第十一回 香川靖嗣の會 秋 鐘の音 遊行柳

d0226702_17092936.jpg第十一回 香川靖嗣の會 秋

201693日(土)14時より@十四世喜多六平太記念能楽堂

お話 金子直樹

鐘の音

シテ 山本則俊、アド 山本泰太郎、山本則重

遊行柳

シテ 香川靖嗣、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 大日方寛、御厨誠吾、アイ 山本東次郎

笛 一噌幸弘、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純、太鼓 観世元伯

後見 塩津哲生、中村邦生

地謡 友枝昭世 ほか

遅れて行ったので、解説は聞き逃しました。会場の方は入っても大丈夫とおっしゃってくださったのですが、通路からだいぶ奥の席だと…。

大蔵流の鐘の音は和泉流よりちょっと複雑で、登場人物も三人。金の値と鐘の音を間違うところまでは同じですが、鎌倉で五大堂、寿福寺、極楽寺、建長寺と回ります。寿福寺では金に石を投げて音を聞く、極楽寺では坊さんが鐘を衝くのを聞くなど細部が違うだけでなく、怒った主人をなだめてくれる三人目の男が登場。彼のとりなしで、太郎冠者は鐘の音を聞いた顛末を仕方ばなしにして聞かせるというエンディング。則俊、熱演でしたが前半飛ばし過ぎたのか、最後ちょっとつらそう。でも、上手いな。

遊行柳は初めての演目。あらすじを読んだだけで「これは渋い!」。要するに枯れた柳の精を遊行上人が回向する話。草木の精としても、桜などにくらべて渋すぎる。

大小前に柳を載せた塚が置かれます。

茶系の装束のコンビネーションの立派な数珠を持った遊行上人一行がやってくる。こういうのは宝生欣哉にぴったりという感じがする。欣哉はおもむろに謡いだすのだけれど、脇ツレの二人は斜めから見ていても「もう少しすると謡いだすぞ」と何となく構えるのがわかるのは面白い。

房州から北へ、白河の関に達すると道が分かれている。当然広い道を行こうとすると、向こうの方から老人が呼びかける。「いくら年寄りでももうちょっとサッサとしておくれ」と、呼びかけられてもそんなには早く歩けないくらいの年より。

老人は前の遊行上人が通った古街道を教え、なんと「急がせたまえ旅人」などと言う。

そこには柳の名木があったのだけれど、もう枯れて蔦に埋もれてしまったのだそうな。

前シテも後シテも老人ですから弱々しい謡ですが、香川はこういうのが上手ですね。ただ弱いだけではなく、ところどころに強さが見え隠れするのが美しい謡。

柳にとっても有名人西行に歌をよんでもらったのが人生(?)のハイライトであったらしい。老人の姿をした柳の精は塚の中に消えてしまうのでした。

さて、ここで土地の男の山本東次郎がやってきて西行の話を教えるのですが、寝落ちしてしまい、聞けず。申し訳ないことです。

塚の中から柳の精が登場すると舞台の雰囲気が一変。装束が物凄く凝っていて、双眼鏡でじろじろ見てしまった。薄い地の狩衣は角度によっては光る。紫かな。下に着ている着物はちらっと袖が見えるだけなのだけれど、大きな市松らしく、見える部位によってベージュ地だったり、濃い紫の地だったりする。大口も淡い灰色。こういう地味な色合わせなのですが、白髪と皺尉にとても合う。

そしてこの皺尉が不思議な面で最後まで見るたびに表情が変わると言う...。

地謡がありがたい中国や日本の故事を謡って場を盛り上げます。地謡や囃子が上手く、バランスも上々。

そ老木は若いころをちょっと思い出して元気をだしてゆったりと舞います。あらすじを読んだ時には、「これは序之舞で寝るな」と思ったのですが、舞台の盛り上がりがここにあり、寝るどころではありませんでした。

遊行柳は 田一枚植えて立ち去る柳かな という芭蕉の句や西行などなどとの関係が色々なものに書かれていますが、私がこの句から連想するのは小野竹喬の明るい絵で、ちょっと謡曲のイメージとは違います。でも柳の精も自分の若かった頃を小野竹喬の絵の様な感じで思い出しているのかも。

パンフのデザインが美しくかつ重くなく裏面の解説も読みやすくて素敵。次回は?受付のお嬢さんに聞いてみたら「決まってはいるのですが、私共も詳しくは」とのことでした。


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by soymedica | 2016-09-04 17:18 | 能楽 | Comments(0)
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