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昭和の創作「伊賀観世系譜」梅原猛の挑発に応えて 表章 ぺりかん社

d0226702_1955523.jpg昭和の創作「伊賀観世系譜」梅原猛の挑発に応えて 表章 ぺりかん社
2010年初版第1刷 

「はじめに」にあるように平成21年(2009年)角川学芸出版から刊行された梅原猛の「うつぼ舟Ⅱ」(Ⅲまで刊行)にある、「観阿弥は伊賀の出身で楠正成の親戚であった」という論に対する反論です。
昭和30年代に三重県の旧家上島家からでた伊賀観世系譜というものがあるのだそうです。それによると観阿弥は伊賀出身で云々ということになっているのだそうですが、その資料があやしいうえに、直接見せてもらった研究者が今に至るまで一人しかいない。などなどで、能研究家のあいだでは葬り去られていた説だそうです。

ただ、この説が小説家に気に入られ、吉川英治や杉本苑子が作品に取り入れ、能楽愛好者の間ではずいぶん話題になったとか。筆者も書いていますが、地味な学術論文より小説家の方がはるかに影響力が大きい。(まじめな健康番組より「みのもんた」の方を皆が信じるのと同じです。)まあ、わくわくするような話ではあります。

それをなぜか最近になって梅原猛が復活させたのみならず、表章博士の研究にもケチをつけたからさあ大変、と、書かれた反論の一冊。

梅原猛の本とこれと比べてどちらが説得力があるかと言えば素人目にはこちら。でも、読み物として面白いのは梅原猛。彼の本は「隠された十字架」とか、素人受けしますよね。


表章の推測では系図マニアだった昭和初期の上島家の当主がそれらしいものを作って、あまり有名でない研究家に見せたらとっても感動してくれたのでウケに入っていたら、話が大きくなりすぎて、その後誰にも見せなくなったのではないか、と。現在の当主もそれを知っていて誰にも見せないのだろう(最初の研究者の久保と言う人の撮った写真しか世間には流布しておらず、表も梅原も実物は見せてもらっていない)。

系図発表当時は鹿島建設社長のおうちである永富家もその系図に登場し、観世との縁に喜んだ鹿島建設社長は今の観世能楽堂建設に多大な貢献をしたとか。まあ、ちょっぴり良いこともあったわけ。

梅原猛の本を読んでいなくても、面白く読めると思います。お勧め度高し。
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by soymedica | 2015-02-22 19:11 | 本・CD・その他 | Comments(0)

銕仙会定期公演二月 桜川 舟ふな 大会

d0226702_1275719.jpg銕仙会定期公演2月
2月13日(金)18時より@宝生能楽堂
正面席

能 桜川
シテ 小早川修、子方 馬野訓聡、ワキ 福王和幸、ワキツレ(茶屋)中村宜成、(里人)矢野 昌平、(従僧)村瀬提、村瀬慧
笛 藤田朝太郎、小鼓 森澤勇司、大鼓 柿原光博
地謡 浅見真州ほか
後見 北浪昭雄、片山九郎右衛門

狂言 舟ふな
シテ 野村萬、アド 野村拳之介

能 大会
シテ 谷本健吾、ツレ 安藤貴康、ワキ 殿田謙吉、アイ(京童)野村晶人、野村太一郎、(木葉天狗)野村 万蔵、野村虎之介、小笠原匡、河野佑紀
笛八反田智子、小鼓 幸正昭、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺眞佐人
地謡 西村 高夫
後見 鵜澤久、観世銕之丞


比較的若いシテ二人の定期能。
まず、桜川から。囃無しで人買いが手紙をもって登場。桜子の文をもって母の家を訪ね、手紙を渡す。切戸から退場の時に躓いてしまうのはめったにないこと。
手紙を読んだ母、ショックを受け子供を訪ねて旅に出る。

ふっと気づくとワキが一人出てきて後見座に座っている。これは後で僧の一行に狂女見物を勧める役の里人。
子方登場。スタスタと、背の高いワキ、ワキツレを引き連れて出て来る体で何となくほほえましい。福王&村瀬sの三人。福王和幸の声が低いのに対して村瀬の二人は比較的声が高く、合わせるのが大変そう。しかし村瀬s、上手くなったと思う。
里人が、「花見の余興に狂女の舞はどうか」と勧める。

