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昭和能楽黄金期

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昭和能楽黄金期 山崎有一郎 三浦裕子 檜書店
2006年1月23日第一刷

横浜能楽堂の館長の回顧録聞書き。
「昭和」と言ってもこの人の昭和は太平洋戦争以前のことです。だって1913年生まれですから。「冥の会」のあたりはもう記憶の中心では無い。能楽堂の設計かとして有名な山崎樂堂の息子に生まれ、ねえやに手を引かれて喜多流の謡を5歳の時から習っていたそうです。もうこの辺の情景になると私には昭和なのか、明治なのかよく分からない。

過去の東京地図と能樂堂の位置、各能役者の生年と没年を一覧にしたものが付いていて便利ですが、系図もあるともっと分かりやすかったかもしれない。

私なんぞから見ると、この人のお父さんは本当のエスタブリッシュメントであり、この人も戦前の早稲田卒ですからおぼっちゃん。お父さんやその周辺の人たちは、その発言、その行動が即日本の行方に影響を与えた人たちだったのでしょう。失われた社会階層ですね。著者たちが学生を集めて安く能を見る運動をした、という述懐のところで「われわれ大衆」という言葉が出てきて笑っちゃった。本気なんですかね??謙遜なのかな?今でこそ大学生は「大衆」かもしれませんが。

こういう人たちが能を支えていた時代ははるか昔になってしまい、今や「お父さんはソニーのサラリーマンでしたが、ぼくは大学で演劇(あるいは古典、あるいは歴史)を学んで高校の先生か、運が良ければ学者か学芸員になれれば」という人たちをターゲットにしなくてはならない。あるいは「オペラも好きですが、能もちょっと」という人を取り込まなくてはならない。

その辺の転換期が太平洋戦争の終ったあとにあったはずなのですが、そこを社会史的に見つめた研究が出てくるのが待ち遠しいです。

ま、それはともあれ観梅問題については一番よく知っている立場なのだからもっと書いてほしかったな。しかし、それ以前にこの問題を外から見る、当時の自分たちの影響力と金力で何とかするという政治的折衝能力に決定的に欠けていたのが当時の愛能家だったのかもしれない。ただ、当時の梅若の能がどんなだったかについてはこの人以上に書けるものはないでしょう。

はるか昔の穏やかで上品な知的エリートの回顧録であります。
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by soymedica | 2012-05-31 21:05 | 本・CD・その他 | Comments(2)

能に親しむ 観世流 安達原

d0226702_20481121.jpg能に親しむ 観世流 安達原
2011年5月26日(土)14時より@セルリアンタワー能楽堂
正面席7000円

対談 暦・能楽名言集
関根祥六、柳沢新治


能 安達原 黒頭
シテ 山階彌右衛門、ワキ 村瀬提、アイ 三宅右近
笛 一噌隆之、小鼓 鳥山直也、大鼓 大倉栄太郎、太鼓 小寺佐七
後見 高梨良一、高梨万里


セルリアンのカフェでお昼をしたら、右も左も私立小学校受験塾帰りかな?と言う感じの親子連れ。模擬試験の後なのか、やれやれと言っ感じでお昼ご飯。素人の私が見ていてもはっきり「取りたい家庭の子」というのが際立つのが面白い。


さて、「暦・能楽名言集」とは何かと思ったら、関根祥六が作った能の名文句の日めくり。31あります。還暦の時に最初に作り、その後(傘寿だったか喜寿だったか)にもう一度配った暦だそうです。二十二が「三光西に行くことは衆生をして西方に勧め入れんが為とかや(姥捨)」なのですが、二十二日が息子さんの月命日になってしまったそうです。
関根祥六は十六の時に母親と死に分かれたそうですが、「その時も悲しかったけれど、息子に先立たれた時にはもっと悲しかった」と。息子さんは亡くなった時五十歳だったそうです。

対談相手の柳沢新治はアナウンサーだそうで、話す言葉が明瞭。関根祥六、話す言葉は何だか聞き取りにくいのですが、謡となるととたんに言語明瞭というのが凄い。装束を着けて舞うのもう無理だという感じですが、この謡だったらもちろんお金を払って聞きたい。


