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観世九皐会春季別会 西行桜 秀句傘 山姥

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観世九皐会春季別会
2012年4月28日(土)12時45分開演@国立能楽堂
正面席10000円

連吟 養老
仕舞
嵐山 奥川恒治
龍虎 鈴木啓吾、遠藤喜久

西行桜 
シテ 中森寛太
ワキ 宝生閑
ワキツレ 高井松男、御厨誠吾、大日方寛、工藤和哉
アイ 野村萬斎
笛 一噌庸二、小鼓 幸清次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 金春國和
後見 鈴木啓吾、長山禮三郎

狂言 秀句傘
シテ 野村万作、アド 石田幸雄、小アド 高野和憲

舞囃子 砧
観世喜之

仕舞
兼平 弘田裕一
花筐 狂 五木田三郎
善知鳥 駒瀬直也

山姥 白頭
シテ 中所宣夫、ツレ 古川充
ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎
アイ 深田博治
後見 奥川恒治、遠藤六郎


暑い日。意外に空席が目立つ国立能楽堂でした。結構良い演目なのに、いろいろ重なったようですね。

連吟。こういう会では古いお弟子さんと思しき人たちが前座を務めますが、後ろのおじさん、隣の奥さんにむかって「何だ、あれ、素人じゃないか。これで金とるのか?」まあまあ、と思わずなだめたくなっちゃった。でも、おじさんの言うことにも一理あるか。

仕舞からはプロ。奥川恒治、私の中では何となく丸(要チェック)がついたのでした。

さて、西行桜。世阿弥が昨日の阿古屋松と並べて名前を挙げている能です。作り物が運ばれてきます。中にシテの入っている桜の装飾のもの。この花も葉も桜に見えないのですけれど…。
宝生閑の西行法師がアイを連れて囃子なしにやってくる。どっかで見たようなアイだと思ったら、野村萬斎だった。私は狂言の花折を先に観ているので、花見客を入れるまでの筋を見て、「ああ、なるほど西行桜と花折は一緒に上演できないかも」と、思ったのでした。
西行法師は偉いので、葛桶に座って一人じっくり花見をします。

そこにやってきた花見客(あんなにたくさん来る必然性はないようにも思うけれど、人がたくさん来ると華やか)、ご機嫌のよい西行法師に桜を見せてもらいます。時に高井松男、喘息なのか肺気腫なのか、物凄く呼吸が荒いのが客席まで聞こえる。それと、長袴の捌きがこんなに下手だったっけ?やはり体調がどこか悪いのでは。

客がやってきてうるさいのも桜のせいだわい、と言っていると桜の精が現れる。上着は桜色の地に金の模様、袴は緑。
問答がとても難しくて、予習が足りなかったな、と思ったのですがでも華やかで満足できるものでした。
地謡が私の好みよりはちょっと大人しかったのが残念でしたが。もっと華やかに歌い上げてほしかった。

ところで、ここで想定されている桜は山桜なのでしょうか、しだれ桜なのでしょうか1)。


秀句傘は、シャレを言ってみたい大名が、太郎冠者に命じてシャレの得意な新たな使用人を雇い入れるというもの。この大名、馬も持っていない小物。万作はバカとのにしてはちょっと利口そう。それにしてもこの狂言の最中に楽屋から囃子の練習が聞こえてくるのはあんまり嬉しくない。


そして山姥。ロビーで小母さま方(九皐会でお稽古している人と見ました)が、「ホラ、次が例の中所先生の山姥よ」と、あまり好意的でなく語っていたのはなぜか。スキャンダルのにおい。ふふふ。

善光寺参りに行く百ま山姥の一行が行き暮れていると、老女が現れ一夜の宿を貸そうと言う。どうやらそれが山姥。

幕が良く見える位置にいたのですが「のうのう」とシテが幕の中から呼びかけると、薄暗い中に白い面だけが浮かびあがって怪しい。この、幕の中からの呼びかけは比較的新しい工夫でらしいです(それまでは橋掛りに完全に出てから呼びかけていた)。17世紀から18世紀にかけて徐々に固定していったものらしいです2)。
「山姥とは何だ?」と聞くと案内している地元の人は「それは古い桶が化けたものだとか、うつぼだ」とか言うのですが最後に「木戸だ」「いやそれは鬼女だろう」というシャレの部分は大蔵流と同じですね。深田のアイがなかなか良かったです。

