2017年 10月 12日 ( 1 )

国立能楽堂特別公演 楊貴妃 宗八 烏帽子折

d0226702_13431378.jpg国立能楽堂特別公演
2017年9月30日(土)13時より

楊貴妃 金剛流
シテ 豊嶋三千春、ワキ 福王和幸、アイ 井上松次郎
笛 赤井啓三、小鼓 住駒匡彦、大鼓 柿原崇志
後見 松野恭憲、廣田幸稔、豊嶋幸洋
地謡 宇高通成ほか

宗八 和泉流
シテ(宗八)松田高義、アド(有徳人)佐藤智彦、(出家)野村又三郎

烏帽子折 観世流
シテ 観世銕之丞、ツレ 西村高夫、子方 片山清愛、立宗(盗賊頭)観世淳夫、(盗賊)谷本健吾、橋本忠樹、小島英明、奥川恒治、安藤貴康、長山桂三、柴田稔、桑田貴志、永島充、北波貴裕、ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 則久英志、アイ(盗賊)野村万蔵、川村佑紀、能村晶人、(宿の亭主)野口隆行
笛 一噌隆之、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 三島元太郎
後見 片山九郎右衛門、清水寛二、梅田嘉宏
地謡 観世喜正ほか


かなり力の入った出演者構成の特別講演。まずは楊貴妃から。金剛流のことはあまり知りませんが、豊嶋三千春と言えば重鎮。道理で地謡陣構成も力が入っている。なぜか前列の方が年取っている感じ。
あまりなじみの無い笛の赤井啓三。袴が派手な緑色で目を引く。
大小前に一畳台が出され、その上に小宮が置かれる。屋根は赤で引き回しは濃紺。宮を載せるときにちらっとシテの足袋が見えた。

亡くなった楊貴妃が忘れられない玄宗皇帝。方士に楊貴妃の魂魄を探しにいかせます。こんな美男に探しに行かせるのはまずいだろう…。残念なことに、私、この人の謡があんまり好きではないのですが。
蓬莱についてたまたまそこにいた松次郎に楊貴妃の行方を尋ねる方士。井上松次郎の語りが良い。この人は名古屋の人でしたっけ、あまり観ないのですが、上手だと思う。

宮の奥から声が。姿が見えないと、どんなに謡が上手くても絶世の美女というよりはダミ声のオバサンが謡っているような感じがするのが不利な曲ですね。景清なら良いけれど…。
方士が声をかけると引き回しが下ろされます。
鬘帯のすだれがかかっていることが多い宮の作りものですが、今回はそういう余計なものは無し。

やっぱり姿を見せると声の違和感は無くなりますね。
楊貴妃は玄宗皇帝との日々を懐かしみ、二人の秘密の言葉を教えます。
そして舞なのですが、このシテかなりご高齢ですね。遠目にも息が上がっているのがわかるところがありました。残念。

舞終わった楊貴妃は釵(かんざし)を方士に渡すと、方士はそれを手に橋掛かりへ。二の松あたりで振り返って下居します。このあたりの情感って小督に似てませんか?

ワキが退場すると楊貴妃は宮に入って下居、柱にすがって扇で顔を隠します。ここ、脚がよろよろして宮の真中に入れないのか、わざとなのか、ちょっと観る者に考えさせるくらい心配…。
そして、宮から一歩出て一畳台の上で留めます。

うーん、十年前にこのシテで観てみたかったな。


宗八は聞いたことがあるけれど初めての演目。
僧侶が嫌でにわか料理人になった男と、料理人が嫌でにわか坊主になった男が雇い主の家で出会い、結局互いの仕事を交換することになると言うお話。
料理人が作るように命ぜられるのが「鯛のうしお汁」は良いとしても、「鮒のなます」…。ちょっと嫌だな。
法華経を読む読み方が「ムリャリャムリャ…」だって、フフフ。

まな板、鯛、鮒、菜箸と包丁の作りものが面白い。万作家の作りものはまな板に磁石がしのばせてあるとか。


さてサラブレッド片山清愛くんの子方卒業記念の烏帽子折。何んと国立能楽堂では初演だそうです。
商人の吉次たちの一行に牛若が連れて行ってくれと声を掛けます。声嗄れしていて、練習の成果なのか声変わりなのか(後者みたい)。それにしても今時の子は顔が小さいなー。
一行が鏡の宿につきます。ワキとワキツレは囃子方の後ろへ、子方は後見座へ。

と、早打がやってきて、「鎌倉殿が牛若を探している」と触れまわります。
これを聞いた牛若。早く元服して姿を変えて追手をかわさないといけないと、一の松から烏帽子屋に声を掛けます。
時間外の客を不審に思う銕之丞の烏帽子屋。考えてみるとこの曲、シテの出番が少ないのですが、銕之丞、なかなか素敵でした。
そして、九皐会と京都観世会の混成の地謡がこれまた宜しい。皆で清愛くんを盛りたてようとしているのかな。

烏帽子は左折にしてくれ、という若い客を不審に思う烏帽子屋。(ただでさえ夕方に烏帽子屋に行くのは変なのに、平家の風とは反対に折れ、というのは不用心!)烏帽子の礼に刀を渡す。それを見た烏帽子屋の妻は「これは源氏関係の人間だ」と。この場面については国立の今月のパンフレットに小林健二が詳しく書いています。

この烏帽子、普通の立烏帽子ではなく、侍烏帽子。「三番の左折」の詞章と合わないような気がするのですが、誰か解説してくれないかな。

一行は赤坂の宿へ。
盗人の襲撃があるという噂におびえる吉次たち。「大丈夫、やっつけてやる」という牛若を頼りにします。大丈夫?!
お約束の狂言方の偵察陣。ハハハ。萬斎がやった時にはもっと華やかだった。万蔵は地味だなー。
普通に考えると先の烏帽子屋が盗賊に情報を売ったと考えるのが普通だけれど、その可能性を女房とのエピソードが消して、かつ祝言性を増しているのですね。

お約束のチャンバラ場面。今回は仏倒が少なくて若干地味でしたが、清愛 vs. 淳夫の御曹司対決もあったし、銕之丞の仏倒もあったし、満足。
清愛くん、早く大きくなって東京にも沢山来てね。






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by soymedica | 2017-10-12 09:09 | 能楽 | Comments(0)