でも、やはり疲れるのでしょうね。安達原では謡の後列がいつまでたっても出てこない、中入りでも引っこんでしまう。おそらく地頭の関根祥六の体調を考えてのことなのでしょう。

さて、あまり馴染みのない(前に見たことはあるのですが、記憶に残っていない)ワキ登場。道行が全く省略されていきなり陸奥に着いてしまいます。この演出には若干無理があるのでは。客もいま一つのれませんし、ワキもあきらかに調子が出るのが遅かった。最初このワキはいま一つだと思ったのですが、後半グングンよくなった所からも、ワキとしてはやりにくい演出だったのでは。

シテはやはり謡が良い。そして、演技も今回とても良かったです。芸術だのなんだの難しいことを考えずに、技術、練習と考えるタイプなのではないだろうか(私としてはこれはほめ言葉)。払ったお金の分は十分楽しみました。

東北の見渡す限りの無人の地にぽつんと立つあばら家に住む、若くもない女(面は姥かな)。どうしても泊めてくれという山伏の一行を泊めてやって、糸紡ぎまで見せてやる。ここが演技・謡ともに一つの見せどころなのですが、堪能しました。しかもこの女主人、夜寒に客のために薪まで取りに行く。閨を覗くなと言ったのに、失礼な客は覗く。ここの三宅右近が良かったです。閨には山ほどの腐乱死体が。覗かれたことに気づき、薪を背負って帰ってきたところで女は鬼になってしまう。
ちゃんと粗朶を背負ってきて、それを落とす型があるのですね。

幕が全部上がって後シテの全身がいったん見えた後、再び幕が下り、そして橋掛かりに登場、という演出があります。それだけのことなのに何となくおどろおどろしくて怖い。

覗かなければこの一行は何事もなく帰れたのではないか。覗かなかったら女主人は一行を「殺して食べたい」と一晩中悶々としつつ、何もしないのではないか。祈り倒すのではなく、成仏を祈ってやったらどうなのか、などと考えるのですが、みなさんはいかがお考えでしょうか。
そして鬼のシテ柱に寄り掛かるしぐさと言うのは共通なのだな、と学習。



結構面白かったのが
演目別にみる能装束 観世喜正 淡交社
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by soymedica | 2012-05-28 20:51 | 能楽 | Comments(0)

狂言三人三様 野村万作の巻

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狂言三人三様 野村万作の巻 野村萬斎、土屋恵一郎編 岩波書店
2003年11月25日第2刷


このシリーズなかなか面白い企画だと思います。インタビューもさることながら、同じ狂言の演目に対して、野村万作、茂山千作、野村萬斎がそれぞれ思いを語るところが圧巻。狂言好きにはこたえられない。

そしてインタビュー。前の野村萬斎の巻と比較して、やはり親子だけれど市井の親子とは違うところに感心します。世襲というのは芸に限らずこういうものなのだな、と。

そしてこの世代の人たちの話を読んで思うのは、「冥の会」というのはやはりエポックメーキングだったのだとつくづく思います。

面白いなっと思ったエピソードは、昔は今のように面をやや上にかけるのは宝生流だけで、観世寿夫なども面はべったりとかけていたそうです。そして謡の明確なのは宝生流の特徴で、それがいまでは梅若にも入ってきたとのこと。

お勧め本です。
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by soymedica | 2012-05-26 17:58 | 本・CD・その他 | Comments(0)

第24回テアトル・ノウ 東京公演別会 蝉丸、盆山、鵺

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第24回テアトル・ノウ 東京公演別会
5月20日(日)13時より@国立能楽堂

能 蝉丸 替之型
シテ 片山九郎右衛門、ツレ 味方玄
ワキ 宝生閑、アイ 野村萬斎
笛 杉信太朗、小鼓 幸正昭、大鼓 亀井広忠
後見 片山幽雪、清水寛二、浅見慈一



狂言 盆山
野村裕基、野村萬斎

舞囃子 西行桜
片山幽雪

能 鵺 白頭
シテ 味方玄、ワキ 宝生欣哉、アイ 竹山悠樹
笛 藤田貴寛、小鼓 成田達志、大鼓 亀井忠雄、太鼓 小寺真佐人
後見 観世喜正、山崎正道


とても良いお天気の日曜。ネットショップで売りに出していた藤田六郎兵衛のCDが売れたのに気を良くして国立能楽堂へ。


仕舞や謡の前触れなしに蝉丸が始まります。
引き回しのかけられた萩藁屋が後見の手によって出されます。でも、引き回しはすぐに下されます。場所は大小前。この藁屋の扱いは流儀などによって色々あるそうですが、現代人の目には巨大な鳥小屋のようにも見えます。

