伎との共演で波紋されそうになったり…。

狂言を見ない人にもお勧め。
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by soymedica | 2015-08-29 16:52 | 本・CD・その他 | Comments(0)

本:能・狂言の見方楽しみ方

d0226702_11581634.jpg能・狂言の見方楽しみ方 柳沢新治 山川出版社
2012年8月25日第一刷第一版発行214頁1800円

NHKの古典芸能を長く担当した筆者の本です。初心者から中級者までの網羅をもくろんだ本のようですが、後半はプロやクラブでやっている方にも面白いと思います。

能とはどんな芸能か、に始まって、役者の懐具合の想像、家元制度への提言、そして初めて見る人への演目の推薦など。

間にはさんであるコラムでは能に交わる逸話やゴシップ。能舞台から演能中に落ちたのは?瓜の盗み方。聖徳太子作の能面が売りに出ている話…。

面白いですよー。絶対お勧め。
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by soymedica | 2015-08-20 11:59 | 本・CD・その他 | Comments(0)

古典を読む 風姿花伝 馬場あきこ著

d0226702_81711100.jpg古典を読む 風姿花伝 馬場あき子 岩波現代文庫文芸74
2003年7月第一刷
249ページ900円

1984年11月に岩波書店より単行本として、1996年7月同時代ライブラリーとして刊行された。とあるので、とても息長く売れ続けている本ですね。私の買ったのは2009年12月第5刷です。

風姿花伝の解説書です。重要な所をピックアップして解説していく基本的な構成ですが、学者ではなく文筆家の馬場あき子ですからとても面白く読めます。そして限りなく学者に近い素人、という立場をはずすことなく書いているので、安心して読めます。面白いけれどトンデモ、というところは一切ありません。

文庫版ですから、電車の中で拾い読みもできますし、安価。一家に一冊、お勧めです。
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by soymedica | 2015-08-14 08:18 | 本・CD・その他 | Comments(0)

国立能楽堂八月 働く貴方に贈る 呼声 善知鳥

d0226702_2257531.jpg国立能楽堂八月 働く貴方に贈る
2015年8月7日(金)19時より

対談 
宝生和英、金子直樹

狂言 大蔵流 呼声
シテ(太郎冠者)善竹隆平、アド(主)善竹十郎、(次郎冠者)善竹大二郎

能 宝生流 善知鳥
シテ 辰巳満次郎、ツレ 和久荘太郎、子方 和久凛太郎、ワキ 大日方寛、アイ 大蔵教義
笛 森田保美、小鼓 森澤勇司、大鼓 河村大
後見 宝生和英、山内崇生
地謡 武田孝史ほか


7時からだとバタバタせずに職場を出られます。

本日の対談、物凄く面白かった。
宝生和英29歳、宝生流家元に金子直樹が突っ込む、突っ込む。

和英は家元なのでシテをすることが凄く多く、年間25番くらい。そのほか後見や仕舞の出番もあるので週に4,5日舞台に立っているそうです。普通のシテは20代後半で年間3,4番、中堅どころで年間6番のシテが平均といったところだそうで、観世の家元の年間60番という世界は想像を絶すると。

年間6番のシテで暮らせるんですか?と金子が突っ込むと、普通は謡や仕舞の月謝で生活を成り立たせているのです、との返答。それはちょっと苦しいかも、と私は思う。でも毎月の観世流銕仙会や喜多流自主公演に止まっている出演者の車や出身学校から想像すると、まあ、私立の学校に子弟を小学生から通わせ、且つそこそこの車が買える生活ではあるのでしょうね。月謝の部分や謝礼は税務署に捕捉されない部分もあるだろうし。

流儀の会のプログラムを決めるのは宝生流の場合担当がいるが、配役は家元が決める場合もあるそうです。そのほか家元の仕事としては能面、能装束の管理があるそうです(先代の宝生流家元は…)。
金子の突込みに応戦する宝生和英、29歳とは思えない落ち着きで、話を聞いていると流儀のマネージメントもしっかりしているのだろうな、と思わせます。まあ、苦労していますからね。

能には「宗家会」という会議が年に数回開かれるのだそうですが、当然そこでも最も若い。先輩方のご意見を聞きつつ、それを実際に動いて具体化できるように頑張っている、と。

能の世界は年功序列が非常に厳しいのは皆さんのご想像通りですが、世代間の健全な競争は好ましいことでもあると語っていました。先代のときに一時若手にチャンスを与えようと色々自由にしたことがあったそうですが、そうするとかえって若手に気のゆるみが出てきてしまうこともあるとか。

和英のあこがれは観世寿夫、宝生九郎、宝生英生だったそうですが、今自分が家元になって見ると、彼らをそのままなぞってはいけないと思うそうです。
そのほか、異流共演がためになったこと、「体感する能」のこと、これからの集客などの話があり、大満足でした。