里人に呼び出された狂女。綺麗だけれど、ちょっと年増の雰囲気。展覧会などで面だけで見ると姥以外の面の年齢差は小さいような気がするけれど、舞台で見ると増とか深井ははっきり年増とわかるから不思議。黄色い水衣が美しい。

ここでやっと後見登場。もうちょっと早く出てきてあげれば良いのに。

僧が狂女に出身や身の上を聞く。ここで親子の名乗りを上げてしまっては舞台にならないから、観客は「あれ?」と思っても、僧も桜子も何も気づかないことにしておく。
「桜川に花の散る」というとこの女は狂いますよ、と声をかける里人。シテ―ワキ―地謡の謡のコンビネーションが物凄くきれい。

出だし、地謡が中々調子が出ずに、このままこれをずーっと聞かされるのか、と思ったがどんどん調子を挙げて行って、素晴らしかった。

親子の名乗りをあげてめでたしめでたし。
最後、村瀬堤物凄く足が痛そうで、立ち上がれないかと思った。
綺麗なおとぎ話のような舞台でした。

面は深井 銘 桜女 水野出羽守忠周作


舟ふな、は昔万作&裕基のおじいちゃんと孫のコンビで観たことがあって、何となく童話のような話だ、と思っていましたが、今回のようなもっと年上の若者との組み合わせもよろし。ただ、拳之介は声が大きいだけで聞きとりにくい。萬の発語のほうが明瞭で、さすがと思いました。萬の言葉も謡もしぐさもラブリー。
満足でした。


大会。調べたら過去に喜多流で2012年に野村万作家がこの銕仙会バージョンの前場をやっているのを観ています。観世流のは2011年に西村高夫で観ている。

前場は光るものに化けて世間を騒がせてやろうと思った天狗が右大臣の威光に負けて木から落ちて、鳶に化けて逃げようとするところを、京童に捕まる、というところから。こいつの羽を売って、骨は黒焼きにして膏薬に…、というところに僧が現れて「この扇と数珠をやるから放してやれ」と。

僧が「今日は良いことをした」とお経を読んでいると、なんだかボロっとした感じの山伏がやってくる。今日世話になったものだが、お礼に何がしてほしい?と聞くと、「ははー、こいつは」と思った僧は、霊鷲山での釈迦の説法が見たいと。「では、見せてやるが絶対に信心は起こすなよ…。」と言ってかき消すように消える山伏。なぜか橋掛かりに入ると歩みがゆっくりになる。ここもすーーっといなくなれば良いのに。

さて、下っ端の木の葉天狗も何かに化けようと相談。衣装も立派な体躯もいらない御賓頭盧様に化けることに。
野村万蔵の掛けている面、失礼ながら何となく本人に似ている。

いよいよ釈迦の霊鷲山での説法。一畳台を二つ、それに椅子を乗せ、さらに木の葉天狗たちの準備にも狂言方の後見がつくから、人手が大変。一畳台なんか、観世淳夫はともかく、片山九郎右衛門も運んでいました。

有難いお釈迦様登場。喜多流の高林白牛口二で観たときにはあまりのよろけぶりにハラハラしたけれど、足取りはしっかり。西村高夫のように思わずこちらも拝んでしまうような威厳にはちょっと欠けるかな。何が違うのだろう。
でも、人の良い僧である殿田は思わず拝んでしまう。

と、そこに怒った帝釈天。谷本&安藤は仲良しなのでしょうか。いつも舞台で一緒のような気がする。息もぴったり。安藤は威厳というよりは「まじめ、基本に忠実に」と思っているんだな、という演技。
釈迦から天狗への早変わりは凄く不思議。上から下まですっかり変身。演技ももう少しダイナミックに変わった方が良かったかもしれない。

このシテは割と面や装束に凝るタイプらしい。素敵でした。

満足しました。

面は前シテが 鷹 出目栄満、後シテが釈迦と釈迦下で見市泰男。
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by soymedica | 2015-02-19 12:09 | 能楽 | Comments(0)

第43回のうのう能 頼政 実盛

d0226702_9251293.jpg第43回のうのう能特別公演 老いてなほ花なり
平成27年2月11日(水祝)13時より@国立能楽堂
正面席11000円

解説 中村健史

観世流仕舞 
 観世喜之
敦盛 片山九郎右衛門

宝生流仕舞
 宝生和英能 

頼政 宝生流
シテ 辰巳満次郎、ワキ 宝生欣哉、アイ 山本泰太郎
笛 松田弘之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原弘和
後見 宝生和英、山内崇生
地謡 高橋明ほか

