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神遊49回公演 張良 寝音曲 谷行

d0226702_23524393.jpg神遊第49回公演 ワキ方が活躍する能
2015年3月22日(日)11時30分より@国立能楽堂
正面席8500円

張良
シテ 観世喜之、ツレ 川口晃平、ワキ 森常太郎、アイ 高野和憲
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 観世元伯
後見 観世喜正、桑田貴志
地謡 梅若玄祥ほか計6人

独吟 藤戸 
宝生欣哉

一調 船弁慶 
福王和幸 観世元伯

仕舞 雲雀山
宝生閑

寝音曲
シテ 野村萬斎、アド 石田幸雄

谷行
シテ(梅若の母、伎楽鬼神)観世喜正、シテ(役行者)梅若玄祥、子方 馬野訓聡
ワキ(師阿闍梨)森常好
ワキツレ(小先達)殿田謙吉、(相談役山伏)館田善博、ワキツレ(同山)野口琢弘、梅村昌功、野口能弘、則久英志
アイ 深田博治
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 観世元伯
後見 観世喜之、永島充、川口晃平
地謡 山崎正道ほか計6人

一言で言うと、非常に印象深い一日でした。何しろ張良ではツレが舞台から落ちるし…。お昼に食堂の後ろに並んでいたおばさまの一言が私の心を代弁。「演者が能舞台から落ちるなんて、私も何十年も見ているけれど初めて。こちらは珍しいものを見せてもらったと思って楽しいけれど、あとでお師匠さんからたっぷり怒られるでしょうねーーー。」

張良って、あの中国の張良ですよ。登場して真ん中で「不思議な夢を見ました。老人が沓を落としたので履かせると、五日目にまたここに来れば兵法の奥義を伝授すると言われるた」と。ま、夢だけれど行ってみるか、と土橋に行くと既にその夢に出てきたお爺さんが揚幕の前に。「遅いぞ!年長者を待たせるとは何事!」皆さん、宴会では職場の上司より先に会場に行くのですぞ。

観世喜之、お歳で声が小さいうえに、おそらく声帯不全麻痺で、聞き取りにくいのだけれど、なかなか素敵。きちんと声が出る若いころに見たかったとも思うけれど、今も素敵。

遅いぞ!と怒られると張良あわてて音を立てて平伏。するとお爺さん、一の松までやってきて、5日後にもう一度ここにやってこい、遅れるなよ!と。
張良も、兵法を習うためならきっとここに来るぞ、と、はやる心を表す囃子に乗って退場。

ここで張良の部下の高野登場。型どおり前場の筋を語った後、「主人は一人でお出かけになるので、お出迎えをしよう」と。高野はアイがなかなか上手い人です。
ふと気がつくと地謡の梅若玄祥が戻ってきて座る。いつ出て行ったのかな?お手洗いかしらん。

大小前に一畳台が出されます。

張良再び登場。物凄く派手な装束で、上がオレンジ、下が黄緑でしかも全部に金入り。頭は唐冠に赤い鉢巻。よほど朝早く出てきたらしく、あたりには霜が降りている。土橋にはまだ足跡も無く、まだ誰も来ていない。

ありがたい黄石公のお爺さん登場。あれ?沓を落とすというけれどいつもの通り足袋はだし。「汝に兵法を教えよう」と、一畳台の上の葛桶に座ります。張良がははーっとお辞儀をすると、お爺さんのうしろから喜正が沓を舞台に投げます。あ、そういうことね。

川に落ちた沓を拾いに張良が飛びこむと、流れにあおられてくるくる、くるくる。ここの動きが大きな見せ場。ダイナミックで凄い。「もっとやってよ」と思うのだけれど、そうはいかない。これは沓がどこに落ちるかで演技が決まると聞いて、なるほどと思いました。後から大蛇(龍神かな)が拾って渡す都合上、舞台の外に放るわけにはいきませんし、投げる方も大変。

真っ赤な衣装の大蛇登場。やはり水の中では人間より素早いので、沓を先に拾ってしまう。剣を抜いて沓を取り戻そうとする張良。最後には大蛇は張良に沓をわたしてやるのですが、この蛇、シテ柱あたりで飛び上がって一回転するときに見事に舞台の外に。ワキ正面からは悲鳴が。すぐに立ち上がって正面に回って階から登り、出てきた後見に助けられて続きを。地謡が動揺したのが面白かった。

