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万作を見る会 悪太郎 博奕十王

d0226702_756261.jpg万作を見る会 
2013年11月23日(土)14時より@国立能楽堂
正面席 10000円

小舞
貝尽し 内藤連
名取川 中村修一
蝉 野村遼太
地謡 岡聡史、高野和憲、野村萬斎、竹山悠樹、飯田豪

悪太郎
悪太郎 野村万作、伯父 石田幸雄、 僧 野村萬斎

素囃子
融 酌之舞
笛 一噌幸弘、小鼓 田邊恭資、大鼓 柿原弘和、大鼓 小寺佐七

博奕十王
博奕打 野村萬斎 閻魔大王 深田博治
前鬼 高野和憲 後鬼 月崎晴夫、鬼 竹山悠樹、鬼 中村修一、鉄状鬼 岡聡史
地謡 野村遼太、野村万作、加藤聡、内藤連


ちょっと遅れてしまったので貝尽くしの小舞は扉の前の補助椅子に座ってみる羽目に。そのくらいだったら一曲終わる前に外で待っていて名取川から入ったのに、そういう選択は許されていないらしい。案内のお姉さんの迫力に負けてしまった。

狂言小舞って所作も面白いし、謡の内容も笑えるし、なかなか良いものです。蝉で地謡がつまってハッとする場面あり。

何回か見ている悪太郎ですが、全く酔っ払いというものはしょうがないものです。万作、ひげが黒いと誰かと思うほど若いのですが、息が荒いのが凄く気になります。大酔っ払いの演技なのかそれともひょっとして体調不良なのか、と思うほど。
石田幸雄が伯父というのもなんだか笑ってしまう組み合わせ。僧の役が萬斎だと、ここで伯父役があまり若手だと軽すぎるのでしょう。
萬歳のとぼけた調子と、酔っ払いの万作の組み合わせで笑えました。

博奕十王。最近皆が信心深くなったので地獄に落ちて来る亡者が減って、腹をすかせた鬼と閻魔大王が六道の辻に獲物を求めて遠征。閻魔大王のためにはちゃんとワキ座に一畳台が容易され、その上に後見が葛桶を用意するなど、偉いのです。冠にも「王」と書いてあります。5人の鬼を引き連れた閻魔様。能のワキとワキツレのように道行きを謡って着座。

と、そこに亡者の博奕打が。上下白の装束に白い鉢巻をしているのですが、三角の布はつけないのですかね。博奕打ちは何やら四角い包みを担いでいます。
とうとう鬼に捕まった博奕打ちは、閻魔様相手に四角い包みから大きなサイコロを取りだし、博奕を始めます。

サイコロを転がす前に水衣の肩を後見があげるのですが、これは既にひもがついていた模様。後見の石田幸雄、そうでなかったら老眼鏡が必要でしょうね。

さすが博奕打ち、とても強く、閻魔大王や鬼を身ぐるみ剥がし、ついには極楽へ行く金札も手に入れて退場です。でも、六道の辻でサイコロとばくやっていた方が博奕打ちにはたのしいのではないかしらん。

言葉もやさしいし、様式化も弱いので、子供に見せたら受けそうな狂言でした。
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by soymedica | 2013-11-28 07:57 | 能楽 | Comments(0)

第十四回一乃会 独立二十周年記念 箕被 砧

d0226702_11164538.jpg第十四回一乃会 独立二十周年記念 砧
2013年11月16日(土)14時30分より@矢来能楽堂
正面席7000円

仕舞 
籠太鼓 観世喜正
梅枝キリ 観世喜之

箕被 
シテ 山本東次郎、アド 山本則孝


シテ 鈴木啓吾、ツレ 坂真太郎、ワキ 福王和幸、アイ 山本東次郎
笛、松田弘之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠    
後見 永島充、奥川恒治
地謡 観世喜正ほか計6人


