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観世宗家展

d0226702_014311.jpg観世宗家展 
@松屋銀座 2012年12月27日(木)~2013年1月21日(月)
入館料大人1000円

皆さまの評判が良いので行ってきました。大倉集古館のときよりも会場が広いので展示に工夫が凝らされていて、「デパートでやっていたからたまたま入った」と言う人にもわかりやすい展示になっていました。結論から言うと、Twitterの皆さまのお勧めのように、行って良かったです。

能装束、面、書籍の展示となっていました。面は裏側から見られるものも多かったです。
会場には、翁(三郎太、裕基クンの出ているバージョン)、道成寺(野村萬斎が奇声をあげて転げまわっている)、観世清和が能の型を説明しているものなどの映像も流れています。

そして勧められて買った図録が出色。解説は無くてほぼ展示品の写真集なのですが、特筆すべきは展示してあった装束を実際に着ている写真が載っていること。ああ、あれが着るとこうなるのか、と。
DVDはいろんな曲のハイライト部分です。

それにしても銀座松屋、久しぶりでした。会場出口のところのいかにも「裏」というレイアウトをなんとかしたほうがよろしいでしょう。
そして、関連商品の販売している中の人とレジの人とのゴタゴタがお客さんにわかるようではいけませんね。(ちなみに何故かレジはとても非能率ですので、怒らないように。接客態度は大変よろしいです。)
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by soymedica | 2012-12-31 00:04 | 本・CD・その他 | Comments(2)

岩波セミナーブックス83 中世芸能を読む 松岡心平

d0226702_1930778.jpg岩波セミナーブックス83 中世芸能を読む 松岡心平 2002年2月25日 第一刷

1997年のセミナーをまとめたもの。勧進による展開、天皇制と芸能、連歌的想像力、禅の契機の4章からなっています。

一章では中世では寺社の収入は勧進によるところが多く、その際の説法に猿楽や田楽、平曲が付け足された形式が普通であったろう。しかも猿楽や平曲の内容は最初の説法を易しく説きなおすものであった。勧進聖の語る物語が夢幻能の起源であったろうと語っています。ここで松岡心平の本によく引用される、今昔物語の「修行僧越中の立山に至りて少女に会ふこと」を引いて説明しています。

二章は天皇制と芸能。10世紀に登場する延喜式に「穢れ」の定義が明らかになってくるそうですが、常に清浄であらねばならぬ天皇のために清目と言われる非人身分の芸能者が出てくる。この両者を媒介するのが検非違使。ここから蝉丸説話、後戸の申樂へと話は広がっていきます。この章が一番面白い。

三章は連歌的想像力と題して、花のもとの連歌とは何か。しだれ桜の下には霊界があって、その霊を静める意味もあったこと、そして連歌においてはその場では身分を隠す身分を離れる、という思想があり、そこから生まれた濃密な人間関係のことを一揆と言ったのだと。

四章は禅の契機。ここは中国、日本の禅僧がいかに交流したか、いかに文化を作り上げたかについてです。禅宗は京都ではなかなか独立した派としては受け入れられず、最初鎌倉に入ったこと(比叡山の力が強かったため)、自然居士(実在の人物)はなぜあのような芸能を行ったかなどについて。また、このころ鎌倉から出た早歌(そうか)がいかに能に影響をあたえたのか―たくさんの言葉を乗せることができたので、筋のある歌をつくることができ、ミュージカル(能)が可能となった―などと出ています。

セミナーを起こした物なのでまとまりには欠けますが、その分読みやすいです。
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by soymedica | 2012-12-29 19:31 | 本・CD・その他 | Comments(0)

観能前・後、何処で何を食べるか!?

d0226702_22402424.jpg能楽堂のそばで食べる



《宝生能楽堂》

ソウルフードインディアhttp://www.sf-india.com/
昼に行きました。駅から行くと能楽堂を越えて3分ほど歩いたところです。美味しかったです。作っているのはインド人のおじさんですが、サービスは日本人なので大丈夫。たっぷりした量あり。小さな店です。カウンター有りなので、一人でも気兼ねなし。

ラ・クッチーナ・ビバーチェhttp://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13137588/
これも昼です。カウンターとテーブルの店。どんなに空いていても一人客はカウンターに案内するポリシーと見ました。それも面白い。(一人で行くならカウンターお勧め。)どこと言って特徴のないパスタランチでしたが、値段に見合ったものなので、納得。カウンターの中の人数(3人ほどで仕込中)と仕事ぶりを考えるに、力点は夜かも。


