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鬼の研究

d0226702_17474093.jpg鬼の研究 馬場あき子 ちくま文庫
2008年7月5日 第16刷発行
300ページ 680円+税

最後に「1971年6月30日三一書房より刊行された」とあるので、ずいぶん息長く読み継がれている本です。「鬼」というテーマが民俗学、歴史、文学のジャンルを越えて皆がひきつけられるものだからでしょう。
鬼が日本の文献上最初に出てくるのはどのへんか、などの歴史的な事柄から始まり、恐れられそして存在を信じられた鬼が時代を経るにつれて次第に矮小化、滑稽な存在になっていく様子、時代ごとに人々は何を「鬼」としたか(被征服者、アウトカースト、あるいは年寄り、女…)、そして最後には能に出てくる般若などの種々の「鬼」の概念の作られ方を書いています。

例の引用が多く、筆者の論旨の運びを見失いそうになるのですが、それもまた楽しい。

手元においておきたい一冊と言って良いと思います。
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by soymedica | 2014-09-28 17:48 | 本・CD・その他 | Comments(0)

国立能楽堂九月定例公演 薩摩守 是我意

d0226702_2354299.jpg国立能楽堂九月定例公演
9月19日(金)18時半より
正面席4900円

薩摩守 大蔵流
シテ 善竹富太郎、アド(茶屋)善竹忠重、(船頭)善竹十郎

是我意 白頭 金剛流
シテ 金剛永謹、ツレ 種田道一、ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎、アイ 大蔵教義
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 白坂保行、太鼓 観世元伯
後見 廣田幸稔、工藤寛
地謡 宇高通成ほか


まずは薩摩守から。和泉流でしか見たことはないのだけれど、まあ、同じ。狂言では一つ一つの動作がきちっと終了するまで次の動作に移ることがあまりない様な気がするのだけれど、このお家の人たちは何かしながら足が次に向かっていたり、体の向きを変えたりするので、ちょっと違和感がありました。
茶屋の長袴のさばきが今一つの感じ。


是我意って面白い演目ですよね。今回も前シテは直面。金剛永謹は凄く背が高くて強そうなので、悪い天狗の役がぴったり。そしていかにも日本の天狗という感じの種田。良い組み合わせです。観世銕之丞&喜正の時のコミカルな感じはないけれど、これはこれで好きです。

シテ、ツレともに真面目な感じでしたが、地謡も凄くまじめな感じ。これが金剛の持ち味でしょうか。

日本の危機を伝えようと手紙を持った能力登場。前の時には箒のようなものに手紙をはさんでいたけれど、今回は棒の先にはさんでいます。嵐におびえて橋掛かりを退場。

有難いお坊さんの乗る車がワキ座に出されます。紫の天蓋、紺と白のストライプの車輪。常好僧正が車にのり、両脇に従僧が。最初の謡のあとは、いつもの配置になります。

天狗登場。今回は悪尉癋見という面に白頭、白地に金模様という素晴らしい姿。舞金剛と言われていると聞いたので、もっとすごい動きがあるかと思いましたが、意外に地味。車の轅をとるくらいですかね。ワキもあまり動きませんでした。
と、思っているとの天狗が退場間際にワキにはっしと数珠を投げつけてかっこよかったです。とても負けたとは思えない。
そして幕の向こうでも袖を勢いよく巻き付けて威嚇するのでした。
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by soymedica | 2014-09-22 23:08 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演九月 采女 月見座頭 鵜飼

d0226702_2235252.jpg銕仙会九月定期公演
9月12日(金)18時より@宝生能楽堂
正面席 6000円

采女 美奈保之伝
シテ 観世清河寿、ワキ 宝生閑、ワキツレ 宝生欣哉、大日方寛
アイ 山本則重
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 成田達志、大鼓 柿原弘和
後見 片山九郎右衛門、谷本健吾
地謡 観世銕之丞ほか

月見座頭
シテ 山本東次郎、アド 山本則俊

鵜飼 空之働(むなのはたらき)
シテ 野村四郎、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 典久英志、アイ 山本凛太郎
笛 松田弘之、小鼓 田邊恭資、大鼓 國川純、太鼓 三島元太郎
後見 浅井文義、北浪昭雄
地謡 山本順之ほか



久々の宝生能楽堂。椅子が新しくなっていました。ちょっと座面が深くて奥まで腰かけると足がぎりぎり。隣のお婆さんは完全に足がぶらぶらしていました。座席番号が見やすくなって大変に結構。

