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銕仙会青山能一月 二千石 安達原

d0226702_2322199.jpg銕仙会青山能 1月
1月22日(水)18時半より@銕仙会能楽研修所
4000円

仕舞
道明寺
 観世銕之丞、
羽衣キリ 谷本健吾

二千石(じせんせき)
シテ(主)山本則孝、アド(太郎冠者)山本泰太郎

安達原
シテ 安藤貴康、ワキ 野口能弘、ワキツレ 野口琢弘、アイ 山本凛太郎
笛 槻宅聡、小鼓 田邉恭資、大鼓 安福光雄、太鼓 林雄一郎
後見 馬野正基、西村高夫
地謡 清水寛二ほか(計6人)


この前ここの能楽堂に来たときにも思ったけれど、老松の節の部分が妙に浮いて見える。おそらく周りの板が沈んだ色調になったことや幹の絵具が変色してきたことによるのだろうけれど、画家は直したいのではないだろうか(存命していればの話ですが)。


振り返ってみると二千石は何回も見ていますが、そのたびに受ける印象が違う曲です。野村万作&石田幸雄や山本則孝&山本東次郎なんかが印象に残っています。今回のも結構良かったけれど、後半の主の仕草を見て「先代にそっくり」と泣くところが弱かったかな。
それにしても泰太郎は物凄く汗をかいていて、終わってから後見の遠藤博義が床を拭きに戻ってきていた。熱でもあったのだろうか。


見どころ多い人気曲の安達原。大小前に芝屋が出されます。旅の山伏がやってきて長い長い旅をしてきたのにここ安達原についたら宿がなさそう、と。ワキのお二人、いつもワキツレだったので印象に残っていませんでしたが、兄弟でしょうか、声の質がとてもよく似ているし、謡がとてもきれい。
と、小屋の引き回しが下ろされて、中に寂しげな中年女性。銀色を基調とした模様と紺色の大きな縞の着物に、襟は水色、白地に銀を重ねている。これが凄く気に入りました。銕仙会はいつも衣装の趣味が良い。

それにしてもこの人、うたい出すと私はいつもとても驚きます。発音が独特。外人が日本語を話しているような発声。普段お話をしているときはどうなのだろう。

そして山伏が糸繰りを見せてくれと頼むと、「こんな卑しい仕事を人様にお見せするとは」と嘆きながらも糸車の前に座って、寂しい歌を歌いながら糸紡ぎをします。ここで私の後ろに座っている若い女性が「手が綺麗」と呟いていました。シテは確かに手のきれいな人で、糸繰りの見せ方が上手なのでなおさら。でも、女性が男性の手をほめるって、性的な意味があるのですってよ。あまり人前でおっしゃらない方が。

この宿を貸している女、田舎のオバサンにしては教養のある人で、源氏物語の話なんぞを引きながら糸繰りを見せます。小学館の謡曲の解説には巷の労働歌だったのでは、とありますが。

そして、薪をとりに山へ。「閨を覗かないでくれ」と、念押しをします。出て行くときに能力の前で少し佇む様子が、「これからこいつが閨を覗くだろうな」という先を予測させます。(小学館の解説には「一の松で思いをめぐらすのは鬼女としての期待であるのか、鬼であることが現れる不安であるのか」とあります。今回の演出ではまさに能力の前で足を止めるようになっていました。)

主人が戻ってくるのが遅いためか、なんと客人たちは彼女が戻ってくる前に、さあ寝ようと。ところが能力がどうしても閨を覗きたくなっちゃう。そのたびに目を覚ました二人が止めるのですが、もうそうなると能力は覗き見することしか考えられなくなってくる。この辺のやり取りがなかなかさまになっていて良かったです。
覗いてびっくり、腐乱死体が山のようにつみあがっている上に人魂も。(よく考えると食べてしまうなら、そんなに腐乱するほどの死体が残るものだろうか?頭蓋骨くらいしか残っていないのでは。骨髄も美味しいよ…。)