連日の矢来能楽堂。いや、ここは本当に椅子の間が狭い。後ろの畳のところの椅子席はどんなのだろう。

ちょっと遅れて行ったので、仕舞は見ませんでした。

箕被から。連歌の会に入れあげて、家にも帰ってこない、金も入れないという亭主。愛想をつかして出ていく妻にやるものとて、箕しかない。箕をかずいて出ていく妻を愛おしく思い夫は「未だ見ぬ二十日の宵の三日月は」と読みかけると、夫に本当に愛想をつかしたわけでもない妻は、歌を詠みかけられて変化をしないと後世に口ない虫に生まれるから、と「今宵ぞ出ずる身こそつらけれ」返歌をする。夫はその上手なことに感心し、連歌なら家で妻と二人で楽しもう、と二人仲良く盃を交わす、というお話。
楽しかったし、あとの砧との組み合わせも良い。でも、東次郎の茶色とブルーの組み合わせの装束は、ちょっと私の趣味ではないです。


。シテの鈴木啓吾ってなんとなく生真面目そうな演技をする人。良い言い方をすればすっきり、悪く言えば印象に残らない。ハンサムで大きいという以外にあまりクセのない(これはワキとして重要なことなのだろうけれど)福王和幸とだと尚更印象が弱い。囃子も地謡も上手なんだけれど、全体のコンビネーションが宜しくない感じ。なぜなんだろう。アイの東次郎ばかりがうきあがって見えた舞台でした。

砧は世阿弥が「かやうの能の味わひは末の世にする人あるまじければ」と言ったとかで、いろいろ解説も書かれていますし、通好みの曲らしいのですが、私は夕霧と妻が二人で砧を打つあたりから話についていけなくなって大体アイ語りのところから寝ちゃう、というのがパターン。だって、なんだって夕霧はあの場面で唐突に「この秋にも帰らない」っていいだすのか?(についてもいろいろ解釈があるようですが)。

今回、アイ語りまでは意識ははっきりしていたのですが、それからあとはなんだか半分夢の中のようでした。もう一度見ると最後まで楽しめるのだろうか。それにしても泥眼の面って皆美人なのが恐ろしい。
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by soymedica | 2013-11-23 11:19 | 能楽 | Comments(0)

第37回のうのう能 阿漕

d0226702_8202998.jpg第37回のうのう能 阿漕
2013年11月15日(金)7時より@矢来能楽堂
正面席5000円

解説、装束付け実演

仕舞 善知鳥 観世喜之

阿漕 
シテ 奥川恒治、ワキ 御厨誠吾
笛 八反田智子、小鼓 深澤勇司、大鼓 柿原弘和、太鼓 大川典良


コンパクトに初心者向けにまとまっている「のうのう能」。今回は阿漕でした。
作者は不詳ですが1530年代に初演記録がある、とか三卑賤ものといえば「善知鳥、鵜飼、阿漕」であるとか、ワキの旅人は日向(天孫降臨の地)の出身との想定で阿漕の舞台である伊勢との対比が良いとか、の楽しい蘊蓄が観世喜正によって語られます。

装束着けでは鬘はヤクの毛であると説明。昔は何を使っていたのでしょうか。モデルを務めたのは観世喜正だったのですが、説明する弟子が「先生がいま着けていらっしゃるのが云々」と説明するのはいかがなものでしょうか。外部のお客さんに向かって身内に敬称、敬語はまずいでしょう。


善知鳥の仕舞に続いて阿漕。この曲のワキは僧形でも着流しでもOKだそうで、(確かにはっきり「僧」とは言わない)今回は日向の旅人という設定。ここはどこ?と釣竿を手にした老人に尋ねると老人は「阿漕が浦」の話をかたります。
先週国立能楽堂で国栖を見たとき前シテのお爺さんが鬘から耳を出していたのを見て「あれ?」と思ったのですが、今回は耳は鬘の中。
プロの方に、「宝生流の尉は耳を出す」と教えていただきました。普通面に耳がついているし、耳が出ているともみあげが白くないと目立つので、今回のように耳は鬘の中が綺麗だと思うのですが。