美奈保之伝の小書のつかない采女は見たことがないのだが、全部やったらかなり長々したものになるでしょうね。

まず、ワキ方入場。ワキツレが宝生欣哉と大日方寛、やけに豪華なワキツレなのは閑を補佐すると言う意味があるのか、と思っていたら確かに宝生閑、相当にはらはらさせる展開でした。一度は絶句してしまい欣哉がつけていた。ちなみにワキ方の絶句は復帰直後と今回の宝生閑の二度しか見たことが無い。
この先の色々な会の予定を見ると「ワキ 宝生閑」と既に印刷されているものが少ないながら幾つかあるけれど、本当にやるのだろうか。先日の「花もよ」のインタビューでも、インタビューアーの腕のためかもしれないけれど、「幻視の座」のときよりもかなり衰えたな、という感じが。

観世清河寿のシテは前回よりも数段素晴らしい。本人も前回は不満足な出来だったのだろうな、と今日と比較して感じられる。そして笛との相性が抜群。中入りのときのしっとりした感じが素晴らしかった。
後シテはオレンジの袴に深緑に金の模様の入った長絹。もちろん采女の幽霊なんだけれど、ワキ座に座っている宝生閑の方がどちらかというと幽霊じみて見えるのが一寸。
そして、あたかも面が話をしているように口が動いて見える。

後場の地謡の盛り上がりがよかった。最後、三の松で膝をついて水に入るしぐさをするのだけれど、ここでのシテとの息の合い方が素晴らしかったです。

面は前シテが作者不詳のまさかり、後シテが小夜姫(龍右衛門)。


今回中正面には面白い服装をした人が多いような。太いオレンジのストライプの入ったパンツの男性とか、白いレースで飾られたパンツスーツのおばさまは物凄く盛り上げた髪型(後ろの席の人に迷惑では)。


定期能で山本東次郎シテの月見座頭がみられるなんてラッキー。東次郎家の演技はてらったところが無く、しみじみと面白い。前は国立能楽堂で見たと思うのだけれど、あの白っぽい背景よりはこちらの能楽堂の方が良い感じ。
この人、若いころにはスケートに凝ったと言う話だけれど、足腰の切れもさることながら、手の演技の繊細さが素晴らしい。


この人なしでは今の観世流はあり得ない、野村四郎、の鵜飼。太鼓が物凄く大切にされているけれど、御いくつなのだろう。この曲も囃子がとても良かった。田邉恭資が飛びぬけて若くて頑張っている様子に笑う。(できはとても良かった)。

旅の僧の二人連れがやってきて、土地の若いものに宿を断られる。この若い者、あそこに泊まれ、と川辺の御堂を勧めたくせに「幽霊が出るぞ」と脅かす。僧は「法力があるから大丈夫」とこれまたそっけない返事。ワキツレの則久英志、若くて張りのある声。

あやしい爺さん登場。則久の発声と比べると、年をとるとはこういうことか、と思わせる声ではありますが、はっきりと客席まで届くセリフ。僧の求めに応じで鵜飼の様子を見せるのですが、「あれ、鵜之段ってこんなに短かったけ」と思わせ、もっと見ていたいと思わせる素晴らしい出来。
橋掛かりでぽとんと扇と松明を落としていきます。

長い半幕のあと、地獄の鬼登場。大音声でわめく鬼ではありませんが、これも飽きさせない一場。ずいぶん撫肩に着つけてあるけれど(きっと実際に撫肩なんでしょう)もう少し強そうに着つけても面白いのでは。
黒髪に一筋後ろに白い毛が混じるのがおしゃれ。

久しぶりに野村四郎のシテを見ましたが、大満足。急いで見ないと今の旬が去ってしまう。

面は前シテが三光尉(古元休)、後が小癋見(赤鶴)。
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by soymedica | 2014-09-17 22:37 | 能楽 | Comments(0)

観世会定期能九月 龍田 雲林院

d0226702_12342555.jpg観世会定期能九月 
9月7日(日)11時より
中正面席

龍田 移神楽
シテ 観世清河寿、ワキ 宝生欣哉、アイ 大倉千太郎
笛 一噌庸二、小鼓 大倉源次郎、大鼓 國川純、太鼓 金春國和
後見 武田宗和、上田公威
地謡 野村四郎ほか

雲林院
シテ 梅若万三郎、ワキ 工藤和哉、アイ 吉田信海
笛 杉市和、小鼓 幸清次郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 小寺佐七
後見 関根祥六、武田尚浩
地謡 坂井音重

他に狂言の鳴子遣子、能の葵上がありましたが、拝見しておりません。

本当なら残暑厳しいはずの今頃の東京。上着が必要なくらいの気温の雨の日でした。来年の番組が入口で配られ、来年秋からは梅若能学院とのこと。
「能 観たまんま」の筆者の方をお見かけしてお元気そうだな、と。