後シテ登場。幕の中でちょっと横を向く動作をする。鹿背杖がとても太くて蔦が巻きついているのはシテの工夫なのか、このお家の伝統なのか。前シテのときよりも一回り大きくなったように見えるのがさすが。上手な人は背丈も異なったように見せることができますよね。
橋掛りまで大きく行く演出で、飽きさせません。そしてとても笛が良かった。
このシテはおそらく理論派なのでは、と思わせる演出でした。
森常好、体調が悪かったのでしょうか、ちょっと表情が気になりました。前日と翌日が阿古屋松ですから、お疲れが出ないと良いのですが。

でも、山姥って何なのでしょうね。


1)能 中世からの響き 松岡心平 角川叢書
2)能苑逍遥 中 能という演劇を歩く 天野文雄 大阪大学出版会
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by soymedica | 2012-04-30 20:51 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂 特別企画公演 阿古屋松

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国立能楽堂 特別企画公演
2012年4月27日(金)18時より
正面席 6500円

観世文庫創立二十周年記念 世阿弥自筆本による能
解説 松岡心平 

阿古屋松(復曲能 初演)
シテ 観世清和
ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎
アイ 山本東次郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井弘忠、太鼓 観世元伯
後見 木月孚行、上田公威、林宗一郎



事実上の初演と言うことで、もちろん能楽堂でも記録をとっているのでしょうが、そのほかにも立派なカメラを抱えた関係者らしき人あり。でも、ロビーで私の後ろにいた二人連れ、今ここでカメラの使い方の説明書と首っ引きはまずいのでは。

まずは松岡心平の解説から。30分できっちり納める、昔は私も出来たけれど最近講義に行っていないからできないだろうな。
この阿古屋松、観世元章がアイのせりふや小書きまで書いているので上演はされたのだろうと想像されるが、正式な記録には無く、600年ぶりの上演となるものだそうです。世阿弥は申樂談義に「西行、阿古屋松、大方にたる能なり。後の世、かかる能書く者やあるまじきと覚えて、この二番は書きおくなり」と書いているそうです。

阿古屋松は平家物語の巻第二に出てきて有名になったものだそうです。また源平盛衰記に塩竃明神が阿古屋の松を教えたという話が出てくるそうです。
また、東北にはいろいろ有名な松があり、そういえば「末の松山」と言うのもありましたね。「波こさじ」というのは貞観の大地震の津波ではないか、と言う説が出てきているそうです。
ふと気付いたのですが、松岡先生、前場を「ぜんば」と読んでいたような。そういう読み方もありか?(私の高校の物理の先生は「滑らか」を「すべらか」と読んで、「これは間違いですが、私はこう言います」と一年の初めに宣言する人でしたから、そういうことなのかもしれないし。)


次第の囃子で藤原実方登場。松岡心平の解説で、「実方は大変モテモテの好男子で、性格はかなり奇矯であった。藤原行成の烏帽子をたたき落としたり、亡くなったきっかけも笠島道祖神の前で下馬しなかったことだし。」という説明があったので、「ふーむ」と、森常好を見つつ思う。

田舎に流されてもそこは偉い人だから部下がついています。今は紅葉の季節らしい。地元の爺さんにでもちょっと阿古屋松について聞いてみようか、と、樵の老人が一声で登場。背中に斜めに薪をしょって(長い傘を斜めにしょっている人がときどきいますよね、あんな感じ)います。髪の毛の先端だけちょっと色が濃いかつら。

そして解説にも書かれているやりとりのあと、じゃあ、今は出羽の国になっている阿古屋松を見に行こうかと、ここで道行。森常好が「いつもと作りが違うので勝手が違った」とフェイスブックに書いているのはここのことでしょうね。見ていて、ここは一寸面白かったです。

さて、樵が引っ込むと所のものが「さっきの爺さんは塩竃明神に違いない。」と、教えてくれます。ここで阿古屋松の伝説が語られます。なかなか良い感じのアイです。さすが東次郎。
実方は定石通り、寝て待つことになります。

出端で塩竈明神登場。装束が豪華。実方というのはナルシストで、都にいた時に賀茂の臨時祭で舞を待って御手洗川に自分の姿を映して見とれたそうですが、その姿を明神が再現します。松岡心平の大好きな水鏡の動作がきっちり舞に取り入れられているので思わずクスリ。

そしてシテが静かに退場した後で、ワキが止めます。

いささかワキの感情移入が過剰な感じがあったのと、シテの動作が多いのがいつもと違う感じでしたが、難波梅、松浦佐用姫、阿古屋松と見てきて、これが一番面白かった。

観世清和がシテということで、予想終了時間8時45分より遅くなりそうな予感がしたのですが、やっぱりちょっと遅くなりました。なぜ~。


一連の企画公演の国立能楽堂パンフレットと、「観世」は必見です。(国立能楽堂パンフレットの巻頭、平清水公宣の文章、何かの編集間違いがあるのではないでしょうか。)