《国立能楽堂》

津田ホール地下、ユーハイムhttp://r.tabelog.com/tokyo/A1309/A130901/13013631/
千駄ヶ谷駅前の横断歩道を渡ったところ。あのユーハイムですから一定の味は常に保たれています。店は広く、明るい感じ。カフェなのでサービスが速く、急ぐ時の軽食に最適。開演前に行きましたが、夜は何時までか不明。

タンタボッカhttp://www.tanta-bocca.com/
能楽堂に北参道や代々木から行くのなら、便利。ランチでもサービスに若干時間がかかるので、ぎりぎりの時にはお勧めしませんが、美味しかったです。夜にきちんとしたものを食べてみようかと思わせる店。ランチが1000円前後からあったと思います。

国立能楽堂内 向日葵
何となく昭和の香りがします。メニュー構成と言い、レジのおじさん(想像するところ、彼がオーナーではないかと)をはじめとする従業員と言い。
お弁当はちょっと割高な感じ。カレーや焼きそば系統は(長崎ちゃんぽんを食べました)まあ、お値段相応。
店の人は親切ですが、洗練されてはいません。
おそらくテーブルや椅子は能楽堂提供なのでは。入札で業者を決めるのでしょうけれど、なかなか経営は難しいかも。団体さんで息をついている感じ。

Alla Cucina del Sole  http://r.tabelog.com/tokyo/A1309/A130901/13001985/
お昼に入りました。ランチ1000円くらい。シェフ一人でサービスもやっているので、大変そうですが、そもそもそういう形態なので作り置きが多く、さっと食べられます。どこかにある店の支店らしいです。ちょっとわきに入ったところ(下記の店を超えて商店街を左に曲がったところ、北参道)なのでわかりにくいですが、常連さんがついているようです。

レストラン オースーhttp://r.tabelog.com/tokyo/A1304/A130403/13007488/
1994年からやっているらしい。千駄ヶ谷の駅から能樂堂に向って線路に沿って歩いて行きますよね、能楽堂で曲がらないでちょっと行ったところ。昼は1500円で前菜、パスタ、デザート、お茶。美味しかった。夜はアラカルトもあるそうですが、小さいほうのコースはおなじく1500円だそうです。二人がけのテーブルも多いので、平日公演の後に一人で来る店として使えそう(ラストオーダー10時だそうです)。



《喜多能楽堂》
目黒駅のアトレで何か買って持っていくか、アトレの中チェーンで食べたことしかないです。昔白金台の側の商店街に好きな居酒屋があったのだけれど、無くなってしまった。また探検してみよう。
能楽堂側には何もありません。土日は杉野の中のコンビニも休みですので、要注意。


だれか、(雑誌「花もよ」あたりで)能楽堂そばのグルメ特集してくれないかな。
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by soymedica | 2012-12-26 22:51 | 本・CD・その他 | Comments(0)

花の会 屋島

d0226702_1135654.jpg花の会
12月16日@観世能楽堂
正面席1万円

屋島 大事 奈須與市語
シテ 観世清和、ツレ 坂口貴信
ワキ 森常好、ワキツレ 森常太郎、則久英志
アイ 野村萬斎
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠
後見 武田宗和、上田公威、野村昌司
地頭 岡久広



最初から見る予定だったら昼に九州から出てくる友人と会うことに。よって涙をのんで東次郎の月見座頭をあきらめて、屋島から。

観世清和のツレは坂口貴信ということになったのか、なんだかいつもこの組み合わせてみているようなきがします。この人のすっきりした感じを家元が好むというのは何となくわかる感じ。どこかで坂口は腰を痛めたと聞いたような気がするのだけれど、そんな感じではありませんでしたね。

屋島前半は謡を聞かせ、後半は…ここでもやっぱり弓を拾ったりという演技はあるのだけれど、「ことば」が大事。そしてアイの語りも見せ場。昔の人はこれを見ながら「そうそう、これは平家物語のあの名場面、次は…」などと楽しんだのでしょうか。

後シテの登場場面では、特殊な囃子が演奏されるとこのこと。(前に見た普通バージョンのときにどんなものだったか覚えていないのですが)、確かにものすごく力強く、何が出てくるのか…と期待させる。衣装が真っ赤に黒っぽい斧の書いてある半切り。「何事か!」と思わせる派手さ。家元はやはり「見せ場」を作るのが上手いな、と感じました。