黄石公に沓を無事渡せました。
大蛇、怪我も無く退場。黄石公爺様も光り輝いて退場、最後に張良も退場。
いつもボー――っとしたワキツレの姿しか見ていませんが、森常太郎、なかなかやるじゃないですか。
そしていつもは「のうのう能」で仕舞しかやらない観世喜之、凄く良かった。見せ場が無い曲なのにこの存在感は凄い。

尚、喜多流では黄石公が沓を実際に履いて出る演出があるそうです。粟谷明生のブログ、にありました。http://awaya-noh.com/modules/pico2/content0309.html

独吟、一調、仕舞、も充実。プログラムには宝生閑が挨拶を書いているのだけれど、ちょっと天然でラブリー。お手に入る方は読んでみてください。


寝音曲は何回も見ている曲ですが、この萬斎―石田バージョンは何となく主従の関係が近い感じ。仲良し。万作―萬斎バージョンよりもしっくりくるのはなぜでしょう。
笑えました。


さて、谷行。とても偉い山伏の森常好登場。先達と呼ばれています。早くに父を失った若い弟子の松若の話をし、これから峰入りするのであいさつしようと、一の松で語ります。早くに父を失った松若にとって、森は父親代わりという想定なのではないでしょうか。行ってみると、ここのところ母が風邪をひいて寺に行かれなかったという松若。
峰入りの話をすると、「僕も行きたい」と。先達山伏の森も母親も一度は反対するのですが、大変なことが待ち受けているとは思わず、連れていくことにします。

ここで全員が退場。アイが出てきて前場を要約しますが、これは必要なんだろうか?時間稼ぎはそんなに必要なさそうだし。
脇正面に一畳台が出されます。奥の橋掛かり側の隅に一本、手前の対角線正面側に一本木が生えている。黐(もち)の木だそうです。

山伏一行登場。さあここいらで休もうか、というと、松若が森常好に「ちょっと風邪っぽいんだけれど」。「そんなことを言うな」と言って、水衣、篠懸を脱がせて森は自分の膝に子方を寝かせる。と、これを聞きつけた小先達(サブリーダー)がもう一人の山伏と相談。「松若は病気ではないか、それなら大法に従って谷行(谷に投げ込む)をしなければ」、と。この人も悩んだのでしょうね。いたいけな子供にそんなことしたくないけれど、リーダーに大法を侵させるわけにはいかない。

先達の森は「代わってやれるものなら代わりたい」と嘆く。小さな孫のいる森常好、迫真に迫った演技です。山伏二人が子方を抱いて台を越えて目付柱のところに横たえます。全員が泣いてしまいますが、夜が明けたので出発しなくてはなりません。
ところが、森は「嘆きも病も同じこと。自分も病気だから谷行する」と言いだします。

他の山伏達も本当は同じ気持ち。皆で今までやってきた修行はなんのためだったのか!今こそ力を合わせようと、全員で蘇生を祈ります。
と、そこに錫杖の音が。能舞台でこれを使うのは初めて見るような気がする。山伏の大先輩である役行者です。白と金の山伏装束。いかにもありがたい。そして、仏の慈悲を見せてやろうと笛座前に座ります。
あとでプログラムをみたら、役行者は梅若玄祥であったのにびっくり。装束を着て痩せて見えるようになる人ってあまりいませんよね。

役行者の力で伎楽鬼神が斧をもって駆け出してくる。黐の木を一本は斧で切り倒し、もう一本は引き抜き、子供を助け出す。
そして役行者の元へ子供を連れていくと、行者は子供をなでなで。実際子方は衣をかぶせられてかなり長いことじっとしていたのでぼーっとしていていかにも蘇生したばかり、と言う感じ。
子方が舞台に戻ってきて本当にパーっと明るくなった。

そして役行者と伎楽鬼神は橋掛かりでちょっとポーズ。行者が白髪、鬼神が赤髪で大変にフォトジェニックでお目出度い感じでした。


谷行は「観世」平成23年7月号に横道萬里雄が2000年の関根祥人、2001年の豊嶋三千春の演出について書いています。
「幻視の座・宝生閑聞き書き」にも。
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by soymedica | 2015-03-26 23:58 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂三月定例公演 苞山伏 頼政

d0226702_13195296.jpg国立能楽堂三月定例公演
2015年3月20日(金)18時30分
正面席 4900円

狂言 和泉流 苞山伏
シテ(山伏)高澤祐介、アド(山人)三宅右矩、小アド(使いの者)三宅右近

能 喜多流 頼政
シテ 粟谷能夫、ワキ 森常好、アイ 石田幸雄
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 白坂保行
後見 友枝昭世、狩野了一
地謡 出雲康雄


