2017年3月24日(金)18時半から20時30分
@矢来能楽堂 今回は「能舞台」がテーマ。講師は観世喜正。 現在お客さんを入れて「営業」する能楽堂は都内に10、全国で80ほど活躍しているそうです。 佐渡は能舞台が多いので有名ですが、これは江戸初期に「祭礼は能の形で」と当時の為政者が決めたためで、今でも30から70か所の能舞台が主として神社の境内に残っているとか。同じような場所が兵庫県にもあるそうです。 矢来能楽堂はそれまで西神田のあたりにあったものが震災で焼け、昭和5年に今の地に移ってきたものだそうです。空襲で焼け、昭和27年の再建。当時は何やら「忖度」があったらしく(笑)、国有林の本当に良い檜で作られた舞台だそうです。それをお弟子さんたちが毎日ぬか袋で磨き、今のような黒光りする舞台になったもの。すごいですね。 座席の変遷(升席、手火鉢から今の椅子席の形)、年間通しで「井伊様お席」などがあったとかのお話もありました。 そもそも安土桃山時代に今の能舞台の原型ができ、さらに地謡座が付け加わり、明治になって建屋で覆うようになったそうです。明治中期に「電灯の照明」(これを入れるに論争があったそうですが)が入るまでは障子や明り取り窓を多用していたというのは、言われてみればなるほど。 矢来の鏡板には真ん中に小さな隙間があるのですが、これは冬の乾燥期には広くなり、夏になるとほとんどわからなくなるそう。そして、鏡板に「松」を描くようになったのも江戸中期なのだ、と。有名な名古屋能楽堂の若松論争のお話も。喜正的には「若松で何が悪い?」。私もそう思います。私的な能舞台では松ではない絵が描かれているものもあってなかなか素敵だそうです。 能舞台の大きさは一辺が三間ですが、これを柱の内法で測っているところと、外側で測っているところで若干の差があるそうです。「目付柱」は鑑賞の邪魔ですよね。実は無くてもちゃんと舞えるのだそうですが、やはりあったほうがやりやすいし舞台が締まるそうです。 あとは白洲の効果とか、階段が正先についているわけとか。喜正によれば舞終わった後この階段を上って高貴な方の代理がご褒美の肩衣などをもって来てくれる、ということでした。どこでやら私が読んだ知識では、明治の初めくらいまではこの階段を上ってお使いの人が「始めなされませ」と幕に向かって声をかけたということです。 ま、どちらにせよ一般人や役者が気軽に足を載せてはいけない場所という感覚。 ついで席の話。基本的にシテ方は正面に向かって演技するので、やはり見るときは正面席がよいのでは、とのお話。喜正的には脇正面の席は無くても良いかな…と。 皆で席を移動して見え方をチェック。 そして高砂の謡をみんなで練習。結婚式の謡として有名ですが、昔は結婚式で謡う時には重なりを嫌ったり、忌み言葉を言わないように: 「この浦舟に帆を挙げて」は一度のみ 月もろともに出で汐の→入り汐の、または満つ汐の 遠く鳴尾の沖過ぎて→ 近く鳴尾の、またはほのか鳴尾の とうたったそうです。 そしてみんなで足袋をはいてすり足のおけいこ、扇も使わせてもらいました。 最後の質疑応答でどなたかが、私が「貴人口」と思っている部分は開くのか、名前は何か?と。 矢来のものは開くそうですが、喜正講師は「貴人口」ではなくてもっと縁起の悪そうな名前をおっしゃっていました(失念)。 矢来の観世では、「舞台上で倒れたらあそこから出す」と言い伝えられているそうですよ。 ということで、お話の上手な観世喜正講師で楽しい時間だったのでした。 写真は奈良の春日大社一の鳥居そばにある向影の松
by soymedica
| 2017-03-30 18:28
| 能楽
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