宝生閑の清貫は、盲目の皇子を敬いつつ天皇の命令で山の中に捨てる羽目に。蝉丸の面が中々良いです。これから山の中に捨てられて小屋に住むというのに、輿かきをつれて今は床几に腰をかけている。「あら嘆くまじの勅諚やな」の謡が綺麗ですが、だんだん髪を下ろされたりして、自身の境遇がわかってくる。その様子がシテ・ワキの掛け合いが上手いせいではっきり描出されます。

それにしても脇正面だったので後ろ姿しか見えない宝生閑、やっぱり上手。

萬斎登場。私の近辺ではオペラグラス使用率が急に上昇。博雅の三位という庶民では無いというアイにはぴったりの感じ。そして、何かあったら博雅の三位に知らせてくれ、と皆に触れて退場。

右手に笹をもった逆髪登場。面は何でしょうね。眉と頬にくぼみ(笑窪みたいな)影ができています。ところで、本当は正面席が良かったけれど逆髪は結構橋掛りでも謡うので、まあ脇正面でもいいか。
このシテの片山九郎右衛門、上手です。幽雪と親子ってずいぶん遅い子ですね(私はずーっと孫かとおもっていたのですが、後ろの席の方によると親子らしい)。爺さんになるとああいう味が出てくるのだろうか…。
なかなか素敵。
姉弟がであったときには思わずしんみりしてしまった。座敷謡であったというのも納得の詞章の良さ。

そして、地謡も山の中の藁屋の寂しさを謡いあげて雰囲気を盛り上げます。
そのさみしい山中に残る弟を振り返りつつ姉は去って行きます。

楽しかった。そして今回小鼓の幸正昭が良かった(いつも良いのかもしれないけれど、今回気づきました)。


狂言は盆山。盆山は盆栽みたいなものらしいのですが、一種小さな箱庭に作ったものも指すそうです。
その盆山を盗みに入った裕基クン、萬斎が「あれはイヌだ、いや、猿か?鯛かな」というたびにその物まねをする。というもの。もうすこしするともっと上手くなるね(這えば立て、立てば歩めの…)。


は白頭の小書き。味方玄、大活躍です。旅の僧(今度は欣哉)が御堂に泊まる羽目になる。案内する所の物の竹山悠樹がなかなか良い感じ。夜半僧の前に鵺の幽霊が出てくる。もともと化け物なのに、幽霊になるとは。どういう位置づけのものなのだろう。なぜ帝を悩ませにやってくるのかなど、その辺の説明はありませんが。

前シテがいつのまにか(亡心のはずが)頼政になったり猪の早太になったりして鵺を打ち取るしぐさを見ていると、大きさは中型犬くらいなのかしらん。この辺、おもわず引き寄せられる演技です。
そして、打ち取られた鵺(の亡心)は竿を捨てて、中入り。

白頭の小書きでは、後シテの登場のとき、まず半幕があります。幕の両側(だと思う、一方しか見えなかったけれど)でぐるぐると巻きあげるようにあげるのですね。
そして鵺は前半床几を使います。
正先へ出て足を降ろす型もあるので、やっぱり正面で見たかったな。

昔の人は大臣と頼政の機知に富んだ歌のやりとり(ほととぎす、名をも雲居にあぐるかな、弓張り月のいるにまかせて)を聞いて、ああ、あの有名な、と、楽しむのでしょう。私も教養を身につけて隅々まで楽しめるようになりたいものです。


今回役者から囃子までとても満足。

パンフレットの解説は味方健が書いています。(文体が私には若干読みにくいのですが)、力作です。


能の鑑賞講座 三宅譲 檜書店
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by soymedica | 2012-05-23 00:02 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂定例公演 魚説教、藤戸

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国立能楽堂定例公演 
2012年5月18日(金)18時30分より
正面席4800円


