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国立能楽堂4月定例公演 花争 隅田川

d0226702_0192318.jpg国立能楽堂4月定例公演 
4月24日(水)18時30分より
正面席 4800円

花争(大蔵流)
シテ(太郎冠者)大蔵吉次郎、アド(主)善竹十郎

隅田川(観世流)
シテ 浅見真州、子方 長山凛三、ワキ 宝生閑、ワキツレ 宝生欣哉
笛 松田弘之、小鼓 曽和正博、大鼓 柿原崇志
後見 浅井文義、浅見慈一
地謡 坂井音重ほか


花争は物凄く地味で短い話。そして私はこのコンビがあんまりお気に入りで無いので、ゴメンナサイ。

お目当ての隅田川です。今回も宝生閑、欣哉の親子。閑登場。若干着付けがasymmetryなのが気になりますが、滑り出しはまずまず。ただし実は囃子が今一つの滑り出しでございました。
船頭が「大事の渡し」と言っていると、東国商人の客がやってきます。あとから物狂いの女も来るよ、と。この辺、船頭が労働者でお食事が悪く弱々しいのに対し、商人は儲かっているんだぞ、という声の強さの対比。

物狂いの女は遠目には雀に見える模様の着物に地味なグレー系の水衣。

全体に観世清和よりも動きが少なく、笹も観世清和は地面にたたきつける風だったのが、こちらは置く感じ。遠くを見やる感じも控えめ。というより今回宝生閑の調子が戻ってきたので、会話の部分でシテがワキに喰われている印象があるのですよね。あんまりかみ合わないこの二人。宝生閑は相手に合わせる気が無い(高齢になると何事も気にならなくなる)、浅見真州は宝生閑の芸に若干ついていけてない印象。

そして客も船頭も舟にのり、向こう岸の大念仏にまつわる悲しい話が語られます。この間、女はシオルまで微動だにしない。船頭の語りに我が子のことと気付いてはっとするという型がわかりやすいとは思いますが、やりすぎるとあざとい。こういう風にじっとしているのも味わいがあるかとも思いますが、私を含めた現代の観客相手には動かない演技を理解させるのはかなり難しいと思います。
子供が死んだ時12歳なら、女は現在30代前半より歳とっているということは無いでしょう。でしたらもう少し動きがあっても良いと思います。

そういえば今回女が置いた笠と笹は地謡が引いていました。あれはどのへんに置くから誰が引く、とか申し合わせる物なのでしょうね。

そして念仏が最高潮に達すると子方の「なみあむだぶつ」が聞こえてきます。この、声変わりする前の男の子の声というのは胸を打つものがありますね。
ビックリしたのは子方の装束。オレンジがかった色の入った輪つなぎの柄に水色の水衣。お母さんと別れた時に着ていたものだったのでしょうか。

夜が白々と明けて母は子供の面影を胸に抱いてどこかに消えて行くのでした。


やっぱり、隅田川、良い話だな。
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by soymedica | 2013-04-27 00:19 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂開場三十周年記念 特別企画公演 スーパー能 世阿弥

d0226702_7573356.jpg国立能楽堂開場三十周年記念 特別企画公演 
スーパー能 世阿弥
国立能楽堂委嘱作品・初演
梅原猛作、梅若六郎玄祥演出

世阿弥 梅若玄祥
寿椿 味方玄
元雅 片山九郎右衛門
越智 宝生欣哉
禅竹 観世芳伸
音阿弥 山階彌右衛門
語り手 野村万作

笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 安福光雄、太鼓 観世元伯
後見 山崎正道、小田切康陽、角当直隆、
地謡 大槻文蔵ほか計5人

正面席で6500円。


ネタばれあり。







横尾忠則の手になるポスター、パンフがクール。
現代語でやる能って?と思って行ったのですが、全然違和感ありませんでした。ただ能や歴史に全く知識の無いままいきなりこれを見ても良くわからないかもしれません。

まず、舞台は完全な暗転から始まります。地謡座の真前に引き回しをつけた大きな屋台が、囃子が座るべきところには柴垣と竹藪が。たぶん暗転した時点で世阿弥夫妻は屋台にはいるのでしょう。一の松の辺りには扉が。

