銕仙会定期公演十二月 富士太鼓 栗燒 舎利

d0226702_10405859.jpg銕仙会定期公演十二月
2017年12月8日(金)18時より@宝生能楽堂

富士太鼓 現之楽
シテ 浅見真州、 子方 谷本悠太朗、 ワキ 森常好、 アイ 高澤祐介
笛 一噌隆之、 小鼓 鵜澤洋太郎、 大鼓 佃良勝
後見 清水寛二、柴田稔
地謡 野村四郎ほか

栗燒 
シテ(太郎冠者)三宅右近、アド(主)三宅右矩

舎利
シテ 安藤貴康、 ツレ 谷本健吾、 ワキ 則久英志、 アイ 三宅近成
笛 八反田智子、小鼓 鳥山直也、 大鼓 柿原光博、 太鼓 林雄一郎
後見 観世銕之丞、泉雅一郎
地謡 馬野正基ほか


本日は栗燒はともかく、二曲とも初めての曲。
富士太鼓はどこかで聞いたような筋だな、と思ったら、同じ話の別構成の梅枝を見ていたのでした。そしてシテはやっぱり浅見真州。それと比べてどう、という楽しみ方がほど曲を知らないのが残念。

正先に作り物が運び込まれます。これが豪華。まさか浅見真州大先生ご本人が作っているとは思われませんが、案外こういう細工がお好きだったりして。
そこに下人がやってきて話の前段を語ります:花園天皇が太鼓の名手である浅間を召したら、自分こそは第一人者と思っている富士もやってくる。
院は「信濃なる浅間の山も燃ゆなれば富士の煙のかひやなからん」と、名はこの上ない富士であっても実際は浅間がよろしいだろうと、浅間を選びます。
浅間は富士が許せず、富士を殺してしまう(なぜ???)。
実はこれを聞きながら何となく「ハンサムなワキだけれど、不思議な語り口だな」と思って、よく考えたらこれはアイの高澤でありました。

富士ゆかりの人がやってきたら形見の装束を渡そうと、アイがふれまわる。
ここで富士の未亡人と子供登場。ちょうど望月の時のように橋掛かりで二人向き合ってかなり長い謡を謡うのですが、これが音程が全く合わない。謡としてはOKなのでしょうけれど、現代の音楽環境で育ってきた子方にはこれは不安なのではないだろうか。

富士が殺されたと聞かされ、抱き合う親子。泣いている親子に形見の衣と鳥兜が渡され母は後見座でそれを身につけます。
嘆き悲しむ母は、「あれに敵の候」と太鼓に向かいますが、それを子供が止めます。何となく西洋風。
子方の出番がこんなに多い曲だとは思わなかった。悠太郎くん、真面目に熱演。

そしてついに母は太鼓を打つ子供を退けて自ら太鼓を打ち始めます。
橋掛かりまで行って太鼓を見込む所作があり、これが小書きの現之楽によるものなのだそうですが、その他に太鼓の前を行くところもあり、何となく松風の見留みたい。

面はプログラムの予告の是閑の深井から甫閑の曲見に変更されていたのですが、その面が鳥兜の下でとても素敵。そして、そのまま横目で敵の太鼓を見込むところがちょっと凄味があって怖かった。

そのうち母もだんだん心が落ち着いて、舞台中央で兜と衣を脱ぎ、笠をかぶって家に帰ります。でも、橋掛かりから今度は名残惜しそうに太鼓を見つめます。
夜目遠目笠の内、と言いますが、面はかぶりもの無しだとあんまり良いとは思われない表情なのが不思議。
何だか子供を連れて帰るのを忘れたような母なのでした。

また見てみたい曲です。


連続して栗焼を見ている。秋ですからね。
栗の芽を欠くとき、扇をパチンパチンと鳴らさないのがこのお家。
良い曲ですよね。楽しい。


舎利も初めての曲。
正先に一畳台が出され、その上にちょっと端に寄せて舎利塔を表している小さな台が置かれます。
そしてワキ僧登場。則久は声が良いので謡うと「朗朗と」、という形容詞がふさわしい。出雲からやってきて京都見物。泉涌寺にやってきました。私も行ったことありますが、立派なお寺ですよね。

ずうずうしくも舎利を拝ませてくれと言う僧に、能力はしょうがないなあ、と見せてやる。
あまりのありがたさに感涙にむせびつつ、でも良い声で則久がお経を唱えていると、見るからに怪しい黒頭の男が。しかも信心深そうなことを言う。それに騙されて一緒に舎利を拝もうと言う人の良い僧。

地謡が心地よく謡をきかせてちょっとうとうとしていると、旅の僧もうとうとしたのか、急に怪しい男が態度を変えて、何と舎利を入れてある玉を取ってしまう!ここのところがちょっと急迫した気分でよろしい。ついでに舎利塔も蹴倒せば宜しかったのに。

怪しい男、実は足疾鬼が天井を破って逃げたので、大変な揺れと音が。橋掛かりに下がっていた能力が悲鳴をあげて転げまわる。「揺り直せ、揺り直せ」。ここは道成寺とおなじですね。
お堂に入ってみると舎利が無い!僧を責めると、足疾鬼が舎利を奪って行ったとの話を聞く。
では、昔のように韋駄天に頼んでみようと。

正体を現した足疾鬼は前半の地味な服装とは打って変わってオレンジに金の袴、上には黒に金とド派手。右手に玉を持っています。
祈りが通じて韋駄天が足疾鬼から舎利を取り戻そうと登場。もっと強そうな装束で出てきてほしいが、それはそれ。
二人で緩急自在の追っかけっこ。急に動きがゆっくりになるところは、まるで暗闇で相手の様子を探っているよう。
結局韋駄天は舎利(玉)を取り戻してめでたしめでたし。

年の瀬をスカッと締めくくった一番なのでした。

囃子も元気良くて良かった。今回気づいたけれど、笛が真正面向いて座っていた。何となく少し目付柱の方向を向くものと思っていたけれど、人によって違うのか、曲によって違うのか。今度注意して見てみようっと。

面は前シテが作者不詳の筋男、後シテが石原良子作の顰
ツレが徳若作の怒天神

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by soymedica | 2017-12-13 10:14 | 能楽 | Comments(0)
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