実盛 観世流
シテ 観世喜正、ワキ 森常好、ワキツレ 森常太郎、館田善博、アイ 高沢祐介
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 観世元伯
後見 観世喜之、奥川恒治
地謡 片山九郎右衛門ほか


本日は主人と二人。主人は若いころ1回、10年ほど前に若者を引率して2回ほど能を観ているらしいのだが、「何観たの?」「井筒かなー」「3回とも井筒?」「さぁー???」と言う人。

第一部の解説が面白かった。中村先生、常勤職になったのね。
世阿弥は当時のアイドル美男子だったのに、それに頼ることなく、老人を演じた。なぜそんなことができたかというと、自ら脚本を書くことができたから、挑戦ができたのだ。「老木に花」と言うのは世阿弥の言葉だが、頼政の場合はその花は「歌」であり、実盛の場合は若者と同じように戦闘に挑戦することが花であった、といようなお話でした。

本日は国立の主催公演ではないのに、ちゃんとスクリーンに字幕が出て来ます。

宝生流と観世流のコラボの本日ですが、この二人、夏ごろには連日同内容の公演に挑戦するらしい。


ということで、主人の様子を観察していたら、歴史好きなので、開演前と休み時間に解説を一生懸命読んでいる。「オイ、知ってるか?源氏の烏帽子と平家の烏帽子と折れる側が違うんだぞ!」
…今度烏帽子折れの良い公演があったら誘おう。


せっかくつきあってくれる主人のため、絶対に満足できる舞台をやってくれるこのメンバーの公演を選んだのですから、もちろん、頼政も実盛も大変に満足でした。ただ、若干演目自体が地味かな、と思ったのですが(子方が出るとか、王朝絵巻のような草紙洗い小町とかが良いかな、と)、この辺の歴史や古文が好きなために面白かったらしい。

宝生流は公演の出来不出来に物凄くムラがあるような気がするのですが、本日は人気の辰巳満次郎ですし、地謡も満足のできでした。開演前の受付に満次郎が立っていて「あの人が前半の主役だよ」と言ったら、「カッコいい奴だな」ですと。

実盛も「長い」と不評の曲らしいですが後場なぞ、ジーンとしてしまった。
それにしても辰巳満次郎と観世喜正、何となく芸の質が似ているような気が。


主人は大変に面白かったらしい。「パンフレットの場面解説はわかりやすい。どうして皆あれを取り入れないんだろう?」「字幕は凄く良いよな、聞き取れなかったときにちらっと見ればすぐわかるし」。これはね、普通は国立の主催公演でないと使われないんだよ。「へー、なんでだ?」何ででしょうね。使用料が高いのかな。

ということで、皆に能に親しんでもらおうと言う「のうのう能」企画、効果的だったようです。
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by soymedica | 2015-02-13 09:26 | 能楽 | Comments(0)

野村四郎喜寿記念公演会 清経 安宅

d0226702_17413949.jpg野村四郎 喜寿記念公演会
2015年2月7日(土)13時より@観世能楽堂

清経 恋之音取
シテ 野村昌司、ツレ 坂井音隆、ワキ 福王和幸
笛 一噌隆之、小鼓 曾和正博、大鼓 柿原弘和
後見 観世清河寿、観世恭秀、山階彌右衛門
地謡 角寛次朗ほか

鐘の音
シテ 野村萬斎、アド 竹山悠樹

独吟 隅田川 関根祥六
一調 高砂 観世清河寿、太鼓 金春國和→國直

安宅 勧進帳、酌掛、延年之舞、貝立
シテ 野村四郎 ワキ 宝生閑、子方 武田章志
武田友志、坂井音晴、長山桂三、木月宣行、坂井音雅、角幸二郎、清水義也、坂口貴信、上田公威
アイ 野村万作、高野和憲
笛 一噌庸二、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井忠雄
後見 武田宗和、木月孚行
地謡 浅見真州ほか


私の頭の中では野村四郎って地味でまじめな人柄で、実力派で、後見としても凄く信頼されている人、というイメージ。しかしながら観世能楽堂に着くと、これはこれは物凄く華やかな雰囲気。酒樽が積んでありますが、そのためではなく、集まった人の気持ちでしょうか。入り口では金箔いりの小さな金平糖をくれました(美味しかった)。