驚いた一行。能力は別の宿を探すために一足先に逃げ出す。そこへ鬼が帰ってくる。薪を前場の唐織と一緒に背負って打杖を持っています。唐織には後見が柴を片づけるまで気づきませんでしたが。

そしていよいよ鬼vs. 祐慶。どちらも若いので動きが良い。飛び安座と言うのでしょうか、飛び上がった後そのまま座ったり。
それにしても鬼の面って結構表情が出るものですね。動きも表現も楽しめました。
謡、囃子にも満足した晩でした。



面は前シテが深井(臥牛氏郷)、後シテが般若(中村直彦)。
参考は
日本古典文学全集59謡曲集2
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by soymedica | 2014-01-23 23:24 | 能楽 | Comments(0)

茂山狂言会三代競演 柿山伏 木六駄 右近左近

d0226702_21235014.jpg茂山狂言会三代競演
2014年1月18日(土)13時より@セルリアンタワー能楽堂
中正面席6000円

解説 茂山茂

柿山伏
山伏 茂山竜正、畑主 茂山虎真

木六駄
太郎冠者 茂山千五郎→茂山七五三に変更、主人 茂山童司、茶屋 茂山七五三→茂山正邦に変更、伯父 松本薫

右近左近
右近 茂山正邦、妻 茂山茂


入っていくと「いらっしゃいませ」と茂山鳳仁君の可愛い声。
まず、茂山茂の解説。千五郎骨折のため急きょ配役変更。なんとどちらかの足の腓骨のくるぶし近くと反対の足の脛骨の膝付近を骨折したらしい。階段から落ちたとか。落ちた原因(ふらつくような)が無いのであればよいのですが。
曲のあらすじや見どころなどの解説のあと、「入口で物品販売をしておりますので買ってね、サインしますよ」と売り込むところが茂山家だなー。野村万作家は売っているけれど、売りこまない。東次郎(お家の会には行ったことないけれど)は販売すらしないのではないかな。
ということで本を買って茂にサインしてもらった後(七五三のほうが良かったかな)、ついでに鳳仁くんにサインしてもらったのが写真。鳳雛のサインであります。良く書けました。


あまりに有名な柿山伏ですが、見るのは初めて。平成16年生まれの双子の男の子の舞台。学芸会と言ってしまえばそれまでですが、こうやって家の子は芸を磨いていくのでしょうね。二人とも楽しそうです。新年にふさわしい爽やかな舞台でした。


期待の木六駄。千五郎、七五三の組み合わせで観たくはありましたが、この配役でも大満足でした。寒い中12頭もの牛を追っていく大変さ、峠の茶屋に着いたとき楽しみにしていた酒が無いという落胆。酔っぱらっておどる鶉舞。
七五三の演技を受ける峠の茶屋の主人、正邦が主張せず、そして上手でなかなか良かったのですが、元の配役だとどんな感じになったのでしょうか。
楽しかったー。


右近左近は、右近の妻と舞台には登場しない左近とが浮気をしていて、しかも右近をばかにしている。気の弱い右近はそれを知りつつ妻の力がなくてはどうしようもないというシリアスな設定。最後の右近の幕入が胸を突くようで良かったのですが、お正月にやる曲かいな!?と思っていたら、最後は後見の山下守之が靭猿の付祝言でめでたく〆たのでした。


木六駄の山本家、茂山家、和泉流との違いなどは
狂言三人三様 野村万作の巻 岩波書店
に詳しいです。
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by soymedica | 2014-01-20 21:25 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂一月定例公演 鴈礫 井筒

d0226702_1062768.jpg国立能楽堂定例公演
2014年1月18日(金)18時30分より
正面席4800円

狂言 大蔵流 鴈礫
シテ(大名)山本泰太郎、アド(使いの者)山本則秀、(仲裁人)山本則俊

能 観世流 井筒
シテ 梅若玄祥、ワキ 宝生閑、アイ 山本東次郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 山本哲也
後見 観世喜正、小田切康陽
地謡 片山幽雪ほか