「繰り返し繰り返し」と未練げに釣竿を手繰るところがあります。「ここが見どころだぞー」という力の入り方が感じられ、もっとさりげなくやった方が良かったかな。
後シテの網を扱うところはもっとさりげなかったけれど、「かっちり」「きっちり」という感じが亡霊になった人ではなく、これから亡霊になる人のよう。

楽しかったけれど、囃子と謡が若干力みすぎの感じがありました。コンパクトな能楽堂で仕事帰りのお客さん、そして幽霊の話ですから、もそっと考えてほしかった。まあ、皆さん若そうなので普通にやっているのかもしれませんが。

今回アイがなかなか良かった。それにしてもなんで長裃なんでしょうね。


ということで、年内最後ののうのう能でした。
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by soymedica | 2013-11-20 08:22 | 能楽 | Comments(0)

鉈切り丸

d0226702_21391713.jpg鉈切り丸
11月11日18時半より@東急シアターオーブ
S席12500円


脚本 青木豪
演出 いのうえひでのり
音楽 岩代太郎
出演 森田剛、成海璃子、秋山菜津子、渡辺いっけい、 千葉哲也、山内圭哉、木村了、須賀健太、宮地雅子、 麻実れい、若村麻由美、生瀬勝久 他


なんでこの切符を買ったのだか思い出せないのだけれど、初ヒカリエでございました。渋谷駅からの2階の通路を通りながら、なぜか香港を思い出す。建物の妙に新しいデザインと、夜景の派手さかな。

いつもの私が行くお芝居を見に来るお客と微妙に毛色が違うな、と思ったのも道理、主人公の森田剛はジャニーズの人気者だとか。ロビーには「森田剛さんへの贈り物は花、お手紙のみ受け付けております」との張り紙が。森田剛って誰だろうと慌ててスマホで検索したお客はわたしだけではないだろうか。

でも(って失礼か)これだけの大きさのホールを埋める客を飽きさせないだけの演技でした。演出や舞台装置が派手で楽しめるからではなく、内容と演技で楽しかった。

歴史ものですが、全然わかっていなくても面白い。

それにしても派手な舞台装置。入れ物が大きいと、主演に人を呼べる俳優、話題の脚本、そして遠くの席からでも楽しめる大掛かりなしかけが必要なんでしょうね。この劇場のおおきさだとこういう出し物って決まってくるんだなということが良く分かった。

このホール、案内のお姉さんがちとコワイ。
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by soymedica | 2013-11-16 21:40 | その他の舞台 | Comments(0)

国立能楽堂11月 太刀奪 国栖

d0226702_8235842.jpg国立能楽堂11月 普及公演
11月9日(土)13時より
正面席4800円


「国栖」と壬申の乱伝説 倉本一宏

狂言 大蔵流 太刀奪(たちばい)
シテ(太郎冠者)丸石やすし、アド(主)網谷正美、アド(通りの者)松本薫

能 宝生流 国栖
シテ 辰巳満次郎、ツレ(姥)山内崇生、(天女)和久荘太郎、子方(浄御原天皇)和久凛太郎、ワキ 福王和幸、ワキツレ 村瀬提、矢野昌平、アイ 茂山正邦、松本薫
笛 一噌幸弘、小鼓 幸清次郎、大鼓 大倉正之助、太鼓 梶谷英樹、
後見 大坪喜美雄、常山淳司
地謡 武田孝史ほか


本日雙葉の高校生多数。この演目なら退屈しないでしょう。
まずは倉本先生のお話から。ハンドアウトのある解説は国立では珍しい。よくわかりました。吉野と周辺の地理、国栖魚伝説の作られ方など。
もっと壬申の乱について知りたくなって倉本先生の御本をe-honのお気に入りにポチ。
本日出店していた檜書店も解説者の著書を置くとかすれば良いのにね。


