2016年10月14日(金)18時より@宝生能楽堂 縄綯 シテ 山本泰太郎、アド(主)山本則孝、(何某)山本東次郎 松風 見留 シテ 浅見真州、ツレ 長山桂三、ワキ 宝生欣哉、アイ 山本凛太郎 笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 柿原崇志 後見 浅井文義、清水寛二 地謡 観世銕之丞ほか 縄綯は若干長いけれど好きな演目。借金の形に取られてしまった太郎冠者。ああだこうだと言って元の主人のもとに戻ってきて、売られた先の悪口を言う。 シテが東次郎で無かったのは残念ですが、泰太郎も熱演。でも、橋掛かりで様子を伺っている東次郎が舞台全体の雰囲気を支配しているように見えました。 縄は和泉流とちがって実際の縄では無くて運動会の綱引きで使うような小道具でした。なぜか後見が一度引っ込むのが不思議。 豪華メンバーの松風。正面席に空席があるのは、年間を通して席を押さえている高齢の方が来られないものかと。だって中正面も脇正面もぎゅうぎゅう。 諸国一見の僧の宝生欣哉登場。照明のためか、ちょっと痩せたのか、宝生欣哉の鼻筋がすごく通って見えました。最近若手のワキの舞台を観ることが多かったのですが、やはりこの人の空気の作り方は彼らと比べて格段に上手。 何やら由緒ありげな松を見て、村人にいわれを訪ねます。きりりとした地元の凛太郎がやってきて、いわれを教えてくれるので、塩屋にとまって念仏でもしようということに。 ここで後見の清水が水桶を目付柱に置きに出ます。 清水寛二と西村高夫は銕仙会のあの年代のなかの二大ハンサムだと思うのですが、清水は髪が黒すぎると思う…。 そしてもう一つ、大鼓の柿原ってあの声の涸れ具合は喫煙のせいではないでしょうか。だったら、早急に禁煙するように誰かが言わないと…。 などと考えていると、二人の潮汲み女がやってきます。能をはじめとして種々の文学は「どこにも属さない人」が主人公になることが多いですね。この二人も行平の寵愛故に、自分たちの所属する階級から外れてしまった姉妹。 ツレは後見が出した潮汲み車に載っているのと同じ桶を左手に持っています。 激しい労働を終えて月が出てから帰ってきたと言うにはあまりに上品な二人。上品な地謡。この前半の詞章がとても美しいのもこの曲の人気の理由なのでしょう。 シテの掛けている面がとても綺麗。特に上下に動かすと大きく表情が変わって素晴らしい。 シテは扇を開いて水を桶に汲み入れますが、この時のかがみ方がちょっと齢を感じさせる。 塩屋の二人が帰ってきたので宿を借りようとする僧。一度は「ぼろ屋だから」と断るのが能のお約束(民話のお約束でもあろうか)。 僧が松風村雨のお弔いをしようというと、思わず落涙する二人。何となくこの辺の緊迫感が今一つ。 床几にかけている松風に後見が烏帽子と長絹を渡します。 そしてそれを着けた松風は松を行平と見違えて抱き着こうとします。これを村雨が「あさましや...」と止めようとするのですが、私の好みから言えば、止め方が優しすぎて迫力不足。あんまり松風の狂乱を止めると言う感じにならなかったのが残念。 中の舞、要所要所のポーズの作り方はさすがですが、袖の被き方が中途半端になってしまって残念。そして後姿が何だかお疲れの様でした。 僧の夢の中で2人の美しい姉妹は帰って行き、最後に僧はシテ柱のところで遠くを見やるのでした。 シテもツレも人気と実力十分な二人ですが、年齢差が大きい。その年齢差が橋掛かりに立って向かい合っているだけで感じられる。その後にも感じたのですが、浅見真州は肩でも痛いのではないだろうか。昔見た喜多流の塩津&香川位に年齢が揃っていた方が良いと思います。 見留の小書きがついていますが、演出は極めてオーソドックスでした。 地謡はとても綺麗でしたが、座り直しが派手で、私の座っている場所からはかなり煩わしい動きになっていました。あんな板敷に座って1時間以上と言うところにそもそも無理があるのでは。派手に座り直すくらいなら座椅子使ってもほしいと思います。 面はシテが作者不詳の節木増、ツレは小面(銘:早蕨)で近江作。 写真は敦賀の気比の松原です。
by soymedica
| 2016-10-17 10:37
| 能楽
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