ちなみに上の写真のパンフレットやポスターのデザインとなっている横縞は観世宗家文庫に伝わっている世阿弥自筆本のデザイン化だそうです。
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by soymedica | 2012-04-29 15:30 | 能楽 | Comments(0)

藪睨み能舞台 近代能楽側面史 西澤建義 図書新聞

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藪睨み能舞台 近代能楽側面史 西澤建義 図書新聞

2010年9月15日 初版発行


著者は1945年生まれ。1968年に早稲田大学を卒業。一度は就職したものの、しばらく高等遊民のようなことをしていた。その間習っていた謡の師匠に誘われ、梅猶会の雑用係をしていた。プロにならないかと誘われたこともあるらしい。最近になって鵜澤勇三の本と出合い、観梅問題とは何か、当時楽屋で感じた違和感は何か、を調査しだす。

能楽関連の仕事で生計を立てていた人ではないので、当時ほとんどの人を巻き込み今でもその記憶を残している人たちとは違って、観梅問題についてはっきりと書ける立場。いろいろな資料にあたりながら、探偵のように調査します。

始まりは大政奉還で観世宗家が静岡に引っこんでしまうところ。梅若実は能樂を生き残らせるために東奔西走します…。ところが東京を捨てるように徳川家について行った観世宗家が帰ってきて…。ごたごたは戦後まで続いてGHQをまきこんだり。

何故この本を買ったのか忘れましたが、「観梅問題」についてこんなに詳しい本は無いのではないでしょうか。そのうえ、面白い。お勧めです。
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by soymedica | 2012-04-26 20:18 | 本・CD・その他 | Comments(0)

第一回 燦ノ会 二人静、石橋、地蔵舞

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第一回 燦ノ会 
2012年4月21日(土)13時より @喜多能楽堂
自由席5000円(中正面に席をとりました)


能 二人静
シテ 大島輝久、ツレ 友枝真也
ワキ 殿田謙吉、アイ 山本則孝
笛 一噌幸弘、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井広忠
後見 高林吟二、中村邦生

狂言 地蔵舞
シテ 山本則孝、アド 遠藤博義

仕舞 養老
友枝昭世

半能 石橋 連獅子
シテ(白獅子)塩津哲生、ツレ(赤獅子)佐々木多門
ワキ 宝生欣哉
笛 一噌隆之、小鼓 曽和正博、大鼓 佃良勝 太鼓 助川治
後見 佐々木宗生、友枝真也、大島輝久


自由席がどの程度のものなのか不明なので、12時15分くらいに着いたら結構席は選べましたが、消防署に睨まれそうなくらい通路にぎっしり補助席が出ている。若いお客さんや子供もいて、若手の会の立ち上げという華やかな雰囲気が盛り上がっています(すいません、ジーンズで行きました)。


二人静。大鼓の亀井広忠、派手目の袴。この人ちょっと太ってきた感じで、さらに隣の田邊恭資がものすごく華奢な感じなので、視覚的に面白い。
菜摘の女が戻ってこないと思ったら、何者かが取りついていて、そして問い詰めたところ、「静」の幽霊だと。どっちがシテでどっちがツレかわからないほど前の菜摘女が重要なのだけれど、友枝真也、ちょっと前半の謡が狂ってはいませんでしたでしょうか(私には初二人静なので間違っていたらごめんなさい)。

静と菜摘女、衣裳はそっくりだけれど若干違う。面もそっくりだけれど、静のほうがちょっと美人かな。詞章と違って袴はつけない。グーグル検索すると袴姿の写真も多いですが、今回はオレンジの着物に白の長絹でした。
相舞が揃うか、と言う所に注意が行くような曲ですが、同門で同年代、独立してまだ3年だとしたら、揃えるのはプロとしてはそんなに難しくないのでは。何てことを考えていたら終わってしまった。会の立ち上げにふさわしい華やかな能でした。


狂言の地蔵舞。とんちのきいた坊さんが、禁制になっている一夜の宿を無理やり借りて酒も御馳走になり、「地蔵舞」を舞うというもの。言葉の中に「ろさい」と言うものがあって何かと思ったら、僧が托鉢して米などを貰うことだそうです。邏斎と書くらしいですが、やっぱりこういうことがあるので国立能楽堂のあの字幕は便利。「地蔵舞」という楽しい舞を狂言に取り入れるための曲だそうです。
ところで「花もよ」という能楽雑誌が創刊されましたが、そこで高桑いづみが、何で狂言にはあんなに酔っ払いがたくさん出てくるのかについて書いています。このシリーズ、面白くなりそうです。