善竹の呼声は割と最近に青山で観ています。その時よりも出来が良いような。大変に失礼ながら十郎の発声が好きになれないので、どちらの会の時も主でよかったです。今回のほうが十郎はじめ皆がノッテいたような気がします。


善知鳥。人気曲を満次郎がやるんですから当然満席。ツレは若手実力派の和久。そしてワキは大日方。満次郎が期待している2人なんですかね。
まず、ワキ僧の大日方登場。この人、いかにも立山修行に来たという感じのちょっと暗くて力強い謡。そこに絶妙のタイミングで「のうのう」と、老人から声がかかる。

前にも書いたかもしれないが、子供の年からするといかにも年取った父親。地獄がつらくて老いてしまったのだろうか。老人は、外の浜に行くなら死んだ漁師の家を訪ね蓑笠を手向けてほしいと言ってくれ、依頼の印に自分の袖をやろうと。僧にはこの老人が亡者だと何となくわかるらしい。亡者の着物の切れ端を懐に入れて気持ち悪くないなんて、やはりお坊さんは修行を積んでいるだけのことはある…。

今回、老人の水衣の袖と僧の衣の色が割と似通っていた。もう少し茶系と紺系とか離れた色にしてはどうだろう。

地元の人に教えられて行った家には未亡人と幼い子供が。この二人、出しおきなので最初からいるのだが、感心なことに子方の方もほとんど動かない。
ああ、この袖は確かに夫の物、という和久荘太郎がしっとりしている。

読経の声にひかれて夫の亡霊が出てくるが、妻子に近づくことができない。ここ、観世流はもうすこし「子供に手が届きそうで届かない」という型がリアルだったかな。しかし、長袴で後ずさりするなんて子供によくできるもんだ。

有名な善知鳥の狩りを再現するカケリの部分ですが、観世流と比べると宝生は地味。あるいは満次郎の演出?地謡もなかなか良かったけれど、シテはいつものカリスマ性をあんまり発揮していないように思えた。私の期待値が高かったからかな。

ちょっと気になったのは和英の後見。途中で杖や笠をひくのだけれど、タイミングが早すぎないかな。「さあ、引くぞ、引くぞ」と待ち構えている感じ。もう少しさりげなくやってほしかった。

面は
前シテ 三光尉 是閑、後シテ 痩男 河内
ツレ 曲見 洞水
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by soymedica | 2015-08-10 23:04 | 能楽 | Comments(0)

道成寺特別講座

d0226702_1712069.jpg道成寺特別講座
2015年7月31日(金)19時より@国立能楽堂大講義室
金春流 中村昌弘、喜多流 大島輝久、宝生流 高橋憲正、観世流 武田宗典

道成寺の披きを控えた中村昌弘企画・司会による各流儀による道成寺のお話。皆さん30代後半くらい。
もともと比較的仲の良い4人らしく、和気藹々と話が進み、面白かった。

≪道成寺を披くまでの曲、ステップとなる曲≫
喜多大島:猩々乱→道成寺→石橋
宝生高橋:石橋→道成寺(この前に黒塚をやること多し)→猩々乱
観世武田:(翁の千歳)→石橋→(葵上または安達原)→道成寺
金春中村:石橋→猩々乱→(邯鄲)→道成寺

黒塚を前もってやることがあるのは、いのりの型が入っているからとのことです。


≪公演が決定する時期≫
喜多大島:約2年前
宝生高橋:先輩の順番を見ていると大体わかる
観世武田:2年前
金春中村:先輩の順番を見て

そろそろ、と思うと師匠の還暦が入ったり、流儀の重要な催しが入ったりと、色々大変らしい。


≪三役、地謡、後見の編成は誰が決めるか≫
喜多大島:鼓は幸流と決まっている。あとは「道成寺を披く」と言ったら友人の亀井広忠がずんずん決めちゃった(会場爆笑)。
宝生高橋:構成は家元が決める。なお、宝生の道成寺は地が6人。
観世武田:自分の主催会であったので自分で決めた。観世の場合家元は鐘後見は殆どやらない。
金春中村:金春の場合はシテに任せられることが多い。囃子はやはり先生にお願いする。鐘後見は本田光洋が多い。

金春の場合、本田光洋が道成寺のエキスパートであるらしく、もっとも経験値が高く、尊敬されているらしい。
尚、狂言方の技術は山本家が抜群に高いとのこと。


≪稽古の開始時期≫
喜多大島:普通の曲はシテが決まった数か月前からだが、道成寺は2年ほど前に一度稽古したことがある。
宝生高橋:半年前から。囃子方とは3か月前から。
観世武田:決まった直後にやってみたが、先生とやったのは3,4か月前。謡だけ20歳の時に練習したことがある。
金春中村:…実はまだ練習していないんですよ(泣)