龍田、久しぶりに観世清河寿のシテを観るような気がして、期待が高まる。まず、大小前に一畳台が運び込まれ、それに小宮を乗せるのだが、一畳台の縁が波模様になっていてきれい。六十余州に経を収めて歩いている僧がやってくる。さて、龍田川をわたって神社に行こうか、というと向こうの幕の奥の奥の方から「渡るな」という声がかかります。この「のうー」の声だけで、見所の集中度を高めるのはさすが。

前シテの巫女は美しく優しく、でもきりっと神社のいわれなどを教えてくれます。
後シテは橋掛かりまでつかってダイナミック。大きな飾り物を頭に載せているのに綺麗に袖を被きます。

今回かなり後ろの席で観ていたのですが、それでも最後まで集中度切れずに見られたのは、やっぱり観世清河寿&宝生欣哉だからか。
さらに、地謡が綺麗でした。野村四郎、さすが。

「花もよ」最新刊の宝生閑のインタビューで「最近は地謡が座りなおす、ああいうことはよくない」と読んだばかりなので、地謡が扇を取るたびに大きく足を組みかえるのが気になりました(でも、足、痛いよね)。さすがに後列の人たちはあまりしないし、野村四郎は殆ど動かなかった。

…最後、森常太郎だと思うワキツレ、立つのがすごく辛そうだった。


雲林院は初めての演目。伊勢物語の愛読者の僧が都にやってくる。雲林院に着いて美しく咲いている花を手折ろうとすると老人がやってきて咎める。花を折ることの是非の問答をする。ここが、残念ながら緊迫感を欠いてしまった。そもそもワキの工藤のコトバがあんまり良く無いし、万三郎も乗り切れない。
梅若万三郎、いつも衣装の選択のセンスが良い。

老人は「実は私は昔男…」と言って消えてしまう。
と、アイが出てきてそれは業平ではないかと。この、アイ語りがずいぶん長いような。それと遠目だったのですが、このアイ、ハンサムに見えたけれど。今度近くの席でじっくり拝見したいものです。

後半は業平が出てきて二条の后とのことなど語ります。ここのシテはさすがの存在感。そして序の舞へ。この辺から私はだんだん眠くなり、目が覚めたら舞は終わっていたのでした。序の舞の巧拙がわかるくらいになりたいものです。

最後、ワキの工藤、立つときにワキツレが後ろから助けていました。おいくつなんだろう。
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by soymedica | 2014-09-09 12:35 | 能楽 | Comments(0)

白翔会公演 養老 空腕 恋重荷

d0226702_106499.jpg白翔会公演 水・執念
2014年9月6日(土)13時より@国立能楽堂
正面席12000円

連吟 求塚
連吟 砧

養老 水波之伝
シテ 坂井音雅、ツレ(楊柳観音)坂井音隆、(樵翁の子)坂井音晴
ワキ 大日方寛
笛 杉信太朗、小鼓 曽和正博、大鼓 柿原崇志、太鼓 大川典良
後見 武田宗和、藤波重孝
地謡 浅見真州ほか

狂言 空腕
山本泰太郎、山本凛太郎

仕舞 熊坂 観世銕之丞

恋重荷 彩色
シテ 坂井音重、ツレ 坂井音晴、ワキ 福王茂十郎、アイ 山本則孝
笛 一噌庸二、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 小寺佐七
後見 観世恭秀、坂井音隆
地謡 観世銕之丞ほか


あんまり宣伝した様子もないのに(私が気づかなかっただけかもしれませんが)ほぼ満席。お稽古のお弟子さんが多いのではないかな。森英恵?と思われる方も。
いつもここは豪華なパンフレットくださる。簡単な解説がついているのだが、坂井家の誰か、あるいはお弟子さんが書かれたのでしょうか。名前が入っていないのが残念。詞章が丹念に書かれているので、会場にページをめくる音が響き渡る(私は気にならないけれど)。謡本のあの紙質というのはそういう点で考え抜かれているのですね、音がしない。


養老は大変におめでたい能。敬老の日が近い9月の演目としてふさわしい。親孝行な樵の息子が素晴らしい泉を見つけて両親に飲ませている。そこに勅使がやってきたので水を献上。すると勅使にこたえて観音様と山神が舞を舞う。
前回見たときには水を飲んで若返るアイ狂言が入っていたのですが、(これがなかなか面白い)今回は無しで残念。

まず、勅使が二人の供を従えてやってくる。大日方は学生能から入った人らしいけれども、物凄く上手い。ワキツレは誰だかよくわからなかったけれど、座っているときに妙に体がゆれる。ビシっと座るのは難しいのだな、とわかる。