狂言 魚説教(大蔵流)
シテ(出家)大蔵吉次郎、アド(施主)善竹忠一郎

能 藤戸(観世流)
シテ 観世恭秀、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、野口能弘
アイ 善竹隆司
笛 一噌庸二、小鼓 幸清次郎、大鼓 柿原崇志
後見 木月孚行、木月宣行


本日午前中休みにして昼ごろから出勤。凄く面白いことがあったので、長いけれど書きます。

人気の少ない駅のプラットフォームでアメリカ人とおぼしき小さなお婆さんに道を聞かれた。それが何と、
「Ben & Jerry'sに行きたいんだけれど。ここから幾つ目かの駅といわれたんだけれど、この電車で良いの?」
…そりゃ何じゃ?
「とっても美味しいアイスクリームで行列ができるのよ。素敵な広い通りのあるところにあるの」
私がきょとんとしていたので英語が通じなかったのかと、何回も説明してくれる。
「どこの駅?」 婆さん、きっぱりと「I do not know!」婆さん、あなたは東京の大きさを測り間違っている。アメリカの街ならその聞き方で大丈夫だけれど…。


と思ったら、能楽堂でも前一列がほとんど白人あるいはヒスパニックと思われる人たち。うーむ、アジア人の繁殖力は何処に?(一番若いとおぼしき兄ちゃんは途中でギブアップ。


魚説教。にわか坊主になった漁師が経の代わりに魚の名前を唱えるという話。前に野村裕基クンで見ました。大人がやると味わいが違いますが、やはり子供がもっともらしく経を唱える方が可笑しいかも。

でも、黄色と黒の細かい格子の着物に紺の羽織、鶯色の袴というのは私の趣味ではありません。アドは濃いグレーと白の縞と海老茶の袴。こちらもあんまり。


さて、「反戦の能」と言われる藤戸。(私は反戦の能とは思いません、かなり当時の身分制度を反映しているものかと)。
地謡は坂井三兄弟が前の列で頑張っていました。

次第で登場した前シテ。面は「痩男」と書いてありましたが本当?(痩女でしょうね)。しおしおとした老女。「さてなう我が子を波に沈めしたまいし事には」のせりふが比較的弱いのに「ああ、音高し」の声が大きいので、何となくアンバランスな感じ。

シテはシテとして基本に忠実なのでしょうが、もう少し老女としては姿勢が悪くて前かがみという方が良いのでは。英霊の母ではないのですから、あまりに毅然としていても、と言う感じがしました。
「我が子かえさせたまえや」の部分はシテもワキもさすが。(もっと、ワキが良く見える席を選べばよかった。)でも、国立能楽堂さん、あんなに舞台を煌々と照らさなくても。もうちょっと照明を落とした方が感じが出るし、目も疲れないかもしれません。

アイがあまり馴染みのない方でしたが、なかなか良かったです。

そして後シテ登場。面は河津。おどろおどろしい感じに若干欠けると感じましたが、「胸の辺りを刺しとおし」と、二回杖で脇を指すしぐさ、「千尋の底に沈みしに」と座る場面はやはりベテランの味がありました。
最後に「成仏の身となりぬ」で、杖を落として帰って行きます。

それにしてもワキの「よしよし何事も前世の報い」というセリフといい、成仏してしまう漁師と言い、時代とはいえ悲しい話です。色々考えさせる筋の話でした。

写真はこの季節の箱根ポーラ美術館のレストランからみた山です。
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by soymedica | 2012-05-20 22:11 | 能楽 | Comments(2)

ビジュアル版日本の古典に親しむ1 源氏物語 円地文子 世界文化社

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ビジュアル版日本の古典に親しむ1 源氏物語 円地文子 世界文化社
2005年11月初版第1刷

源氏物語を各巻ごと見開き写真付きで要約した本。人間関係の図付き!!
死ぬまでに一回は読んでおきたいけれど、それはあくまで希望。でも「夢浮橋」って、なんだったっけ、とか思った時さっと見るには便利だし、見ていて奇麗。
類書は色々あるのでしょうが、ふと目についたので買ってみました。
写真が多いのに1890円は安い。かなりな部数出ることを当てにしているのだと思います。

高校生の時一部古文で習った時には楽しかったけれど、純粋に筋だけ追うとあんまり共感できない話ですなー(笑)。
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by soymedica | 2012-05-17 21:28 | 本・CD・その他 | Comments(0)