太刀奪。狂言の演者は全然見かけない名前だったので期待もしていなかったのですが、大変に失礼しました。茂山一門の人たち。素晴らしかったです。関西の狂言は「ことば」を大事にし、関東では「舞」を大事にするということですが、テンポ良くたたみかけるせりふ、太刀を奪おうとするときのコミカルな仕草、笑いました。よく考えると筋はそんなに大笑いするものではないのに。

まゆあい(眉合)の延びたやつかと存じたれば,目の鞘のはづれたやつでござる

まぬけかとおもったら、抜け目のない奴だな、という意味だそうで、ひとつ賢くなった。


壬申の乱伝説の話を前振りとして出されると、いっそう風景が大きくなったように感じられる国栖。一世代前の教養人は解説なぞなくてもちゃんと感じていたのだろうな。いやあ、本当に役に立つ解説だった。

今回の大鼓が悪かったというわけではないのだけれど、こう亀井親子ばかり聞いていると、他の人が出てくると変な感じ、というか亀井親子が好き。

さて、天皇一行がいずくとも知らぬ山中に到着。解説のハンドアウトにあった写真を思い出すと物凄い山の中。2,3日ろくなものも食べていないと言うのも納得。出だしのワキ謡がなかなか綺麗。
そこに山奥に住む老夫婦がやってきて、「おや、家のあたりに紫雲が」。夫婦は小さな川舟に乗って帰ってきます。お爺さんは竿を、お婆さんは釣竿を持って。

尊い人がお腹をすかせていると言うので、お婆さんは根芹を、お爺さんは鮎を捧げます。天皇は半分食べた鮎をお爺さんに下げ渡すとお爺さんはそれを川に放ちます。鮎は生き返って泳いでいき、これは吉兆(そういえば鮎の字は占う魚)。
シテの辰巳満次郎、華のある人なんだな、としみじみ。型も謡いも数日後の今、印象に残っています。

と、そこへ追手が。天皇は干してある舟を裏返してそこに隠れます。完全に舟をかぶせるほど子方が小さくないので、ちょっと斜めに。
追っ手の事なかれ主義に助けられ、やれやれ。天皇のありがたい言葉を頂いて老夫婦は涙します。この涙をする手がおでこの位置にあるので、外人に「頭がいたいのか?」と思われたわけですね。
ここまでで既にかなーり満足できる内容でした。

そしてお爺さんとお婆さんが帰ったあと、天女の登場。これも華やかで素敵。昔の宝生流は袖の扱いが上手でない人が多かったとのことですが、今はそんな人いませんね。そして赤い髪の毛ぼうぼうの蔵王権現もあとから登場。(なぜ最初のうちは衣をかずいているのでしょうか。)この蔵王権現、前場のよぼよぼした気力ばかりが先走るお爺さん(演技を褒めています)と同じ演者とは思えないほど堂々としている。切り替えが素晴らしいですね。

面は前シテが三光尉、後シテが大飛出、前ツレが姥、後ツレが小面


ということで、満足した一日でした。
でも、東次郎の釣狐、切符手に入らなかったのよねー(恨)。
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by soymedica | 2013-11-13 08:28 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演 11月 巻絹 鐘の音 碇潜

d0226702_16182215.jpg銕仙会定期公演11月
2013年11月8日(金)18時より@宝生能楽堂
正面席6000円

巻絹
シテ 片山九郎右衛門、ツレ 観世淳夫、ワキ 大日方寛、アイ 内藤連
笛 藤田次郎、小鼓 田邊恭資、大鼓 原岡一之、太鼓 桜井均
後見 鵜沢久、北浪昭雄
地謡 小早川修ほか