孝行息子が老父を連れて登場。老父の面のかけ方がちょっと上すぎないかな、と気になる。
何となく前場が冗長。

後の舞は楊柳観音も山神もそれぞれ綺麗でした。


狂言の空腕。主人に夜道を鯉を買いに行って来いと言われた太郎冠者。こわごわ行くので、いもしない強盗や蛇が見えてしまう。大勢の強盗を見たと思って主人の太刀を差し出して命乞い。後ろからついてきてそれを見て腹を立てた主人が家で待ち構えていると、太郎冠者、そうとは知らず自分の武勇伝を…という話。
太郎冠者は難しい役柄だと思うのですが、面白かった。そして主人役の凛太郎クンが好青年に育ったのにびっくり。


恋の重荷。まず女御がしずしずと橋掛かりをやってくるのだが、これは準備のためで「出」じゃないのだから、もう少しスピーディーにでてきてほしいな。
家人が老人に「お前、女御に身分しらずの恋をしているんだって」と。家人が福王パパなので、物凄く重々しくて立派。そして卑しい老人がやけに神々しいのが気になる。

「重荷を持って庭を巡ったらお姫様のお姿を拝めるぞ」と言われ、張り切る老人。後見が肩上げをするのだけれど、折込んでいるだけのように見える(老眼鏡なしで後見の観世恭秀がここをどう乗り切るのか興味津々だったのだけれど)。あれはマジックテープでもついているのだろうか???

結局荷を持ち上げられなくて絶望した老人は死んでしまう。
哀れに思った女御が庭に出て様子を見ると、老人の恨みで立ち上がれない。今回はごく普通に座っていたけれど、もっと前屈みになる演出もあり、色々だな、と思いました。
そして恨み骨髄の老人登場。面が何となくディズニーっぽい感じ。かなり太い枷杖を持っている。最後に捨てて入るのだが、その時の音の感じだと、木に布を巻いてあるもののよう(シリコンかもしれないけれど、量産できないものにそんなものつかわないよね、きっと)。

何となく全体に上品でしたがメリハリを欠いた舞台でした。本当は前場の最後のところなんぞは地謡がもっと緊迫感もって盛り上がってほしかったのだけれど。


なお、正面席ど真ん中でどう考えてもSS席なのだけれど、頂いたチケットには10000円(S席の値段)と書いてあった。前回もそうだったけれど、一般販売との二重価格になっているらしい。そういう複雑な細工はやめたほうが良いと思う。
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by soymedica | 2014-09-07 10:06 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂夏スペシャル狂言と落語 宗論

d0226702_1219016.jpg国立能楽堂八月公演 国立能楽堂夏スペシャル
狂言と落語・講談 

8月29日(金)18時30分より
正面席5100円


講談 扇の的 神田松鯉
落語 宗論 柳亭市馬
素囃子 楽
笛 栗林祐輔、小鼓 鳥山直哉、大鼓 佃良太郎
狂言 宗論
シテ(浄土僧)山本東次郎、アド(法華僧)茂山七五三、(亭主)山本則俊


久しぶりの国立能楽堂。
講談の扇の的は「那須与一語」の講談版なのだそうだが、遅刻していったので聞けず。

落語の「宗論」はもともとは狂言の宗論と同じように仏教の宗派の対立を書いたものであったのが、息子の宗派をキリスト教に書き直したものだとか。非常に短い噺なので、枕が長い。初めて聞く噺なのは短すぎて扱いが難しいからあまり取り上げられないからなのかもしれない。
しかし、今これを新作としてやったら少数派キリスト教を扱ったものでもかなり物議をかもしそう。ましてや仏教内部の対立を面白おかしく語ったりしたら、放送禁止になるのではないだろうか。昔のほうがおおらかだったのだろうな。


囃子が出てきて楽の演奏。若々しくて一生懸命。そのまま宗論へ。一応シテは浄土僧ということになっているが、双方とも同じくらいの重さの役だと思われ、どちらの役を振り当てるかは役者のイメージがかぶってくるのでそこも面白いかもしれない。
同じ大蔵流とは聞かされないとわからないくらい持ち味の違う山本家と茂山家。ひょうひょうとした東次郎のいい加減な浄土僧、直情型だけれどもやっぱり教義のわかっていない七五三の法華僧。
これは面白い演目で、もっと上演されても良い様な気がするのですが、演ずるのが難しいのかもしれませんね。

楽しい公演でした。
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by soymedica | 2014-09-01 12:20 | 能楽 | Comments(0)