銕仙会定期公演 東岸居士、水掛聟、杜若

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銕仙会定期公演 5月
5月11日(金)@宝生能楽堂 18時より
正面席6000円

東岸居士 橋立
シテ 大槻文蔵、ワキ 宝生欣哉、アイ 大倉教義
笛 竹市学、小鼓 成田達志、大鼓 亀井弘忠
後見 野村四郎、柴田稔

狂言 水掛聟 
シテ 大蔵彌太郎、アド(婿)大蔵基誠 (妻)大蔵千太郎

能 杜若 素囃子 
シテ 鵜澤久、ワキ 館田善博
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 佃良勝、太鼓 浅井 均
地頭 浅見真州
後見 観世銕之丞、清水寛二


ぎりぎりのぎりぎりで駆け込み。通路側の席で良かった。と、思ったら休み時間に横に座った3人連れの奥様方の一番奥の人が、「わたくし、途中で帰りますのでそこの席と代わってください」。気にしないから途中で出て行ってください、と言っても「いえ、ご迷惑ですからそこに」。頑として代わらなかったら(だって前の席空いてるし、通路側好きなんだもん)、物凄く不満そうな顔をされた。で、結局おばさんは終演までいた。ナンナンダ??


それはともかく、東岸居士は二度目ですが、やっぱり詞章は難しい。自然居士(東岸居士の先輩)に比べて本も少ないし、予習もなかなか大変。昨年の国立能楽堂で同じ小書きでのものがあるので、パンフレットの詞章を読んで行きましたが、これも解説無いし…。

シテ登場。スマートな体形のシテが喝食の面でオレンジの水衣で登場すると本当に青年僧のよう。右手には柄杓を持っているように見えましたが、何かいわれがあるのだろうか。
謡も若々しいトーン。面づかいもきれい。宝生欣哉の主張しない演技と上手くあっていました。

東岸居士は筋といった筋の無い曲ですので、演ずる方がよほど熟練していないと詞章の難しさとあいまって、お客さんも飽きてしまうのではないかと思いますが、楽しめました。

地謡の後列一番手前の方、若干姿勢が悪いのが気になりました。あと、シテ登場の時も鏡の間は明るかったのが珍しい。


狂言は水掛聟。前に一度善竹十郎、富太郎で見ているのですが、あの時の演出は舅と聟はそれぞれ田を見回ったあとには舞台に残って座っていたとおもうのですが、今回は水を自分の田にひいた後は袖に引っこんでしまう。ちょっとまだるっこしい感じ。それと、大蔵彌太郎は、セリフの間があんまり無い。一呼吸置いてセリフをお客さんに沁みとおらせるような間を空ける部分があっても良いのでは。
最後の「来年から祭りには呼ばんぞよ」のせりふはさすがに良かったです。


杜若は、鵜沢久。女性の能楽師って何となく敬遠していたのですが、非常に評判の高い方なので見てみました。素敵でした。私のように食わず嫌いの方、お勧めです。

まず、旅の僧が登場。謡は良い声ですが、旅の僧なのに力みすぎでは。あらためてワキの難しさを感じてしまった。
杜若の精はとても素晴らしい謡。セイレーンかな。素囃子(しらばやし)という小書きは端的に言うと舞が短く、謡が長い(省略されない)というものです。クセでは橋掛りまで大きく使います。このシテの魅力は仕舞よりは謡にあるようなので(凄く小柄な人なので、仕舞の華麗さで見せると言う感じではない)、満足。

残念だったのは物着。もう一人働きが出てきて手伝っていましたが、冠がうまく載らない。あれが若干傾いていると言うのも、客としては後半の集中が切れてしまうものです。
装束が前後ともに若干地味に感じました。もっと華やかで大きく見える装束で見たかったな。前半の東岸居士とのバランスを考えたものなのでしょうか。

またこの人のシテで何か見てみたいと感じさせる舞台でした。


本日の能樂堂パンフレット情報。
6月12日(火)久習会 見延
10月13日(土曜)は鵜沢久の会 当麻

事前にチェックしたのは 
能苑逍遥 中 天野文雄 大阪大学出版会
謡曲入門 伊藤正義 講談社学術文庫
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by soymedica | 2012-05-14 20:59 | 本・CD・その他 | Comments(2)