鐘の音
シテ 石田幸雄、アド 岡聡史

碇潜 禅鳳本による
シテ 浅見真州、前ツレ 浅見慈一、長山桂三、子方 谷本悠太朗、後ツレ 北波貴裕、浅井文義、ワキ 森常好、アイ 高野和憲
笛 松田弘之、小鼓 曾和正博、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺佐七
後見 清水寛二、永島忠侈
地謡 観世銕之丞ほか


巻絹は和歌の徳を讃えた能の一つ。時の帝が熊野に千疋の絹をおさめよとの夢を見て、諸国から巻絹を熊野に届けさせる。熊野の臣下がそれを取りまとめているのだが、どうも都からの絹が遅れている。臣下は大日方寛。この人なかなか声が良いし、結構好きなワキなんだが、若干痩せすぎではないだろうか。横から見たときあまり平べったいのはよろしくない。

都からの使者はサボっていたのではなくて、音無明神に詣でて冬梅の香りに誘われて歌を手向けていたのでした。肩に担いでいる巻絹は、そうですね、狂言の昆布売りの昆布が白くなったような…。観世淳夫、何歳くらいなんだろうか。20歳代前半?子供のころから鍛錬してきたお家の子なのでしょうが、謡の高低が妙に不自然なのと、動きが硬いのが気になります。頑張れよー。

さて、熊野について遅参を臣下に咎められた使者は下人に縛られてしまう。と、音無明神が憑いた巫女が登場。囃子がとても盛り上がります。
臣下は心の中で奉納した和歌の上の句を、明神は下の句を謡います。

       「音無にかつ咲そむる梅の花匂はざりせば誰か知るべき」

そして使者の縄をといてやり、和歌の徳を讃えて神楽を舞います。ここから最後のほうに向かって舞が激しくなってとても面白い。
とてもきれいな話でした。巫女の舞が綺麗でしたし。ツレがちょっと残念だったのと、後半詞章が難しいので、もっと予習していけば楽しかったでしょう。
面は近江作増髪。


石田幸雄がシテの鐘の音。全体としては期待通りのできでしたが、滑り出しはちょっと悪く、珍しく石田が詞章を間違えていました。お疲れなのでしょうか。


碇潜には「禅鳳本による」という注釈がついています。ちょっと引用:
このたびの上演は金春禅鳳本によるもので、観世流では古態を残すといわれる小書「船出之習」よりも、さらにもとに遡った演出である。これは大槻文蔵のシテで銕仙会で平成十年に小書き「船出之習」で上演したときに碇だけを出したことが出発となり、研究者小田幸子氏の協力を得て翌年浅見真州のシテにより大槻能楽堂で「古演出による」という小書きで上演され、前場で船三艘を出す演出が工夫された。

西国から早鞆の浦に見物にやってきた着流しの旅の僧。さあついたぞ、と謡い終わると揚幕から一艘、切戸から2艘の舟が出されます。一艘は目付柱寄りに二艘は囃子の前におかれます。ツレ、シテ、ツレの順に出てきて向かって左から順に船に乗ります。この三人と旅の僧と「船賃は無いけれど乗せておくれ」「金が無いならダメだ」「代わりにお経ではどう?」との問答。顔は向けても目を合わせない様子がいかにも幽霊っぽい。ここの問答のテンポが好き。

そして僧はワキ座で法華経を唱えたのち三艘のうちの爺さんの舟に乗る。舟が向こう岸について僧は降りてワキ座へ。こう書くと何だかせわしないようですが、そうは感じさせないところが間のとり方のうまさかな。

そして僧が源平の合戦のありさまを尋ねると、老人と若者は能登守教経と安芸太郎・次郎の最後を再現します。三人は棹で戦った後、素手で戦い、そして若者は老人の舟に乗り移り、ついに三人で舟から飛び降りる。(教経が安芸太郎、次郎を道連れに身を投げるところの再現)。そして三人は笛の音に乗ってしずしずと橋掛かりへ。ここで三人が橋掛かりでストップモーションになるところが綺麗な演出。

