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本: 能舞台の主人公たち

d0226702_14124029.jpg能舞台の主人公たち 権藤芳一 淡交社
2009年9月22日 初版
279ページ 2000円

ソフトカバーの手に取りやすい本です。
曲の解説ではなく、能の主人公となった色々な人物について解説した本です。たとえば「夕顔」については6ページが割かれており、簡単な系図、源氏物語の夕顔の出てくる部分のあらすじ、主人公となった能の曲そのものの解説や舞台の様子(白黒で小さなものですが写真が結構あります)、現代の小説があれば紹介されていますし、由来の場所などにも言及してあります。

平明な語り口ですが、古今東西の知識を縦横無尽に駆使して優しいお爺さんが教えてくれる、といった感じの本。

著者は京都の生まれで同志社大学に学び、京都観世会館に30年勤めたと言うだけあって京都の舞台や金剛流への言及が多く、それも面白いです。
お勧め。
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by soymedica | 2015-07-30 14:14 | 本・CD・その他 | Comments(0)

第十三回興福寺勧進能 俊寛 舟ふな

d0226702_22235538.jpg第13回興福寺勧進能 第一部
2015年7月18日(土)12時より@国立能楽堂
正面席9000円

お話 馬場あき子

舟ふな
シテ(主)野村万蔵、アド(太郎冠者)野村拳之介

俊寛
シテ 浅見真州、ツレ(成経)小早川泰輝、(康頼)武田祥照、ワキ 宝生欣哉、アイ 能村晶人
笛 松田弘之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠
後見 浅見慈一、武田宗典
地謡 浅井文義ほか


少し遅れて行ったので、馬場あき子さんのお話を聞きそびれてしまった。残念。

舟ふなは調べると観るのは三度目なのですが、たぶん正面席で見るのは初めて。主がワキ柱より、アドの太郎冠者が脇正面寄りに立っているのですが、私の記憶では逆。記憶って意外に当てにならないものです。万蔵が面白い。


何度見ても面白い俊寛。まず、赦免のお使いにいくぞ、と宝生欣哉が能村に船の用意を命じます。それだけ言って、引っ込む。
次いで場面は鬼界島に。いつも成経と康頼の装束が立派過ぎるような気がするのだが。成経が小顔なのが印象的。

道迎えの場面、何となく静謐な感じ。
無教養の村人しかいないこの島で、彭祖がどうしたこうしたと言っても、詮方ないこと。でも、三人いるからこういうお話もできるし、と思うと一人取り残されることになる俊寛の哀れさが際立ちます。

鬼界島は恐ろしや、と言いながら赦免使の一行がやってくる。舟は橋掛かりに引くだけでなく、手すりに立てかける。

成経と康頼だけが赦免されることになる場面。巻物を何度も何度も、裏まで見返す所作が素晴らしい。この場面の詞章も素晴らしいな、と思ったのは地謡が良かったせいだと思う。

一行が俊寛を残して舟に乗り、能村がとも綱を投げるのだけれど、位置が気に入らなかったのか後見が美しく直します。これ、観世清和だったらやらせないだろうな、とふと思った。

帰った一行を見送る俊寛の後ろ姿がとても印象的でした。

来年は7月14日だそうです。木曜日ですね。
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by soymedica | 2015-07-23 22:24 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂七月普及公演 簸屑 大瓶猩々

d0226702_2348321.jpg国立能楽堂七月普及公演
2015年7月11日(土)13時より

解説 動いている江戸期の能楽 松岡心平

狂言 和泉流 簸屑
シテ(太郎冠者)三宅右近、アド(主)三宅近成、小アド(次郎冠者)高澤祐介

能 観世流 大瓶猩々たいへいしょうじょう
シテ 井上裕久、ツレ 吉波壽見、寺沢幸祐、浦部幸裕、橋本光史
ワキ 工藤和哉、アイ(水神)三宅右矩
笛 竹市学、小鼓 住駒匡彦、大鼓 佃良勝、太鼓 三島元太郎
後見 武田尚浩、武田友志
地謡 関根知孝ほか