苞山伏(つとやまぶし、と読みます)。苞は藁包みの納豆を想像してください。あの中にお昼の弁当が入っているらしい。(そう言えばあれ、藁苞と言いますね、忘れていた。)

樵が山に来て昼寝をしていると、山伏がやってきます。この山伏「大峰かけて葛城や云々  われ本山に帰らん」と謡っているのですが、前の外人さんのスクリーンを見たら「羽黒山」と具体的に書いてありました。うーーむ、深い。

ともあれ、樵の昼寝を見て山伏も昼寝。そこに小賢しい使いの者が来て樵の弁当を食べてしまう。そこで樵が目を覚まし、使いの者は逃げる暇もなく、そそくさと昼寝の真似。
さあ、弁当を食べたのは三人のうち誰?狂言ですから「藪の中」みたいな不条理劇とはならず、山伏が祈って犯人捜し。
この狂言の特徴は、山伏が優秀で、ちゃーんと犯人を当てられるところなんです。
そして犯人を打ち殺そうとする樵をいさめるところもちゃんとした修行者らしくてきちんとしている。いつもバカにされている山伏ですが、こういう曲もあるのですね。


ここの所、頼政をよく観る。割と地味な能なのではないかと思うけれど、平家物語に題材をとっているものだからファンが多いのでしょうか。

諸国一見の僧である森常好が宇治の見どころをたまたま通りがかった爺さんである粟谷能夫に聞く。「勧学院の雀は蒙求を囀る」というのは「門前の小僧習わぬ経を読む」ですな。格好良いから今度使ってみよう。
名所教えがいかにも名所教えで、私もつい行ってみたくなるのは、この間宇治観光をしてきたせいだと思われます。
爺様は、「頼政の死んだ戦は今月の今日でした」と言って消える。「月命日」という感覚、私にはわからないのですが、今にも生きていますね。

ところで、私の席の前には西洋人のカップルが。英語をしゃべる20歳代。男のほうが極めて落ち着かなく、キャップをかぶってみたり、脱いでみたり、女のスクリーンの方を眺めてみたり、首を振って見たり…。退屈だったら出てって良いんだよ。
さらにその隣にいるシャネルスーツの女性はなんとコートを椅子の背にかけていて後ろの女性がスクリーンを見ることができない。後ろの席の人何か言うかな、と思っていたらおとなしくパンフレット読んでいたけれど…。

爺様退場。地元の人の石田幸雄登場。今振り返るとあんまり印象に残らないアイ語りでしたが、逆に印象にのこるような語りはまずいのかもしれない。

後シテ頼政は金、黒、茶色の華やかな出で立ち。能役者って舞台の外で見るとただのお爺さんなのに何であんなに切れ良く動けるのでしょうか。粟谷能夫は品の良い素敵なお爺さんなのですが、これもまたカッコよい動き。頼政って実際に亡くなった時には当時としてはかなりの高齢だったはずですよね。

「埋もれ木の、花咲くことも無かりしに、身のなる果てはあわれなりけり」

と言って退場。
囃子も地謡もよかったけれど、何となく印象が薄いのは曲のせいか、はたまたアクの無いシテの性格のせいか。
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by soymedica | 2015-03-23 13:21 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演三月 粟田口 求塚

d0226702_836771.jpg銕仙会三月定期公演
3月13日(金)18時より@宝生能楽堂

狂言 粟田口 
シテ 山本則俊、アド 太郎冠者 山本則秀、粟田口 山本則重

能 求塚
シテ 野村四郎、ツレ 北浪貴裕、長山桂三、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 大日方寛、則久英志、アイ 山本東次郎
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原崇志、太鼓 三島元太郎
後見 浅見真州、清水寛二
地謡 観世銕之丞


色々と大切な会とブッキングしていたけれど、やはり一番大切なのは野村四郎の求塚でしょう。ということで、勇んでやってきました。

まずは刀の粟田口と人とを間違えて雇い入れてしまう狂言、なんだけれど、途中から完全に寝てしまいました。東次郎の出ない山本家の狂言ってちょっと疲れているときには固すぎる。

気を取り直して求塚。各地を観光している僧の宝生欣哉の一行。観光しているはずなのに、これから先を予想してか、出だし物凄く硬い。何か楽屋であったのか、気にかかることでもあるのか、というくらい固い。

