カテゴリ:本・CD・その他( 117 )

本:狂言のすすめ

d0226702_1724576.jpg狂言のすすめ 山本東次郎 玉川大学出版部
2010年9月1日第5刷発行210頁 1800円プラス税

1993年に新版が発行された時のあとがきに15年後の改訂とあるので、ずいぶん若いころの執筆です。
後に書かれた「狂言のことだま」よりもはるかに肩に力が入っています。評論家、和泉流、皆批判されています。演者から見た狂言の解釈、ということで、とくに論拠を示さない解説があったりもします。
ここまで自分で演じている狂言を真面目にそして力いっぱい擁護するのは素晴らしい。

ということで、読み物単体としては読みにくかったり、「そうかな」と思うところもありますが、ここに書かれている心情や心構えを知って東次郎の舞台を見ると、なるほどな、と納得がいきます。
やっぱり役者は舞台の上で説得すべきですね。
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by soymedica | 2016-02-08 17:26 | 本・CD・その他 | Comments(0)

日本〈聖女〉論序説

d0226702_20114025.jpg日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫 田中貴子 講談社学術文庫
2010年9月13日第一刷発行 269頁 920円(税別)

1996年に人文書院より発行された「聖なる女―斎宮・女神・中将姫」の文庫化とあります。

津村順天堂→雲雀山→中将姫→中将湯と連想がぐるぐるめぐる第一章。中将湯って中将姫から来ていたのか(うかつ)。そもそも「血の道」って月経不順の事だと思っていたし。(漢方では更年期のhot flashのことをさす。)
なぜ無垢なる中将姫が下の病の神様になるのかを考察。

第二、三章では斎宮のイメージ:無垢なる聖女、あるいは「いや、本当は淫乱で人里離れたところで凄いことしているんだぜ」と言うような説。いつの時代でも人の妄想って変わらないんだなー。
斎宮とか皇女というのは結婚しない方が宜しいとされていたらしい。確かに愛子様の配偶者を選ぶ、ということに置き換えてもよくわかる議論。

第四章は神は男か女か、という話。葛城の神、三輪明神、などの性別とその変遷について書かれています。

最後に:なぜ女神は信仰されるのか、女神の「神聖さ」とはいったい何なのか―。私がこの問いに本当に答えることができるのは、まだまださきのことになりそうだ。
とあるように、資料を引用して結論を出している本ではなくあれかこれかと逡巡がいろいろあるので、却って素人には読みやすいです。


ところで、漢方で有名なツムラの営業の人も「血の道」って月経不順の事だと思っていました。いまツムラの配っている漢方の手引きみたいな手帳からは「血の道」の記載は無くなった模様。
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by soymedica | 2015-09-05 20:12 | 本・CD・その他 | Comments(0)

本:狂言兄弟 千作・千之丞の八十七年

d0226702_16502336.jpg狂言兄弟 千作・千之丞の八十七年
茂山千作・茂山千之丞、宮辻政夫編
毎日新聞社 2013年5月30日発行293頁2200円

出版された直後に千作が亡くなるという期せずしてタイムリーな本になったもの。千作、千之丞の舞台は見たことがありませんが、千作の息子の千五郎と七五三の伯母ヶ酒を見て「なんて面白いのだろう」と思ったこと、そしてラジオで千作のインタビュー(もうその当時は演じていなかった)を聞いたのがこの本を手に取るきっかけでした。

1919年生まれの千作、1923年生まれの千之丞の戦前からの話ですから、面白くないわけがないのですが、小鼓方の国宝として有名な曽和博朗がまとめた言葉が凄い「結論として言うと、茂山家は面白い家です」。

孫可愛さのあまりに戦時中に結婚した千作の新婚のホテルの隣に泊まり込んでしまうお爺さん、苦労した妻に突然先立たれた千作が自殺するのではないかと心配する弟、(この奥さん、酒癖の悪い千作を床柱に縛り付けたり、「出ていけ」と言われたら「私はおとうさんおかあさんに可愛がられているから出ていく必要はない、あんたが出ていけ」と言ったという人)、戦後闇屋で設けた弟…。