石橋。今回は半能。半能形式で上演されることの方が多いというのですが、私が見た時は(これが3回目)いつも前がついていたので、今回は「え、宝生欣哉の出番これだけ???」という感じ。「石橋渡らばや」と言っていたのに、帰っちゃうの?
二匹の獅子は勇壮で華やかでした。こちらの曲の方が合わせるのは大変そうに見えますが、それについては誰も何も言わないから、そんなに難しくないのでしょう。ただ、赤獅子は手足が長く、袖を掴むのが難しそうでした。

帰ろうとしたらロビーで小さな男の子(3歳くらい?)がしきりに獅子のまねをしている。これがびっくりするくらい上手。早く大きくなって舞台で見せてね。

休憩時間にいつもたばこ吸いに出てきていた本日の地謡の方、声を使うお仕事だからタバコはおやめになった方が。喉頭癌になりまっせ。パンフレットに囃子方の佃良勝と助川治さんの対談が出ていましたが、助川さんの石橋の開きの時には先生に「一週間煙草をやめろ」と注意されたそうです。この対談、なかなか面白くって、どこかに再掲するか、広く配るかしたら喜ばれるのではないでしょうか。
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by soymedica | 2012-04-23 21:43 | 能楽 | Comments(0)

国立能楽堂4月定例公演 蟻通 悪太郎

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国立能楽堂4月定例公演
2011年4月20日(金)午後6時30分より
正面席 4800円


狂言 悪太郎 和泉流
シテ(悪太郎)野村万蔵、アド(伯父)野村萬、(出家)野村祐丞

能 蟻通
シテ 観世喜之、ワキ 福王和幸、ワキツレ 村瀬彗、矢野昌平
笛 松田弘之、小鼓 成田達志、大鼓 佃 良勝、太鼓 三島元太郎
後見 五木田三郎、奥川恒治


本日なぜか外人率高し。しかも本当の観光客風のひとが何人か。

狂言の悪太郎、酔っ払いものです。酔っ払って長刀を振り回す鼻つまみの親戚。一計を案じた伯父さんが道で寝込んでいる悪太郎を坊さんに仕立てる。おり良くやってきた坊さん。鉦鼓を叩いてリズミカル。時宗だろうか。前半のからみ酒と後半の坊さんとのかけあいが面白い。この設定では伯父さんは下戸なのだが、そういう演技もやっぱり上手な野村萬。舞台の上でバランス良く二人でさしつさされつすると、若干二人の間に距離があくので、杯を滑らすように最初していました。そのうち何となく修正されたのが面白かった。本人たちは気づいていないのでは。


蟻通。実は、相当に地味そうな曲の上に、観世喜之80歳近い小柄なお爺さんで声量が無いタイプ。私は絶対に退屈して寝てしまうだろうと、ほぼ確信して出かけたのですが、これが予想に反して楽しかった。好きな曲の一つになりました。

紀貫之登場。百人一首の絵のような姿。福王和幸、この人は印象が強いので、この先他の人での貫之を見た時に私はどう感じるのだろうか、と先のことまで心配してしまいます。
最初のワキツレとの謡が若干合わなかったのが残念。ワキツレ、もう少し頑張ってほしかった。

突然雨の中馬が倒れ伏し、周囲は暗闇。困り果てる貫之。すると、向こうから傘を指し松明を持った宮守の爺さますーっと登場。全体を(髪も)金茶色でまとめた上品な装束。この傘が長柄傘だったり松明が灯篭になったりすることもあるそうですが、今回の組み合わせ以外は考えられないくらい、綺麗な登場。
謡の声が細いのも、雰囲気に合っています。そして、囃子の掛け声も心なしか控えめですし、地謡も良いバランス。
「あなたが神域で下馬しなかったから神様がお怒りなのです」と、いさめる様子も穏やかな神職そのもの。偉い人のお話はお声が小さくても皆さん一生懸命聞きましょう。

さすがに祝詞は聞き取りにくかったですが、祝詞は祝詞ですから。
最後になぜか御幣を投げます。そんなことして良いのだろうか、どういう意味なのでしょうか。そして、宮司は神様なのだろうか、神様が乗り移ったのだろうか、と考えながら帰って本1)を見たら「たぶん宮司ではないかと思うけれど、どっちでしょうね」と書いてあった(笑)。

祝詞をあげてもらっている間に雨も上がりところどころ夜空の雲も切れ(そんなこと誰も言わないけれどそういう雰囲気)、紀貫之は元気になった馬とともに晴々と夜道を行くのでした。結構ワキが活躍する曲で、ワキ方では重い習いものになっているのだそうですが、福王和幸、とても清々しく演じていました。観世喜之のか細くて神様に近い感じと、福王和幸の若くて大柄な対比が面白く、能にも配役の妙があるな、と思わせられたのでした。