平家の群像 物語から史実へ 高橋昌明 岩波新書

d0226702_21361968.jpg平家の群像 物語から史実へ 高橋昌明 岩波新書2009年11月25日 第2刷発行

源平の合戦を、平家のそれぞれの人物から描き出そうという本。人物というより、家系図かな。
言わんとするところは良く分かるし、面白くはあったのですが、何せ、小説と言うものが枝葉を膨らませるものだとしたら、この人の本は余計なものは全部そぎ落とした構成になっている。であるので、私のように日本史に暗いものは何度も前のページにもどったり、付箋をはったり、とっても読むのに苦労しました。いえ、苦労した原因のもう一つは「平家の公達は皆似たような名前」と言うところにもあるのですが。

この時代を経済史的な面から説明する本は多く読んだのですが、このように平家物語に多く触れながら、「家」というものから史実を解き明かしていこうという本は初めて読みました。
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by soymedica | 2012-05-08 21:36 | 本・CD・その他 | Comments(0)

謡曲入門 伊藤正義

d0226702_17594620.jpg謡曲入門 伊藤正義 講談社学術文庫


全然入門じゃなかった。それもそのはず、筆者は新潮社日本古典集成の謡曲集を編集し、解説した学者。東が表章なら西の学者の代表といったところでしょうか。
大阪能楽鑑賞会発行のパンフレットの解説が主体。各曲の詞章の学問的に気になるポイントについて考察する、といったものです。それだけでは難しすぎるしわからないので、各曲の前付として若い研究者があらすじと伊藤論文のポイントについてまとめています。
難しいけれど、難しいなりに面白い本。でも、本文中に漢文が多くって若干閉口。読み下し文も付けてほしい。ここのところを読むのに暇がかかって論文全体の見通しがわるくなってしまう。
そんなことを言い出す読者が出るとは思わなかったのでしょうけれど。

ね、全然入門じゃないでしょ。

でも、買った方が良いですよ。
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by soymedica | 2012-05-04 18:02 | 本・CD・その他 | Comments(0)

野田秀樹 THE BEE

d0226702_226645.jpgNODA・MAP番外公演 THE BEE
5月1日19時より@水天宮ピット
7000円

共同脚本 野田秀樹 コリン・ハーディン
演出野田秀樹
小古呂の妻/リポーター 宮沢りえ
百々山警部/シェフ/リポーター 池田成志
安直/小古呂/小古呂の息子/リポーター 近藤良平
井戸 野田秀樹


めったに降りない水天宮駅。長い地下道の前を歩いている兄ちゃんのあたまの右半分が坊主刈りで地に入れ墨、左半分がモヒカン。禿げた時はてっぺんが光って綺麗だから、入れ墨は側頭部ではなく将来を考えて頭頂部に入れてはどうか、などと考えて劇場に向かったら、なんとその兄ちゃんの目的地も同じだった。

水天宮ピットは移転した中学跡の劇場で体育館を改装したものらしい。現在本拠地の池袋が改装中で使えないと言うことです。アゴラ劇場よりは椅子が良い。
野田秀樹と言ったらもう権威でしょ。東京芸術劇場の芸術監督だし、勲章ももらっているし。モヒカン兄ちゃんとのあまりのミスマッチが面白い。でもその兄ちゃん、友人と話している言葉使いが綺麗。もう、体制に反抗してのファッションというのは無いのだな、芸術家としてのフャッションなんだな。それにしても芸術家は大変だ、などと考えているうちに始まりました。

実は初野田秀樹でした。実際に野田秀樹も出ているとは迂闊にも知りませんでした(笑)。
あんまり書くとネタばれなのですが、妻子を人質にとられた男が犯人の妻子を人質にとり…という筒井康隆「毟り合い」の舞台化。アメリカとイスラムの話の寓意化とマスコミには捉えられているようです。
でも、そんな大きな話ではなくても、日常のどこにでもある風景であるような気がするのが不気味。

宮沢りえがとても素敵でした。


写真は内容と全然関係のない、丸ビルから見た旧中央郵便局の今現在です。
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by soymedica | 2012-05-02 22:06 | 本・CD・その他 | Comments(0)