2017年 06月 14日 ( 1 )

銕仙会定期公演六月 千手 水掛聟 阿漕

d0226702_22315991.jpg銕仙会定期公演六月
2017年6月9日(金)18時より@宝生能楽堂

千手 郢曲之舞えいきょくのまい

シテ 鵜澤久、ツレ 浅見真州、ワキ 宝生欣哉
笛 竹市学、 小鼓 亀井俊一、 大鼓 柿原崇志
後見 山本順之、永島忠侈
地謡 観世銕之丞ほか

狂言 水掛聟
シテ(聟)小笠原匡、アド(舅)野村萬、小アド(舅の娘)能村晶人

阿漕
シテ 西村高夫、ワキ 大日方寛、ワキツレ 御厨誠吾、野口能弘、アイ 河野佑紀
笛 一噌隆之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 佃良勝、太鼓 大川典良
後見 野村四郎、浅見慈一
地謡 清水寛二ほか


千手のこの郢曲之舞(えいきょくのまい)という小書きは初めて。解説に「この小書きが付くと千手と両シテあつかいになること、千手のクリ・サシ・クセが省略され、舞も序之舞から中之舞になることなおで、全体に二人の刹那的ともいえる一夜をより濃密に描く演出」といったことが描かれていて「?」と思ったが、全体を見終わっての感想は「舞台が締まる」と言うもの。短くはなりますが、濃い。そう感じさせるのもこのシテとこのツレだからでしょうけれど。

数珠を首にかけた重衡。全体に金茶に統一した装束で、無地にも見える同系統の色で丸い何かの模様が散っている。これがとても上品。
宗茂が状況を説明する。こういうところを力まずさらっとやるのが上手な欣哉。
シテの装束は特に個性的と言うのではないけれど、あまり洗練されていては田舎の雰囲気が出ないのでしょう。
このシテの面が特に斜めから見ると特に美しい。
そして、これはどうしようもないことだけれど、重衡はもう少し若くあってほしい。上品な初老では悲劇性が今一つ…。

千手がやってきても物思いに沈む重衡は会わないという。この言葉を伝える宗茂。脇正面から斜めに橋掛かりにいる千手に向かい問答する配置が綺麗。
本日さすがの宝生欣哉も二人のシテに押され気味で印象が薄いかったのですけれど、要所要所を抑える力はさすが。

要するに雨の晩に二人がこれでもう会えることは無いかもしれないと思いつつ、酒を飲み、音楽や舞を楽しむというそれだけの曲。でも、この曲こんなに面白かったっけ?!と思わせる演技でした。

ちょっと小鼓が残念でしたが。何か具合でも悪かったのかな。それでもしっかり合わせてくるところはベテランだとは思いましたが。

面は河内の小面


水掛聟は好きな演目。聟と舅がお互い相手がいない間に堰を切る仕草とか、水の掛け合い、最後に取っ組み合い。萬はさすがの演技ですけれど、萬と相撲を取って最後には投げ飛ばす二人はドキドキでしょうね。ちょっとバランス崩れて骨折させた、なんてことになったらマズイ。萬がかぶっていた頭巾はなんて言いましたかねー。ほくそ頭巾でしたっけ。


最後は見どころ一杯の阿漕
本日は終了が9時半近くになるためか、チケットは売り切れだと言うのに正面席に空席が。常連のご高齢者が来られなかったという事か。この阿漕も良かったのに、残念でしたね。後のパイプいすには学生さんのような人たちがいたのですから、そういう場合にチケットを融通する仕組みを銕仙会で作ってあげたら良いのに。

お坊さん3人登場。私の持っている解説(新潮社)では旅人が一人、となっていますが、どちらにせよ伊勢参りの途中に阿漕が浦にやってきた。土地の漁師と思しき老人がやってくる。この漁師、土地の謂れを教えるところなどではあまり感じませんでしたが、だんだん本物の漁師のように謡本でいう「卑しい」感じが出てきて上手い。特に最後の竿を操る見せ場など、神様のお使いの尉などとは明らかに違うイメージを出していました。

漁師は釣竿を投げ捨てて中入りするのですが、脇正面あたりにあるものを、後見がわざわざ笛座のほうに回って取りに出るのは決まりなのでしょうね。

呆然としている僧一行。そこに浦人がやってくる。見かけない人がいるからと言って、そんなに驚くかな、というほど驚く河野。全体に力入りすぎだけれど、まあ若いからね。

では、阿漕を弔うか、と僧たちが待っていると、すーっと阿漕の幽霊が。前半は漁は釣り竿で、今回は網らしい。
この面の顎がちょっと気になる。照明を受けて、あごの辺縁が光るのですよね。なんだかあごの先にだらしなくマスクをひっかけているように見えて…。
それはともかく、後半も堪能しました。西村は手のきれいな人で、どう考えても水死した漁師の手ではないのだけれど、それがかえっておどろおどろしい。
面白く漁をしているとそれがだんだん地獄の景色にかわり、成仏しないまま去っていく。

またこの人で、また阿漕を見たい、と思ったのでした。

面は前シテが洞白の三光尉、後シテが作者不詳の痩男

写真は銀梅花



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by soymedica | 2017-06-14 18:00 | 能楽 | Comments(0)