友人との会食のあとだったのでいささかアルコールも入っており、ぼーっとしていたのですが、やっぱり那須与一語はすごかった。前に万作のものは世田谷パブリックシアターでそれだけを見たことがあるのだけれど、劇的効果という点では萬斎に軍配が上がると思います。見事です。本当に見てきたような…。

前場の盛り上がりから、間語り、そして後場と、観客には緊張が強いられる演目・演者でしたが、大満足の1日でした。


所で、切符のお値段の話ですが、これは「何番見られるか」「定期公演かどうか」「誰が演者か」で決まるのでしょうね。とすると、これ、もう5000円ほど上の席は乗せても売れたのではないでしょうか。まあ、その辺の見極めは難しいかもしれませんが。
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by soymedica | 2012-12-22 11:39 | 能楽 | Comments(0)

ユネスコによる無形文化遺産能楽 第5回公演 恋重荷 隠狸 安宅

d0226702_8195398.jpgユネスコによる無形文化遺産能楽 第5回公演
2012年12月15日(土)13時30分より@国立能楽堂
正面席15000円


恋重荷(金春流)
シテ 金春安明、ツレ 辻井八郎、ワキ 殿田謙吉、アイ 石田幸雄
笛 藤田朝太郎、小鼓 幸清次郎、大鼓 安福建雄、太鼓 小寺佐七
後見 守屋泰利、横山紳一
地謡 本田光洋ほか

隠狸 
シテ 三宅右近、アド 野村万作

安宅 延年之舞 貝立貝付(喜多流)
シテ 粟谷能夫
立衆 谷大作、大島輝久、佐々木多門、粟谷浩之、内田成信、金子敬一郎、友枝雄人、狩野了一、
子方 金子天晟
ワキ 宝生閑、アイ 山本則俊、(強力)山本東次郎
笛 杉市和、小鼓 曽和正博、大鼓 國川純
後見 内田安信、塩津哲生、中村邦生
地謡 友枝昭世ほか


有名な恋重荷。似た題材を扱った「綾鼓」よりやはり作品として完成度が高く、面白く見ることができました。もちろん演者の力量にもよるのでしょうが。
あらすじは皆さま御存知かもしれませんが、高貴な女性に恋をした庭師が「この荷物を持って庭を回ったらお姿を拝ませてやろう」と言われ喜ぶのです。実はその荷物は岩を綺麗につつんだもので、持ちあがるはずが無い。絶望して死んだ庭師を見に来た女御は怨念のために動けなくなってしまう。そこに鬼になった庭師がやってきて女御を責めるけれど、最後は「あなたの守り神になろう」と言って去っていくというもの。

最初に後見が重荷を軽々と(!)持って登場。次いで全くの静寂の中、女御とワキの白河院の臣下がやってきます。全く音楽の無い中、臣下は名のります。最初の地謡のところまで全く音楽なし。私は観世流の詞章を持っていたのですが、これが金春と色々違って面白かったです。最後突然鬼が「守り神」になってしまうところが詞章のみだと唐突な感じなのですが、舞台になるとあまり気になりませんでした。

シテはちょっと特徴のある鼻にかかった謡で面白い。つま先が開いてハの字になっている足さばきが特徴的。
ツレも謡は少ないけれど良かったです。ただ座っているだけで「煩く」感じる人というのがいますが、煩くなくしかも存在感ありました。

この演目は初めてだったので、もっと良く知っている曲でこのシテをもう一度見てみたいです。そういう楽しみ方ができるのも能ですね。


隠狸。どーいうわけか、所々眠気が我慢できず…。せっかくのコンビだったのに残念。忘年会続きだからかな。でも、後半は何とか起きていましたよ。小舞、練習して忘年会でやったらどうかな、とぼんやり見ていました。もっと気を入れてみておくべき演者だったのに。


安宅。やっぱり宝生閑は良いです。ワキ狙いで切符買ってみようかな。そして強力が東次郎。山本則俊も良かったです。
あ、肝心のシテ。粟谷能夫って、ハンサムですね。弁慶と言うにはあんまり強そうではないけれど。前に見た香川靖嗣の安宅とは、同じ喜多流といってもずいぶん受ける印象が違う。香川は意識して力強さを前面にだしていましたが、こちらは群舞を見るよう。
勧進帳を読み上げるときの動きは観世流の方が大きいですかね。

無事関を通過し、追ってきた富樫との宴会では大きな舞を舞って(延年の舞の小書付きのときには扇を左手に持ち替えたら飛び上がるから良く見るように、とパンフレットに丁寧に書いてあって親切)、長居は無用と一目散に逃げ出します。