前に一度見て面白かった記憶のある鴈礫(鴈と雁、字が二種類あるのに初めて気づいた)。大蔵流も烏帽子を鴈に見立てていますね。
気分よく散歩に来た大名。かっこよく弓矢を持っていますが、これが日本人にありがちな「恰好だけ立派」というやつ。後から来た誰かの家来に自分の狙っていた鴈を礫で先に仕留められ…。
大名の間抜けぶりと使いの者のすばしっこさの対照が面白い。


次は井筒なんですが

「…なお、本曲は、現在は能を代表する作品という評価が定着しているが、それは戦後のことで、明治から昭和初期には上演頻度も低く、特に評価が高かった形跡もない。本曲が現在のように評価を与えられるようになったのは、観世寿夫の存在によるところが大きいという見方があるが、そう考えてよいように思う。」能を読む② 世阿弥 神と修羅と恋 角川学芸出版

いくらシテが梅若玄祥でも絶対退屈してしまうだろうな、という井筒。よくよく見ると地謡が凄い。後列に味方玄、片山九郎右衛門、片山幽雪だって。

さて、最高の井筒を演じようと思ったらワキはこの人しかいない、とシテ方は皆思っているらしい宝生閑登場。昨年の激ヤセと比べるとちょっと太ったかな。良いことです。これが有名な在原寺か、と名所に立ち寄ります。
と、向こうから美女の登場。

玄祥の運びはまるで足底に吸盤がついているようで、特徴的。そして、女の役というのは太った人が良いのではないだろうか。なかなか良いバランスです。
それにしても後見が2人とも大きいのはわざとかな。囃子も大きな人たちだし。

前半、クリのあたりから蔓桶にかけて演じますが、これもなかなか良い感じ。それにしても、この人面のかけ方が上手なのか、使い方が上手いのか、それとも面が良いのか、まるで本当の顔のように感じられるのが不思議。地顔はあんなに大きいのにね。

東次郎のアイも強すぎず、弱すぎず、これぞ「井筒のアイ語り」というもの。

そして、後半の序之舞。そもそも井筒自体が全体に眠い曲なのに、序之舞なんぞやられては絶対に寝てしまうと思ったのだけれど、ちゃーんと楽しめました。そして井戸をのぞき込むときの角度の絶妙。

井筒というのは昔はそんなに人気曲ではなく、観世寿夫が何度も演じて世阿弥の代表曲となった、と聞きました。今回その理由がなんとなくわかった気がします。とても楽しめました。

地謡、囃子にも大満足しました。
今まで何回か聞いているはずの大鼓の山本哲也、今回初めて意識して聞きましたがとても良かった。掛け声が邪魔にならずに綺麗。

これだったら何度でも見たいけれど、やっぱり普通の人がやったら私は寝ちゃうだろうな、この曲。
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by soymedica | 2014-01-19 10:11 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演 1月 翁 鶯

d0226702_2291978.jpg銕仙会定期公演1月
2014年1月13日(月)13時30分より@宝生能楽堂
正面席8000円


 
翁 西村高雄 千歳 長山桂三、三番叟 高沢祐介、面箱持 前田晃一
笛 藤田次郎、小鼓頭取 曽和正博、ワキ鼓 曽和伊喜夫・幸泰平、大鼓 國川純
地頭 野村四郎

邯鄲
シテ 観世銕之丞、子方 長山凛三、ワキ 宝生閑
ワキツレ 大臣 工藤和哉、梅村昌功、殿田謙吉、輿舁 高井松男、則久英志
アイ 三宅近成
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 柿原崇志、太鼓 金春國和
地 浅見真州ほか