1)清田弘 能の表現 草思社
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by soymedica | 2012-04-21 20:29 | 能楽 | Comments(0)

本の整理

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買った本をどうするか。

私はものすごく活字を読むのが速い。これって性格なのかもしれないけれど、英語でも読むの速いです。一緒に文献を読んでいたネイティブより速かったことがある。(しゃべる方は2年アメリカに住んだ挙句、教授に「お前の英語は訛りが強くて聞き取りにくいから、直したらどうか?」と言われたレベル。まあ、専門分野のコミュニケーションと日常生活のサバイバルには困らない程度。)
そして活字中毒だから本が溜まらない訳が無い。ウサギ小屋の住人としてはこの本の山をどうするか?

まずは入るを制す。ハードカバーの小説で面白そうなものは図書館で借りる。(ついつい買ってしまうのであんまり成功していません。)アマゾンは危険だから覗かない(実行できていません)。本屋に行かない(不可能)。e-honって知っていますか。東販のサイトでアマゾン風なのですが、「この本を買った人はこんな本も買っています」が不思議。馬場あき子の「鬼の研究」をクリックしたら、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」もご一緒にどうか、と勧められた。わかるような気もするけれど…。

出を計る。
鷗外や漱石などの誰でも知っている名作は再び文庫本で手に入れることが可能なので、読んだら迷わず捨てる。「吾輩は猫である」などは短い(?)これまでの人生で3回購入。今は青空文庫ってものもあるし。
絶対に捨てないのはB級探偵小説。大衆小説。これは再び手に入れることは中々困難。
あとはまあ、捨てる努力をする。捨てると言ってもリサイクルごみに出すのは残念なので、ブックオフで売ってみたけれど、何となく満足感無し。アマゾンでは種類によっては結構高く売れますが、送る手間が結構かかる(妙にマニアックな本がはけます)。
病院や施設のボランティアで古本を貰ってくれるところがあるので、そこに寄付することもある。
母の母校ではBooks for NEXTというプロジェクトがあって古本5冊から送料無料で自宅に来て引き取ってくれるしくみがあって、それに便乗することも。(ボランティアがその古本を売ってくれて、その代金を大学に寄付するというしくみ。)これの最大の利点は重い本を持って売りに行かなくても良いこと。

仕事に必要な専門の本?あ、それはどしどし捨てます。20年たったら内容が古すぎて使えませんから。最近では専門雑誌はオンライン講読しています。便利!そのためにiPadも買ったのさ!(北米の雑誌はiPad用の閲覧ソフトまであるので。)
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by soymedica | 2012-04-16 22:27 | 本・CD・その他 | Comments(2)

ZEAMI中世の芸術と文化-1 特集 世阿弥とその時代 松岡心平編集

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ZEAMI中世の芸術と文化-1
特集 世阿弥とその時代 松岡心平編集

2002年6月28日初版第2刷


対談と論文、エッセイ、詩よりなる本。
ところで、私には文科系のフィールドのエッセイと論文の差がよくわからない。どうやって追試するのか??そして、やたらに長い。理科系にだって長い論文はあるけれど、大体短い。(200wordの要約で内容をはっきり示すことができないようなものは論文では無い!と言われたことがある。)ノーベル賞の対象となったDNA発見の論文は雑誌1ページ分だったと聞いたことがある(読んだことないけれど、あながち嘘ではないと思う)。

と、ぶつぶつと書きましたが、結構面白かったのですよね、この本。やっぱり松岡心平X渡邉守章の対談とか、天野文雄の白楽天についての論考だとか、読ませるし、自分でも興味があるとは思わなかった脇田晴子の中世猿樂座の組織構成について、なんて、トリビアとして知っていると楽しい。
アマゾンマーケットプレイスで送料込で1484円は安かった。
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by soymedica | 2012-04-12 22:10 | 本・CD・その他 | Comments(2)

第六回香川靖嗣の会 川上 安宅

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第六回 香川靖嗣の会 
2012年4月7日(土)14時より @喜多能楽堂
正面席10000円


安宅の関と弁慶 馬場あき子

狂言 川上 
シテ 野村万作、アド 石田幸雄


安宅 延年之舞 貝立
シテ 香川靖嗣 
子方 内田貴成 
立衆 友枝雄人、内田成信、粟谷浩之、佐々木多門、大島輝久、金子敬一郎、狩野了一
ワキ 宝生欣哉
アイ 強力 野村萬斎、太刀持 深田博治
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純
後見 塩津哲生、内田安信、友枝真也
地頭 友枝昭世