さて、三人が去った後、シテの舟は揚幕から、ツレの舟は切戸口からと律儀に引かれるのが面白い。

ここで、地元の本物の人間が「渡し舟でもしようか」とやってきて僧を見つける。このアイの高野和憲が良かった。高野と深田、二人はどんどん良くなる感じがする。

そして大船登場。屋根がついて幕がわたされていて中が見えないけれど、あそこに(一人は子方とはいえ)四人、そして端には碇がついているのだから、窮屈に違いない。
中で安徳天皇が謡いだす「せめては月の松風の…。」舌足らずでカワイイ。あの年齢の子供でこれだけのことができるというのは、教育訓練のたまものなのか、才能なのか。

幕が下ろされると左から平知盛、二位の尼、安徳天皇、大納言局が。「海の底には竜宮という素晴らしい都がある」などと言って、女性と天皇は切戸口から退場。安徳天皇が本当に子方なのが、ほろっとさせて能にあるまじき写実になっています。

ここで後見が知盛に長刀を渡し、船の碇をずーーっとワキ座のほうまで伸ばします。
知盛がかっこよく長刀の舞を決め、船に乗って碇を引き上げて、橋掛かりに担いで行き、最後を決めました。と書きたいところですが、長刀が船の屋根に引っかかったしたためか動きにメリハリがなく、船から降りるときに艫を踏んじゃったりと、若干残念ではありました。

面は前シテが出目栄満作朝倉尉、後シテが洞白作三日月、二位尼は作者不詳の若曲見、大納言局は北沢一念作小面。


なかなか満足した一日だったのですが、本日の席、中正面寄りの後ろの方。確かにあの扉の閉まる時の音は何とかしたほうが良いと思います。遅れてくる人はたいていあそこから入りますしね。
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by soymedica | 2013-11-10 16:22 | 能楽 | Comments(0)

第七回桂諷会 橋弁慶 語那須 船弁慶

d0226702_11154058.jpg第七回桂諷会 長山桂三独立十周年記念能 橋弁慶 語那須 船弁慶 
2013年11月2日(土)14時から@国立能楽堂
正面席10000円

橋弁慶 笛之巻 弦師
シテ 長山桂三、子方 長山凛三、ワキ 殿田謙吉、アイ 野村万作、石田幸雄
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 柿原弘和
地謡 浅見真州ほか
後見 清水寛二、鵜沢光

替間 語 那須 山本東次郎

一調 
勧進帳
 観世銕之丞
大鼓 亀井忠雄

船弁慶 重前後之替 早装束
シテ 長山桂三、子方 長山凛三、
ワキ 宝生閑、ワキツレ 大日方寛、御厨誠吾、アイ 野村萬斎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 観世元伯
後見 野村四郎、鵜沢久
地謡 観世銕之丞ほか


「長山桂三独立十周年記念」とあるから、皆長袴でぞろぞろ出てくるかと思ったらごくごく普通の会でした。息子さんの凛三くんが大活躍。

普通は橋の上に人切がいるらしい、と弁慶とその一行が言うところから始まる橋弁慶。「笛之巻」の小書が付くと、前場で常盤が牛若をいさめる場面や義経の持つ虫喰いの笛の由来が語られるなど、通常とは全く異なる前場となる、とパンフレットにありました。
まず、囃子無しで子方が登場。羽田秋長という家来が「牛若丸が勉強もせずに人を切ってばかりいる」と。常盤御前に叱ってやってください、というこの辺は三の松付近で床几にかけた常盤御前と秋長のやりとり。そのあと舞台にはいり、常盤御前は牛若にお小言。ここで笛の由来も語られます。
この前場の地謡が今一つでありました。やっぱり遠い曲だからだろうか。