狂言 鶯
シテ(梅若殿の家来)三宅右近、アド(所の者)三宅右矩






去年の銕仙会定期能一月は大雪だったなー、などと思いながら到着。本日は天気も良く満席。
今回は地謡側に大きく正面から外れた席だったので、前回観世能楽堂では見られなかった面箱の扱いなどが見られて面白かった。
しかし、西村高夫、ここまで硬い感じの人でしたっけ。ベテランでも翁だときっちりやるものなのだろうか。というのが大きな感想。
そして千歳の長山桂三。子供の年齢から推し量るに若手なのだろうけれど、高く飛び上がったものです。「能楽の跳躍は西洋のダンスと違って『踏む』方に重点があります」という野村萬斎の言葉を思い出させるような足遣いでした。

面箱から面を出し入れしたり、鈴を渡したりするとき、先日の観世能楽堂では音がほとんど出ませんでした。鈴なんか、ことりともしない。本日はその点誰も意識せずにやっていたようで、面白い違いです。尚、鈴を渡した後も面箱は舞台に残っていました。

高沢祐介の三番叟。翁だけの一番なので、ここで地謡が去っていく。三番叟は力いっぱいでしたが、若干一本調子。観ている方の問題なのか、途中ちょっと飽きてしまった。直前に山本則重の三番叟を観ているので、流儀による違いが分かって面白かったです。

ちょっと残念だったのは脇鼓。ああいう格好だと年齢がよくわからないのですが、もしか
して凄く若いのかな。曾和正博の孫だったりして。いや、甥くらいか。向かって右の水色の子は床几にうまく座れないのか、しょっちゅう座りなおしているし、左側の灰紫の子は頭の位置が安定しない。床几にかけて小鼓を美しく上手に打つっていうのも大変なことだな、と再認識。


休み時間のあとは邯鄲です。枕を持った宿の主人登場。宝の枕なのだから捧げ持てば良いものを、いつも肩に担いでいますね。重々しく枕を据えて、客を待っている。ちょっと肩の凝りそうな旅館です。

そこに求道者盧生登場。舞台が宿屋、と言う想定なので、なかなか橋掛かりからやってこない。装束が豪華。金色を主体に、濃淡の紫、緑、オレンジ…。これは金のありそうな客だから枕も使わせてもらえます(というのは私の想像です)。
そしてその枕で寝ると、豪華な輿がやってきます。輿舁が高齢なのですが、人手不足でしょうか。

実は、私は今回ずいぶん寝たな、と思ったのですが今詞章と見比べたら寝ていたのは上歌のところあたりだけだったらしい。盧生のようだ…。ともあれ、豪華な宴会です。銕之丞さん、もっと力強くやっても良い様な気がする。
そして子方クン、とても立派。すごく練習したのではないだろうか。動作が確信に満ちています。

盧生の舞、いつもちょっと飽きてしまうのですが、本日の空下り(そらおり)、ずいぶんと派手で、大宮が揺れました。
飛び込みは無かったな。

目が覚めて呆然とする盧生。ここで緊張が切れたのか、「知識はこの枕なり」で立ち上がるところでちょっとよろけてびっくり。
最後に立ち尽くすところの余韻は素敵でした。
でも、どうしてこれが正月の曲かなー。年始から悟っちゃって宜しいのでしょうか。


。籠の鶯を野原で鳴かせて楽しんでいる人有り。それを、鶯を鳥もちで捕ろうとやってきた梅若殿の家来が籠ごと持っていこうとする。それはならぬが、鳥もちでうまく籠の鶯を捕ったらやろう、でなければ脇差をよこせ。と賭けをします。梅若殿の家来がひどく不器用なので、籠の持ち主は大小の刀を手に入れてしまいます。

