銕仙会定期公演十二月 頼政 酢薑 安達原

d0226702_23252837.jpg銕仙会定期公演十二月
2016年12月9日(金)18時より@宝生能楽堂

頼政
シテ 清水寛二、ワキ 工藤和哉、アイ 高野和憲
笛 一噌隆之、小鼓 幸正昭、大鼓 亀井広忠
後見 山本順之、浅見慈一
地謡 浅見真州ほか

酢薑
シテ 野村萬斎、アド 深田博治

安達原 白頭
シテ 小早川修、ワキ 御厨誠吾、ワキツレ 大日方寛、アイ 竹山悠樹
笛 八反田智子、小鼓 鳥山直也、大鼓 佃良勝、太鼓 小寺眞佐人
後見 観世銕之丞、長山禮三郎
地謡 西村高夫ほか


もうだいぶ時間がたってしまったけれど、久しぶりの観能で楽しかった頼政。諸国一見の僧の工藤登場。この人、国立のパンフレットによるとそんなにお歳ではないのだけれど、凄く年取っている印象がある。口をもぐもぐ動かすせいかな。
謡は上手だけれど、場をつくる、という気迫に欠けているような気がする。

と、そこに地元の老人登場。この老人は親切で、田舎者の老人に宇治の名所を教えてあげる(ま、宇治も十分田舎なのだろうけれど)。朝日山から月が出てきた、という所など、やはり清水は上手だな、と思う。
一通り名所を教えた老人は、扇の柴に僧の注意を向けて、思わせぶりに退場。

アイの高野登場。私ちょっと疲れていたのか寝てしまってごめん、高野クン。

頼政の幽霊が出てくるのを期待しながら謡う僧。
後シテ登場。グリーンの地に金の波の頼政頭巾、袴、そして厚板と法被は金の波の模様かな。華やかでかつ上品。
うーん、ワキとシテとのセリフの交換のタイミングが今一つ緊迫感を欠く感じ。

地謡が「御謀反を勧め申し」とうたうとシテは床几にかけます。あれ、と思ったけれど、座りつつも型が物凄く力強くて迫力満点でした。
そして地謡が戦闘の様子を謡うのですが、これ、平家の側から見た(攻め込む側の)描写と混じっているのが面白い。
で、「攻めてきたぞ」と守る側の謡になったところでシテは立ち上がります。

頑張って太刀を振うのですが、味方の兄弟も打たれてしまい、切腹して果てるさまを演じます。最後に扇を投げるところ、舞台から落ちましたが、あれ、どうなったんだろう。ホームランボールのように拾ったお客さんのものになるのだったら面白いな。
かなり満足した頼政でした。清水、これからもどんどん頑張ってほしい。

前シテが出目満志作の笑尉、後シテの頼政は伝近江作。後シテの面、とても気に入りました。


萬斎&深田の酢薑。深田が茶系の装束で組み合わせた津の薑売り。藁苞に入れた薑をもって津の国から出てきたらしい。そのあとから出てきたのが萬斎の酢売り。ブルーグリーンの装束で堺からやってきた。
どっちの商売のほうが偉いか、歴史があるかを張り合って、洒落の言い合い。
最後に大笑いして終わる、おめでたい曲です。これも結構好きなもののひとつ。万作や石田の雰囲気ともまた違う、萬斎と深田の元気な掛け合いがこれまた楽しかった。


安達原に白頭の小書きが付くと、通常は鬘姿の後シテが白頭をつけ、前シテも通常の深井や曲見から姥なと老女の面に変わるなど、全体に位が重くなるそうです。
後見が、引き回しをかけた小屋の作り物を大小前に。白頭の小書きの時にはススキをつけることもあるそうですが、今回は無し。
有名な山伏の祐慶が弟子と一緒に紀伊半島から東北までやってきました。大変な旅ですよね。でも皆さん若くて体力ありそう。

安達が原についたところで小屋の引き回しがおろされます。この中に婆さんが入っている、というのはなかなか恐ろしい光景。
でも、仏のありがたい力を信じていて若くもある一行はその恐ろしさに気づかないらしく、なんとここに一夜の宿を借りようとする。
そんなに頼むなら泊めてやろうと、小屋の中から老女が出てくる。この老女の渋い銀の装束がとても素敵。

私はそもそもこの祐慶の一行が怖い目に合うのは、みんな「俺たちは偉い修行者なんだぞ」という驕りがあるからだと思うのですよね。泊めてくれた家の主人に向かって、「余興に糸を紡いで見せろ」なんて図々しい。
この糸をつむぐところはとてもしっとりして好きな場面ですが、今回も素晴らしい。それにしてもシテは小顔ですね。面からほとんど顔がはみ出さない。

親切な主は夜だというのに山に柴を取りに行きます。「留守の間閨を見ないでくれ」という問答。様式的というより現代の演劇につながる表現を感じました。中入りの時に一の松で振り返るシテの所作にも説得力がでます。「本当にみないでくれるだろうか…。」

まず誘惑に抗しきれずに閨をのぞくのは能力。これをコミカルに軽くやるのが見せ所だと思う。竹山も上手。こういうそそっかしい子、うちの事務にもいますよ…。
主人の部屋には腐った死骸が山のように。
裏山から帰ってきた主人は「何かが変」というように幕からちょっと出てきて舞台を見つめた後、いったん戻って、走り出てくる。

早笛と言うのだろうか、鬼はその笛にのって地謡とやり取りを。ここがテンポが良くて素晴らしい。そして担いできた柴を落として大立ち回り。
でも、祈りふせられてしまう。ワキとワキツレはちょっと若くて信仰の力で倒すと言うよりは、体力で鬼を倒していたように見えたが。

今までは頑張ったけれど、と鬼は言いながら座り込んでしまいます。
そして幕へと地謡のコーラスの中走りこんでいくのでした。


前シテの姥、後シテの般若ともに岩崎久人作。

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by soymedica | 2016-12-18 21:44 | 能楽 | Comments(0)
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