牛若大いに反省し、母子で中入り。でも、子供のTVゲームと同じで「あと一回」となっちゃうんですね。今晩も五条の橋の上で犠牲者を待ち構える牛若。

弦師の小書きは狂言方のもの。弦師の万作は首から筒を下げて登場。「恐ろしい人切がいるぞ」と怯える弦師の万作とからかう石田幸雄。この二人をこういう風にみられるなんて贅沢。

そしていよいよチャンバラの場面へ。
実は私はこの曲は全体としてはあんまりおもしろくないな、と思うのですが、このチャンバラの場面だけを見るためのものかと。そして演者によって型付けが違うのが面白い。本日はどちらかというと弁慶主導の感じでしたが、組み合わせによっては子方が引っ張る、というのもあって楽しい。
なぜか私の隣に座っているドレスアップしたご婦人(40歳くらいかな)、この場面で声を出して笑うのですが…。

衣装も豪華で華やかなオープニングでした。


私のもう一つのお目立て、東次郎の語那須。あっという間に終わってしまって残念、と思うくらい良かった。
万作は完全に膝行するのですが、東次郎は途中から中腰になっていました。
ところで、那須与一が使う矢は鏑矢。ウィリアムテルのように子供の頭のリンゴを実戦に使う矢で射ったと思っている方、日本人はもっと風流なのですよ。

銕之丞の勧進帳は、今度の舞台の予行の意味もあるのでしょうか。声を痛めているようでした。練習のし過ぎなら良いのですが、風邪だったら大変ですね。


皆が大好きな船弁慶。「重前後之替」は、前場、後場ともに位が重くなり、シテの衣装、演出が大きく変わる重習いの小書、という極めて抽象的な説明がパンフレットにありましたが、ま、後シテはずっと長刀でした。

子方の義経と一同登場。子方の義経はすっきりとした美少年でなかなかよろしい。ワキの同吟は良かったです。大日方寛ってなかなか良いな、と最近思います。森常好の次の世代の有望株ですかね。
そしてアイの萬斎が橋掛かりに。この前の「解体新書」で歩き方の話が出たのでちょっと注目していたら、たしかに東次郎も萬斎も右足が出るときには右肩を出している。

ここから先は静を連れて行くのはどうか、というやり取りの後、静に衣装と烏帽子を渡して舞を舞わせます。この衣装の受け渡しが、後見→弁慶→笛座前でごそごそ、という感じで演出があんまりきれいではなかった。
そして藤田六郎兵衛、なんだがあんまり元気がなかったので気になりました。働きすぎではないだろうか。美味しいものを食べて、座って笛を吹くというのはあんまり健康によい生活ではないと思います。ジョギングとかしないと。

静が舞の途中橋掛かりで涙を抑えるところが綺麗。

そして船が出されます。
「早装束」の小書きは和泉流狂言方のみにある替間で、幕内にて素早く衣装を替えるもの、とパンフレットにありましたが、驚きました。幕内に駆け込んだ萬斎、すぐに駆け戻ったように見えたのですが、上から下まで全部違う装束。あれは下に着込んでいたのだろうか。

実は萬斎のアイはあんまり好きではなかったのですが、こういう派手な役はぴったり。全体を引き締めてしかも面白い。頭にはほくそ頭巾をかぶっていましたが、それを落とす熱演でした。船を漕ぐしぐさがあまり上手ではない狂言方もいるのですが、そこもきっちり決めています。

いよいよ知盛の怨霊登場。面白い足遣いをするので有名な場面ですが、その中でもこの人の動かし方は一段と派手。くるくると良く動きます。(そして隣の女性はまた声を出して笑うのですが…)。
そして弁慶。宝生閑のこの役は前にも見ていますが、今回はこの場面での動きが物凄く抑えてある。無意識なのか、演出上のことなのかよくわかりませんが。

囃子や地謡の人選にも力がこもっていましたね。
楽しい一日でした。


なお、橋弁慶の笛之巻の小書については
能の表現 清田弘 草思社
に詳しいです。
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by soymedica | 2013-11-04 11:27 | 能楽 | Comments(0)