皆さん国立能楽堂の舞台の向かって右側にすだれをおろした場所があるの、ご存知ですよね。あれは飾りなのか、実際何かの部屋があの後ろにあるのか、と不思議に思ったことはありませんか?今回あそこが使われました。前列囃子、後列地謡だったと思うのですが、かなり広い部屋で、独立した空調があるみたい(調節器が見えた)。

などなど、通常の能では見られない色々な仕掛けのある舞台でした。筋は、元雅あるいは世阿弥暗殺の予感におびえる世阿弥夫婦、伊勢へ逃れるが結局殺されてしまう元雅、両親の嘆き、そして能楽の将来の発展を願って世阿弥、音阿弥、禅竹が舞う、というものです。

出演者の顔触れが豪華なのはわかっていましたが、能の役者として優れている人は、役者としてもある程度の資質があるひとなのだな、と思わせられました。世阿弥が死んだ元雅に呼びかけるところ(シテ柱の方に向かって二度呼びかけるのですが、今台本見たらその部分が見つからない)では涙が出そうになりました。かなり様式化されているものなのにね。

そうそう、能らしく、間に万作が出てきて背景を説明するのですが、何故新作に万作?石田幸雄かもう少し若いところでは?と思ったのですが、これは本当に良いキャスティングでした。楽しい。

そして最後の三人相舞がきれい。

ということで、堪能しました。
見所で携帯鳴らすのはやめましょう。字幕が入らないと抑止装置も入らないのかな?まさかね。
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by soymedica | 2013-04-24 07:59 | 能楽 | Comments(0)

のうのう能 忠度

d0226702_20165646.jpg第34回のうのう能 忠度
シテ 武田宗典、ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎、アイ 小笠原匡
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 大蔵慶之助
後見 武田宗和、坂真太郎
地謡 観世喜正 ほか計4人

のうのう能に行ってきました。平日夜ということで、お客さんは男性も多い。お隣は学生時代に能をやってましたみたいなビジネスマン。奥様に色々解説なさっていて好感が持てました。
観世喜正の解説の途中から入場。端の席で良かった(ここ、席の間が狭いので遅れて行くと入れませんね)。
後シテは「のちして」と読むことを確認。大きな格子模様は「段」(字、あってるかな)ということ、源氏系の武将は袷(あわせ)の法被を、平家は半分貴族なので優美な単衣の法被を着ることなどを知りました。
法被は肩脱ぎして脱いだほうの袖は丸めて箙に見立てると言うのも初めて知りました。
しばらくここに通うと物知りになれそう。

仕舞は敦盛。観世喜之の仕舞は何回か観ましたが、不思議な味わいがあるような気がします。でもなんでこんな小さなお爺さんの息子があんなにでっかい…。


忠度、あまりに有名ですが観るのは初めて。型どおり旅のお坊さんがやってきて…。今回森常好、若干存在感が薄い感じがしたのですが、それも計算の上のことかもしれませんね。と、そこに何やら品の良い老人が。
舞台に入ったところで祈る型があるのですが、そこが見どころなんだそうですよ。杖をついてその杖を持ったまま、片手で祈るか、両手で祈るか…。後シテが右手を切り落とされるでしょう?そこに対応して杖を右手に、左手だけで祈るという。

今まで武田宗典ってあまり印象に残らない人だと思っていたのですが、ポーズの綺麗な人ですね。あんまりアクの強くない綺麗な印象。

後シテが勇ましくやってくるところも平家の公達という感じで美しい。着付けの実演のものより衣装が数段良いせいもあるでしょうが、駆け出しクンと比べてシテをやる人はただ立っているだけでこんなに違うものか。

今回の囃子は今一つあるいは今二つくらいでありました。元気が良ければ良いってものではないでしょう。もそっと、曲趣やシテのタイプにあわせてやっていただきたい。

ま、それはともかく、忠度、色々な演出方法があるらしく、また来年の桜の季節になったら楽しませてもらおうっと。
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by soymedica | 2013-04-21 20:20 | 能楽 | Comments(0)