うつ病になったり、歌舞伎との共演で波紋されそうになったり…。

狂言を見ない人にもお勧め。
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by soymedica | 2015-08-29 16:52 | 本・CD・その他 | Comments(0)

本:能・狂言の見方楽しみ方

d0226702_11581634.jpg能・狂言の見方楽しみ方 柳沢新治 山川出版社
2012年8月25日第一刷第一版発行214頁1800円

NHKの古典芸能を長く担当した筆者の本です。初心者から中級者までの網羅をもくろんだ本のようですが、後半はプロやクラブでやっている方にも面白いと思います。

能とはどんな芸能か、に始まって、役者の懐具合の想像、家元制度への提言、そして初めて見る人への演目の推薦など。

間にはさんであるコラムでは能に交わる逸話やゴシップ。能舞台から演能中に落ちたのは?瓜の盗み方。聖徳太子作の能面が売りに出ている話…。

面白いですよー。絶対お勧め。
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by soymedica | 2015-08-20 11:59 | 本・CD・その他 | Comments(0)

古典を読む 風姿花伝 馬場あきこ著

d0226702_81711100.jpg古典を読む 風姿花伝 馬場あき子 岩波現代文庫文芸74
2003年7月第一刷
249ページ900円

1984年11月に岩波書店より単行本として、1996年7月同時代ライブラリーとして刊行された。とあるので、とても息長く売れ続けている本ですね。私の買ったのは2009年12月第5刷です。

風姿花伝の解説書です。重要な所をピックアップして解説していく基本的な構成ですが、学者ではなく文筆家の馬場あき子ですからとても面白く読めます。そして限りなく学者に近い素人、という立場をはずすことなく書いているので、安心して読めます。面白いけれどトンデモ、というところは一切ありません。

文庫版ですから、電車の中で拾い読みもできますし、安価。一家に一冊、お勧めです。
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by soymedica | 2015-08-14 08:18 | 本・CD・その他 | Comments(0)

本: 能舞台の主人公たち

d0226702_14124029.jpg能舞台の主人公たち 権藤芳一 淡交社
2009年9月22日 初版
279ページ 2000円

ソフトカバーの手に取りやすい本です。
曲の解説ではなく、能の主人公となった色々な人物について解説した本です。たとえば「夕顔」については6ページが割かれており、簡単な系図、源氏物語の夕顔の出てくる部分のあらすじ、主人公となった能の曲そのものの解説や舞台の様子(白黒で小さなものですが写真が結構あります)、現代の小説があれば紹介されていますし、由来の場所などにも言及してあります。

平明な語り口ですが、古今東西の知識を縦横無尽に駆使して優しいお爺さんが教えてくれる、といった感じの本。

著者は京都の生まれで同志社大学に学び、京都観世会館に30年勤めたと言うだけあって京都の舞台や金剛流への言及が多く、それも面白いです。
お勧め。
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by soymedica | 2015-07-30 14:14 | 本・CD・その他 | Comments(0)

本: 狂言のことだま

d0226702_2242815.jpg狂言のことだま 山本東次郎 玉川大学出版部 2002年9月

20年ほど前に書かれた「狂言のすすめ」の続編的な位置だそうです。
まえがきからしてこの人のまじめな態度が伝わってくるようです。

簡単な歴史的背景からいかにして狂言師は訓練されるか、などを書いた第一章。
有名な狂言についての解釈の第二章。これは東次郎個人の解釈という体裁をとっていますが、この人のことですからある程度は学問的な裏付けのあるところを取り入れ、かつ実際に演じている人の感想あるいは演じるときの気持ちを書きいれているのだと思います。
第三章は間狂言の役割とし10ほどのアイを取り上げて解説しています。今は演じられることのない一角仙人のアイについても言及。船弁慶についても書いてありますが、この人の船頭、拝見しましたがとても良かったです。
第四章は三番叟について。小さいころからこれを演じる日を思い父の舞台を熱心に観たとのこと。

これを読んでますます東次郎ファンになりました。
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by soymedica | 2015-06-15 22:06 | 本・CD・その他 | Comments(0)