≪道成寺参詣はするか≫
喜多大島:公演2,3か月前に行ったら偶然金剛宗家の親子に会った(ちょうど披きのころだったらしい)。すごく仲の良さそうな親子でした、と。で、寺にたどり着いたら能舞台がしつらえてある。(ここで武田が「え、じゃあそのころニアミスですね。観世が『道成寺で道成寺』という催しをやったんですよ」と。)社務所に行ったら「今日ちょっと忙しくってね、あ、そこのツアーの皆さんと一緒に回ってください」(会場爆笑)。戻ってきたら、「あ、あなた、今ちょっと時間があるからお祓いしてあげましょう、一寸だけね。」
宝生高橋:3か月前に行きました。僕の場合何もエピソードも無く、無事に。
観世武田:3,4か月前。丸の内朝活というお稽古をやっていたらその生徒さんたちが皆行きたいと仰るのでバスを仕立てて。一年後にお礼参りもしましたよ。ちなみに昔は成田山に行くことが多かったそうですけれど、父はそれも行っていないと言ってました。
金春中村:(会場に向かい)あー、僕の生徒さんたち、行きたければ自分たちで企画してくださいね。僕、忙しいから(笑)。


≪鐘作り≫
喜多大島:6-7人がかりで一日から一日半。シテが皆さんにご馳走することになっているので、そればかり考えて作っていました。一か月前の下申し合わせに間に合うように作ります。
宝生高橋:内弟子が全部作るので、差し入れします。公演一週間前くらいに作るかな。下申し合わせがないこともあるので。
観世武田:一日がかりで、鐘後見、シテ、若い人の8人くらいで。昼と夜をご馳走するのは喜多と同じ。大体一か月前に作って、下申し合わせが2週間くらい前でしたかね。
金春中村:普通一日がかりですが、本田光洋先生は2時間で作ったことがあるそうです。

鐘入の練習は下申し合わせの時にすることがほとんどなのでそれに合わせるようです。(みなさん申し合わせの時には鐘入はしない)。昔は鐘の中はシテだけが入って作ったという流儀もあったそうです。


≪当日朝≫
喜多大島:子供が小さいので風邪をうつされたら大変と、3,4日前に嫁と子供を実家に返したら、自分がひどい風邪をひき、3,4日ほとんど食事できずにフラフラで出かけた。
宝生高橋:なーんにも思い出せない!
観世武田:一か月前から禁酒してました。


≪装束≫
喜多大島:唐織は茶色の字に鶴菱が道成寺の披きの決まり。京都の高林家から借りた。面は曲見か増だが、開きはふつう増(曲見は難しい)。
宝生高橋:雪持椿が決まり柄。面は泣増。色なし、色ありとあり、色なしの時には白曲見も使う。色の有り無しは現在は家元が決めている。
観世武田:枝垂れ桜に糸巻が決まり。面は「近江女」という道成寺の専用面がある、。
金春中村:鶴菱で、喜多と同じ。面は曲見。


ここからいよいよ舞台の話。
喜多大島:乱拍子が終わるまでに40分かかり、脱水もあり、鐘の中で手が動かずに時間がぎりぎりだった。喜多は笛座の方を向いて鐘入する。
尚、喜多では道成寺を披く人全員が聞かされるのが友枝昭世が首の骨を折った話。
宝生高橋:宝生も笛座の方を向いて鐘入。鐘のてっぺんに明り取りがあって中は薄明るい。家元に借りた面を「素晴らしいな」と思ってのんびり見ていた。ちなみに宝生では般若では無く真蛇という耳の無い面を使う。
観世武田:観世は正面を向いて足踏みして鐘入。
金春中村:金春は斜入と言われるが、それは櫻間家の系統のやり方で、宗家は正面をむいてはいるのが普通。普通は赤頭を使うのが流儀の特徴。

流儀によって乱拍子の部分がかなり違うらしいのが面白かった。私は観世しか見たことが無いので。
そのほかにも、当日はワキも気迫が違うので、申し合わせの時よりも凄く近かったり、動きが速かったりと凄かった、なんて話も聞けました。


≪終わったら≫
大体がもちろん宴会らしいです。

≪鐘の布を外すのは?≫
喜多大島:終演後ただちに。なお、次に東北などの純粋な三番目ものをやると良いと言われています。
宝生高橋:終演後ただちに。
観世武田:翌日、鐘をつくったのと同じ人がこわす。


面白かった。12月には是非行きたいものです。
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by soymedica | 2015-08-02 17:13 | 能楽 | Comments(0)