まずは清経。未亡人へのお使いとしてはどうかと思う福王和幸演ずる粟津三郎がやってくる。ツレの謡がいつもの調子ではないなー、と思っているうちにさらさらと前場終了。ここは重要な場面ではあるけれど、このくらい控えめな方が恋之音取の小書付きのときには良いな。地謡は控えめではあるけれど、素敵。

未亡人に形見を渡すと粟津は退場。
笛が完全に橋掛かりの方を向く。(後の座を後見が埋めるのが面白い)。綺麗な笛をためらいがちに吹くと幕が半分上がる。夫の幽霊が三の松、二の松と、笛にひかれて少ずつやってくる。笛が止まると後ずさりする演出もあるらしいが、今回は少しずつ少しずつためらいがちに出てくる。

互いに恨みを言いあい、涙する二人。ここからはがぜんツレも調子が出てくる。今まで野村昌司って殆ど意識したこと無いし、地味な人だと思っていたけれど、さすがお父さんに鍛えられただけのことはあって、上手。後から振り返ると今回は四郎の喜寿記念だけでなく、昌司の清経の披きにもかなりな重点のあった催しだった。

平家が瀬戸内の海でどんなに苦労したかを腰かけてじっくり妻に語る清経。そしてついに立ち上がって熱心にかたり、成仏の様子を見せます。
清経ってこんなに面白い曲だったか、と思いました。満足。


鐘の音。萬斎、ちょっとテンポが速いかな。面白かったけれど。よく考えたらおじさんのお祝いに駆けつけたのですね。


独吟と隅田川の一調。関根祥六はまあ普通に良かった。一調は元のパンフレットを確認すると金春國和になっている。で、出てきた若い金春さんは息子さんでしょうか。こういう会で家元と一調って緊張するだろうなー。頑張れ。何となく観世の家元からは「俺が育ててやる」みたいな雰囲気を感じたんですが考えすぎかな。


野村四郎と安宅。ミスマッチだなー、と思っていたのですが、やはりこんなに上品な弁慶?内側からにじみ出るものは隠せないのでは。そして山伏の衣装についているポンポン(名前は何かな)が白くて大きいので福々しい上品な老人。兄の万作と一緒に見ると、四郎の方がハンサムかな。万作は自著で「自分はどうも美男子ではないらしい」と残念そうに書いていたが。

前半珍しく絶句していて、それだけに大曲だし、緊張する会なんだと思いました。後半の舞は素晴らしい。さすがに飛び安座なんかはないけれど、水を汲む動作など綺麗。本当に満喫しました。
なるほど、これで安宅は舞い納め、というくらい体力が要りそうな曲ですね。そして自らきっぱりと舞い納めを決定するというのが、いかにも四郎らしい。

色々堪能させてくれて、山伏たちはとっとと逃げる。強力が慌ててついていくのが面白かった。

堪能した会でした。
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by soymedica | 2015-02-12 17:46 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂二月企画公演冬スペシャル 謡講 弱法師

d0226702_17432954.jpg国立能楽堂二月公演 企画公演国立能楽堂冬スペシャル
蝋燭の明かりによる

2月4日(水)18時半より 
正面席6300円

おはなし 庶民のたのしみ 謡講
井上裕久

謡講形式の
替謡(巴より)大晦日おおつごもり
独吟(文化文政期の旋律)龍田クセ
素謡 蝉丸
井上裕久、吉波壽晃、浦部幸裕

能 宝生流 弱法師
シテ 大坪喜美雄 ワキ 飯冨雅介、アイ 善竹隆平
笛 赤井啓三、小鼓 林吉兵衛、大鼓 佃良勝
後見 宝生和英、朝倉俊樹
地謡 高橋章ほか


去年に引き続き、お爺ちゃんの作った障子の屏風をもって京都からやってきました井上裕久。お話好きの人らしく、「一分一秒たりとも超過するなと厳しく言われておりますので」と、謡講の説明を始めます。(最後の締めのところでも、弟子二人を紹介するのを忘れてしゃべり続けていました。)

「終わったときに拍手をせず良かったら小さな声で『いよっ』と声をかけるのが決まりでございます。では、皆さま練習を」ということで練習しました。皆ちゃーんと本番でも声がかけられました。