菜摘の一行登場。三人がとっても良く似ていて、左手にもう菜の入った籠、右手には扇というおそろいのスタイル。最後にちょっと遅れて出てきた娘はお鼻の丸い可憐な乙女。ロンギのところ、三人の乙女がとてもかわいらしい。
かなり前から東次郎が出てきて橋掛かりに座っているのだけれど、これも情景の一つに思える。装束の選び方でそうみえるのか、東次郎だからなのか。

他の娘が皆帰ってしまったのに、一人残るのは何故?と僧が聞く。この辺からやっといつもの欣哉になる。
この僧、求塚とは何か知らずに、「名所だから」とやって来たらしく、そのいわれを尋ねると、娘は教えつつ、だんだん様子が変わってくる。「その時わらは思うよう…」「え??」と思うと、ふーっといなくなってしまう。

東次郎が登場して、求塚の伝説を語る。前回は欣哉&萬斎、その前は閑&萬の組み合わせで観ているのですが、ずーっと昔から欣哉&東次郎で観ていたような、そういう自然な組み合わせ。たぶん二人の気迫に相互につりあうものがあるのでしょう。

さて、いよいよ塚の中から菟名日処女が現れる。この面が素晴らしい。野村四郎、手がちょっとむっちりしているので残念ですが、それを忘れさせる素晴らしい謡と演技でした。自分に責任が無いのに理不尽にも地獄に落ちてどういう目に合っているか、見せてくれます。昔の人は能を観ながら、世の不条理を共に嘆いたのでしょうね。

僧は念仏を唱えるときにわざわざ扇をワキ座に置いて念珠に持ち替えるのですが、懐に入れたのではやりにくいのでしょうか。

地謡も湿りすぎず、張り切りすぎず。太鼓の音がいつも慣れている音よりも若干低く湿った感じがするのも好ましかった。
後見は二人とも還暦過ぎと思われるのですが、若手の安藤が横から出てきて頑張っていました。

地獄の様子を見せて辛そうな処女でしたが、最後には読経に救われて若干落ち着きます。でも、塚の中に入って沈み込んで終わるのでした。

出だしがもう少しのどかな感じだと良かったとは思いましたが、満足した一日の終わりでした。


面は
前シテ「孫一」 伝 竜右衛門作
後シテ 痩女 大宮大和作
ツレ 小面 作者不詳、「閏月」北沢一念作
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by soymedica | 2015-03-19 08:38 | 能楽 | Comments(0)

千五郎狂言会 悪坊 空腕 鶏猫

d0226702_142012.jpg千五郎狂言会第十七回 
2015年3月12日(木)19時より@国立能楽堂
正面席6500円


悪坊あくぼう 
悪坊 茂山千五郎、僧 茂山千三郎、宿の亭主 茂山宗彦

空腕そらうで
太郎冠者 茂山正邦、主人 茂山逸平

鶏猫けいみょう
河野某 茂山千五郎、藤三郎 茂山七五三、子供 茂山竜正
太郎冠者 茂山茂、次郎冠者 島田洋海、三郎冠者 井口竜也


千五郎狂言会、入り口で本「和伝書」の販売中。一冊購入したら見返しに一門のサインがあるのだが、その空いたところに竜正くんがサインしてくれました。心ここにあらず、といった体で、たぶん鶏猫出演がプレッシャーだったのでしょう。
見所でも開演ギリギリまで一門が本の販売。逸平が、「はい、買った人は本を右手に持って上げましょう」「ありがとうございます。今度は買っていない人は手を上げてください。そのままその手をずーーっと挙げていてくださいね」(爆笑)


悪坊。悪太郎によく似た話ですが、もっとすっきりしています。酒癖の悪い悪坊が道で行きあった僧と無理やり同道。知り合いの宿に入って悪坊が寝込んでいる間に、長刀と刀を取り上げてしまうという話。刀の代わりになんだか先が二股になった棒のようなものを悪坊の腰に差してやるのだが、これが「助老」という座禅の時に顎をのせるものらしい。一つ物知りになりました。

それにしても悪坊のべろんべろんに酔っ払った迷惑な感じ、千五郎、熱演でした。千三郎の迷惑している感じも宜しかった。もちろん本日は最後の鶏猫がメインなのでしょうが、私にはこれが一番でした。