能 現在の芸術のために 土屋恵一郎

d0226702_1227716.jpg能 現在の芸術のために 土屋恵一郎 岩波現代文庫


絶版なのでアマゾンマーケットプレイスで購入。
身体へ、テキストへ、世阿弥へ、の三部構成。


面を選ぶということはどういう意味があるのか、そして歴史的に面とはどういう発展をしてきたのか。
装束の種類とその意味。
源氏物語に素材をとった能についてのところで連歌との関連を「源治寄合」という連歌のための辞書(今で言うなら慣用句あるいは警句辞典といったところ)に目を付けて論じているのは初めての知識でした。
幽玄、花、などの言葉に関する歴史的解釈の変遷についても触れています。

能はもともと民俗的なところから出発し、義満臨席の時の翁を座の長老ではなく、人気役者の観阿弥が舞った時点から能は規範に乗った秩序ではなく、人気と言うものに左右されるようになったと論じています。しかし、江戸時代になって武家式楽となり、また人気ではなく、「捧げもの」となったことによって、ある程度室町の形式が保存されたというのは歴史の皮肉ではないでしょうか。

十分面白かったのですが、どちらかと言うと哲学に寄った感じの本です。もっと史料に基づいて素人向けに論理を展開する本があれば面白いのに。
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by soymedica | 2013-04-18 12:28 | 能楽 | Comments(0)

第七回萬歳楽座 隅田川

d0226702_22404465.jpg第七回萬歳楽座
2013年4月12日(金)18時30分より@国立能楽堂
正面席12000円

舞囃子 鷺
金剛永謹
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 前川光長
地謡 豊嶋三千春ほか

隅田川 彩色
シテ 観世清和、子方 藤波重光
ワキ 宝生閑、ワキツレ 宝生欣哉
笛  藤田六郎兵衛、小鼓 大蔵源次郎、大鼓 亀井忠雄
後見 片山幽雪、木月孚行、藤波重彦
地謡 梅若玄祥ほか


切符もお高いけれど、いつもの通り豪華メンバーの会。隅田川の地謡なんて、あと九郎右衛門、大槻文蔵、観世喜正…。舞囃子のメンバーは(途中から入ったので誤解があるかもしれませんが)藤田が鷺を披いた時のメンバーが多く、そしてその時の大鼓は亀井広忠のお爺さんだったとか言う話。

切符が高いから売るのに苦労しているのか、今まで能に来なかった層に売ろうとしているのか、この会の客層は物凄く変わっている。というか、売る先をちょっとは考えた方が良いかも。
私のそばに座っていた夫婦と思しき60歳位のカップル。奥様は派手な色のややボディコン風のスーツ。恰幅の良い御主人はダブルのスーツ。ややマフィア風のいでたちは良いとして、二人で舞台見ながら感想を述べる。奥さんの方は多少能を知っているらしいが…。そして極めつけは隅田川のクライマックスで子供の幻影が母の袖の下をすり抜けるところで、旦那の方が声を出して笑った!!
自分の家でTV見てなさいよあなた。

と、若干ストレスフルな観能でありましたが、舞台は素敵でした。

舞囃子という若干地味な出しものでも、解説があると興味が深まるものです。曲のめでたさ、独特の足遣い、などの話がでました。金剛永謹という人はとても大柄な人なので損をしている、というのが大方の見方らしいのですが、確かに見栄えがします。女をやるときは損かも。鷺の足遣い、って横あるきなんですが、鳥ってそんなことしましたっけ。


隅田川は彩色(いろえ)。これは舟に乗る前にシテが、「わがおもうひとはありやなしやと」という謠のあとに舞台を一周する動作をいれそののち、鳥に目を留め「のう舟人どの」とよびかける、というものだそうです。

本日は宝生閑・欣哉の親子コンビ。閑の出だし、が今一つだったのでドキドキしましたが、舟中での語りはさすがでした。

シテの装束はグレーの水衣でした。裾のみが見える着物の模様はなんと稲穂。本日は3月の15日。京都を発ったのが秋だったのですね。
そして持っている笹は枯れ笹。悲しい感じを盛り立てます。笹を地面に打ち付けるところがあるのですが、かなりの葉っぱが飛び散って後見がごそごそ集めていました。