馬場あき子さんの解説。「皆さん、平家物語に弁慶は登場しないんですよ」と。そうだったのかー。能などが題材をとっている武蔵坊弁慶の話のほとんどは義経記によっているそうです。また、熊野出身なのになぜ「武蔵」坊なのかは不明なのだそうですが
さて、奥州藤原氏を頼って落ちて行く弁慶と義経。北陸道は白山信仰がさかんであり、信者である大名の庇護の元、山伏姿になって落ち伸びようとした一行。義経記によると、安宅は容易に通過したようです。その次に富樫を通過しなくてはならないのですがその日はおりしも3月3日。富樫の屋敷では節句のお祝い中。一行を脇道から逃した義経は富樫の注意を引くために屋敷に乱入。でも、結局は持ちきれないほどのお布施を貰って(帰りに取りによりますから、と置いて行った)逃げます。
次の難所は如意の渡りで、渡し守の平権守に義経が怪しまれる。そこで弁慶は「お前がもたもたするからだ」と義経を打ちすえる。
この二つの話を上手く合わせたのがこの「安宅」だそうです。


お目当ての川上。中途失明者の夫が、川上の地蔵に祈ると目があく。でも、それには長年連れ添っている妻を離縁することが必須条件。「そんなこと言ってもまさか一度開けた目をもう一度つぶすようなことはなされまい」とタカをくくっていると本当にまた目が見えなくなる。悲しむ夫と、ほっとして夫の手を引いて帰る妻。この最後の部分をどう演じるかについては万作、いろいろ語っていますが、今回私には「まあ、人生こんなものかな。そんなに悪くないかも。」と思っているように見えました。


さてさて安宅。「勧進帳」という小書きがつくのは観世流のみで、そのほかでは小書きなしでも勧進帳は弁慶がひとりで読むのだそう。三読み物という言い方があると前回書きましたが、「木曾」があるのは観世だけなので、この言い方は本来的には観世にだけ使えるそうです。これは本日天野文雄の「能樂逍遥」2巻(大阪大学出版会)で偶然読みました。子方の友枝雄人クン、急きょ内田貴成(こういう字だと思う)クンに交代。馬場さんが「男の子ですから」と、おっしゃっていたので、骨折でもしたのでしょうか。

富樫の某登場。先日の宝生閑の富樫は「義経を止めろと言われて困ったなー」と、内心思っている関守。本日の欣哉は「手柄の一つも立てようか」と思っている関守。
義経が郎党ひきつれて登場。香川が小柄で子方がもう変声期を迎えようかという年であることもあり、体格があんまり変わらない。この急遽の代役の内田君、立派でした。イケメンだし、おばさんたちのハートをわしづかみ(笑)。「まあ、偉いわねー」という声が後ろから聞こえてきた。

最初の立衆の謡で観世と喜多流と、ああ、こういう風に違うのだ、と感じました。観世が華やかで、喜多流はごつごつした感じ。平成風と昭和(戦後間もなくくらい)のイメージ。結構好き。
香川はパンフレットの本人のあいさつで「弁慶は自分のタイプではない」と書いていますが、そんなこともないのでは。知将という感じの弁慶です。ただ、もう少し謡の音量を上げた方が私は良いと思います。

勧進帳はうーん、やっぱり「そんなにこれが有名?」という文句。前回も今回もいまひとつピンときませんでした。
最後の延年之舞、ものすごく緊張していたように見えました。笛の調子がいま一つだったようなのがシテにはお気の毒でしたが、一行を逃し幕に入った時には思わず拍手、と言う感じでした。

V字になる立衆の並び方、義経が止められたあとの富樫へ迫るやり方、緩急の付け方など、同じ演目を続けてみると流儀による違いがわかって面白いです。(郎党が観世より一人少ないのはいつもなのだろうか。)延年之舞も観世のほうがショーアップされた型付けでした。

先日観世流の安宅で東次郎の強力を見たとき、この役は野村萬斎には無理だろうなと思ったのですが、そんなに妙ではありませんでした。扇をホラ貝に見立てて吹くところはさすがに上手。はまり役ではないけれど、古典のプロって何でもこなすのだな、と思わせられました。


実は野村万作の川上にひかれて買った切符。能の方は数日前に観世流の安宅を見ることが分かっていたので付けたりでしたが、見たら大変に満足だったのでした。
そして馬場あき子さんの解説付きだったことも来て初めて気づいて、ちょっと儲けものをしたような一日でした。


参考は
狂言三人三様 野村万作の巻 岩波書店
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by soymedica | 2012-04-09 10:41 | 能楽 | Comments(0)

第5回 萬歳楽座公演 安宅

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第5回 萬歳楽座公演
4月5日(木)18時30分より@国立能楽堂
正面席12000円