空腕は、日ごろは何かと武道自慢の太郎冠者が夜にお使いに出され、切株や何かの陰におびえて盗賊と間違えた挙句に、主人に持たされた刀を差しだしてしまう。実は刀を取り上げたのは帰りが遅いので様子を見に来た主人だったので、帰ってさんざんに怒られる、という…。
若干地味な感じがするものの、正邦が熱演、凄く上手。逸平は声が大きくて華があるけれど、演技には何かが足りない感じがする。


そして鶏猫は、シリアスな話。大名の猫が自分の可愛がっていた鶏を捕ったので思わずその猫を殺して藤三郎。自分の子供の密告で危うく死罪になるところを、その子供の機転(密告したのにも深い訳があったのだが)助かり、あまつさえ刀まで拝領するというはなし。
次郎冠者だけでなく、三郎冠者までいる話は初めて。藤三郎は武道にたけているという設定で三人がかりで捕えに行くのですが、橋掛かりで次郎冠者、三郎冠者が派手に前転したりして面白い。
最後には謡が入って、七五三の仕舞も楽しめました。
竜正君、熱演でした(ちょっとつかえちゃったけれどね)。本来は虎真君だったはず、どうしたのでしょう。
「子供」がもう少し年齢のいった演者だとあまりに深刻な話になりすぎるし、このくらいが良いのかもしれません。


次回は10月8日です。
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by soymedica | 2015-03-15 14:20 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂三月普及公演 鶯 熊野

d0226702_14475665.jpg国立能楽堂三月普及公演
2015年3月7日(土)13時より
正面席4900円

解説 「熊野」の風雅と『平家物語』
佐伯真一

狂言 和泉流 鶯
シテ(何某)佐藤友彦、アド(鶯の飼い主)井上松次郎

能 宝生流 熊野
シテ 當山孝道、ツレ 小倉健太郎、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 平木豊男
笛 一噌庸二、小鼓 曽和正博、大鼓 國川純
後見
地謡 小林与志郎ほか

やってきました、花粉の季節。本日はちょっと雨模様なのでそれほどでもありませんでしたが、解説と狂言の後半は寝てしまった。ともに大変に面白そうであったのに。決して演者のせいではありません。申し訳ございませーん。
ということでe-honで佐伯先生の「物語の舞台をあるく 平家物語」を注文してしまった。

熊野はご存知のように平家の御曹司宗盛が愛妾の熊野が母の病気で故郷に帰りたがっているのに許さず、花見に連れて行き、そこでやっと帰郷を許す、という話。
御曹司宗盛は今回殿田謙吉。ふくよかな感じが昔の御曹司、という感じ。直面でやるこの宗盛、ワキではだれが似合うかなー、と考えると意外に殿田は年齢と言い風格と言い、はまり役かもしれない。
御曹司らしく真ん中で堂々と名乗り。ワキツレは見たことのない方でした。

さて、熊野の老母の手紙を持ってはるばる浜松あたりからやってきた朝顔。ちょっと色黒であんまり美人ではないところが母の気遣いを感じさせる(宗盛の寵愛が移ってはいけませんからね)。
あっという間に京都に着いた朝顔。
熊野が出て来ます。

熊野は痩せた美女。シテの當山は小顔なのか、面が大きく感じられる。母の手紙を読んでショックを受けた熊野はそれを宗盛に読んで聞かせて帰郷を願う。この、手紙を読むところが聞かせどころなのでしょうが、この人の謡が非常に弱々しい。老母ではなくて熊野が病気?!と、知らなければ思ってしまう。不思議なところで息継ぎをする特徴のある謡です。一瞬魅力的なんですが、ずーっと聞いているのはつらい。

それでも「花見に行くぞ」と宗盛。車に乗っても熊野はとても辛そう。でも、それが
母を思ってではなくて、自分が車酔いでもしているのかという…。
地謡もなんだか控えめでしたし、囃子も肩の力が抜けた感じと言えばいいけれど、妙に控えめ。ま、ベテラン三人でしたから満足しましたが。

いよいよ酒宴が始まって中之舞。この人、扇の使い方が綺麗。そして袂から短冊を出して今一度帰郷を願い出る歌を書く。ここ、見せ場ですよー、という感じで所作が綺麗だった。

その心に打たれて、宗盛、帰郷を許す。晴々と帰っていく熊野。あら、元気な演技ができるんじゃない。前半のは病母を思っている様子を見せる演技だったのね。…ちょっとやりすぎで私には理解できなかった。