昔大和の国高間の寺の少人梅若が死んで鶯になり、寺の軒端の梅にやってきて「初春の、あしたごとには来たれどもあはでぞかへる元の住家に」と歌を詠んだという故事を語ります。それにひきかえ自分は、「初春の、太刀もかたなも鶯も、ささでぞ帰る元の住家に」だなあ、というオチなんですが、どこが可笑しいのかこの部分はよくわかりませんでした。

でも、綺麗な鳥かごの作り物、刀をとられてしまうまでのやり取りがほんわかしていかにもお正月でした。


この後に「乱」があったのですが、お先に失礼しました。
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by soymedica | 2014-01-14 22:12 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂一月普及公演 鬼継子 野守

d0226702_92776.jpg国立能楽堂普及公演1月
1月11日(土)13時より
正面席4800円

解説
世阿弥における「主題」の発見 天野文雄


狂言 和泉流 鬼継子 
シテ(鬼)佐藤融、アド(女)井上松次郎

能 金剛流 野守 留之伝
シテ 豊嶋三千春、ワキ 殿田謙吉、アイ 佐藤友彦
笛 松田弘之、小鼓 曾和正博、大鼓 安福建雄、太鼓 観世元伯
後見 廣田幸稔、豊嶋幸洋、豊嶋晃嗣
地謡 宇高通成ほか


       はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はず他所ながら見ん


能楽堂の食堂でお昼を食べつつ観察したら、「武蔵野大学」というカードを首から下げた女性二人に世話されているグループが。「先生」と呼ばれているから大学の先生なのかな?なぜ団体で来るのかな?それとも先生と社会人学生かな?と、好奇心いっぱいだが聞く勇気無し。


天野文雄先生のお話。思っていたよりもやせ形の人。そして起承転結なくしゃべっているように見えて内容ある話をきちっと30分に収めるのがやっぱり大学の先生だな、と思わせる。本日は「野守」についてではなく、「世阿弥の作品一般について」話すように能楽堂から要請があったので、との前置きから始めます。

世阿弥の作品と言うのはその前の時代の作品(小町物など)が「出来事を描く」ものであるのに対し、「主題」を明確に描いているのが特徴とのお話。
ちなみに「主題」とは何を表すか、であり、「趣向」とはどのようにあらわすか、であって、後者はシテなどによって異なるものである、この「趣向」があることによって観る楽しみが増すと。
そして世阿弥、禅竹、元雅などの主題を描く時代が過ぎさると、また(船弁慶、安宅などのように)出来事を描く能になっていくのです。

そして明治、いや江戸も早いころからこの「主題」という世阿弥の主張は忘れられ、結果として坪内逍遥のように「謡曲は綴れ錦」などという発言が出てくるのです。主題より趣向が
注目されるようになるのは繰り返し上演されるものの宿命とも

具体的にいくつかの謡曲を挙げてその主題を説明してくださいましたが、では「野守」は、というとこれは五番目ものに分類されてはいますが、これは「治世を言祝ぐ」という祝言の能に限りなく近い、とおしゃっていました。天野先生が編集委員の一人である角川学芸出版「能を読む」の第二巻の野守では「歌物語を背景にした、『鏡』と『鬼』に象徴される春日明神の恵み。」となっています。


本日は鬼シリーズなので鬼継子から。この狂言共同者の人たちのお芝居、結構好き。鬼より女のほうが体格が良いのが笑える。松次郎、上手いな。結局この強そうな女がやっぱり鬼より強いということで終わるのだけれど、楽しめました。でも、子供が「三歳」と言う設定には相当無理があるのじゃないだろうか。


野守。言葉が比較的わかりやすいし、動きもあるので人気曲ですよね。大鼓の安福建雄、なんとなく風邪かな?と思ったのですが大丈夫でしょうか。
さて、強そうな山伏の殿田登場。春日野に立ち寄り、名所なので見物します。と、お爺さん登場。田舎の人らしく、無造作にスタスタと。でも、野守にしては教養が高い。野守の鏡について語った後、杖を捨ててまた橋掛かりを帰っていきます。この前場、春日野ってどんなところだったのだろう、となんとなく想像させる広がりのある良い舞台でした。
塚の作り物を出す演出もあるらしいのですが、何回か見ているけれどまだ塚は見たことが無い。

