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国立能楽堂五月企画公演≪寺社と能≫ 翁 棒縛 恋重荷

d0226702_239785.jpg国立能楽堂企画公演≪特集・寺社と能≫
2015年5月21日(木)18時より

おはなし 松岡心平

多武峰式翁
翁 観世清和、千歳 観世喜正
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 山本哲也、太鼓 観世元伯
後見 大槻文蔵、上田公威
地謡 観世銕之丞ほか

棒縛 大蔵流
シテ(次郎冠者)茂山七五三、アド(主)茂山茂(太郎冠者)茂山正邦

恋重荷 観世流
シテ(山科荘司)梅若玄祥、ツレ(女御)片山九郎右衛門、ワキ(臣下)福王和幸、アイ(下人)茂山逸平
笛 一噌庸二、小鼓 観世新九郎、大鼓 山本哲也、太鼓 観世元伯
後見 観世銕之丞、山崎正道、谷本健吾
地謡 大槻文蔵ほか


満席。まずは松岡心平のおはなしから。「本日は翁ですので、解説は舞台に上がらずここで」と中正面のあたりでお話。ま、要点は「20分じゃ解説できないのでこの秋に講談社から出る本を買って読んでね」とのこと。買いましょう。


の多武峰式というのは要するに三番叟抜き、小鼓一人、なぜか何もしない太鼓が登場する、というもの。
談山神社に伝わる摩陀羅神面を使うのですが、眉がなくてとても大きな翁面。つけたところは何となく伎楽面を想像させます。
松岡心平の解説を聞いた直後のせいもあり、謡の文言から談山神社周囲の豊かな水流と緑が連想されて、やはり翁は良いものです。
観世喜正の千歳が良かった。千歳がこんなに印象的なものだとは初めて気づきました。


棒縛の太郎冠者が千五郎から正邦に、アドが正邦から茂に。千五郎病気とのことですが、大丈夫かな。
棒縛ってこんなに面白い演目だったろうか。七五三、絶好調。間の取り方が絶妙。もう70歳になろうかというのに、あの姿勢で立ったり座ったりも凄い。


見るたびに演出がちょっとずつ違う恋重荷。共通しているのは最初に後見が正先に重荷を出すところくらいでしょうか。
九郎右衛門の女御がしずしずと登場。まあ、演技は鏡の間からと言うそうですからわからないでもありませんが、もう少しさっさと出てきてほしい。老婆ものでも始まるのかと思った。

いかにも立派な臣下の福王和幸登場。茂山逸平も登場。こんなイケメンたちに取り囲まれている美しい女御が卑しいしわくちゃの老人に思いをかけられたって、ピンと来ないでしょうね。
呼ばれて出てきた山科荘司、箒に添えて菊の花を持っています。背中の曲がった外股の歩き方がいかにも卑しい。

その荷を運んだら女御が姿を見せようぞ、と言われ、では、と袖まくり。持っていた箒は後見に渡しますが、菊は腰に差します。粋だな。
虎と思えば石にだに立つ矢のあるぞかし、と頑張りますが、踏ん張りすぎたのか頭の血管がぶちっと切れて死んでしまう。この時に菊を荷に置いて幕に駆け込みます。

「そんなつもりじゃなかったのよ」と庭におりてくる女御。おでこで細目であんまり美人じゃないような気がするのだが、御歌はお上手だしお召し物も素晴らしい。

後シテの悪霊がやってくる。金と黒(濃い茶か?)の袴に金の法被。法被の裏が紫。顔がこれまた恐ろしい。談山神社にはこんなものが保存されていたかと思うと何だか怖い。
そして散々恨み言を行って「懲り給えや」と荷の上の菊を女御に投げつける。と、ふっと糸が切れたように、「まあ、あんたの守り神になってやろうな」と杖を置いて消えていく。もうどうでもよくなったんだろうか。

重荷は出るときも引くときも、銕之丞が軽々と揚幕から出し入れしていました。なぜ切戸口じゃないのでしょうね。

前シテの面は国立能楽堂蔵の三光尉、後シテは談山神社所蔵の悪尉。ツレも談山神社の女面だそうです。
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by soymedica | 2015-05-23 23:11 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂五月定例公演 仁王 杜若

d0226702_1624985.jpg国立能楽堂五月定例公演
2015年5月15日(金)18時30分より

仁王 和泉流 
シテ(博奕打)野村又三郎、アド(何某)野口隆行、(在所の者)奥津健太郎、藤波徹

杜若 観世流
シテ 武田尚浩、ワキ 宝生欣哉
笛 杉市和、小鼓 住駒幸英、大鼓 柿原弘和、太鼓 前川光長
地謡 武田志房ほか


仁王。ご予算(?)や上演時間によって、願掛けの場面を長くも短くもできそうなお話。博奕ですってんてんになった男が仁王像にばけて、御供え物をちゃっかりいただくが、さいごにはばれるという…。
今回はごくごく地味なバージョン。衣装のセンスが現代的。
仁王の表情、鏡の前でやってみたんだろうな、となんとなく笑える。

