銕仙会定期公演四月 2017年4月14日(金)18時より@宝生能楽堂 百萬 法楽之舞 シテ 片山九郎右衛門、子方 谷本康介、ワキ 殿田謙吉、アイ 野村萬斎 笛 一噌隆之、小鼓 観世新九郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺佐七 後見 谷本健吾 地謡 浅見真州ほか 薩摩守 謡入り シテ(船頭)野村萬斎、アド(僧)内藤連、小アド(茶屋)深田博治 恋重荷 シテ 野村四郎、ツレ 浅見慈一、ワキ 森常好、アイ 石田幸雄 笛 寺井久八郎、小鼓 曾和正博、大鼓 柿原弘和、太鼓 三島元太郎 後見 浅井文義、長山桂三 地謡 観世銕之丞ほか 本日は人気役者登場とのことで、比較的早くから切符は売り切れ。 まず、百萬の殿田の僧が登場。子供を連れている。丸顔のかわいらしい子供だけれど、西大寺の辺で迷子になっていたらしい。 この子供に見せる何か良いものはないかと地元の人に尋ねると、女物狂いが良いでしょうと。 この地元の人はなかなかお調子者で、変な念仏を唱えだす。 と、百萬がやってきて桜の枝でお調子者の萬斎をたたく。 いつもは笹なのですが、今の季節にふさわしい桜の枝の演出って素敵。 なんだか本日九郎右衛門は声枯れしているようですが、確かに百萬の念仏は上手い。だんだん百萬がのってくると、アイは退場。念仏は子供を探す親の狂気に変化していきます。 と、子供が僧侶の袖を引き、「あれは私の母」と。 僧侶は「こんな狂女に子供を返していいのか?」と思ってすぐには返さないのでしょうか。 「今でも子供があったほうが良いか?」などと女に尋ねます。 その返答の「仰せまでも無しそれゆえにこそ乱れ髪の遠近人に…」のところが物凄く素敵。 そして、表情の出る良い面なのか、面の使い方が上手なのか。 ふと気付くとプログラムには後見としてもう一人山本順之が出ていたのですが、後見はずっと一人。どうしたんだろう。 イロエの代わりに中の舞を舞うのが「法楽之舞」だそうです。詞章は少し省略されたようです。 最初に持って出た桜の枝はまだ持ち続けており、「あらわが子恋しや」と。 一の松のところで「こんなに人が多いのに何でわが子はいないの?」そして舞台に戻って「仏様、子供にあわせてください」。 ここで持っていた桜の枝を常座で落とします。 そこで僧も母親が気の毒になり、子供を群衆の前へと押し出します。 無事再会した二人は御本尊にお礼をして帰ります。 この母親、子供と会った後は人が変わったように晴れ晴れとしている。 やはり九郎右衛門は上手い。 面は甫閑作の曲見。 次は薩摩守。小書きの謡入とはパンフレットによると僧が舟に乗る前と降りる前に、船頭が「兼平」の一節を謡うもの。ほんのちょっと。この小書きのために船頭がシテなのか、萬斎だからシテなのか。 ともあれ、間抜けで一文無しの僧の内藤、上手くなりましたね。勢いのある一門っていうのはこういうものでしょうか。 色々な演出が話題になる恋重荷。人気曲を野村四郎のシテで、となれば皆さんこれが目当て?と思ったら狂言の所で帰るお客がちらほら。帰ったのはコアな萬斎ファンと、帰りが遅くなるのを嫌ったお年寄りかな(本日は終了予定9時15分)。 正先に重荷が出されます。朱色の布で包まれて黒い縄がかけられています。持ち手がある。この間どなたかが、「能の作りものはなぜ地謡や囃子方の出たあとに出てくるのか?中に人が入っていない場合には開演前に出しておけばいいじゃないか」と書いていらしたけれど、なるほど。 そして作りものではないけれど、無音の中しずしずと女御が所定の位置へ。 幕が上がると同時に笛がはじまり、ワキが出てくる。 森と石田の組み合わせが秀逸。そして呼び出された山科の荘司。身分違いの憧れを指摘されてうなだれる。でも、ここまできたら「会わせてやろう」というなら頑張るぞ、と。 ずーっとシテの裾の乱れが気になっていたのですが、前半もかなり後になってから裾を直す後見。 それはともかく、前場、かなり現代的な内容だと思うし、舞台も現代劇のような印象を受けます(良い意味で)。様式的な動きをしながらここまで客に理解させられるというのが、さすがは野村四郎。 でも、後見が軽々と持って来た重荷を見ているので、うっかりシテが持ち上げてしまわないかと若干心配…。 そして従者は荘司が憤死したことを告げます。 いつもツレの「恋よ恋…」の詞章が印象に残るのですが、今回全く記憶に無いから寝ちゃったのかな。 そして荘司の呪いで立ち上がれなくなってしまった女御。 今回鬼になった荘司は凄く動きがダイナミック。 女御の肩を鷲掴みにして一度建たせたかと思ったらまた座らせる。ここで持っていた鹿背杖で女御を打つかと思った(さすがにやらなかったけれどその気迫はあった)。 さらに重荷を持ちあげて女御に「懲りたか」と乗せる。 と、思いの煙立ち別れ、と言いつつ、重荷をもとの位置に戻して杖を太い杖に替える。この演出、初めて見たような気がします。 袖をかずくところ、正面席で見ていると面の目が金色に光って見えて面白い。 そして一度は女御の方をキッと睨むのですが、千代の影を守らんや、と帰って行くのでした。 珍しく面がパンフレットにあるものとは替えられていて、きっと直前に差し替えたのでしょう。ここにも野村四郎の意気込みを感じさせました。 とても満足した恋重荷でした。 前シテは小牛作の阿瘤尉、後シテは作者不詳の鼻瘤悪尉。 ツレが作者不詳の小面で銘が「閏月」
by soymedica
| 2017-04-20 17:44
| 能楽
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