それにしても観世清和ってつくづく上手だな、と。舞や詞章が上手なのもちろん、地謡を聞きながら涙を抑えるところ、ちょっとうつむき加減のその角度まで綺麗。船頭の語りを聞きながらの微妙な仕草が絶妙。本日来て本当に良かったと思いました。

横道萬里雄の「能にも演出がある」によると、隅田川は色々な上演方法が考えられる能で、実際に囃子から作り物までかなりのバリエーションがあるらしいです。それだけ昔から皆に愛されてきた作品なのでしょう。
また見たいな、と思う作品です。


参考は
能にも演出がある 横道萬里雄 檜書店
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by soymedica | 2013-04-15 22:45 | 能楽 | Comments(0)

木母寺探検

有名な隅田川の主人公(出演しないこともあるけれど)、梅若の塚のあるお寺、木母寺に行ってみました。天台宗のお寺だそうです。

充実したホームページが作ってあって、勉強会なども開いたり、なかなか意欲的なお寺のようです。
最寄駅は鐘ヶ淵。駅はとってもちっちゃいです。カネボウと関係があるのだろうなと思っていたら、後で調べたら近くに発祥の地の碑があるらしい。行ってみればよかった。残念。d0226702_829925.jpgホームページの地図を見ながらでもお寺には簡単にたどりつけますが、駅前に交番もあります。駅前には幹線道路らしいものはなく、1.5車線くらいしかない複雑な形の道路をとりあえず川に向かって歩いて行くといつのまにか道が広くなって正面に物凄く大きな団地が出現。道路をまたいで延々川沿いに続きます。都営住宅らしい。何か防災上の理由があって川沿い屏風状なのでしょうけれど、これ自体一大スペクタクル。

それを潜り抜けると、とたんに交通量も少なくなり、人もいなくなります。
日本の昼間だからのんびり歩けますが、感覚としてはマンハッタンの川沿いの高層住宅(行ったことある人はわかると思いますが、昼間だって一人で旅行者が地図片手にボケっと歩いたら無事帰ってこられない)。
いまでこそ遠景には年寄りの日向ぼっこ、オバサンの犬の散歩などが見えてのどかですが、10年、20年後にこの治安が保たれているのだろうか?

ま、ともかく遠景にお寺らしきものが。下の写真の左が大団地、右の塔が木母寺
(後でわかったのですがこれは納骨堂でした。まだ分譲中ですよ)。
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川側から境内に入るとだ~れもいない。本堂はコンクリート造りのモダンな建物。川側の道から入ると左側にガラスに覆われた梅若堂。中にド派手な観音様だかの二対の木像がある。91年に撮影の写真にはこの像は無いので、比較的新しいものでしょう。それに並んで塚があり、これが有名な梅若塚。1976年に上述の団地のなかから移されたとのことです。
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そんな色々の写真を撮っていたら、20人ほどのおじさん(お爺さん?)の団体登場。謡蹟めぐり?と思ったけれどそうではなくて郷土史の勉強会の御一行のようでした。

梅若塚の横に絵馬をかけるところがあって、一応「芸道の神様」ということで売っているので絵馬にはおけいこ事が上手くなりますようにとの願いが多いです。絵は、江戸時代の縁起絵巻からとっているようで二種類。

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団地側の口から出ると、そこに「団地9号棟東にもとの梅若塚を示す碑がある」と書いてあるので、そこにも行ってみました。本当に普通の居室の真前。ちょっと広場になっていてお爺さんがお話に夢中。
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さて、お寺のホームページには近隣散策として長命寺までのルートがあるので行ってみようかと思ったのですが、良く地図を見るとあまりに遠いのでギブアップ。それに道がいかにもの産業道路の墨堤通りなので、左に折れて、百花園に行ってみました。