井上のいでたちは裃ではなくて、袴と肩衣、と言うのだそうで裃とは違って上下の色が違っています。昔は肩衣(要するに裃の上)無しの紋付だけで人前に出るのは恥ずかしいことだったので必ず肩衣をつけた、ということでその習慣を復活させたのだそうです。

くすくす笑えるの替え歌、大晦日。元歌の巴もうたってくれて満足。龍田は今の強吟も文化文政の節(弱吟に似る)も井上が謡ったのですが、面白かった。まるで違う曲に聞こえる。強吟というのは新しいものなのだそうですね。関西では井上の子供のころはまだお爺さんたちの節回しには昔のものが残っていたそうです。
そして蝉丸の素謡。

さすが謡講を復活させた一門だけあって、皆さん大変お上手でした。満足。



さて、続いて宝生流の弱法師。大小が床几に腰を据える前にでてくるせっかちなワキ。このワキは東京在住ではないらしく初めて観るのですが、前半ちょっと残念な感じ。お疲れなのか、まあ、こなしていればいいや、という謡。
さらにさらに、シテが後見が出てくる前に絶句しちゃって、出だしから難航。揚幕から後見がつけていましたが。
面はどなたの作かわかりませんが、ろうそくの明かりで見るといかにも苦労した若い乞食、という感じでよろしい。見せ場の一つの石の鳥居のところは綺麗でした。

ともあれ、お金持ちの高安通俊、捨てた息子が忘れられず天王寺で施行しているのだが、乞食法師の息子がやってくる。ここで、梅の香を楽しんだりする乞食ですが、どうもかなり教養のある乞食。天王寺の縁起も謡いこまれたりして、ご当地ソングの趣き有。
有名な日思観、思わず心にある風景が目に浮かんできて弱法師は正先に出て「見るぞとよ!」と。

実は私は弱法師ではアイが弱法師につきあたる演技が好きなのですが、今回はそれがなくてアイはずーと橋掛かりに座ったきり。見せ場がなくてかわいそう。足がしびれたのか、出て行きたいのか、チョコッと伸び上がるのが面白かった。最後に弱法師を送って行きますが、そこまでは何にもしない。すっきりした演出と言えば演出ですが。

出だし心配しましたが、高安のお父さん、無事息子を確認して家に連れて帰ってめでたしめでたし。
ところで、大坪喜美雄、1947年生まれとありますからそんなにお年でもないとおもうのですが、立つときに必ず後見が後ろに出てくる。昨年はそんなことは無かったと思うのですが、ご病気か怪我でもされたのでしょうか。

全体に地味な演出の舞台でしたが、蝋燭能にはこういう感じがあっているのかも。
割合満足できた晩でした。
しかし、地謡、しっかりしてほしい。昔は謡宝生と言われたそうではないですか。
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by soymedica | 2015-02-08 17:47 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂狂言の会 鴈礫 千鳥 賽の目

d0226702_134364.jpg国立能楽堂狂言の会
1月29日(木)18時30分より

鴈礫 大蔵流
シテ(大名)大蔵彌太郎、アド(使いの者)茂山良暢、(仲裁人)善竹忠一郎

千鳥 大蔵流
シテ(太郎冠者)山本則俊、アド(主)若松隆、(酒屋)山本東次郎

賽の目 和泉流
シテ(聟)野村萬斎、アド(舅)石田幸雄、小アド(太郎冠者)月崎晴夫、(聟)深田博治、高野和憲、竹山悠樹



狂言の会、大蔵流宗家、大蔵流山本家、和泉流野村万作家の勢揃い。こうやって並べると、大変失礼ではあるが、大蔵流宗家の力がちょっと。特に彌太郎の力不足が目立つ。

鴈礫では例によっておバカな大名が弓で鴈を射ようと出かけていくが、もたもたしているうちに、通りかかった使いの者が礫で鴈を打ち殺してしまう、「本当は自分の鴈だ」と取り戻そうと奮闘する話。長袴のさばき方、弓の扱いなどが気になるんですよね。

千鳥。つけの溜まった貧乏な主人に「酒買ってきてくれ」と頼まれた太郎冠者。もう、つけでは売らないよ、という酒屋との駆け引き。やはり東次郎は上手だし、周りを固める一族も粒ぞろい。この演目を大蔵宗家で観たら、寝てしまうでしょう。


