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能の魅力を知る 仇討の光と影 曽我兄弟

能の魅力を知る 仇討の光と影 曽我兄弟_d0226702_10040979.jpg能の魅力を知る 仇討の光と影 曽我兄弟
2017年5月13日(土)13時より@セルリアンタワー能楽堂

小袖曽我 物着
朝比奈
夜討曽我 特別演出による

曽我十郎祐成 中村邦生
曽我五郎時致 友枝雄人
母 大村定
団三郎 金子敬一郎
鬼王 内田成信
古屋五郎 佐藤寛泰
御所五郎丸 大島輝久
縄取 谷友矩、友枝雄太郎
侍女春日局 山本則秀
大藤内 山本則孝
狩場見廻人 山本凛太郎

笛 栗林祐輔、小鼓 成田達志、大鼓 谷口正壽、太鼓 小寺真佐人
後見(小袖曽我)狩野了一、粟谷浩之、(夜討曽我)佐々木多門、粟谷浩之
地謡(小袖曽我)友枝昭世ほか計6人、(夜討曽我)香川靖嗣ほか計6人

朝比奈三郎 山本泰太郎、閻魔 山本則重


間に狂言の朝比奈を挟んで、能の小袖曽我から夜討曽我まで一日でやってしまおうという試み。夜討曽我には「禅師曽我」の前段を挟み込んであります。
なぜ間に「朝比奈」かと言うと、朝比奈三郎義秀は、仇討に逸る曽我五郎の鐙の草刷りを引き捕えて意見忠告した人だかららしい。

5月の中頃。まず前もって母と侍女が舞台へ。母は蔓桶にかけます。
小袖曽我のシテは兄の十郎祐成。弟と従者(乳母子なのでしょうか?)の4人登場。弟は勘当されているが、仇討の前にお母さんにそれとなく別れを告げようとやってきたのです。状況を説明する謡を歌うと、全員後見座へ。ここでは従者はすぐに引っ込んでしまいます。兄弟も弓を置いて橋掛かりへ。
弟の勘当を解くために、まず兄が母のご機嫌を取ろうと相談し、兄だけが母の待つ家へ。しかし、友枝雄人ってこんな声だったっけ。この人凄くまじめそうだけれど、地味。

母親のご機嫌が良いと見て取った十郎祐成が弟を呼ぶ。でも弟が家の中に向かって呼びかけても、侍女の春日局は知らん顔。母も子供は祐成と九上の禅師しかいない、と言う。ここでもう一人男の子がいることが明らかに。
すごすごと戻る五郎。橋掛かりでは十郎五郎の会話、舞台では母と侍女の会話が同時進行。狂言のようですね。

もう一度母にお願いしようと戻る祐成。この曲はこの母親の説得の場面が見せ場の一つなのでしょうけれど、今の時代にちょっと。
ちなみに勘当されたわけは、仇討に逸る兄弟の弟だけでも助けようと母は五郎を出家させようとしたのに言う事を聞かなかったかららしい。確か箱根の寺から逃げ出したとか聞いたような気がします。

とにかく言葉を尽くして勘当を解いてもらった五郎。母に小袖を貰います。これは狩場への門出祝なのですが、当然そこには敵の工藤も行っていると考えるべきですよね。後の夜討曽我では母に最期の挨拶をしなかった、と言う心残りがあることになっていますが、この時点で母も二人が仇討に行くと当然思っていたのでは…。

それはともかく、母にもらった小袖を羽織った五郎。五郎だけでなくなぜか十郎も同じ模様の小袖を羽織って舞を舞います。
ここの相舞が最大の見せ所。今回シテ・ツレともにオジサンなのですが、これを若い男二人がやったらちょっと色っぽい感じなのでしょうね。これから死んでしまう美少年二人が派手な着物をまとって二人で舞う、というのはすごく受けたのでは。

そして朝比奈を挟んで夜討曽我へ。
(朝比奈はすごく強い亡者となった朝比奈が、最近商売あがったりで貧乏な閻魔様に勝つお話。)

夜討曽我では配役は同じですが、シテは弟の五郎時致。
出で立ちは小袖曽我の最初と同じです。
これから死を覚悟の仇討に行く兄弟。母に形見を渡す役を団三郎か鬼王のどちらかにだけさせるわけにはいかないので、二人一緒に暇を出そうと相談するふたり。
ところが返されるくらいならば互いにここで相打ちして死のうという従者二人。結局説得されて二人で母親に形見を届けに行きます。

ここに禅師曽我が挿入されます。
また母親が今度は装束を替えて登場。出し置きです。団三郎と鬼王が橋掛かりで「使いの泣きて帰りしは…」と謡った後に舞台へ。
「これから仇討に入るお二人の形見をお持ちしました」と。三人で泣く。

と、団三郎が突然「いかに申し候 箱根へ人を御上せたまへ」???母「箱根と申しについて思い出したり 急ぎ九上の寺へ上りそうらへ」???
調べたところによると禅師がいるのは新潟の弥彦神社の側の国上寺なんですが(大江山の酒呑童子の修行の寺でもあるらしい)。

そして大藤内。則孝の大藤内も凛太郎の見回り人もそれぞれちょっと固いながらも良かったのですが、二人の掛け合いがもっとスムーズに行くと良いかな。(ま、比べているのが東次郎なんで…。)

討ち入りの場面。既に兄の十郎は死んでいるらしい。それを知らず暗闇の中で兄を探して呼ぶ五郎。
結局物陰に女のふりをして潜んでいた武士に捉えられてしまうのですが、この演目を喜多流で観るのは初めて。今までは観世流だったので、喜多の地味な感じがめづらしい。舞台上の人数も観世より少ないのではないだろうか(烏帽子折れとごっちゃになっているかもしれませんが)。
派手に倒れるのはひとりだけでしたね。
そして友枝雄太郎がかっこよくなっているのにびっくり。次は大風がどういう風に成人するか楽しみな一族。

ま、それはともかく残念なことに五郎は捉えられてしまいましたが、仇討は果たされたのでした。


写真は箱根の曽我神社。
箱根神社の階段の中ほどにあります。そして「寺」の跡が駐車場の端っこのほうにあります。明治まではちゃんと神宮寺があったらしい。

by soymedica | 2017-05-22 21:03 | 能楽 | Comments(0)
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