美しい曲だし、もうすぐ桜の季節だし、楽しい舞台だったのですが、どうも宗盛は宗盛、熊野は熊野でそれぞれ勝手に演技しているような感じで全体としての「お話」の構成があんまり感じられない舞台だったのが残念。

ところで、後見座には一人しか座っておらず、それも若く見える方でしたが、変更があったのでしょうか。


面はシテが節木増、ツレが小面だそうです。
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by soymedica | 2015-03-08 14:49 | 能楽 | Comments(0)

若手能 敦盛 昆布売 葵上

d0226702_20154921.jpg第二十四回能楽若手研究会東京公演
2015年2月28日(土)13時より@国立能楽堂
正面席3100円

能 喜多流 敦盛
シテ 大島輝久、ツレ 佐藤寛泰、谷友矩、狩野祐一、ワキ 村瀬提、アイ 中村修一
笛 八反田智子、小鼓 田邊恭資、大鼓 佃良太郎
後見 塩津哲生、佐々木多門
地謡 狩野了一ほか

狂言 和泉流 昆布売
シテ(昆布売)深田博治、アド(大名)内藤連

能 観世流 葵上
シテ 清水義也、ツレ 関根祥丸、ワキ(横川の小聖)御厨誠吾、ワキツレ(臣下)野口能弘、アイ(大臣の従者)岡聡史
笛 栗林祐輔、小鼓 森貴史、大鼓 大倉慶之助、太鼓 大川典良
後見 観世清和、観世芳伸
地謡 山階彌右衛門ほか


「若手」とは言ってもなかなか豪華なラインナップ。これでこのお値段なら買いでしょう、と思ったら満席。GB席までぎっしり。皆知ってるんだな。

喜多流の人気若手の大島輝久の敦盛。大変失礼ながら、ワキが村瀬堤では役不足では、と思っていたらやはり…。出だしの道行からして、一の谷にやって来た出家した直実、という情景も実感もわかない。後半セリフは調子良くなってきたけれど、この人の謡って音程の基線がずれるような、とても落ち着かない謡いなんですよね。

ともあれ、4人の草刈り男登場。持っている草は本物のように見える。ネットで調べたところによるとシャガの葉を使うというが、もう少し大きく見えた。全員が小顔。橋掛かりをやってくる様子はまるで氷の上を四人が等間隔で滑っているよう。シテとツレの所作も謡も息がぴったり。
それなのに樵歌牧笛の掛け合いのところ、ワキがいまひとつなので大変残念な感じ。

草刈り男が一人だけ残り、自分が敦盛であると仄めかしてこれも帰る。
地元の男が敦盛の最後を語る。これは野村万作家の中村修一。わりとゆっくりテンポをとってなかなか良かったです。

さて、敦盛の幽霊が現れて自分の最後を語り、舞を舞うのですが、何とここでかなり八反田の笛が苦しそうに。今までにない不調。うーむ、今日は大島輝久、ついていない日でしたね。
特筆すべきは小鼓の田邉、この人養成所出身でお家の人ではないそうですが、物凄く上手い。大蔵源次郎の教え方が良いのだろうか。


狂言の昆布売。内藤連くん、大丈夫かな、と思ったら深田の大活躍で面白く見られました。深田博治って萬斎とほぼ同年なんですね。
ただ、前の能で草刈り男が草をもつ様子と昆布をもつ様子がかなり被るので、演目を考えた方が良かったかもしれない。


葵上。これは、シテ、ワキ、アイ、全員良くできました。
まず小袖の葵上登場。照日巫女、臣下も登場。このツレの照日巫女が上手い。今までこの関根祥丸くん、子供だと思って殆ど意識していなかったけれど、注目株。
清水義也も良かったけれど、何となく引きつけられるものがなかった。観る方の私が疲れていたのかもしれないけれど。

ということで、青女房も出てこないし、ふつーの葵上。御息所が凄く美人。正体を現して(いや、変身して)般若になっても前の美人のイメージが残るのでちょと怖い。
若干動きにキレが無いような気もしましたが。それと飛び安座のあとで裾がはだけるのはちょっと…。

筋の面白さにも助けられ、楽しめました。

小鼓、結構な音と掛け声だとは思うのですが、姿勢や小鼓の揺れが気になる。あれは音に影響を与えないのだろうか。やはり田邊はダントツに上手いな。
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by soymedica | 2015-03-02 20:17 | 能楽 | Comments(0)