そして里人登場。これもまた野良で働く人にしてはやけに気品がある。江戸時代でいうと庄屋クラスか。このアイも技巧を凝らすところが無く素直で良かったです。

そして山伏が鬼の出現を待って夜通し塚の前にいると、鬼登場、のはずなのですが、実は一度幕が上がった後再び下がり、「一仏成道の法味に引かれて」までは降りたままの幕の後ろで謡いますので、あんまり聞こえない。

後場は力強い鬼の舞が売り、のはずなのではありますが、前半の上品な野守としては大変結構だったシテ、後半には体力が足りません。型はきっちりしているし、動きが遅いというわけでもないのですが、弱々しい。とても残念。前に見た観世の浅見重好が良かったな。
ま、ともかく、鬼はなんと山伏に宝物(でしょ)の鏡を渡しちゃう。で、地獄に帰るよ、とお帰り。そしてワキも地謡後列に鏡を渡して退場。
この留之伝という小書きではシテが黒頭、最後に囃子が引き取って終わる、とありますが、終わり方はそんなに変わっているともおもえませんでした。なんとなく不完全燃焼のまま後場は終わったのでありました。


鬼継子:約20分
野守:60分
面は前シテが三光尉、後シテが出目洞白の小癋見

参考は
能を読む② 世阿弥 神と修羅と恋 角川学芸出版 
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by soymedica | 2014-01-13 09:30 | 能楽 | Comments(0)

観世会定期能1月 翁 竹生島

d0226702_1894376.jpg観世会定期能1月 
2014年1月5日(日)11時より@観世能楽堂
中正面席

 
翁 観世清和、三番三 山本則重、千歳 山階彌右衛門、面箱 山本凛太郎
竹生島 女体
シテ 観世清和、ツレ(女)坂井音隆、(龍神)坂口貴信、ワキ 宝生欣哉、アイ 山本東次郎
笛 一噌隆之、小鼓 鵜沢洋太郎、脇鼓 古賀裕己、田邊恭資、大鼓 柿原弘和、太鼓 観世元伯
後見 野村四郎、上田公威
地頭 角寛次朗

狂言 末広
果報者 山本則俊、太郎冠者 山本則秀、すっぱ 山本則孝


相変わらず観世能楽堂のお客さんは賑やか。切火の音もそっちのけで新年のご挨拶。やっと客席も静まり、凛太郎君の面箱から入場。ほんの数年前に見た時には子供子供していたのに、もうすっかり青年になった凛太郎君。緊張しているのか、捧げ持つものが重いのか、目付柱まで来た時には手がブルブル。表情もすごく硬い。

観世清和が新年のお清めと言う感じで厳かかつ坦々と謡ったあとに、山階彌右衛門の千歳、凄く力が入っていてそれはそれで好ましい。そして翁面をかけます。後見は一番安定感のある野村四郎と上田公威。面紐を縛る野村四郎の顔を見ていると、物凄く力を入れているように見えるのですが、まさかね。
翁の舞ってなかなか面白い。

そして翁と千歳が退場。小鼓の鵜沢洋太郎の後見が大倉源次郎だったのですが、これが翁と千歳が橋掛かりを歩く間ずーっとそっちを見ている。おそらく幕入のタイミングを小鼓に知らせるためでしょうけれど、ちょっと面白かった。

三番叟。考えてみると大蔵流の三番叟を見るのはこれが初めてかもしれない。とても良かったです。揉之段の力強さが印象的。鈴之段では鈴が一個はずれてお白洲に落ちちゃった。