いくら相手が怪しくても、多勢に無勢だったらいったんは関を通し、追いかけて酒を飲ませて情報をとるくらいしかできないだろうし、富樫はお役目御苦労さまなことでした。
でも、普通だったらあそこで賄賂を渡して通ることを考えるのではないだろうか。


どういう経由で切符が売られたのか、「能は初めて」という方たちが私の周囲には多かったようです。皆楽しんでくれたかな。
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by soymedica | 2012-12-19 08:22 | 能楽 | Comments(0)

銕仙会定期公演12月 柏崎 素袍落 猩々乱

d0226702_7531233.jpg銕仙会定期公演12月
@宝生能楽堂 18時から
正面席6000円

柏崎 
シテ 観世銕之丞、ワキ(小太郎)殿田謙吉、ワキツレ(善光寺住僧)宝生欣哉
子方 谷本悠太朗
笛 一噌仙幸、小鼓 観世新九郎、大鼓 柿原弘和
地頭 浅井文義

素袍落シテ 野村万蔵、アド(主) 野村扇丞、小アド(伯父)野村萬

猩々乱
シテ 安藤貴康、ワキ 宝生朝哉
笛 藤田次郎、小鼓 田辺恭資、 大鼓 亀井洋佑、太鼓 林雄一郎
地頭 林雄一郎


後楽園で嵐の公演があるらしく、駅まえには「チケット譲って」のお嬢さんたちがいっぱい…。

柏崎でございました。柏崎の奥方がしずしずと出てきて腰かけます。あとから小太郎が出てきます。奥方が色なしの地味な着物、小太郎も紺を基調とした装束なので、舞台が全体に非常に落ち着いた色となります。
小太郎の道行の間、奥方はうつむいて微動だにせず。銕之丞のふくよかな体系が、「奥方」という想定にマッチ。

小太郎が「ご主人は亡くなり、息子さんは書置きを置いて出て行かれました」と報告。衝撃を受けた奥方は物狂いとなって息子を探す旅に出ます。

さて、場所は変わって善光寺。お坊さんがとてもかわいらしい弟子を連れている。宝生欣哉、謡の感じは閑とはちょとちがうけれど(もっと若い)、声の質がそっくりで本日改めてびっくり。連れている弟子は金の角帽子をかぶって、いかにも大切にされている感じ。

後のシテ、とても素敵でした。夫の狩衣、烏帽子をつけて舞います。そして、息子に会って喜ぶ感じがあんなに様式化された舞台でもよくわかる。ここのクセは難しいのだそうですね。
それにしても花若は何歳という想定なのだろうか。世をはかなんで仏道修行にでちゃうというのはかなりの年齢化と思うのだが、最後にママが迎えに来るとすぐ一緒に帰っちゃう…。 

子方クン、みけんに皺が寄っているのでは、と思うほどの熱演でした。下掛だと大分セリフもある役らしいのですが。またどこかで見られるかな。楽しみにしていますよ。

こういう曲だからでしょうか、笛が枯れていて良かったです。


素袍落。そしてこのあと猩々というのは年末でもあるし、酒を飲みましょうということか。太郎冠者の万蔵、美味しそうに飲むんですよ。でも、古着でもあんなに嬉しかった時代があったのですね。熱演でした。


猩々。まず出てきた高風の宝生朝哉。おそらく欣哉の息子、閑の孫。身長も十分、声も大人の声だけれど、どこかに子供を引きずっている感じ(批判じゃなくて、ただ印象です)。幾つ位だろうか。もしかしてまだ中学生ぐらいなのではと思わせる(違ったら失礼)。

立派に名乗った高風が待っているとそこに猩々がやってくる。そしてみごとな舞を舞うのです。安藤貴康は開きだということです(by Twitter)。綺麗な動きで私のような素人にはとても素敵に見えるのだけれど、やっぱり何回もやっているベテラン(つい最近見たのが観世清和、それから金剛永謹とか…、比べたら気の毒ですが)とは違う。同じ動きをしても、ベテランは見せ場をつくるとかメリハリをつけることができるようになるのでしょうね。