暑い。能楽堂の前庭で蚊に刺されたが、デング熱は大丈夫だろうか(昼間活動する種類の蚊が媒介するらしい)。

江戸期の能楽、あんまり得意じゃないんですが、と松岡心平。式楽と呼ばれてあまり新しいことは無かったように思われている江戸期の能楽ですが、そんなことも無いようです、と。役者の年俸制を始めたのは秀吉で、この時には金春がひいきにされていて、その後江戸時代色々な流儀がそれぞれこの世の春を謳歌したらしい。

家重とか家治あたりのころの観世元章は大変重用され、弟に銕之丞家を分家するのを許されたり、有名な明和の改正本を作ったりということがあった。元章は能全体をプロデュースしようという意識の大変高かった人だということです。


お話の後は簸屑だったのですが、すいません、後半寝てしまいました。

猩々はさすがに派手なので寝られない。が、派手な演目なのに本日のワキ高風は地味目な方。高風登場、次いで童子登場、童子が引っ込むと水神が出てきて踊りでも踊ってくれるかと思ったら、猩々の解説と猩々の呼び出し方―酒が好きだし、沓をはきたがるので沓の作りものを置いておく(なぜ本物ではいけないのか???)―を教えてくれました。

そのまま一畳台が出て、その前に立派な壺が。高さ120センチと見ました。蓋をあけるにはやはり一畳台が必要ですね。
猩々(最初に出てきたのがシテだったか)が二匹登場、少し踊って後の三人を呼ぶ。そして壺のふたをとって踊り楽しむ。中の舞だそうですが、舞台に二匹、橋掛かりに三匹。とても良く揃って華やか。最後にツレは橋掛かりに、舞台にはシテが。

大瓶は太平に音が通じて大変にお目出度いものだそうですが、本当に。
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by soymedica | 2015-07-17 23:50 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演7月 浮舟 土筆 善界

d0226702_21574712.jpg銕仙会定期公演7月 
2015年7月10日(金)18時より@宝生能楽堂

浮舟
シテ(里女、浮舟)柴田稔、ワキ(旅僧)大日方寛、アイ 山本則重
笛 栗林祐輔、小鼓 曾和正博、大鼓 亀井広忠
地謡 浅見真州ほか

土筆どひつ
シテ(遊山の者甲)山本泰太郎、アド(遊山の者乙)山本凛太郎

善界 白頭
シテ(善界坊、天狗)片山九郎右衛門、ツレ(太郎坊)観世淳夫、ワキ(比叡山飯室ノ僧正)宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、御厨誠吾、アイ(能力)山本則秀
笛 竹市学、小鼓 成田達志、大鼓 佃良勝、太鼓 観世元伯
地謡 山本順之ほか


浮舟。諸国一見の僧が宇治を尋ねると、綺麗な里女が出てきて浮舟が二人の貴人に愛されたのですよ、と語り、私は物の怪につかれているのでよろしく、と消えてしまう。後半、浮舟の霊が出てきて生前のありさまを語ってきかせる、という話なのですが、これは間語りが無いと何が何やら良くわからない。もうちょっとじっくり詞章を読み込んで行った方がよかったかも。


まず、ワキ僧登場。大日方寛。何をやってもそつがないけれど、元気が時に良すぎる、という感じの人ですが、本日はなかなかしっとり。宇治見物です。
と、女がやってくる。橋掛かりを歩む様子が(人影で足が見えなかったこともあって)水の上を来るようにすーっとやってくる。
3年前にも銕仙会で山本順之で見ているのですが、その時には作り物の舟があったような。そして女は笠をかぶっていたような記憶があるのだけれど定かではない。

この間林真理子の「UKIFUNE」を読んだせいか、面が何だかsexyに感じられる。甫閑作の増女だそうです。
このシテの柴田の持ち味は前シテのほうがぴったりくる。所作が綺麗。後シテは何だか中途半端な感じ。衣装が与える印象に私が引っ張られているのかもしれないけれど、もっとはかなげか、もっとゴージャスか、に寄せて演出しても良かったのでは。
最後に扇を閉じてから遠くにふっと視線をやる姿が印象的でした。


土筆は野遊びに出かけたのにけんかして、相撲で勝負を始めてしまうナンセンスコメディー。泰太郎と凛太郎、土筆を摘むしぐさの手首のひねり方が反対向き。あれはわざとだろうか(泰太郎のやり方のほうが摘みやすそうだけれど)。