さて、竹生島。女体という小書きが付いていて本で読むところによればこれは金剛流と喜多流にしかない、とのことでしたが、これは入り口で渡されたパンフレットの東次郎の随筆に詳しい。以下主要な点を拾うと:
観世流の『女体』は観世左近と喜多実の話し合いで観世流の『松風 戯ノ舞』と喜多流の『竹生島 女体』を伝授しあったときもの。この小書きが付くと、アイは弁財天に使える末社の神になる。通常末社の神に使う面は『登髭』だが、この場合はより位の高い「鼻引」を使い、白垂(しろたれ)に末社頭巾、装束は厚板に縒水衣、下袴となる。とのことです。このアイは井伊直弼がつくったもので云々

一畳台にのった小宮を笛座前に置いて始まり始まり。あれ、大鼓が床几にかけない、と思ったらワキの登場の時に腰掛けました。
ワキは紺地に金の狩衣、ワキツレ2人は朱色と金(赤大臣というのだそうな)で華やか。「竹に埋まるる鶯の竹生島詣いそがん」をワキ、地取、ワキと念には念を入れて謡います。謡三遍返しというのだそうです。
後見がここで舟を脇正面よりに置きます。とてもきれいな女性が釣竿を持って登場。金と白の唐織、オレンジの水衣、裾からグレー地にピンクの梅のいでたち。後からお爺さん。手ぶらで出てきますが、船に乗ると後見が棹を渡してくれます。

この釣り船にワキは乗せてもらい、琵琶湖の美しさを楽しみます。残念なことに私の座っている位置からはこの綺麗なお姉さんがちょうど柱の陰に。宝生欣哉と観世清和翁の一部が見えたのみ。一行は竹生島に上陸。
ワキが「あれ、ここ女人禁制じゃないの?」と一緒に上陸した女性に聞くと、2人はそれぞれ「本当はここの神さまと海の主なのよ」と正体を明かします。この小書きでは女性の方が橋掛かりで「社殿の扉を押し開き」と扇で開く様子をして幕入。翁は「波にいらせたまいけり」で小宮に入ります。

そして前述のアイ語りとなります。ここで、この島が一夜のうちに出現したことや弁財天のご利益などが語られます。
後ろの小鼓の鵜沢洋太郎がなにかごそごそしているな、と思って見たら凄い汗。大鼓の柿原弘和も汗かいていたようですが、舞台の上は暑かったのでしょうか。客席もやや暖房が利きすぎの感がありましたので演者も囃子も大変だったのでしょう。

前シテの翁が後シテの天女となって出てきます。引き回しが下ろされるときらきらした飾り物の中にとても美しい神様が。男女が入れ替わるところがちょっと気になりますが、そんなことを忘れさせるくらい綺麗。頭には太陽のような飾り物をいただき、右手には剣。この時には下半身が見えないので全身白(後で立った時に見たら袴は赤でした)。「弁財天とはわがことなり」。剣は残念なことにすぐに唐団扇に持ち帰られてしまうのですが、作り物の中で剣を押し戴くポーズは凄くきれいだった。
後シテの舞は盤渉中之舞、だそうです。そして龍神も登場。手に黄金の玉を持っていて、それを宝生欣哉に上げます。押し頂くかと思ったら、お辞儀もせず。ここが不思議。
そして皆さん目出度く退場いたしました。


引き続いて狂言の末広。囃子入りです。ちょっとここまでが長かったのでトイレ休憩に立つ人が多く、気の毒な感じでしたが、面白かった。則秀と則孝。うーん、やっぱりすっぱをやっている則孝の方が人が悪そうだものね、と思ってから頭の中で二人を入れ替えてみると則秀の方が悪い奴にも思える。
この曲、こんなに楽しいものだったかな、と思わせる出来でした。山本家はやっぱり凄い。