そして笛以外は何だか皆若い舞台でした。清々しかった。


…帰りは「嵐」のお客さんともろに被りました。あちらも楽しかったみたいですよ。
写真は、先日の満次郎の会で東北支援で売っていたお酒。美味しかった。
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by soymedica | 2012-12-17 08:01 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂12月企画公演 井杭 大会

d0226702_15285567.jpg国立能楽堂企画公演12月 
12月7日(金)18時30分より
正面席 6100円


井杭(和泉流)
シテ 野村万作、アド(何某)月崎晴夫、(算置)石田幸雄

大会(喜多流)
シテ 高林白牛口二、ツレ 大島輝久
ワキ 福王和幸
アイ(京童)野村萬斎、竹山悠樹
アイ(木葉天狗)深田博治、高野和憲、内藤連、岡聡史
笛 一噌幸弘、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 徳田宗久
後見 中村邦生、高林呻二
地謡 香川靖嗣ほか



まずは不思議な隠れ頭巾をもらった井杭のお話。前に見たときは野村裕基クンが井杭でしたが、大人がやってもなかなか面白いものですね。万作のとぼけた感じと石田幸雄のもっともらしい感じが面白かった。


大会は、命を助けられた天狗が恩人の僧正に釈迦の霊鷲山での説法の様子を見せるが、僧正が信心を起こしてしまうので、帝釈天に怒られるという話。
本日は天狗が命を助けられる場面が冒頭に加えられており、そこを萬斎と竹山悠樹が熱演。昭和六十年に銕仙会で初演されたバージョンだそうです。もちろんここの小劇はとても面白く満足したのですが、前回見たときのこれが無いバージョンでも木葉天狗の相談で十分話の筋は伝わります。全体を一つの芝居として見たときには、無い方がすっきりして私好み。

鳶の姿になった天狗を助ける僧正は福王和幸。扇と数珠を京童にやって鳶を助けます。くらいの高いお坊様と言う感じで床几にかかった上に後ろにはワキ後見が控えています。
山伏姿の天狗がやってきて「あのときはどうも」。高林白牛口二さん1935年生まれとのことで、白髪がきれい。怪しい天狗(名前も狂言方によって違ってくるらしい)の割に上品でございます。

霊鷲山での説法の様子(大会)が見たいと言われ、退場した天狗。子分の木葉天狗たちが出てきて、じゃあ自分たちは装束の安上がりなおびんずる様になろうと可愛らしい。前に見たときには袈裟をかけるだけではなく色々していたような記憶があるのですが、今回は石田幸雄が袈裟をかけてやるだけ。

いよいよお釈迦さまに化けたシテ登場。前シテで拝見した細身の体格からすると、そうとうにあのお姿は苦しいのでは。一畳台の上の椅子に収まるのに一回目は足があがりきりませんでした。
釈迦の両側にアイが座るのも上記の銕仙会バージョンだそうです。
お釈迦様が経を読むときに顔の真前に広げてしまうのはちょっと。

あまりのありがたさに僧正が信心をおこしてしまうと、帝釈天がやってきます。気付いた木葉天狗は茸歩きをして左右に散り散りに。天狗も台から降りてやおら天狗の姿に変身。特に隠すでもなく、後ろを向いただけで後見が一生懸命変身させます。一応帝釈天と戦っては見るものの、岩洞に逃げ込みます。完全に退治されないで、怒られるだけ、というのもこの曲の可愛らしさ。

前に銕仙会で見たときの方がシテが若かったせいか型付けも派手で楽しかった。あんまり80歳に近い偉いシテのやる曲では無いような気がします。
面の二枚掛けは喜多流のもので、ほかの流儀はもともとべし見だけでやっていたのだそうですよ。

シテの面は大ベシ見、釈迦、ツレは天神。


参考は清田弘 能の表現 草思社(このちょっと変わった曲について良く書いてあります。是非。)
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by soymedica | 2012-12-09 15:30 | 能楽 | Comments(0)

うつぼ舟 翁と河勝 梅原猛 

d0226702_003995.jpgうつぼ舟Ⅰ 翁と河勝 梅原猛
角川学芸出版 2008年12月10日初版発行

昔々子供のころ「隠された十字架」を読んだ記憶があって(内容は忘れた)、結構面白かった記憶が。
秦河勝が大荒大明神になった話から始まって、広隆寺の牛祭り、川勝一族の由来、奈良豆比古神社の三人翁、さらには「翁」とは何か、摩多羅神とはまで、の内容です。さすがに梅原猛、読ませます。素人が読んで面白いテンポ、面白い章建て、単純な文章の組み立て方(ためしに英語に訳すことを考えてみてください。用語はともかく、文法的には簡単。)。