一調 杜若 大槻文蔵、太鼓 観世元伯
一調 是界 観世銕之丞 太鼓 金春國和


安宅 勧進帳 貝立貝付 延年之舞
シテ 観世清和、
子方 藤波重光、
ツレ 浅見重好、津田和忠、山階彌右衛門、関根知孝、藤波重彦、上田公威、藤波重孝、観世芳伸、岡久広
ワキ 宝生閑、アイ 山本東次郎、山本泰太郎
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄
後見 片山幽雪、武田宗和、坂口貴信
地頭 観世銕之丞


ちょっと早く着いたのでロビーのソファに腰掛けていたら着物の変なオバさん(後ろ姿を見たら帯がぐしゃぐしゃ)が、向かいのソファで飲食。若干周囲を見回す目つきに気になるもの有り。ヨーグルトとおにぎりって変な組み合わせだなと思いつつ見るともなしに見ていました。そのわきで二人連れのごくごく普通の上品なご婦人が普通の声でお話していたら、変なオバさんその二人に向かい、「ここは喫茶店じゃありませんよ。お声が高くって本当に迷惑しますわ。クドクド…。」???どこにでもちょっとおかしな人はいるけれど、能楽堂で出会うとは。おそらく何かの認知症をきたす疾患の初期。友人の神経内科医だったら何か適当な疾患名をつけるに違いない。

一調の前に、観世元伯と金春國和を並べたわきで太鼓について藤田六郎兵衛が説明。台はこうなっています、と見せてくれました。紐のことは「しらべ」というのだそうで、麻製。胴はケヤキ、バチはヒノキが多いそうです。そして流派による掛け声や構えの違いを見せた後、観世喜正が二つの太鼓(連調では無いですよね、流派が違うから)に合わせて西王母のキリを謡ってくれました。どちらかと言うと観世に金春が合わせたふうでした。観世喜正、謡うのは大変に難しいと言っていました。

ついで一調。大槻文蔵で意外にサラサラとした手触りの謡。是界は観世銕之丞が良かったのはもちろん、これは謡として面白い。


そしていよいよ安宅です。ものすごい豪華メンバー。勿体を付けずに富樫の某が登場した後、これもまたすーっと子方登場、とおもったら弁慶、それにものすごい数の郎党がついてくる。これが謡うのだから迫力満点。地謡より数が多い。いったいプロの役者は何人くらいまで同吟して聞かせられるのだろう。この9人の郎党のバレーの群舞のような同期する動き、謡、が舞台の面白さを引き立てます。
とってもとっても残念なことに私の席からは最初のうちは東次郎が見えなかった。舞台構成からして正面席をとったのは正解だったとは思うけれど、これは残念。

しかし、観世清和、やけに気品のある弁慶です。田舎侍と言うイメージでは無い。演技だけでなく、装束も金色の大口ですもの。きっと昔の人の考えた義経・弁慶はこういう感じだったのでしょうね。

色々な小書きがついていますが、「貝立」では新関の偵察に行った強力の東次郎が戻ってきて、シテの扇をホラ貝に見立てて吹く。ところで、本当のホラ貝ってどんな音がするのでしょうか。

勧進帳。三読物の一つとして名高いそうですが、読んだ感じとしては正尊のほうが面白かったかな。大仏再建かー、と思って聞いていました。読みながらシテとワキがちょっとずつ動くのが、緊迫感を高めます。

主人の義経を殴りつけるなんて演技をしてやっと新関を通ると、富樫の某が追いかけてきて酒宴になる。ここでシテは舞の前に扇を投げる演技をします。この扇、金地で一方に松、一方には万年青かと思われる絵が書いてあります。
舞(延年之舞)が素晴らしかったです。数珠をぐるぐる回してカウボーイの様。力強く足拍子を踏んだり、飛びあがったり。何かをするときに身体の縦の軸がまっすぐなのは舞踊一般に共通なのでしょうか。(日本舞踊は見たこと無いのですが、)モダンダンスやバレーと同じだな、と。
そして、酒宴のどさくさにまぎれて主従は東北へと逃れて行くのでした。

…ところで、富樫の某は、一行が義経・弁慶であることを知っていたのでしょうか。

国立能楽堂の舞台の下には伝統的な甕ではなく、木材を立てたりして音響に工夫がなされていて、しかもそれを調節できるようにしてあるのだそうです。ところが残念なことに施行当時の職人さんがもう居なくなってしまったのでどのように管理したら良いのかわからない、と言う話です。