賽の目は初めての演目。地獄で閻魔さまと賭け事をする話かと思ったら、そうではなく、婿取りの話でした。算術の上手いものに財産と「美人と評判」の娘をやろう、という舅。500組(1000個)の賽の目の数は?という問題を出します(一緒に見所で計算してボケていないことを確認しました)。
深田君、足の指まで使っての奮闘むなしく敗退。高野、烏帽子をかぶっていると若いが敗退、竹山君も敗退。
ここにいかにも小賢しい萬斎登場。賢さに喜んだ舅はさっさと隠居所へ。娘の顔を見た萬斎は「失敗した~」と思うのですが、逃げるすきもあらばこそ、娘に背負われて退場するのでした。

ところで、石田幸雄って漫画に描きやすそうな顔ですね。
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by soymedica | 2015-02-04 23:32 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会青山能一月 鞍馬参 養老

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銕仙会青山能1月
1月28日(水)18時半より@銕仙会能楽研修所

狂言 鞍馬参
シテ(太郎冠者)山本則秀、アド(主)山本則重

能 養老
シテ 観世淳夫、ツレ 青木健一、ワキ 大日方寛、ワキツレ 則久英志、館田善博、アイ 山本凛太郎
笛 栗林祐輔、小鼓 幸正昭、大鼓 亀井洋佑、太鼓 小寺眞佐人
後見 清水寛二、安藤貴康
地謡 観世銕之丞ほか計6人


狂言の鞍馬参り。ケチで貧乏な主人と一緒に鞍馬参りした太郎冠者。太郎冠者だけが多聞天の夢を見て福を授けられる。それに嫉妬した主人が「それは本来自分のもの」とのお告げがあったと、取り上げようとする。結局太郎冠者は主人に福を渡してしまうのだけれど、チョットだけ抵抗する、というお話。地味な話だけれど、面白い。
それにしても山本家にしても茂山家にしても皆同じような名前でややこしやー。


能の養老は銕仙会の次代を担う淳夫のために、若手で固めました、というラインナップ。大鼓の掛け声がちとうるさい。そして大鼓と小鼓の掛け声があまりマッチしないような気がする。

ともかく、やけに若い勅使の一行登場。山道だから若者を派遣したのだろうか。養老の滝の話を聞き及んで美濃の国、本巣までやってきた、と謡う。おりしも通りがかった親子。シテ・ツレ二人とも、物凄く頑張っている様子がこちらにまで伝わってくる。
勅使が「あなたが有名な養老の親子か?」と聞くと、親子は養老の滝の効能を語り、場所を勅使に教えます。

今、これを書きながら内容を思い出すために詞章を見ているのだけれど、観世淳夫の声が自然に思い出されてくる。かなり特徴のある発声ですからね。ちょっと聞きにくいけれどあれはあれで面白いかも。

皆で滝のありがたさを讃え、水を飲んでいると天から音楽が聞こえ、花が降ってくる。(ということはやはり水は酒で、皆さん酔っぱらったのね。)
親子のものが帰ったあとで、地元の人が登場。滝のいわれを語って水を飲めば、アーラふしぎ、長い髭が消えて若い男となりました。ちょっと固いけれど、凛太郎、なかなか良かったです。

そして神様登場。おめでたい言葉を述べて、君主を言祝ぎます。元気よく謡い、元気よく舞う。まだ「よくできました」感がぬぐえないけれど、こうやって次のトップは若いうちから場数を踏ませてもらうのだな。確かにだんだんうまくなってきたと思います。がんばれー。


最後の解説はお父さんの銕之丞。この人は訥弁であります。曲目解説というより、父として息子をどう育てるか、みたいな話でした(笑)。最初から悲劇などの動きのおとなしいものをやると説明的な演技になってしまうので、若いうちはイキイキとした動きのワキ能をしっかりさせる。私もそうやって育てられました、と。
これ、シテが銕之丞のまだ若い息子だ、ということを知っているから興味深く聞けたけれど、ふっと思いついて切符を買ったあまりそういうことに詳しくない人が聞いたら「???」の話だったのではないだろうか。


面は前シテが小牛尉、後シテが邯鄲男でともに中村直彦作とのことです。後シテの面、気に入りました。
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by soymedica | 2015-02-01 16:31 | 能楽 | Comments(0)