ところで、十三世野村又三郎ってどんな人だったのだろう?そして今の十四世又三郎は十二世の次男というからには長男がいたのか?早世したのだろうか。

今回仁王は最初阿形で次が吽ですが、大蔵流は逆とのことです。


杜若。「季節の物」みたいな扱いで、さらさらとかつ華やかに演じられるのが常。私もそう思っていましたが、ちょっとまてよ、よく考えると何だかシュールで怖い話ですよね。綺麗な杜若を見ていたら、美女が出てきて「お宿をどうぞ」。行ってみたら、あばら家には似つかわしくない豪華な男装をして女が現れ…。安部公房あたりなら面白くつくりかえそうな…。

そんなことを考えるのも、面(若女)が遠目には三白眼の美女だったからで。前シテは確かに女なのだけれど、後シテは美男なのか、美女なのか。「光も乱れて飛ぶ蛍の雲の上まで」のあたりで雲の扇をしたときに現れた顔が何となく怖い。舞い終わって扇を閉じたときには女だったのだけれど。

ということで、楽しめた舞台でした。「武田勢揃い」みたいな舞台でしたね。すっきりした地謡も良かった。
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by soymedica | 2015-05-17 16:04 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂五月普及公演 真奪 千手

d0226702_1751738.jpg国立能楽堂五月普及公演
2015年5月9日(土)13時より
正面席4900円


解説 ボタンの花 重衡の実像 高橋昌明

狂言 真奪しんばい 大蔵流 
シテ(太郎冠者) 網谷正美、アド(主)松本薫、(通りの者)丸石やすし

能 千手 宝生流
シテ(千手前)渡邊荀之助、ツレ(平重衡)島村明宏、ワキ(狩野介宗茂)森常好
笛 藤田次郎、小鼓 後藤嘉津幸、大鼓 守家由訓
後見 高橋章、渡邊茂人
地謡 小倉敏克ほか


解説の高橋先生は平家物語の研究者だとのことで、「ちょっと緊張しております」とのことでしたが、お話は面白かった。重衡が牡丹の花にたとえられるイケメンであった、という内容だったせいか、興味深く聞けました。「平家の群像」という岩波新書を出しておられるとのことなので、買って見よう。


昨日に引き続きまた真奪。本日通りの者の持つ真はアヤメなども入りとてもきれい。本物かと思ったら、造花だった。
同じ大蔵流でもこちらの方が一層華やか。


千手、何がいけないということも無いのだが、だんだん眠くなる舞台。こちらの体調のせいだろうけれど。
重衡って平家の御曹司だけあって教養が高いなー、と思いつつ、うとうと。
千手の立ち居振る舞いが何となくぎくしゃくしていて綺麗じゃないなー、とまたうとうと。
重衡のほうが印象に残る舞台だった。解説によると処刑された時は29歳とのことだが、舞台ではもう少しお歳でしたね。
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by soymedica | 2015-05-13 17:07 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演五月 大原御幸

d0226702_8373426.jpg銕仙会定期公演5月
2015年5月8日(金)18時より@宝生能楽堂

大原御幸
シテ(建礼門院)観世銕之丞、ツレ(後白河法皇)浅井文義(阿波ノ内侍)馬野正基(大納言局)浅見慈一、ワキ(萬里小路中納言)宝生閑、ワキツレ(大臣)宝生欣哉、(輿舁)殿田謙吉、梅村昌功、アイ善竹十郎
笛 一噌隆之、小鼓 幸清次郎、大鼓 安福建雄
地謡 野村四郎ほか

真奪しんばい
シテ(太郎冠者)善竹十郎、アド(主)善竹富太郎(道通り)野島伸二

鍾馗
シテ(里人、鍾馗)観世淳夫、ワキ(旅人)大日方寛、アイ 善竹大二郎
笛 藤田貴寛、小鼓 鳥山直也、大鼓 亀井実、太鼓 徳田宗久
地謡 清水寛二ほか



仕舞よりは謡に関心のある私にとっては大原御幸は嬉しい演目。
大きな藁屋が大小前に出されます。引き回しが揺れているけれど、準備は大丈夫かなと思っていると、後白河の臣下がやってきて、寂光院にこれからいくぞよ、と。十郎も皆々に「道を整備しておけよ」と言って、橋掛かりから退場。