我が恋は松を時雨の染めかねて 真葛が原に風騒ぐなり
難波津にさくやこの花冬ごもり 今は春べとさくやこの花

の歌を間違えて引用することからけんかになるのですが、今回歌を間違えるのは両方ともシテですが、ネットで見るとシテとアドが一度ずつ間違える台本もあるのだそうですね。


結構好きな演目の善界。どう組み合わせても観世淳夫クンの訓練のために一流どころをそろえてみました、みたいに見える配役(笑)。ま、訓練の甲斐あってぐんぐん上達しているように見えます。

後の囃子陣を見ると、一番年上に見える大鼓の佃良勝が一番髪の毛たくさんありそうで生物の不思議に思いをはせる…。本日二番とも囃子が良かった。

中国から日本制覇をうかがう悪い天狗の善界坊。太郎坊と二人で相談。ここの二人で座り込む所作が好き。
前場で引っ込むとき(今回のように)シテが走り去ってもツレはいつもと同じでゆっくり入るのはどうしてでしょうね。

比叡山の能力が手紙を萩箒に挟んでやってくる。にわかに天候が悪くなってこれは天狗の仕業に違いない、と逃げ帰ります。山本家のアイは悪天候に怖気づく様子も若干地味。

立派な車が出されて偉いお坊さん登場。飯室の僧正。お供が2人。あんまり活躍しないワキなのに欣哉なのが贅沢。

善界坊がやってきて戦うのですが、僧正びくともせずに追いやります。善界坊がシテ柱によって橋掛かりから舞台をのぞくしぐさが面白い。善界坊は凄く綺麗な細くて長い数珠を持っているのですが、これを最後に橋掛かりから舞台に投げ込んで退散。前に見たときに、これあったかな。なかなかの演出でした。

前シテの面は作者不詳 多賀。後シテは洞水作の大癋見、ツレは高津紘一作の怪士。
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by soymedica | 2015-07-12 21:59 | 能楽 | Comments(0)

のうのう能Plus Vl.8 玄象

d0226702_12481760.jpgのうのう能Plus Vl.8
2015年7月4日(土)14時より@矢来能楽堂
正面席7000円

琵琶について
楽琵琶秘曲 啄木 中村かほる

玄象
シテ 観世喜正、前ツレ 小島英明、後ツレ 永島充、師長 加藤眞悟
ワキ 殿田謙吉、アイ 山本泰太郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 成田達志、大鼓 柿原弘和、太鼓 観世元伯
後見 観世喜之、遠藤和久
地謡 山崎正道ほか


前回能楽堂のお姉さんに教えてもらったマグロの美味しいお寿司屋さんでお昼を食べてから、能楽堂へ。
お天気が今一つなのは演目のためか。何しろ藤原師長は「雨の大臣」というくらいですから、と観世喜正。まず、喜正の司会で琵琶の中村かほるさん登場。いろいろある琵琶の違いや構造など興味深いお話でした。雅楽の琵琶は非常に大きな楽器で、中村さんは胡坐を組んでその中で支えるようにして演奏。


休憩のあとは玄象。
人手不足なのか、観世喜之が塩屋の作り物を運んできた。
ツレ、ワキ、ワキツレの順に舞台にやってきたので、ツレの加藤眞悟をみながらしばし、「このワキは誰だろう?」と考えてしまった。
この方の謡は何となく古いイメージ(観世喜正の謡が平成だとすると、昭和)。

師長一行が塩屋に泊めてもらおうと主を舞っていると、お爺さんとお婆さんがやってくる。型どおり「ぼろ屋だから」と辞退した後に泊める。師長が泊めてっ貰ったお礼に琵琶を弾くと、「雨の音と琵琶の音と」高さが合わない、と板屋の屋根に苫を敷く。

師長の求めに応じて老夫婦が琵琶と琴の合奏。ここで、お爺さんが本物の琵琶をかき鳴らします。最初に中村さんの見事な演奏を聞いてしまったあとなので、「うーん」という感じ(笑)ですが。舞台を観てしまうとそんなに画期的な試みとも感じられませんが、雅楽と能と両方に興味を持つ人は多いでしょうから、やる意義は大きかったと思う。国立の「働く貴方へ」みたいな催しにはぴったりかな。