この人の本に限らず、中沢新一などの本でも感じることですが、「そんなちっぽけな事実からそんな大胆な結論を!」と思えるのが良いところ。前提と事実が大きく間違っていなければ、大きく推論したほうが勝ちなのがこの世界らしい。後で他人が検証できないような論旨を展開してはいけない、というルールは無いんだな、ってだんだんわかってきました。
このシリーズ、2巻は能学研究者の間では若干トンデモ本扱いされているようですが、それも読んでみようかな。
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by soymedica | 2012-12-07 00:02 | 本・CD・その他 | Comments(0)

第四回満次郎の会 昼の部  花盗 葛城

d0226702_17594016.jpg第四回満次郎の会 昼の部
12月1日(土)13時半より @宝生能楽堂
正面席 8000円

解説 村瀬和子
仕舞

網之段 和久荘太郎
笠之段 佐野登

狂言 花盗人
シテ 野村万蔵、アド 野村扇丞

仕舞 西行桜(クセ) 高橋章

能 葛城 神楽
シテ 辰巳満次郎、ワキ 森常好、ワキツレ 森常太郎、アイ 野村太一郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原弘和、太鼓 観世元伯
後見 宝生和英、山内崇生
地謡 高橋章ほか


初めての満次郎の会に行ってきました。入ると辰巳満次郎本人がロビーで御挨拶。大きな人ですねー。(一緒に写真撮ってくださいといったら喜んでくれそうな感じの人。)
ロビーの雰囲気ですが、個人の会にありがちな閉鎖的雰囲気は無く、「チラシ見て切符買いました」という感じのかたや、若い人も多く、極めて感じよろし。宝生はだいたいこういう感じの会が多いかも。
ロビーには辰巳家につたわる能装束が飾られ、いけばな作家(熊野寿哉)の手になる葛城の神も(写真)。口から出てくる赤いものは言霊(薔薇の実を使っているそう)ですって。

村瀬さんの解説。ロビーでお見かけした時も、切戸口から出ていらっしゃる時もちょっと足が…。ロビーでは杖を使っていらっしゃいました。立って解説なさるのは御本人の希望かもしれませんが、腰かけていただいても聴衆としては一向かまいません。
メモが乱れてお話が一時止まってしまいましたが、いつものように優しげな語り口でした。葛城の神が一言主とおなじ、でも能では演出上の都合により女神になっているということでした。能以外では女体となる伝承はないのですかね。

花盗人。なんとなくテンポに乗れなくて眠くなってしまった。ごめんなさい。


さて、いよいよ葛城。久しぶりに大倉源次郎の小鼓を聞いたのですが、やはりこの人上手、と出だしからはっとさせられました。
出羽の国の山伏があまりの雪に途方に暮れていると、揚幕の奥の奥から呼びかける声。この声で一挙に客席の心を引きよせるカリスマ性のある役者さんですね。ワキはベテランでないと務まらないでしょう。これでは存在感の無いワキだったら辛いでしょうね。

笠を深くかぶった姿で登場。
背中の粗朶をおろし、笠も脱ぎ、水衣をつけます。そこで立ちあがったとき、着物の裾が少し…。上前が落ちてしまっているような印象。私は実はあれが気になって気になって、あんまり集中できなかった。私、この曲は前半が好きだし、シテの謡もセリフも素晴らしかったのでとても残念でした。

後半は白く光り輝く女神登場。さすがに美しい中にも力強く、仕舞に退屈しやすい私でも楽しく見られました。心なしか地謡が遠慮した感じで優しいのが私の好みでなく、残念。

頭には本物の葛を使っていると、村瀬さんの解説にありましたが、葉の大きさからするといわゆる「クズ」では無く別のツタかもしれません。
ここでは珍しい小書き「神楽」があるので、仕舞がちょっと長く特殊なものになるのだそうです。幣を持って舞い、幕入り直前でそれを捨てます。ワキが合掌して留めます。


ワキツレは森常好の息子さんだと思うのですが、いったん座ってからちょっと位置をずらしていました(ワキの邪魔になる位置だったのかな)。ああいうことがあるんだな、と面白く思いました。

村瀬先生の解説によると、前シテは河内作の曲見、後は泣増だそうです。



神と仏の関係について最近読んで面白かったこれ、ちょっと見直してみようかなと思う舞台でした。
「神道とは何か 神と仏の日本史 伊藤聡 中公新書」
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by soymedica | 2012-12-02 18:00 | 能楽 | Comments(0)