藁屋の引き回しが下ろされ、三人が登場。建礼門院の面が物凄く素敵。この場面の三人の謡がもったりした感じでしたが、ともあれ建礼門院と大納言局は裏山へ。
法皇を案内してきた宝生閑の中納言。最近閑が登場するたびにハラハラしてしまうのですが、今回はさすが。肩に力の入らないサラサラとした謡。明らかにほかの出演者の事なんか眼中にないんですが、この人の謡があるだけで場が引き締る。

樒取に行ってきた二人が帰ってきて法皇に対面。地謡が初夏の寂光院の景色を歌い上げる。何だか地謡がやたらゆっくりと思い。地は地なんだから、もっと情景描写に徹してほしいな。今回予定よりも物凄く時間がかかった上演なのですが、地謡の「重さ」が原因でしょう。

だんだん聞いている方が疲れてきてしまいましたが、ただ座っているだけのように見えるシテはさすが。クセのところのさりげない動きが素晴らしい。
そして安徳天皇の最後を語れ、と促されて語るその語りの凄さ。舞台の凄さがここに集約されたような感じでした。絶叫に近い「今ぞ知る」のせりふを浮き上がらずに聞かせられる流ができていました。
ふと気づくと、ワキの宝生閑が優しい顔をしてシテを見ていましたが、気のせいだろうか。

今日は良い舞台を観ました。

面はシテが泣増 見市泰男、
ツレの阿波内侍が若曲見、大納言局が小面銘「長浜」ともに作者不詳。


真奪は初めての演目でしたが、楽しかった。立花の材料にする「真」(中心に立てる植物)を探しに来たら良い真を持った男がやってくる。奪い取ったは良いが、自分の持っていた良い太刀を逆にとられてしまう。それを取り返そうとする話なのだけれど、刀を持って行った通りすがりの男が小柄で、主をやる富太郎が大男。主が後ろから押さえている姿からして面白い。そして富太郎がモヒカン刈りなんだよね。派手な狂言衣装に意外に合う髪型。
善竹家の狂言ってあまり好きではないのだけれど、これは面白かった。


と、ここまで見て鍾馗は失礼しました。残念。
淳夫君どうだったかな。
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by soymedica | 2015-05-12 08:39 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂狂言の会 墨塗 野老 髭櫓

d0226702_21331210.jpg国立能楽堂狂言の会 
2015年4月29日(水)13時より
正面席4140円

墨塗 大蔵流 
シテ(大名)茂山七五三、アド(太郎冠者)茂山千三郎、(女)茂山あきら

野老ところ 和泉流
シテ(野老の精)野村万蔵、ワキ(旅僧)野村萬、アイ(所の者)吉住講
笛 栗林祐輔、小鼓 鳥山直也、大鼓 大倉栄太郎
地謡 野村万禄ほか4人

髭櫓 大蔵流
シテ(夫)山本東次郎、アド(妻)山本則孝、(告げ手)山本凛太郎、立衆 山本則秀、若松隆、山本修三郎、山本則重
笛 栗林祐輔、小鼓 鳥山直也、大鼓 大倉栄太郎、太鼓 梶谷英樹


連休も前半に観たものなので記憶も薄れてしまいましたが、楽しかった気分だけは残っています。

茂山家の狂言は微妙に現代風なのか、誰にでも受け入れられると思います。墨塗もなんだかこういう大名いるよね、と感じさせる。気の弱い騙されやすい優柔不断の大名、七五三って実際にもこんな人ではないかと(失礼)思わせてしまう演技。装束だけは強そうに鬼の模様。
もうちょっと派手に墨を塗った方が面白いけれど。
あきらの女も良かった。


今回も野村太一郎休演でしたが、ご病気でしょうか。大したことなければ良いのですが。野老とは山芋の事らしい。ハート形の葉っぱのあれ?能仕立てです。結構笑える。何がおかしいと言われると困るのですが、昔は宴会芸くらいのノリだったのかな、という話。能仕立ての野老の精のお話といっておけば、能を見る人にはわかると思うけれど。
野老の精は鍬を担いだうそふきの面で、頭には野老と思しき作り物を載せて出て来ます。どうも茹でても食べるらしい。今は生で食べるのが主流ですが、そういえば火を通しても美味しいですね。
野老を掘る人、掘られる野老の両方をシテ一人が演じるところも能仕立てですね。また観たい演目。


髭櫓は前に萬斎のシテで観ていますが、あちらの方が道具立てが華やか。櫓の旗も多いし。烏帽子の後ろから東次郎の禿げたおつむりがちょっと出ているところがラブリー。
わわしい妻とその一行、毛抜き背負っていないな、と思ったら後見が渡していました。
途中で櫓の持ち手が壊れてハラハラしたらすかさず後見の則俊がフォロー。
フォローしてもらったけれど、髭を抜かれちゃうんですよね。ハハハ。
私の隣に座っていた夫は何か身につまされたようでした…。
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by soymedica | 2015-05-05 21:36 | 能楽 | Comments(0)