師長は唐に音楽留学に行く途中だったのですが、こんな名手が田舎にいたというので、思わず「都に帰って考え直そう」とすごすご退散しようとして老夫婦に止められます。このとき、ワキ一行が囃子の後ろに引っ込むのが目新しかった。

老夫婦は自分たちは村上天皇と梨壺女御だとあかして、退場。塩屋もひっこみます。
ごめんなさい、アイのところ、寝てしまったのか、記憶がすっぽり抜け落ちていますので、山本泰太郎がどうだったか思い出せない。

そしてお召替でみすぼらしいお爺さんから威厳のある天皇となったシテと、龍神登場。龍神が海底から拾ってきた琵琶「獅子丸」の方は作り物でした。比較的地味な色合い。
後半のキラキラしさが、前半と対比して面白かった。

面白い演目なのにこれを含めて今まで二度しか観ていないのは、やはり上演回数が少ないのかな。なぜだろう。
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by soymedica | 2015-07-09 12:49 | 能楽 | Comments(0)

セルリアンタワー能楽堂定期能七月喜多流 阿漕

d0226702_1636513.jpgセルリアンタワー能楽堂定期能七月 喜多流
2015年7月3日(金)18時半より
中正面席8000円


おはなし 馬場あき子

阿漕(ろうそく能)
シテ 友枝昭世、ワキ 宝生欣哉、アイ 高澤祐介
笛 一噌仙幸、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠、タコ 観世元伯
後見 塩津哲生、佐々木多門
地謡 香川靖嗣ほか


こんなものを見つけた:平治せんべいhttp://www.heijisenbei.com/heiji/index.html

馬場あき子さんのお話から。いつも楽しい。
「道行」は旅行などめったにしない当時の人の興味を引くところだったのでは、とおっしゃっていました。なるほど。
そして徒然草142段(罪を犯したものを罰するのではなく、安定した生活をして罪を犯さなくて済むような治世をしなくてはならない)をひいて、これは阿漕の時代にも今にも通じるのではないか、と。


休み時間に見渡すと、馬場さんのおっしゃったように、若い人やファッショナブルな人が多い見所。もちろん満席。ただ、セルリアンは若干チケットがお高いのでなんとか私も買えました。


ろうそく能とは言っても、見所には淡いダウンライトがついており、舞台の照明もあるので、国立のろうそく能よりはだいぶ明るい。蝋燭をつけるのが黒子というところが面白い。

いつも危なげのない宝生欣哉。ワキツレ二人の名前が番組に載っていないのではっきりしないが二人目は大日方かな。一人目が良くわからないけれど、何となく年寄りじみた謡。
出だし、小鼓の観世新九郎と大鼓の亀井忠広の掛け声がうまくハモらないので気になる。そして私は一噌仙幸のよろよろした感じの笛が好きなことを発見する。

友枝昭世、クセなどの動きは比較的大きな気がする。どこの瞬間でも役になりきっていること、何をやっても自家薬籠中の物、と思わせる動きと謡。物凄い練習量なのだろうな。「繰り返し、繰り返し」と釣竿を振るところ、後シテが網を手繰るところ、見せ場ではありますが、これ見よがしに感じさせないほど所作が練れている。

後シテの網、いったん床に置いて(仕掛けて)手繰るのですが、桜川で可愛らしい赤い色に塗られているのと同じ構造ですが、阿漕で真っ黒なものを見ると禍々しい。

危険を冒しても、そして結局簀巻きにされて殺されても、幽霊になってもやりたかった漁。成仏しないでも出てきてまたやりたいのだろうな、と思わせる舞台でした。

今回中正面で見ていたのですが、中入りの時って舞台上も緊張がいったん切れて「ごそごそ」という感じになるのが良くわかって面白かった。そういえば中入りの時に後列の中村邦生が引っ込んでしまって後場が始まってもしばらく戻ってこなかった。具合でも悪かったのかな。
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by soymedica | 2015-07-05 16:38 | 能楽 | Comments(0)