国立能楽堂定例公演七月 隠笠 山姥

d0226702_21402047.jpg国立能楽堂定例公演七月
2017年7月19日(水)18時30分より

隠笠 大蔵流
シテ(太郎冠者)山本泰太郎、アド(主)山本則孝、(売り手)山本則重

山姥 観世流
シテ 野村四郎、ツレ 野村昌司、ワキ 福王茂十郎、ワキツレ 村瀬提、村瀬慧、アイ 山本東次郎
笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 河村大、太鼓 小寺佐七
後見 木月孚行、武田尚浩
地謡 関根知孝ほか


隠笠は、隠れ蓑みたいな話ですが、「姿の消える笠」を騙されてつかまされた泰太郎が、これを主人にどう誤魔化すか、というお話。
後から考えると子供だましの単純な話なんですが、大爆笑してしまった。演技の力ですね。


さて、楽しみに待っていた野村四郎の山姥
遊女の百ま山姥がマネージャーたちと連れだってやってくる。ワキツレの村瀬コンビ、ちょっとうまくなったような気がする。茂十郎よりもかなり声が高いのだけれど、それを同吟のときと自分たちだけのときと上手くコントロールでいている。良かった。
茂十郎の謡、ちょっと速くないかい?と思ったのだけれど、皆さんどう思われました?

京都から日本海側に抜けた一行は、ここから善光寺を目指すため地元の人に道を聞きます。ご利益のある難路を行くことにした一行は、地元の人を無理やり案内に連れて行きます。地元の人とはいえ、東次郎さんは80歳越えているんだから、気の毒に。今回の段熨斗目の配色は素敵。
一行が山中にはいると、いきなり日が暮れる。

と、向こうから突然女が声をかける。ここ、たいていのシテ方は工夫に工夫を凝らして「どうだ!」と言う感じの「のうのう」なのですが、意外にさりげないよびかけ。ああ、こういうスタイルもありか、と。
そして四郎は(きっと当たり前のことなのでしょうが)、若い女を演じるときと老女を演じるときとでは全く足遣いが違う。ここまで脚に表現力のあるシテ方はあまりいないと思う。
シチュエーションとしてはとても怪しいのに、一行が宿を借りようとスーッと思ってしまうのも納得の普通の老女。

ところが招かれていってみると、「あんたたち有名な百ま山姥とマネージャーさんでしょう?ちょっと歌ってみなさいよ」。
ここで、ツレの昌司がちょっと言葉のやり取りのタイミングを見失う。後で怒られるのかな。でも、そんなことも無かったかのように四郎山姥は自分の言うべきことを語る。ああ、これは相手が聞こうが聞くまいが、言わねばならない事だったのだな。
割と緩急のついた謡でしたが、おどろおどろしさはあまり無い。

女がいなくなってしまうと、地元の人が山姥の正体について語る。このアイ語りが好きなんですが、東次郎がやると前場の重さをうまく和らげて楽しい。
ああ、山姥っているよね、と思えてくる。

そしていよいよ山姥登場。鹿背杖に木の葉をつけるのはよく見ます。今回も榊の葉のようなものが。あれ、数枚黄色い枯葉にしてみたらどうですかね。
鱗模様の厚板が最初銀に見えたけれど、金かな。上はベージュに茶の線描きの模様(これだけはパンフにあるものと同じではないだろうか)、袴は薄い鶯色と金だろうか、とにかく、月の光の下にはこんな老婆がいるものだと、納得の登場のしかた。
白髪は結わずにざんばらにして、両肩にたらしています。
大鼓の掛け声が聞きなれないなー、と思ったら関西の人。前に聞いた時には感じませんでしたが、やはりこういうものにも方言があるのでしょうか。

山姥は寂しいけれど雄大な山の風景を謡い、時々見かける人間をきまぐれに助けてみること、そして山巡りの様子を見せます。
この立ち回りが本当に素晴らしい。
ワキ方の福王茂十郎、ここで、何だかお顔が真っ赤になってしまったのですが、調子が悪かったのかな。最後は普通になっていましたが。ここの所皆さんのご病気が続くので、気をつけてほしい。

そして、百ま山姥一行と観客が陶然としているうちに山姥は消えていくのでした。
山姥とは何か、と学者たちは色々言っていますが、山姥は山姥。きっといるんですよ。何だかハイキングしたくなってきたぞ。

面は 前シテが老女、後シテが山姥、ツレが小面。


実はそばに座っていたお婆さん。昔風にドレスアップしているけれど(レースのハンカチ持っていそう、と言えばお分かりいただけるだろうか)、90近いのではないか。自分の声のコントロールがきかず、お調べが始まっても大声。かなり長いことパンフレットをガサガサしたり、周りの人がじーっと見てもお構いなし。連れのもう少し若いおばさまが身を縮めているが、年下の為か注意できない。どうなることかと思ったら、演義が始まった途端におやすみになられたので静かになったという(爆)。

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by soymedica | 2017-07-25 22:19 | 能楽 | Comments(0)
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