実はこの後羽衣、小鍛冶と続くのですがここまでで集中力が切れたので失礼しました。

参考は
能の鑑賞講座一 三宅襄 檜書店
金剛流の「女体」の小書きについても触れられています。またちょっとこれとは違うらしいです。
本日のパンフレットの山本東次郎と松岡心平の文も大変役に立ちました。松岡のほうがちょっと触れていましたが、中世には竹島の地下が地球の中心であるという思想もあったようです。この辺の世界観については前に紹介した「龍の棲む日本」でどうぞ。
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by soymedica | 2014-01-06 18:16 | 能楽 | Comments(0)

新春国立名人会

d0226702_2152537.jpg新春国立名人会
2014年1月2日(木)@国立演芸場
3500円

寿獅子 若山胤雄車中
落語 三遊亭好楽
三味線漫談 三遊亭小円歌
落語 三遊亭圓歌
講談 宝井琴調
落語 柳家さん喬
漫才 青空球児・好児
上方落語 笑福亭鶴光
紙切り 林家今丸
落語 三遊亭小遊三

…このパソコン、「こゆうざ」と入れると即座に「小遊三」と変換できるんだが…。(ちなみに今まで入力したことはありません。)

今年も亭主と二人、正月の国立名人会に行ってきました。今回は初日の初回だったので、鏡開きがあった模様。ついたときには儀式は終わっていましたが、ちゃんと升酒が飲めて、升も貰えました。
最後の手拭い投げは前のほうの人しかもらえないけれど、これは全員希望すれば飲めた模様。

落語と言うのは伝統芸能の中ではお客さんに一番男性が多く、しかも平均年齢が若い。でも、たいていの出演者は「高齢化」を話題にしますね。

昨年は獅子舞が通路に降りてきてご祝儀受け取っていたので(お礼になにやら渡していた)、通路側の席がとれたことでもあり、ポチ袋を持って行ったのですが、今回の社中は舞台上だけでした。
切り紙ではお客からお題をつのって、採用されたお題の人は作品がもらえるのですが、そのときにちゃんとポチ袋のご祝儀を持って行った人がいました。尊敬。

ちなみに演題は
好楽が「つる」、圓歌は「圓歌の道しるべ」と称してよもやま話を、講談は寛永三馬術、さん喬が「天狗裁き」、鶴光「鼓ヶ滝」、小遊三「弥次郎」でした。今までに聞いたことのあるのは弥次郎だけでした(北海道が寒いという話)。

また来年も行こう。
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by soymedica | 2014-01-02 21:57 | その他の舞台 | Comments(0)

琵琶法師 〈異界〉を語る人々



d0226702_177598.jpg
琵琶法師 〈異界〉を語る人々 兵藤裕己 岩波新書 2009年5月第三刷

人気ブログ「クリコの観能日記」のクリコさんに紹介していただいた本です。CD付き、とあったので何かの間違いでは、と思ったのですが本当についていました。

さーっと読んだのですが、もう一度、あるいは何度でも読みかえせそうなふかい本です。新書は「学問のカタログ」と言いますが、それでも、私には新しく面白い内容でした。

とりあえず一読して面白かった所をあげますと、
筆者は最後の琵琶法師と言われた山鹿良之の家に泊まり込んで彼の人生について聞くのですが、山鹿は語っている時に容易にその語っている人物に転化してしまい、聴いている方には語っているのは山鹿なのか、話に出てくる人物なのかわからなくなってくる。
そういう語物に特徴的で且つ語る上に有利な「自我」と言うものの欠損は、「盲人」であったからこそ容易に獲得できた能力なのではないかと説明しています。
また、(能にも鵺などでよく見られますが)主語の変化(語っているのは鵺なのか、頼政なのか、くるくる変わる)は平家物語やそれらの語り物の特徴であろうとも。

地神経に準拠する彼らの活動、蝉丸伝説との関係、などなど、知らなかった方は是非お読みください。とても面白かったです。
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by soymedica | 2014-01-01 17:07 | 本・CD・その他 | Comments(0)