昭和の創作「伊賀観世系譜」梅原猛の挑発に応えて 表章 ぺりかん社

d0226702_1955523.jpg昭和の創作「伊賀観世系譜」梅原猛の挑発に応えて 表章 ぺりかん社
2010年初版第1刷 

「はじめに」にあるように平成21年(2009年)角川学芸出版から刊行された梅原猛の「うつぼ舟Ⅱ」(Ⅲまで刊行)にある、「観阿弥は伊賀の出身で楠正成の親戚であった」という論に対する反論です。
昭和30年代に三重県の旧家上島家からでた伊賀観世系譜というものがあるのだそうです。それによると観阿弥は伊賀出身で云々ということになっているのだそうですが、その資料があやしいうえに、直接見せてもらった研究者が今に至るまで一人しかいない。などなどで、能研究家のあいだでは葬り去られていた説だそうです。

ただ、この説が小説家に気に入られ、吉川英治や杉本苑子が作品に取り入れ、能楽愛好者の間ではずいぶん話題になったとか。筆者も書いていますが、地味な学術論文より小説家の方がはるかに影響力が大きい。(まじめな健康番組より「みのもんた」の方を皆が信じるのと同じです。)まあ、わくわくするような話ではあります。

それをなぜか最近になって梅原猛が復活させたのみならず、表章博士の研究にもケチをつけたからさあ大変、と、書かれた反論の一冊。

梅原猛の本とこれと比べてどちらが説得力があるかと言えば素人目にはこちら。でも、読み物として面白いのは梅原猛。彼の本は「隠された十字架」とか、素人受けしますよね。


表章の推測では系図マニアだった昭和初期の上島家の当主がそれらしいものを作って、あまり有名でない研究家に見せたらとっても感動してくれたのでウケに入っていたら、話が大きくなりすぎて、その後誰にも見せなくなったのではないか、と。現在の当主もそれを知っていて誰にも見せないのだろう(最初の研究者の久保と言う人の撮った写真しか世間には流布しておらず、表も梅原も実物は見せてもらっていない)。

系図発表当時は鹿島建設社長のおうちである永富家もその系図に登場し、観世との縁に喜んだ鹿島建設社長は今の観世能楽堂建設に多大な貢献をしたとか。まあ、ちょっぴり良いこともあったわけ。

梅原猛の本を読んでいなくても、面白く読めると思います。お勧め度高し。
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by soymedica | 2015-02-22 19:11 | 本・CD・その他 | Comments(0)

太郎冠者・山伏行状記 野上豊一郎

d0226702_82906.jpg太郎冠者・山伏行状記 野上豊一郎 檜書店
2002年10月26日第一刷
205頁 1300円+税

解説にありますが、「太郎冠者行状記」は既に一度昭和21年に出版されたもの、「山伏行状記」は死後原稿のまま発見されたもの、それに雑誌「文学」に掲載された「狂言の風刺と諧謔」を入れて一冊にしたものです。
太郎冠者、山伏を一人の人と見て、色々な有名狂言のお話をつなげていくと行った解説本です。冠者とは何か、山伏とは何か、ちょっとした時代背景の説明などがあって、楽しく読めます。
狂言を良く見る人は「ああ、あそこの場面がこんな風に文章になっている」と楽しめますし、あんまり見ない人は見たくなりますよ。

最期の「狂言の風刺と諧謔」に「釣狐」と対比されて出てくる「狸腹鼓」、なるほどね。
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by soymedica | 2015-01-07 08:30 | 本・CD・その他 | Comments(0)

山崎正和 世阿弥

d0226702_15333798.jpg世阿弥 山崎正和 新潮文庫
昭和49年12月15日印刷

山崎正和に世阿弥を扱った著作があるということを知ってアマゾン検索して中古で買ったのがこの本。買うまで戯曲だとは知らなかった。なぜか文明評論だとばかり思っておりました。岸田國士賞を受けた作品だったのですね。失礼しました。

足利義満の全盛期の時から、晩年佐渡に流される直前までの世阿弥を主人公とした戯曲です。光でも暗闇でもなく、「影」として芸術をつらぬいた世阿弥、というテーマらしいです。
調べると21世紀になってからも上演されており、結構評判が良かったとか。字で読むとあまりに観念的すぎていささか辟易しました。

また舞台になったら、見てみたいですね。
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by soymedica | 2014-12-29 15:34 | 本・CD・その他 | Comments(0)