それにしてもこの団地、間に神社(隅田川神社)に向かう参道があったり保育園が二つもあったり、面白い作りです。
百花園は普通の感じの良い公園でした。通路が狭いので絵を描くには不向きですが、写真を撮る分にはよさそう。甘酒300円。

で、今回最も記憶に残ったのは巨大団地と川沿いの人気のない通りだったのでした。
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by soymedica | 2013-04-11 08:37 | 本・CD・その他 | Comments(0)

国立能楽堂4月定例公演 富士松 高野物狂

d0226702_1335725.jpg国立能楽堂4月定例公演 
4月6日(土)13時より 
正面席4800円

和泉流 富士松 
シテ(太郎冠者)野村万作、アド(主)石田幸雄

宝生流 高野物狂 
シテ 渡邉荀之助、子方 和久凛太郎
ワキ 福王和幸、 ワキツレ 村瀬提、村瀬慧
アイ 高山悠樹
笛 一噌庸二、小鼓 成田達志、大鼓 安福建雄
後見 高橋章、武田孝史
地謡 小倉敏克ほか


直面もの、現在もの、女出ず、という地味―な演目なのに何故か西洋人(どう考えても日本語を解するとは思えない面々)がたくさん、と思ったら観光バスのみなさんでした。男性も比較的多い客席、そして満席。

万作と石田幸雄の富士松。奉公人が勝手に旅行にいってしまういつものパターン。で、奉公人が賢いんだ。連歌が出てきてなかな難しい話ですが、そこは国立能楽堂。ちゃんと字幕が出てくるのがうれしい。
それにしてもいつも気になる万作の息の荒さ。肺気腫でもあるのかな。頑張ってほしいけれどお歳ですから…。


高野物狂。宝生流のものは最後に二人とも出家してしまうのがデフォールト。だから子方が僧形。観世流は高師が連れ帰るのがデフォールト、だから子方は派手な着物。2011年4月に国立能楽堂で観世流がもともとの二人とも出家する形の物をやっていて(お家断絶で演技が悪いと言うので江戸時代に台本を変えている)、それの詞章を見てみたら、ほぼ宝生流の詞章と同じでした。その時は子方の装束はどうしたのかな。

前回見たとき、地味な演目なのにとても面白かったので期待していたのですが、ちょっとがっかり。シテがあまりにも地味というか固い。そして地謡もちょっと…。
子方がとてもしっかりして頑張っていただけに(やるぞやるぞ、という表情をしているのが可愛い)、残念でした。
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by soymedica | 2013-04-08 13:37 | 能楽 | Comments(0)

世阿弥がいた場所

d0226702_21551872.jpg世阿弥がいた場所 能大成期の能と能役者をめぐる環境 天野文雄 ペリカン社

世阿弥、観阿弥と時の権力者の関係を勘案しつつ、種々の曲の作成動機を探る論文集。
阿弥号を持った者たちと時の権力者足利氏そして天皇家との関係を考察。そして、自然居士、難波、白楽天、養老、老松などの曲が作られた背景について考察します。それぞれ、ささげられた対象は天皇であったのか、将軍であったのか。天皇と将軍の関係はどうであったのか、など、門外漢から見ても論文とはこうあるべきでは、というちゃんと資料に基づいた考察がなされています。

とても面白い論旨の運び方でなかなかエキサイティングなのですが、漢文そのままひかれているのでちょと辛い。ここに読み下し文と細かい解説をお願いしたいところ。

そして、ハードカバーの650ページは持ち歩くにも寝床で読むにも大変。上下に分けてくれたらよかったのに。
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by soymedica | 2013-04-04 21:56 | 本・CD・その他 | Comments(0)

木月孚行の会 羽衣 鐘の音 正尊

d0226702_1813239.jpg独立四十五周年記念 第二十回 木月孚行の会2013年3月30日(土)@観世能楽堂
正面席10000円

羽衣 彩色之伝
シテ 木月孚行、ワキ 宝生閑
笛 一噌仙幸、小鼓 大蔵源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 観世元伯
後見 武田志房、寺井栄
地謡 野村四郎ほか