山伏。いまでも健康を兼ねて活躍しているそうです。二次大戦後間もなく、山伏の集会が開かれて、米軍は「サムライの集会か?」と緊張したという話が、司馬遼太郎の「街道を行く」にちょこっと出てきます。
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by soymedica | 2012-04-06 22:10 | 能楽 | Comments(0)

二十五世観世左近二十三回忌追善能 弱法師、江口ほか

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二十五世観世左近二十三回忌追善能
4月1日11時より@観世能楽堂
正面席15000円


弱法師 盲目之舞
シテ 山階彌右衛門、ワキ 福王和幸、アイ 山本則秀
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井弘忠
後見 寺井栄
地頭 角寛次朗

狂言 二千石
主 山本則孝、太郎冠者 山本東次郎

仕舞
天鼓 観世三郎太
雨月 中入り前 浅見真州
清経 キリ 寺井栄
半蔀 キリ 坂井音重
籠太鼓 浅井文義
錦木 キリ 武田志房

独吟 鐘之段 藤波重和

能 江口 平調返
シテ 観世清和、ツレ 関根知孝、浅見重好、ワキ 福王茂十郎、アイ 山本東次郎
笛 一噌康二 小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄
地頭 観世銕之丞
後見 野村四郎

仕舞

恋重荷 彩色
関根祥六 森常好


前日あたりから桜がちらほら。代官山の南斜面が都内では桜が一番早い、とはタクシーの運転手さんの弁。
本日席は正面席最後方中正面寄り。遠いけれど、全体が良く見渡せました。


弱法師。地謡が登場し、ベテラン揃いなのにびっくり。左近の次男もしっかりやれよ、というお目付けのような…。

相変わらず背の高い(縮まないか…)福王和幸が登場。この人、体格のせいで何となく木偶の棒のような感じがしていましたが(失礼)、もしかして凄く上手いのでは、と感じつつ見ました。

弱法師登場。前髪の無い髪型のかつらです。一の松で謡い出す。この人を最初に見たのは吉野静だったと思うのだけれど、その時には全然良いとは思わなかったのだが、前回の三輪あたりから「あれ?」、と思うくらい私の中では注目株。謡の強弱の自在さが好き。姿勢も決まってきているし。演出も橋掛かりまで大きく使うもので飽きさせない。

弱法師は今まで野村四郎、片山九郎衛門で見ていますが、結果から言うと今回が一番良かった、と思うほどの出来でした。(野村四郎、森常好コンビのときには初回だったので何が何だかわからなかったというのもありますが)。囃子方にも大満足で、盛り上がった舞台でした。


二千石は、太郎冠者が主を見て「亡くなった先代にそっくり」と泣く話。貰ったパンフレットは土屋恵一郎解説という力の入ったものだったのですが、そこで「追善供養にふさわしい狂言」とありました。なるほど。東次郎、相変わらず素敵。


江口は西行法師の伝説に基づいた能。中世の有名なお坊さんが遊女を救う話というのはたくさんありますが、「遊女」というのは私たちが考えるような江戸時代のものではなく、もうすこし高級なものであったらしいです。
旅の僧が西行法師を偲んで江口の里で歌を口ずさむと、江口の遊女の霊が現れる。後場ではその遊女がツレを従えて古の舟遊びの様子を見せるというもの。(私は何となく法然の室の泊の遊女の話と混同していました。)

もちろん、観世清和、今回も素敵な謡と舞でしたが、毎回100点だと110点を観たくなるのがお客の常。凄いカリスマ性を感じさせるときと、そうでもない時がありますが、今回は後者。
彌右衛門と清和、声の質が似ていて兄弟なんだな、と思いました。そして観世清和はきっと毎回自分のビデオを見てチェックしているんだろう、と感じたのでした。前に気になった些細な所は次回は直っていますものね。

今回のアイの東次郎、良かったです。年寄りなのに大活躍。ここに東次郎を持ってきたのは大正解だと思います。

さて、後シテとツレ。シテは紫の大口。追善能だからでしょうか(本には緋の大口がデフォールトとある)。ツレも豪華なメンバーで謡いもすてきなのに、すぐに切り戸口から退場。もったいないというか、あまりに贅沢な設定ですね。

ワキはさっきの和幸のお父さん。これもまた似た感じ。こうやって血縁を感じさせる出演者を選んでいるのも追善能だから(笑)??

囃子も地謡も良かったです。観世銕之丞の地頭たぶん最高の出来ではないと思うのですが、それだけに名地頭と言われるわけがちょこっとだけわかった気がしました。



ここまで見てすっかり満足して残りは見ずに帰りました。

参考は
能の鑑賞講座 三 三宅譲 檜書店
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by soymedica | 2012-04-03 22:01 | 能楽 | Comments(0)