鐘の音 
シテ 山本東次郎、アド(主)山本則孝、山本凛太郎

正尊 起請文 翔入
シテ(正尊)観世清和
ツレ(義経)角寛次郎、(静)武田章志、(江田)山階彌右衛門、(熊井)観世芳伸、
ワキ 森常好、アイ 山本則孝
姉和 野村昌司、朗等 清水義也、坂井音雅、武田文志、武田宗典、角幸二郎、坂井音隆、木月章行、武田友志
笛 一噌隆之、小鼓 幸清次郎、大鼓 国川純、太鼓 観世元伯
後見 関根祥六 武田宗和、武田尚浩
地謡 谷村一太郎ほか


先日落語に行ったらこんな話のマクラが:
歌舞伎の客は俳優のファン。文楽の客はオタク。能の客は「能を見ている自分」のファン。だそうですヨ。


羽衣のシテはこの会の主人公、ですからワキから囃子、地謡にいたるまで豪華メンバー。宝生閑、とっても気になるのですが、まだ本調子では無い。あんなに緊張した表情なのは本人もそれを自覚しているのでしょう。
色々と考えるところのある舞台でしたが、羽衣ってこんなすごいメンバーでこんな平均年齢でやるものなのだろうか。もっと若手で軽く、明るくやってほしい。今まで観た中での最高のメンバーでしたが、最高の出来とは感じられませんでした。


鐘の音は昔、野村萬で見ました。細部はちょっと違いますが、東次郎の鐘の音も良かったです。おめでたいものですね。持っていた扇が銀色でとてもきれいでした。


正尊は二度目。観世清和、これが好きなのだろうか。昨年の2月にも宝生欣哉のワキで見ましたが、今回は森常好。最近絶好調の森と比較すると、とっても残念だけれど宝生閑は残照という感じです。でも、いつまでも元気でいてくれればいいや。
(でも森常好、お辞儀する時手が床につかないんですよ、ちょっと痩せないと。)

まず義経、静たちが出てくるのですが、武田章志クン、いくつなのだろう。物凄く小さくて衣装を着て歩くのがやっとという感じに見えます。ま、舞台だと誰でも幼く見えますが。

病と称して引っ込んでいるあやしい正尊。弁慶が手を引いて義経の前に引き出す。出てきた正尊、「いえ、本当にお参りなんです」と起請文を読む。もともとここはワキの読むもので「起請文」の小書きのときにシテが読むそうです。それにしても観世清和、この沙門帽子というのでしょうか、金襴のかぶり物が似合います。

この後静の舞。ちゃんとした中の舞なので大丈夫か。途中で「ん?中の舞ってこんなだったっけ」と思っていたら凍りついたように動かなくなる子方。(囃子方って凄いですね、冷静に演奏し続ける。)後見がやってきてお手伝い。でもワカのあたりで後見は引っ込んじゃうんですよ。後見の皆さん、シテはベテランで一人でできるんだから、子方を見ていてあげなさいよー、と思ったのは私だけではないはず。

色んな意味で緊迫した静の舞が終わり、正尊は幕へ。ここで振り返って義経を見据えるのが注目の場面だと山崎雄一郎さんの解説(お家の会だというのに、凄い力の入り方のパンフレットですよね)にあります。ふだんあまり表情を作らない能ではめずらしいですね。

そして義経が女に様子を見させると、先にやった禿が切り捨てられているし、正尊は討ち入り支度の真っ最中。それを聞いてこちらも(静も)勇ましく準備をします。でも義経も弁慶も支度は立派だけれど、実際にやっつけるのは家元の双子の弟、江田と熊井です。双子の与える視覚的面白さを十分に狙った切り組ですね。

郎党が勢ぞろいして橋掛かりにたつと、見所からため息が。豪華です。切り組になり、立派な倒れ方をすると、見所から「おー」という声が上がったり、拍手する人がいたり。皆たっぷり楽しみました。
最後に正尊に縄をかけて退場(もうちょっとスムースにやってほしかったかな)。


参考は
能舞台の主人公たち 権藤芳一 淡交社 
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by soymedica | 2013-04-01 18:17 | 能楽 | Comments(0)